あらすじ
第1巻
車での事故で死亡した滝川夫婦は、怨みの門の門番、イズコに、天国へ行って再生のための準備をするか、未成仏霊となり現世を彷徨うか、現世の人間を呪い殺すかという「魂の選択」を迫られる。12日間の猶予が与えられた夫婦は現世に降り立ち、息子の滝川裕太の様子を見に行く。しかし彼は母親の滝川春枝の過干渉から解放され、今まで抱えていた鬱屈を吐き出すかのように、ペットを殺して殺人にまで手を染めていた。彼の行為はもう止まらないとイズコに断言された夫婦は、息子を呪い殺す事を決めるが、どちらが息子を殺すかの決断ができない。そんな夫婦にイズコは、彼を救い出したいという思いがより強い方が呪い殺せると言い渡す。(第一死「ヒトソダテ」。ほか、3エピソード収録)
第2巻
前原歩は、飼い猫のモンジローが必死に止めるのも聞かずにキャットフードを買いに出かけ、暴漢に襲われて死亡してしまう。犯人への怨みをたぎらせた歩は、怨みの門の門番を務めるイズコと共に、自分のいなくなった世界に降り立つが、モンジローはそんな彼女に怨みを捨て、安らかに眠ってほしいと伝える。歩は自分を殺した犯人宅に向かうと、彼女を案じたモンジローが犯人に刺されてしまう。モンジローの深い慈愛を知った歩は、虫の息となったモンジローを犯人の部屋の前に置き、その成り行きを見守るのだった。(第五死「猫」。ほか、3エピソード収録)
第3巻
ホテルで焼死した人気漫画家の猫田イチゴは、怨みの門に辿りつく。そんな中、イチゴはマネージャーの浅井知が、自分の未完の作品を、新人漫画家を使って完成させようとしている事を知り、いてもたってもいられなくなる。描きたい気持ちがピークに達したイチゴに、イズコは、イチゴの大ファンで現在は息子を虐待した再婚相手を殺害して刑務所に入っている郷田良美のためだけに描いてはどうか、と話を持ちかける。手強い読者である良美を納得させようと、四苦八苦するイチゴだったが、なぜ彼女のために描こうとするのかというイズコの言葉で、我に返る。(第十二死「創造」。ほか、3エピソード収録)
第4巻
陽子と保坂直人は、一般の住宅を利用した児童養護施設で、長澤リョウら4兄妹を世話していた。ある日、直人がみんなを連れて外出した際、リョウが事故死してしまう。それを聞きつけたリョウ達の母親、長澤知美は子供を引き取りたいと、施設を訪ねて来る。しかし知美の愚劣な冗談に激怒した直人は、知美をフライパンで殴ってしまう。その頃、魂となったリョウはイズコと共に現世に降り立っており、残された姉妹の幸せのために放置された母親を呪い殺す事を選択。直人と陽子は結婚して罪を背負いながら、姉妹を育てる決意をする。そんなある日、知美の携帯電話から足がつき、直人は警察に捕まり、精神を病んだ陽子は入院する。一方、怨みの門の掟を破り、リョウを地獄に行かせないと決意したイズコは、天国にリョウを送るためにスカイトレインを用意する。(第十五死「スカイトレイン」。ほか、2エピソード収録)
登場人物・キャラクター
イズコ
怨みの門の門番を務めている女性。前髪が特徴的な黒髪ロングヘアにしている。現世で堕胎された魂であり、不慮の事故や殺人などで悲運の死を遂げた魂によりよい「魂の選択」をさせるべく導き、見送る役割を担う。魂が幼過ぎる場合は、怨みの門をくぐるために魂を育てる事もある。具体的には幼い魂を自分の中に入れ、言葉と肉体を与えて魂のヒダを創り、「魂の選択」ができるように現世を12日間旅する。 また若くして亡くなり、悲運にも怨みの門に到達できない魂には、温情をかける優しい一面もある。憎しみと怨みの連鎖を断ち切るには、慈愛による救いの連鎖しかないとの強い気持ちがある。ラストでは残された姉妹のために自分の母親を呪い殺した長澤リョウを、地獄に送らず再生させるなど、自分が地獄へ堕ちる事も厭わない。
門主 (もんぬし)
