恋に敗れた二人が「真実の愛」を探す物語
ある春の夜のこと。「いずれ結婚して子どもを持つ」と何となく思っている32歳のマリは、同棲相手に別れを告げられる。一方、同じく32歳の翠も、仕事で出会った男性をホテルに誘うが、相手は逃げるように去ってしまう。春の宵に路頭に迷った二人は、実は高校の同級生で、あるギャラリーで久しぶりの再会を果たす。同棲していたマンションを追い出され行き場をなくしたマリは、しばらく翠のマンションに泊まることになった。本作は、同時期に恋に敗れた二人が、「真実の愛」を探し求める物語。「女ふたり暮らし」を通じて、恋愛や人生観、友情など、アラサー女性の心情をリアルに描いている。
対照的な女性二人の同居生活
マリは、自分の興味のある話しか聞かず、気が変わりやすい自由奔放な性格で、明るく素直で物事を深く考えないのが特徴。美人で男性にモテることもあり、まずは付き合ってから考えるという方針で次々と恋愛に向かっていく。翠はマリとは逆で、真面目なしっかり者だが、容姿のコンプレックスから自分に自信がもてない。翠にとって恋愛とは拒絶の連続であり、告白してもフラれ、まれに付き合ってもフラれ、ワンナイトも断られる。そんな二人は、同居生活をすることで次第に理解し合い友情を深めていく。本作は、対照的な二人の姿を通じ、女性ならではの「あるある」や「生きにくさ」をコミカルに、そして時にはシリアスに描いていく。
本作の製作経緯
本作は、初連載作『まじめな会社員』に次ぐ、冬野梅子の2作目の連載作品である。集英社のオンラインメディア「yoi」掲載の作者インタビュー(2024年11月13日)によれば 、前作は主人公の頭の中を追う話で画面に変化が少なかったため、本作は絶対に、会話が生まれる女性の二人暮らしを描こうと考えたという。さらに「長いスパンで描けそう」という理由で「真実の愛はあるのか?」というテーマを設定した。また、第三者の目線が設定されており、主人公たちにツッコミを入れたり解説したりするナレーションが、効果的に使用されている点も本作の魅力である。なお、『スルーロマンス』というタイトルには、ロマンスを無視する(スルー)という意味と、「そもそも私たちはロマンスのような夢見がちで楽しげなものを本当に求めているのか?」という疑問を込めたものだという。
登場人物・キャラクター
待宵 マリ (まちよい まり)
32歳の女性。翠とは高校時代の同級生でともに弓道部に所属していた。少し前まで役者をしていたが、コロナ禍を機に仕事が減り、潮時だと考えて、フリーターになった。2年交際し同棲までしていた彼にフラれて行き場をなくし、翠のマンションに転がり込む。自由奔放、本能で生きるタイプで、次々と恋愛に走る。
菅野 翠 (かんの みどり)
32歳の女性。フードライター兼フードコーディネーター。マリとは高校時代の同級生でともに弓道部に所属していた。真面目なしっかり者だが、太めの容姿にコンプレックスを抱いており、考えすぎる性格も災いして恋愛は苦手。そのため、恋愛や結婚は諦めて自立した人生を送ることも視野に入れている。
書誌情報
スルーロマンス 5巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2023-07-12発行、978-4065323625)
第2巻
(2023-10-11発行、978-4065332986)
第3巻
(2024-01-10発行、978-4065343234)
第4巻
(2024-05-08発行、978-4065354650)
第5巻
(2024-08-09発行、978-4065365892)







