スイートソロウ

スイートソロウ

「伝言」を共通テーマにしたオムニバス作品。主人公はエピソードごとに変わるが舞台は同一で、あるエピソードに登場した人物が別のエピソードに再登場する場合もある。なお、どのエピソードも「東京都から電車で3時間10分ほどの地方」という事以外、舞台は明確に示されていないが、実際は岡山県のとある町がモデルとなっている。タイトルの「スイートソロウ」はイングランドの劇作家、ウィリアム・シェイクスピアが使用した「切ない」といった意味合いの言葉である。「クッキー」2014年11月号から2016年3月号にかけて掲載された作品。

正式名称
スイートソロウ
ふりがな
すいーとそろう
作者
ジャンル
俳優・女優
 
恋愛
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あらすじ

第1巻

童話作家志望の小林菜の香は、現在の仕事に小さな喜びを見出しつつも、張り合いのない日々を過ごしていた。そんな中、菜の香はテレビで地元出身のロックバンド「エンモア」が活躍している姿を観る。中学生時代、菜の香はエンモアのボーカル、大瀧政宗に依頼されて歌詞を書いていた事があり、現状の田舎でくすぶっている自分と、上京して一躍人気アーティストに仲間入りした大瀧の差に寂しさを覚えていた。そんな中、菜の香はエンモアが地元凱旋ライブを企画している事を知ると同時に、数年ぶりに大瀧から地元に戻るから会いたいと誘いの電話を受ける。中学生の頃から大瀧に恋心を抱いていた菜の香は、新しい歌詞を大瀧にプレゼントしようと作詞活動を再開。ライブ後、菜の香はエンモアのメンバーを交えた打ち上げの場に呼ばれ、大瀧に歌詞をプレゼントするが、大瀧からは思いつきで書いたような歌詞は不要だと拒否されてしまう。ショックを受けた菜の香はそのまま店の外に飛び出す。(エピソード「パークエリアに今夜0時」。ほか、2エピソード収録)

第2巻

地方都市で脚本家として働く純名早苗のもとに、東京から都木谷周治が訪ねて来る。都木谷は若かりし頃に一度ヒット作を出しただけの落ち目の映画監督で、再起をかけた作品の脚本をぜひ早苗に書いてほしいと依頼して来たのだ。早苗は自分の脚本は書きたいものしか書かないと断るが、都木谷はせっかく休暇を取って会いに来たのだからと、早苗の傍から離れようとしない。マイペースな言動を繰り返す都木谷に対し、最初は早苗も警戒していたものの、次第に心を開いていく。こうして初めての恋愛を経験する事になった早苗は、密かに幸せを感じていたが、偶然にも都木谷と陣内和眞が会話をしている場面を目撃。そして早苗は、都木谷が自分と恋人関係になったうえで脚本を書かせ、映画監督と人気脚本家の熱愛発覚といったセンセーショナルな話題で映画をヒットさせようとしている事を知ってしまう。その後ショックを受けて一人自宅にいた早苗のもとに、ロックバンド「エンモア」目当てで、金になるものはないかと強盗が押し入る。(エピソード「夢の夢こそ」。ほか、2エピソード収録)

第3巻

一人暮らしを始めたばかりの青山花乃は、さっそく公共料金の未払いのためライフラインが停止してしまう。このままでは生活ができないと焦った花乃は友達の能瀬萌子に助けを求めると、萌子は自宅に宿泊してもいいと言ってくれたものの、そこには最近いっしょに暮らし始めた弟の能瀬卓見がいた。萌子は1週間の出張に出かけてしまったため、花乃と卓見は二人きりで過ごす事になるが、卓見は花乃に対して、裕福な実家へさっさと戻ればいいと冷たく言い放つ。ある日、卓見が仕事の接待で使う店が見つからず困っていたところを、花乃がフォローする。この事がきっかけで卓見は花乃にこれまでの言動を謝罪。花乃はそんな卓見に対し、異性から好意を寄せられる努力をしているのに報われない事、そして両親が高齢なためいつか自分が一人になってしまう不安を打ち明ける。そんな中、夜中に二人で歩きながらお互いの事を話している花乃と卓見の姿を花乃の両親に目撃され、卓見は両親から罵倒されてしまう。(エピソード「花と影のソネット」。ほか、2エピソード収録)

登場人物・キャラクター

小林 菜の香 (こばやし なのか)

