概要・あらすじ
西南戦争に参加するも敗れ、アメリカへ落ち延びた元肥後士族・伊藤伊衛朗(イエロー)は、ある日旅芸人としてやってきた白髪のインディアン・レッドと出会う。飄々として掴みどころのない性格をしたレッドは、第七騎兵隊ブルー小隊に虐殺されたウィシャ族の生き残りで、復讐の為に旅を続けていた。
レッドの復讐に手を貸して過去のトラウマを払拭したイエローは、もう一度武士らしく生きる道を彼との旅に求め後を追う。またイエローと同じ町に住んでいた娼婦・アンジーもレッドに興味を持ち、後を追いかけるように町を飛び出した。そんな一行の前にレッドの正体を知る巡回牧師のグレイが現れ、レッドに巨大なリボルバー・ヘイトソングを授ける。
強力な武器を手に入れたレッドは狂喜し、復讐の成功を確信する。それから半年、レッド達はそれぞれ別々にブルー小隊の情報を集め、復讐の機を狙っていた。レッドは元ブルー小隊のエドワード・ゴールドスミスを宿敵・ブルー探しに利用する駒として拉致。
伊衛朗とアンジーはそれぞれ元ブルー小隊の隊員を探していた。一方ニューヨークに住む少女・スカーレットは、ある日学校をブルーの部下に襲撃されてしまい、難を逃れるため流浪の旅を始める。旅の最中、彼女は自分がウィシャ族の生き残りであることを知り、もう一人の生き残りであるレッドの捜索を始めるのだった。
登場人物・キャラクター
レッド
赤銅色の肌に白髪、長身の青年。第七騎兵隊ブルー小隊によりホワイトリバーで虐殺されたウィシャ族の生き残り。虐殺前にウィシャの族長の座を引き継いでいる。部族を虐殺したブルー及びその部下たちに並々ならぬ憎悪を抱き、復讐の旅をしている。初登場時は巨大なトマホークとナイフを武器としていたが、途中から巡回牧師・グレイに渡された巨大なのリボルバー・ヘイトソングを愛用する。 普段は飄々として掴みどころのない性格だが、復讐のこととなると人格が変わり冷酷非情になる。幼い時はティヨーレと名乗っていたが、ホワイトリバーの虐殺後は名前を相棒の狼に与えてしまっている。レッドという名前は生き延びた後彼を迎え入れたアパッチ族の酋長・シルバーリングから貰ったもの。 夕焼けの時間に紅く染まったホワイトリバーから来たことに由来する。幼少期の親友、オセオラのみを友と考えていたが、イエローと出会い、次第に彼のことも友と認めていくようになる。
スカーレット
天真爛漫で慈愛に満ちたインディアンの少女。周囲の人たちと共に平和な日常を送っていた。実はホワイトリバーの虐殺時に産まれ、第七騎兵隊に随伴していたインディアン管理局のクリスチャン・スタージェスに拾われたウィシャ族の生き残り。その出自故にブルーから狙われ、通っていた学校に襲撃を掛けられてしまう。 グレイによって救出された後は難を逃れるため、流浪の旅に出発する。旅の途中でスー族の一部族マザスカと出会い、そこの酋長・シルバーリングから自らがウィシャであること、一度自分を助けてくれたレッドも同じウィシャであることを教えられ、彼を探すことを目的とした。
伊藤 伊衛朗 (いとう いえろう)
西南戦争に参加して敗北、その後村崎十字朗の手引きによりアメリカへと逃げ延びた元肥後士族。祖父から受け継いだ6フィートを超える先込式火縄銃・狭間筒を武器とし、精密な射撃を得意とする。また、剣術は苦手ながら柔術に長けている。西南戦争敗北の折に仲間が自刃していく中で生き延びてしまったことがトラウマとなっており、死に場所を求めつつも、死への恐怖が人一倍強くなってしまった。 レッドと出会い彼を助けるために保安官・バーンズを撃ちトラウマを払拭、もう一度武士らしく生きる道をレッドとの旅に求めて同行するようになる。情に厚い性格で、復讐のみを求めるレッドと対立することもある。途中、戦闘にて片目の視力を失い、更には反動の大きい狭間筒を使い続けることで残った目の視力も次第に悪くなっていく。
アンジー