怨みの門の門主を務めており、平べったいカエルの姿をしている。イズコに代わり、門番の仕事をする際には、白っぽいロングヘアの女性の姿に変身する。門番が死者の「魂の選択」に私情を挟めば、門番を地獄に堕とす権限を持つ。残された姉妹のために自分の母親を呪い殺した長澤リョウを再生させたイズコの行為を許すなど、寛容な一面がある。
滝川 裕太 (ゆうた)
滝川春枝と滝川の息子。少し長めの髪をセンター分けにした男子。年齢は17歳。春枝の過干渉のせいで、夢の中で人を殺して精神のバランスを保っていた。両親が車で事故死した事で精神が解放され、まず飼い犬を風呂で溺死させたのち、ホームレスを殺害した。殺す事に快感を覚えるシリアルキラーと化す。
滝川 春枝 (たきがわ はるえ)
自身の運転で、夫と共に事故死した専業主婦。滝川の妻で、滝川裕太の母親。ショートヘアで細身の中年女性。裕太を心配するあまりすべての事に介入し、失敗する事も考えるヒマも与えないという子育てをしていた。自身の死後に、それが原因で、息子が人を殺す事に快感を覚えるシリアルキラーとなってしまった事を知る。
滝川 (たきがわ)
妻の運転で事故死したサラリーマン。髪をオールバックにした中年の男性。滝川春枝の夫で、滝川裕太の父親。超がつくほどのまじめ人間で、才能がない男は人一倍働くしかないと、子育てはすべて妻任せにして来た。自身の死後に、子育てを妻任せにしていた責任を感じた矢先、息子が人を殺す事に快感を覚えるシリアルキラーとなってしまった事を知る。
初老の男性 (しょろうのだんせい)
高速バス転落事故で亡くなった初老の男性。髪がかなり禿げあがり、口髭を生やしている。42年前に妻に先立たれたために、孤独な生活を送っている。人の温もりを感じたい時には、深夜バスに乗る事にしている。天使のような幼い姉妹を殺害した運転手がどうしても許せず、怨みの門で「魂の選択」をするまでの猶予期間中、彼女達が救われる方法を模索する。
ヤクザの男性 (やくざのだんせい)
高速バス転落事故で亡くなった男性。口髭と顎髭を生やした強面で、髪をオールバックにしている。3年の刑期を終え、出所した時には自分の居場所はなく、地元に帰ってやり直そうとしていたところで事故に遭う。当初は悪ぶっていたが、内面は思慮深く、初老の男性に感化されて、幼い姉妹の助けになる方法を自分なりに模索する。
幼い姉妹 (おさないしまい)
高速バス転落事故で亡くなった幼い姉妹。名前は綾香と百香。クリスマス前に流星群を見ようと、両親に連れられて深夜の高速バスに乗っていた。怨みの門の門番、イズコから、自分達はお星様になったので少しのあいだ、門の向こうの部屋でパパとママが来るのを待つようにと言い聞かされ、幼心にその意味を理解する。
運転手 (うんてんしゅ)
高速バス転落事故を起こした運転手の中年男性。剃り込みが深い短髪で、眉毛が濃く唇が厚い。以前に飲酒運転で免許取り消しになった過去があり、事故を起こした日も飲酒していたが、警察には飲んでいないと噓をついている。亡くなった犠牲者については、何の責任も感じておらず、ある意味自分も被害者だとうそぶく。
金坂 大樹
千堂タケルとの世界戦を前に、川田正晴との試合中の事故で亡くなったボクサーの男性。目つきが鋭く、髪をオールバックにしている。母子家庭で育ち、母親はボクシングジムの会長の愛人。会長が自分達に頭を下げるところが見たいという思いから、チャンピオンを目指している。ボクシングにすべてを賭けて来たため自分の死が受け入れられず、3分間だけ、タケルとの練習試合を行う正晴の身体の中に入る事をイズコに許される。
川田 正晴 (かわだ まさはる)
金坂大樹との試合で、大樹を死なせてしまったボクサーの若い男性。頭を丸く刈った、田舎臭さが抜けきらない風貌をしている。以前は、千堂タケルのスパーリングパートナーを務めていた。謝罪するために大樹の母親が経営するスナックに顔を見せるが、「アンタが負けるとウチの子がうかばれない」と言われ、母親から大樹のライセンスを受け取り、タケルを倒す事を誓う。