童話作家志望の女性。年齢は20歳。地域新聞の編集部員として勤務しているが、その業務は小間使いと社長の機嫌を取る事で、責任ある仕事には携わっていない。子供向け新聞の1コーナーだけを任されており、それが唯一のやりがいになっている。中学2年生の頃に既にロックバンド「エンモア」を組んでいた大瀧政宗と会話を交わすようになり、当時作詞センスが皆無だった大瀧の代わりに歌詞を書いていた。 当時、小林菜の香が作詞した曲は現在でもエンモアの人気楽曲となっている。大瀧とかかわりを持つようになり、徐々に恋心を抱くようになる。しかし結局告白できず、上京する大瀧に自分の気持ちを込めた歌詞をプレゼントして終わってしまった。その後も密かに大瀧に思いを寄せているが、なにも行動を起こせずにいる。

世良 結花 (せら ゆか)

「世良キッカ」の芸名で活躍している女優。年齢は19歳。長身で折れそうなほど細い身体つきをしている。美人ではないが、記憶に残る癖のある顔立ちをしており、少女から40代の女性の役まで器用にこなす。演技力もあり、将来を有望視されているが、本人は根暗で引っ込み思案な事を悩んでいる。高校生時代には、その存在が気持ちが悪いと、壮絶ないじめに遭っており、卒業式当日も水をかけられ、ずぶ濡れになって歩いていたところを陣内和眞からスカウトを受けた。 芸能界にはまったく興味がなく、自分の性格にも合っていないと自覚しているものの、陣内から必要とされる事を嬉しく感じ、期待に応えたいと努力している。陣内に対してほのかな恋心を抱いていたが、陣内から話題づくりのために三国ふみとに接近してほしいと依頼された。 自分に友情を感じてくれているふみとと陣内からの依頼との狭間で苦悩する。

三国 茉奈美 (みくに まなみ)

ショップ店員の女性。年齢は20歳。保坂えんじからは「ナミ」と呼ばれている。シングルマザーで男性関係にだらしのない茉奈美の母を幼い頃から見て来たため、夢は堅実で幸せな家庭を築く事。小学生時代には母親の奔放さが原因で周囲から孤立した経験があり、そんな状況でも自分といっしょにいてくれるえんじには絶大な信頼を寄せている。 かわいらしく華やかな容姿をしており、軽いタイプの男性にばかり好かれている。コミュニケーション能力にも優れているため、男性から声をかけられる場面も多いが、付き合うと逃したくない気持ちが空回りして束縛が激しくなるので、相手から一方的に別れを告げられる事が多い。三国ふみとの妹だが、幼い頃から家を出て俳優として活躍しているふみととは、ほとんど会っていない。

純名 早苗 (じゅんな さなえ)

脚本家を生業とする女性。年齢は27歳。これまで恋愛経験はまったくない。17歳でシナリオ大賞を受賞し、手がけた作品はすべてヒットしている。重度の取材嫌いで、ほとんど人前に出る事はない。頭に浮かんだ事を勢いで書き進めていくタイプで、自分でもいつかなにもアイディアが浮かばなくなり、書けなくなるだろうと予測している。クールで無感情な事から、幼い頃から変わり者扱いをされて来た。 一方で変わり者だと笑う人達よりも、優しくフォローしてくれる人達を嫌っている。自分の映画の脚本を書いてほしいと押しかけて来た都木谷周治に対しては、最初は拒絶していたものの、いっしょの時間を過ごすうちに少しずつ心を許していく。ロックバンド「エンモア」が地元にいた際に住んでいたアパートの部屋に住んでいる。

百瀬 けいと (ももせ けいと)

18歳の男性。ロックバンド「エンモア」のボーカル、大瀧政宗の実家が近所にあり、幼い頃から親交があったため、まるで兄のように慕っている。人付き合いが苦手で、高等学校を卒業してから始めた接客のアルバイトもすぐにクビになった。それ以来、無気力状態になり、いわゆるニートになっていた。自室の窓越しに見える久野茅羽に恋心を寄せ、近所の主婦の世間話から茅羽が地元の大学に進学すると聞き、清掃員として新しい一歩を踏み出す。 茅羽と文通を始め、少しずつ心を通じ合わせていく。

吉永 藍 (よしなが あい)

