「納税」にスポットを当てたヒューマンドラマ
本作は、税金および納税をテーマにしている。税金は、人々を幸せにするために使われなければならないという前提があるが、本作には不当な手段を使って「払わない」のではなく、さまざまな事情によって「払えない」滞納者が多く登場する。そういった税金に苦しむ人々たちが、できるだけ無理のない範囲で納税できるよう、百目鬼華子や饗庭蒼一郎をはじめ「納税課第三収納係」の職員たちが、その知識や経験を活かして具体的なアドバイスを送るという展開が主軸となっている。
人間味あふれる「納税課第三収納係」の職員と関係者たち
幸野市役所納税課第三収納係は、公平に税金を徴収する部署である。主人公の百目鬼華子や饗庭蒼一郎のほか、華子と親しい先輩の増野や、その相棒の原田など、個性豊かな職員が所属している。彼らは職務を全うするだけでなく、納税者に親身に接していることから、広く住民に慕われている。また、物語の中盤以降は幸野市の副市長で、華子の実兄である相楽義実が納税課にかかわってくる。彼は華子と確執があるうえ、旧友である饗庭を連れ戻したいと考えているため、当初は納税課第三収納係と険悪な関係となる。しかし、あることをきっかけに次第に打ち解け、やがて心強い味方となる。
納税滞納者が抱える、それぞれの苦悩
会社の経営悪化や、仕事と子育ての板挟みによる家庭不和など、さまざまな事情から納税が困難な状態になっている人々が登場し、税金納付を徴収する側と徴収される側それぞれの視点から描かれる。例えば、生真面目で心優しい性格の社長、福田は、責任感の強さゆえにストレスに押しつぶされる形で自殺を試みるが、偶然駆け付けた百目鬼華子や饗庭蒼一郎に命を救われ、彼らに税金のアドバイスを受けたことで再起する。こういった滞納者の「お金と心」に真摯に寄り添う幸野市役所「納税課第三収納係」の職員の姿も、本作の見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
百目鬼 華子 (どうめき はなこ)
幸野市役所「納税課第三収納係」に勤務する新人女性。茶髪をロングヘアにしている。先輩の饗庭蒼一郎から「新人ちゃん」と呼ばれている。お淑(しと)やかな美女で、ふだんはクールに振る舞っているが、客の前で暴言を吐いたり、机にペンを突き立てたりと、意外な行動を見せることもある。しかし、その内には熱い心を秘めており、機械的に納税を処理しようとするのではなく、住民たちの問題に寄り添いながら適切なアドバイスを送っている。そのため、同僚や納税した住民からの信頼は厚く、百目鬼華子自身も周囲からの信頼がモチベーションを高めるための大きな要素となっている。納税者たちに親身に接するのは、税金が住民のために使われる以上、税金を徴収する住民を支える必要があるという信念によるものである。また、幼少期に母親が納税のトラブルに巻き込まれたことも影響しており、このトラウマが仕事に悪影響を及ぼすこともある。決め台詞(ぜりふ)は「公務員なめないでくださいね」。
饗庭 蒼一郎 (あいば そういちろう)
幸野市役所「納税課第三収納係」に勤務する青年。眼鏡をかけている。ふだんはひょうひょうとした陽気な性格ながら、高い知識とスキルを持っており、誰に対しても人懐っこく接する。かつて財務省に勤務しており、現幸野市の副市長を務める相楽義実とは同僚の間柄だった。しかし、後輩の沖矢が心労から退職したことで心を痛め、饗庭蒼一郎自身も財務省を辞職する。その後、幸野市役所に勤務し、粛々と業務に励んでいた。そんな中、第三収納係に配属された新人の百目鬼華子の面倒を見ることになり、危なっかしいながらも真摯に仕事に取り組む華子に信頼を寄せるようになる。
書誌情報
ゼイチョー! ~納税課第三収納係~ 4巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2016-06-13発行、 978-4063774771)
第2巻
(2016-09-13発行、 978-4063930283)
第3巻
(2017-01-13発行、 978-4063931174)
第4巻
(2017-05-12発行、 978-4063931921)