千堂 タケル (せんどう たける)
現ボクシングチャンピオンの男性。金坂大樹には以前敗戦を喫している。もみ上げを長く、前髪を少し垂らしたリーゼントヘアにしている。気がつくと同じ漫画誌が3冊部屋にある事があり、頭がイカれているのではないかと自嘲しているが、一方で相手をなめきった態度をよく取る。
小林 満知子 (こばやし まちこ)
小学生の頃に、友達三人と林で遊んでいて行方不明になった少女。20年の時を経て、骨が見つかった事で怨みの門を訪れた。当時、いっしょに遊んでいたアツヤに思いを寄せており、あるモノを渡そうと苦手な林での遊びに付き合っていた。しかしアツヤ達とはぐれてしまい、穴に落ちて死亡する。魂が幼いため、現状をなかなか理解できず、イズコの取り計らいにより、アツヤの息子、カヅキと交流を持つ事になる。
アツヤ
小林満知子の友達の男の子。満知子が自分に思いを寄せている事を知っていたが、そっけない態度を取るのを楽しんでいた。自分に渡すモノがあるので、苦手な林での遊びに満知子が付き合っていた事も知っているが、満知子がいなくなったにもかかわらず探しもせずに帰ってしまう。現在は結婚しており、カヅキという息子がいる。
カヅキ
アツヤの息子で、既に亡くなっている小林満知子の姿を見る事ができる。満知子が時間を取り戻せるように、イズコが二人が交流できるよう取り計らった。短髪で父親にそっくりの顔立ちをしている。満知子が父親のアツヤの友達で、既に死んでいる事も受け入れ、いっしょに遊ぶ仲となる。満知子がもうすぐ消えてしまうと知り、彼女が父親に渡そうとしたプレゼントを掘り起こしに向かう。
前原 歩 (まえはら あゆみ)
バイクに乗った暴漢に刺されて亡くなった若い女性。モンジローという猫をかわいがっていた。唇がポッテリしており、シャギーの入ったロングヘアにしている。自分の生活を奪った犯人への復讐心に燃え、イズコと共に自分のいなくなった世界を見に行く。しかし自分を案じるモンジローの深い思いを知り、犯人への怨念を鎮める。
モンジロー
前原歩の飼い猫。歩の死を予感しており、キャットフードを買いに行こうとした歩を必死で止めようとした。歩の死後は彼女が犯人を呪い殺さないように心配し、歩が安らかに眠ってくれるよう尽力する。どうしても犯人の顔を見ないと気が済まないという歩を案じるが、犯人に包丁で刺されて重傷を負う。その後、必ず歩のもとへ生まれ変わる事と、自身の亡骸を犯人の自宅前に置く事を、歩への伝言としてイズコに託す。
久米島 かの子 (くめじま かのこ)
人の過去や未来、未成仏霊など色々なモノが見える霊能者の中年女性。その能力を使って16年間、人の相談に乗る仕事を続けているが、死者より生者が一番怖いと思っている。また、こんな力を持った人間の人生は悲劇だというネガティブな思いを抱えている。怨みの門をたびたび訪れ、ここは生者の来るところではないとイズコにたしなめられているが、密かに自分の死を予感している。 姉の息子の篠崎秀喜がバイクで倒れている夢を見てしまい、その場所に向かうが、秀喜のバイクで轢き殺されてしまう。怨みの門では、現世に残って秀喜と共に未成仏霊達を救うという選択をする。
篠崎 秀喜
久米島かの子の姉の息子。バイク便のアルバイトをしている。好きな女の子がいるので、かの子の霊能力で相性を視てもらおうとした。その際にバイクで倒れた篠崎秀喜の姿が見えた事で、かの子にはアルバイトを辞めるよう言われる。結局、バイクでかの子を轢いてしまい、秀喜自身は重傷を負って失明。イズコにより「力」を与えられ、死んだかの子の声が聞こえるようになる。
神原 優菜 (かんばら ゆうな)
男に逃げられた母親に刺殺された幼児。魂が幼過ぎるため、イズコの中に入り、現世で12日間の体験を経て、「魂の選択」をする事になる。スーパーで知り合った中年女性の世話になり、自分の母親がいる警察へ毎日通い詰めている。そんな中、中年女性から「私がママになる」と言われた事により、再生への道を選ぶ。