28歳の女性。一度上京したものの就職した先がブラック企業だったうえに、既婚者の先輩を相手に勝手に恋心を抱くものの、きっぱりと断られた事で会社に居づらくなったために退社を余儀なくされる。次の就職先が決まらずに地元に戻って来た。同級生には落ちぶれた自分を見せたくないといったプライドから、フリーランスのジャーナリストだとウソをつく。 家族から娼婦の根岸小百合の存在を聞き、インターネット上で公開すれば道が開けるのではないかと考え、自分の名を上げようと小百合に接近。最初は小百合に拒絶されていたものの、吉永藍が見知らぬ男性に拉致されそうになったところを小百合に助けられた事をきっかけに、会話を交わすようになる。純名早苗とは高校時代の同級生だが、自分が片思いをしていた透が早苗に好意を抱いていたため、心の中で見下して、彼女の存在を疎んでいた。

青山 花乃 (あおやま かの)

26歳の女性。医者の両親が45歳の時にできた子供だった事もあり、蝶よ花よと育てられて来たため、甘えん坊でなにかと人に頼りがちな性格をしている。かわいらしい容姿で、男性が好みそうなファッションやメイクを研究しているが、男性からは面倒くさい性格だと倦厭されており、一度も男性から好かれた事がない。男性に縁がなく、恋愛経験のない事がコンプレックスになっている。 実家で何不自由なく過ごす日常と、いつか両親が自分だけを残して死んでしまうであろう現実に不安を抱え、自立するために一人暮らしをスタート。しかし、いきなり公共料金の支払いを忘れ、そのまま連休に入ってしまったために能瀬萌子の自宅に助けを求めた。最初は能瀬卓見となかよくなろうと接近したが、拒絶されてしまう。 しかし卓見の仕事の接待の店探しを助けた事で、少しずつ距離を縮めていく。

菅野 萌加 (かんの もか)

菅野翔子の娘。年齢は27歳。シングルマザーとして必死に育ててくれた母を、15歳の頃に事故によって亡くしている。何事にも冷めたサバサバした性格で、人とつるむ事が苦手。一方で性には奔放なタイプで、一夜限りの関係も後腐れなく持つ。昼間はパチンコ店のスタッフとして勤務しており、客から声をかけられる事も多い。夜はキャバクラ嬢として働いており、接客態度は「塩対応」にもかかわらず、不思議と人気がある。 アパートの廊下で一夜限りの相手をした男性を見送ったあとにはタバコを一服するのが習慣で、その場面を見ていた十真誠一郎に好意を寄せられた。最初は若く純粋そうな誠一郎を避けていたが、次第に自分にないものを持っていると感じ、心惹かれていく。

安達 三葵 (あだち みき)

OLとして一般企業に勤務している女性。年齢は30歳。愛想がなく、なにを考えているかわからないと、職場の女性陣からは避けられている。勤務先に保坂えんじがインターンとしてやって来ており、彼の教育係を務めている。自分を一人で育ててくれた三葵の父が知り合いの連帯保証人になり、ある日突然行方をくらませてしまう。そこで、自暴自棄になって居酒屋で酒を飲んでいた日に水野修と知り合う。 そのまま修と取り壊しが決まっているアパートで同棲し、身体の関係も持っているが、恋人同士ではない。本当は修に好きだと伝えたいが、今の関係が壊れる事が怖く、なにも言えずにいる。

大瀧 政宗 (おおたき まさむね)

ロックバンド「エンモア」のボーカルを担当する男性。年齢は20歳。小林菜の香とは中学2年生の頃に同じクラスで、当時から既に地元の仲間と組んでいた「エンモア」の歌詞を菜の香に依頼した。菜の香から恋心を寄せられていた事には気づいていたが、告白を避けて上京してしまう。現在は人気アーティストの仲間入りをしている。百瀬けいとの近所に住んでいるため、まるで弟のようにかわいがっている。

(さち)

小林菜の香と学生時代からの親友の女性。年齢は20歳。学校卒業後も地元に残っており、菜の香とは時折食事をする関係。中学生の頃の菜の香が大瀧政宗の依頼を受けてロックバンド「エンモア」の歌詞を作っていた事も知っている。菜の香が当時も今も大瀧に恋心を抱いている事も察しており、背中を押す。

三国 ふみと (みくに ふみと)

俳優を生業とする青年。若いながらも芸歴は19年のベテラン。日本アカデミー賞を最年少で受賞しており、芸能界では演技の天才と呼ばれている。整った顔立ちの美青年で、なにもしなくても三国ふみとの周りにはキラキラとしたオーラが見えるといわれるほど。プライベートではほとんど笑顔を見せず、ミステリアスな雰囲気を漂わせているが、実は天然な一面を持つ。 陣内和眞からの依頼を受けて接近して来た世良結花に対し、これまで同年代の友達がいないかった事から親しみを覚えている。三国茉奈美の兄。

陣内 和眞 (じんない かずま)