中年女性 (ちゅうねんじょせい)
スーパーで働く中年の女性。パーマをかけたショートヘアにしている。子供が独立し、現在は一人暮らし。母性が強く、スーパーに来ていた風変りな少女の神原優菜を放っておけず、家に連れて帰る。ニュースで幼児刺殺事件の被害者が優菜と同じ名前である事から、優菜を連れて彼女の母親がいる警察署に面会に行くが、結局会わせない方がいいという結論に達する。 いっしょに生活する中で優菜に愛情を感じるようになり、自分がママになると申し出る。
中村 純一 (なかむら じゅんいち)
松原を殺そうとして、逆に船から海に落とされて亡くなった少年。年齢は16歳。あずさに惚れている。あずさが身体を売って松原からの借金を返していると聞き、彼女を自由にさせてあげたいという大義名分で、松原を殺害しようとした。だが、あずさと松原のセックスを覗き見し、いつもと違うあずさを知り、男としての嫉妬を覚えたというのが本心。 イズコの計らいで、松原の身体に入ってあずさを抱いたあと、「魂の選択」をする事になる。
あずさ
自宅の1階でスナックを営んでいる女性。2階で男性客を相手に売春している。つねに暴力を振るう旦那を殺害したところを、松原に助けられたという過去があり、松原が用立ててくれた金を、身体を売って返している。中村純一に好意を持たれており、松原にも求婚されている。はかなげで弱々しく見えるが、凛とした強い一面を隠し持っている。
松原 (まつばら)
漁師の男性。短髪で目付きが鋭く、眉毛が細い。あずさのスナックで飲んだあと、2階でセックスする事をつねとしている。実は、あずさが旦那を殺害する現場を目撃して後始末を手伝い、当面の金を用立てた経緯がある。あずさには本気で惚れており、自分といっしょになろうと言い続けている。自分を殺そうとした中村純一を船からつき落とし、殺害する。
加賀見 武治 (かがみ たけはる)
宿敵の本城のもとに一人で乗り込み、殺害されたヤクザの若い男性。オールバックの髪型で、目付きが悪く、唇が分厚い。跳ねっ返りの向こう見ずな性格で、いつもギラギラしたモノを探し求めている。人を呪い殺す権利を放棄するなら、12日間だけ肉体を与えるとイズコに提案され、16歳の姿で本城の組に入る事になる。
本城 (ほんじょう)
加賀見武治と敵対するヤクザの男性。オールバックの髪型をしている。武治のオヤジに武治が組に乗り込む事を事前に聞いていたため、難なく彼を捕えて殺害。のちに、現世に12日間限定で戻って来た16歳の武治に命を狙われる。
沢野 みずき (さわの みずき)
自宅の風呂で溺死した女性。ゆるいウェーブのかかったロングヘアで、美しいモノを愛する極度の潔癖症。お酒と清潔な身体以外に重要なモノはないという考え方の持ち主。少女の頃に公園で不審者に乱暴されてから、すべてのモノが受け入れられなくなり、恐怖と戦いながらも自宅でパソコンを使ってお金を稼いで来た。死後、溺死体となった自分の姿を見て、美しく死にたいと強く望み、イズコから無人島でもう一度生きて死ぬ権利を与えられる。
マナブ
マナブの父の息子。富士の樹海で亡くなった。母親の晴江とは血がつながっておらず、父親を慕っている。坊主頭の利発そうな男の子。宗教にのめり込んでいる両親に連れられ、修行のために樹海に入るが、晴江に睡眠薬を飲まされ、地震による山崩れで行方不明となった。9年振りに若い女性に発見された事で、父親と共に怨みの門を訪れる。 義母を呪い殺そうと考えるが、樹海で迷って瀕死状態になった若い女性を自分の魂で救済する道を選ぶ。
マナブの父 (まなぶのちち)
富士の樹海で亡くなった中年男性。マナブの父親で、晴江の夫。頭が薄い貧相な男性で、宗教にのめり込んでおり、富士山の力を借りれば生まれ変われると本気で信じている。樹海での修行中、保険金目当ての晴江に睡眠薬を飲まされ、地震による山崩れで行方不明となった。9年振りに若い女性に発見された事で、息子と共に怨みの門を訪れる。