芸能プロダクションでマネージャー業をしている男性。現在は世良結花の担当を務めている。いじめに遭ってずぶ濡れで歩いていた結花に声をかけ、スカウトした。結花が期待に応えて頑張ってくれている事を嬉しく感じているが、恋愛対象ではない。次回の大河ドラマのキャストに結花を入れたいと考えており、話題づくりのために三国ふみとと接近するように依頼する。 一見仕事熱心で爽やかな人物に見えるが、実は腹黒く野心家の一面を持つ。

保坂 えんじ (ほさか えんじ)

地元の大学の理工学部に在籍する青年。三国茉奈美の幼なじみ。年齢は20歳。クールな性格の美男子で、愛想はないものの、茉奈美にだけは砕けた態度を見せる事もある。自分は同性愛者だと周囲にカミングアウトしており、実際に男性の恋人候補が数人いる。茉奈美に対してはずっと保護者兼親友のような立場で接する。安達三葵が勤務する企業でインターンとして働いており、三葵が教育係を任されている。

茉奈美の母 (まなみのはは)

三国茉奈美、三国ふみとの母親で、シングルマザー。年齢を感じさせない、まるで20代のような美貌と抜群のプロポーションで、男性関係が途絶える事がない。茉奈美が小学生時代には地方議員にまで手を出し、周囲から孤立するきっかけを作った。茉奈美からは軽蔑されている。人生において自身の恋愛が最優先事項であり、俳優として成功しているふみとに対してもあまり興味がない。

ゆきりん

三国茉奈美の元彼氏の男性。茉奈美からの執拗な束縛に嫌気が差し、別れを切り出した。その後も茉奈美から度々復縁を迫られているが、つれない態度を取っている。さらに茉奈美の母に目移りし、茉奈美を失望させた。

都木谷 周治 (ときや しゅうじ)

映画監督を務めている男性。明るくノリのいい性格で、若かりし頃に一度ヒット作を出したが、その後は鳴かず飛ばずでスポンサーもつかずにいる。再起をかけた作品を撮影するため、陣内和眞から紹介された純名早苗のもとを訪れる。最初は早苗から拒絶されていたものの、めげずに脚本を書いてほしいとアプローチを続けている。一度映画監督として認められた時に参加した華やかなパーティーが忘れられず、またパーティーを開催するのが夢。 私生活では適当さ故にバツ3だが、時折適当な自分をわざと演じている事を匂わす発言をする。

久野 茅羽 (くの ちう)

20歳の女性。高等学校には人間関係のトラブルでほとんど登校しておらず、それ以来なにもせずに、自宅のベランダに来る鳥の世話をして過ごしていた。しかしこの春、周囲とは2年遅れにはなるものの、勇気を出して地元の大学に通い始める。鳥の世話をしているところを百瀬けいとから見られているが、まったく気づいていない。また、久野茅羽を追って大学で清掃員をしているけいとの存在も知らない。 奥手な性格で、自分の気持ちを表現する事が苦手。けいとと文通を始めて少しずつ心を通じ合わせていくが、茅羽自身はけいとが何者か知らない。

(とおる)

地元の飲食店で料理人として働いている男性。年齢は28歳。小学生から高校時代まで吉永藍と同じ学校だった。学生時代は純名早苗に片思いをしていたが、なにも伝えられなかった。ずっと藍から好意を抱かれているが、まったく気づいていない。

根岸 小百合 (ねぎし さゆり)

吉永藍の実家近くにある、元赤線(公認で売春が行われていた地域)エリアに一人で住む高齢の女性。本人も戦後からしばらく娼婦として働いていた。赤線で働いていた多くの女性の姿はもうないが、根岸小百合だけは同じ場所に住み続け、今でも客を待っている。町の住民からは「サリー」と呼ばれ、まるで生きる都市伝説のような扱いを受けている。 藍からの接触に対しては最初は拒絶してたものの、藍が見知らぬ男性に車に拉致されそうになったところを助けた事件がきっかけとなり、次第に自分の生い立ちを語り始めた。幼い頃からとなりの家に住んでいた沢田継人を兄のように慕っていると同時に、恋心も抱いている。戦場から戻って来て身体が不自由になった継人の身の回りの世話をしているうちに、継人から自分の事を人間と思ってくれるなら身体の関係を持ってほしいと言われ、そのまま受け入れた。 継人が親戚に引き取られてからも、いつか継人が戻って来るのではないかと待ち続けている。継人とのあいだに子供が一人いるが、行方不明となっている。

沢田 継人 (さわだ つぐと)

根岸小百合が幼い頃から、となりに住んでいた男性。小百合にとっては兄のような存在であると同時に初恋の人でもあった。赤紙が届いて戦地に赴き、何とか命は助かったものの、全身焼け爛れて自由に歩けない状態であった。さらに家族も死亡しており、その容貌から近所の人からも疎まれていた。唯一自分の身の回りの世話をしてくれた小百合に対し、自分の事を人間と思ってくれるなら身体の関係を持ってほしいと懇願した。 小百合から本当に恋心を抱かれていた事を知らないまま、親戚に引き取られ、以降音信不通となった。小百合とのあいだに子供が一人いる。

能瀬 卓見 (のせ たくみ)

システムエンジニアの男性。年齢は23歳。姉の能瀬萌子といっしょに暮らしている。クールな性格の持ち主で、感情を表に出す事はない。思った事ははっきりと口にするタイプではあるものの、言い過ぎた際には素直に謝る事ができる。突然やって来てうるさく干渉して来る青山花乃に対しては、最初は早く出て行ってほしいと思っていたものの、仕事の接待の店探しをしている際に助けられた事もあり、少しずつ歩み寄り始める。

能瀬 萌子 (のせ もえこ)

社会人の女性。年齢は26歳。不規則な勤務体制で、突然長期の出張が入る事も多い。サバサバとした性格の持ち主で、早くに両親を亡くしたために家事能力も高い。以前は両親の遺した実家で一人暮らしをしていたが、最近弟の能瀬卓見と暮らし始めた。青山花乃とは学生時代からの親友で、公共料金の支払いを忘れた花乃を自宅にしばらく滞在させる事を了承したものの、能瀬萌子自身は出張のために1週間家を空けている。

十真 誠一郎 (じゅうま せいいちろう)

菅野萌加の住むアパート近くの金属工場に勤務している男性。年齢は18歳。周囲からは「ジューマ」と呼ばれている。萌加が身体の関係を持った男性を見送った朝、アパートの廊下でけだるそうに一服している姿を見て好意を抱く。これまで恋愛経験はほとんどなく、知り合って早々に萌加が身体の関係を持とうと誘惑した際にもきっぱり断った。

ミキコ

菅野萌加と同じパチンコ店のスタッフとして勤務している中年女性。ほかのスタッフとは距離を置いて接している萌加とも積極的に会話をしたり、手づくりのケーキを差し入れたりしている。夫とは死別しており、未亡人。

菅野 翔子 (かんの しょうこ)

菅野萌加の母親で、故人。女手一つで必死に萌加を育てていたものの、萌加が15歳の頃に事故死した。亡くなる前日に、萌加への同級生からのデートの誘いを勝手に承諾してしまった。これにより恋愛関係の話を親とするのを恥ずかしく感じていた萌加から一方的に罵られ、和解しないままこの世を去った。

水野 修 (みずの しゅう)

建設業で働く男性。年齢は26歳。日頃から母親を殴る父親が許せず、中学生の頃に母親を守るために殴り返し、そのまま警察で保護観察処分が下された過去がある。それ以来、基本的に誰ともかかわらずに生きてきたものの、田舎のために周囲から心ない噂をされており、肩身の狭い思いをしている。偶然立ち寄った居酒屋で、父親が失踪して落ち込む安達三葵と知り合い、取り壊しが決まっているアパートでいっしょに暮らそうと誘った。 三葵とは身体の関係を持っているが、恋人同士ではない。アパートが取り壊されたあとは田舎から出ようと考えている。

三葵の父 (みきのちち)

安達三葵の父親。出身は東京で、結婚をして妻の実家がある現在の場所に住んでいる。離婚したあとは三葵を引き取り、一人で育てた。東京に戻った方が楽に子育てができたものの、引っ越しをしたくないという三葵のために、三葵の母親の地元に残った。人のよさを利用され、知り合いの借金の連帯保証人になる。その後、知り合いが失踪したため多額の借金を背負い、三葵に迷惑をかけられないと、三葵の前から姿を消した。

集団・組織

エンモア

小林菜の香の同級生が結成したバンド。大瀧政宗がボーカルを務めている。中学時代から活動しており、当時は作詞センスが皆無だった大瀧の代わりに菜の香が作詞をしていたが、現在は自分達で作詞をしている。上京してすぐに売れ、今や人気ロックバンドの仲間入りを果たし、地元を訪れるほど熱狂的なファンも存在する。なお、かつて大瀧が住んでいたアパートの部屋には、現在は純名早苗が住んでいる。

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