晴江 (はるえ)
マナブの父の妻で、マナブの義母。富士の樹海での宗教の修行中、保険金目当てで夫と息子に睡眠薬を飲ませる。しかし地震により二人が山崩れで埋まってしまったため、保険金が受け取れずにいる。のちに宗教を立ち上げ、その教祖となって金銭的に潤うが、宗教自体はまったく信じていない。死体を見つけに樹海に入った際、骨を発見した若い女性を殺害しようとして、岩場から落下して死亡する。
若い女性 (わかいじょせい)
人生に絶望して自殺するために、富士の樹海にやって来た若い女性。おかっぱ頭で、おとなしい雰囲気を漂わせている。洞穴でマナブの父とマナブの骨を見つけた事で、晴江に襲われて逃げ切るが、樹海から出られず瀕死の状態となる。本心では生きたい気持ちがあり、それを察知したマナブによって救済される。
猫田 イチゴ (ねこた いちご)
火事で焼死した人気漫画家の女性。長い髪を低い位置でポニーテールにしている。年齢は32歳。仕事先のホテルで、ほかの宿泊客のタバコの不始末が原因で焼死した。人気絶大の「ホライズン」という漫画が未完で、マネージャーの浅井知が、新人漫画家を使って完成させようとしている事を知り、いてもたってもいられなくなる。漫画を書きたい気持ちが頂点に達し、イズコから自分の大ファンである郷田良美のためだけに描いてみないかと提案される。
浅井 知 (あさい とも)
人気漫画家の猫田イチゴのマネージャーを務める女性。幸薄い顔立ちで、肩にかかる長さのシャギーヘアにしている。イチゴの遺作となった漫画「ホライズン」を未完で終わらせたくない気持ちが強く、編集長と協力して新人漫画家を使って、作品を完成させようとしている。
郷田 良美 (ごうだ よしみ)
息子を虐待した再婚相手を殺害した女性。年齢は34歳。前髪が目にかかりそうな長さのボサボサのショートヘアで、暗い表情をしている。毎週欠かさず猫田イチゴ作品の感想を手紙にして送るほどのイチゴファン。人生唯一の楽しみだったイチゴの作品が読めなくなった事に動揺している。イチゴの思考回路や、話を創る時のクセを知り尽くしている。
藤崎 純 (ふじさき じゅん)
自分が売った屋敷の怨霊にかかわった事で、命を落とした不動産会社の社員。シャギーの入ったショートヘアのボーイッシュな女性で、イズコから自分が売った屋敷のもともとの持ち主、設楽になにが起こったかを聞かされ、怨霊の住む屋敷を購入した山岡一家を救おうと尽力する。
山岡 (やまおか)
藤崎純の最初の客で、怨霊の住む屋敷を購入した家族。若い夫婦で、化学物質過敏症の娘、留美のために古い屋敷を購入した。屋敷の元の持ち主である設楽の怨霊に命を狙われている。
設楽 (したら)
藤崎純がセールスした、山岡一家が住む事になった屋敷のもともとの持ち主である夫婦。夫婦の夢がすべてつまった屋敷で幸せな生活を始めるが、妻が治療法のない難病に罹ってしまい、夫は看病にかかりきりになり、事業は破綻。妻は日に日に体調が悪化し、歩けないほどの激痛と戦う日々を送っていた。自分達の思い出が詰まった地下の部屋を、扉ごと埋めて壁にしてほしいという条件で屋敷を売った。 実はその部屋は夫が妻を殺した部屋で、妻の怨念により、この屋敷にかかわった人間は全員亡くなっている。
田坂 美代子 (たさか みよこ)
14か月前に突然行方不明になった女子高校生。新浦明夫に車ではねられ、気を失って車に乗せられるが、明夫が事故を起こした事で崖から落ちて亡くなった。身体はまだ発見されていないが、イズコが温情をかけ、門主の許しを得て、怨みの門に辿りつけなくとも再生される事となる。現世への別れを告げるため、TV番組の電波を利用して犯人を告発し、両親への感謝を述べた。
新浦 明夫 (にうら あきお)
盗んだ車で事故を起こして死亡した男性。ツーブロックの髪型で、顎がしゃくれている。誘拐する目的で、田坂美代子を車ではねたあとに山で事故を起こす。行方不明者を探すTV番組で美代子を捜索した際、骨が発見され、怨みの門を訪れる。
陽子 (ようこ)
児童指導員を務める若い女性。裾の髪を伸ばしたマッシュルームの髪型をしている。一般の住宅を利用した児童養護施設で、保坂直人と24時間ローテーションで長澤リョウら四人兄妹を世話している。重労働で給料も安いが、この子達を置いていったら逃げた母親と同じダメ人間になってしまうと考えている。リョウの死後、直人がフライパンで殴った長澤知美を放置したため、自分達が死なせたと思い込んでいる。 残された姉妹達を育てる事で、罪を償っていこうと直人と結婚した。しかし知美の携帯電話から足がつき、直人が刑務所に入ると同時に精神を病んでしまう。
保坂 直人
児童指導員を務める若い男性。前髪を下した短髪で、メガネをかけている。一般の住宅を利用した児童養護施設で、陽子と24時間ローテーションで四人きょうだいを世話している。長澤リョウの死後、訪ねて来た長澤知美をフライパンで殴って殺害して埋めた。罪を償うため、陽子と結婚して姉妹の親になる道を選んだが、知美の携帯電話から足がつき、刑務所に入る事となる。 みんなから「ナオくん」と呼ばれている。
長澤 リョウ (ながさわ りょう)
一般の住宅を利用した児童養護施設にいる四人兄妹の一番上の男の子。年齢は5歳。保坂直人が居眠りしているあいだに、車の事故で死亡した。長澤知美の長男で、長女はリマ、次女はアミ、三女はルイ。母親の飲酒と暴力で施設に入った経緯がある。自分の置かれた辛い状況を理解しながら、明るく振る舞っており、妹達の面倒をよく見ていた。 死後、イズコに連れられ、みんなの様子を見に行き、直人と陽子が殺人で地獄へ行くのを防ぎ、また姉妹達が辛い思いをしないように、放置されていた母親を呪い殺した。姉妹を思う慈愛の心がイズコの胸を打ち、地獄へ行く事なく再生の道を用意される。
長澤 知美 (ながさわ ともみ)
長澤リョウら四人兄妹の母親。マッシュルームヘアの太った女性。生活苦で、酒を飲んでは子供達に暴力を振るっていたため、子供達は施設に入る事になった。リョウが亡くなったと聞き、残された姉妹を引き取るつもりで陽子達に会いにやって来る。しかし、酒を飲んで下品で愚劣な冗談を連発したため、保坂直人にフライパンで殴られる。 その後は放置され、現世に降り立ったリョウにより呪い殺された。
場所
怨みの門 (うらみのもん)
不慮の事故や、殺人で悲運の死を遂げた人達が訪れる門。死者は門番、イズコにより、天国へ行って再生のための準備をする、未成仏霊となって現世を彷徨う、現世の人間を一人呪い殺すという「魂の選択」を迫られる。呪い殺すを選んだ場合、魂は地獄に堕ちて再生のない苦痛を味わう。魂の選択をする猶予は12日間で、そのあいだにイズコは死者がよりよい選択ができるよう誘導する。 死者は現世に降り立ち、自分の死後をイズコと共に見たりするが、イズコの権限で、自分の願望を聞き入れられる場合も多々ある。魂の選択をさせるのが門番の仕事であり、掟を破って情を挟めば門番といえども地獄へ堕ちる決まりとなっている。門主はカエルの姿をしており、イズコが死者の魂の選択に私情を挟んだ場合は、イズコを地獄に堕とす権限がある。 ちなみに、死体が誰かに発見された場合にのみ、死者は怨みの門を訪れる事ができる。
前作
続編
スカイハイIV<FOUR> (すかいはいふぉー)
高橋ツトムの代表作「スカイハイ」シリーズの第4作。1話完結形式で描かれた短編連作。舞台は現代の日本。殺人や不慮の事故で亡くなった人の魂がたどり着く怨みの門から始まる物語。死者を導き、魂のゆくえを見届け... 関連ページ:スカイハイIV<FOUR>
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