美人で気風の良い娼婦。幼いころ家を飛び出し、修道院に一時身を寄せていた。その時町の住民から殺害の対象となっていたショーニー族のインディアン、ウィーピング・オウルと知り合い交流を深める。やがて、白人から迫害の対象となるオウルと共に放浪の旅に出立、旅芸人の一員に加わり花形となる。 しかし、ある時オウルは無実の罪を着せられ殺害されてしまい、それをきっかけに、誰の世話にもかからないように娼婦となる。10年後、旅芸人として町に訪れたレッドに興味を抱き、後を追いかける。天才的なギャンブルの腕前を持ち、行く先々で荒稼ぎをしている。また、拳銃の腕も一流。
エドワード・ゴールドスミス (えどわーどごーるどすみす)
白ひげを蓄え、右目を眼帯をしている。アメリカ軍に所属し、登場時の階級は大佐。過去に第七騎兵隊ブルー小隊に所属し、ホワイトリバーの虐殺にも居合わせていた。その際、虐殺を繰り返す仲間に恐怖を抱き、ブルーにもう見たくないと虐殺の停止を提言したところ、「これなら見なくてすむ」と右目を抉られてしまう。 以来、ブルーのことを嫌い憎んでいる。その後ホワイトリバーの虐殺を軍本部に暴露し、ブルー小隊解散のきっかけを作った。本人は軍隊に留まり、白人とインディアンとの共存を目指している。ある日レッドにより拉致され、ブルーを探すための駒として利用される。自分も第七騎兵隊に所属していた身であり、レッドの復讐の対象であることを知りながらも、贖罪の為、またブルーを倒すために進んで彼に協力している。
グレイ
酒と煙草を嗜み、アンジーを娼婦として買ったこともあるなど、聖職者らしかぬ破天荒な巡回牧師。アメリカ南部ジョージア州出身。幼い頃に勇敢な男だと証明するために北軍の脱走兵から銃を奪い射殺。しかし、その兵士は実父カーチスであり、逆上した母親により撃たれ心に深い傷を負う。 その後巡回牧師として諸国をめぐっていた。大統領・グローバー・クリーブランドに拾われ、陸軍とブルーの密約を調査するエージェントとして活動するようになる。レッド達の行く先に現れては、情報を与えている。また、スカーレットとも顔馴染みであり、「おじさま」と呼ばれ慕われている。二丁拳銃の使い手で、パーカッション式シングルアクションリボルバー「レミントン M1858」を愛用している。
ブルー
元アメリカ軍第七騎兵隊ブルー小隊を率いてた大尉。ホワイトリバーの虐殺を指示し、ウィシャの抹殺を試みた元凶。孤児としてニューヨークで育ち、ある時町を離れ荒野を放浪していたところウィシャに拾われ、やがて彼らの一員として生活するようになる。その際、青い瞳を持つことからブルーという名前を与えられる。 暖かな暮らしの中で、この幸せを失ったら深い悲しみに襲われるだろうと思うようになるも、ある日家族が北軍兵により殺されてしまった時に涙すら流さなかった自分に絶望。より深い悲しみを求め行動するようになった。ホワイトリバーの虐殺を引き起こしたのも、家族であるウィシャを滅ぼせば悲しめるかもしれないという考えに基づいていた。 最後のウィシャとなったレッドとスカーレットと友人になり、殺すことを考えている。高いカリスマ性を持ち、血を好む人間を多く引き付ける魅力を持つ。自分に忠実で精強無比な軍隊を作り上げており、アメリカ内部で強い影響力を持つようになったため、大統領グローバー・クリーブランドからも警戒されている。
チリカ
戦い続けることでアパッチ族生存の道を開こうとしているインディアン、ジェロニモ(ゴヤスレイ)の元で活動する直情的な少年。ジェロニモが襲撃をかけた町でレッドと出会い、最初は敵対するもエドワード・ゴールドスミスの一軍を前に共闘する。幼少だが、部族を逃がすためにしんがりを引き受ける勇気を持つ。 レッドがゴールドを拉致する際に協力するも、レッドに姿をくらまされてしまう。ジェロニモの降伏後は、唯一のアパッチとして戦いを続ける。少年たちによる強盗団・イナズマ団を結成、町に襲撃をかけていたところスカーレットと出会い、彼女のレッド探しの旅に同行することになる。
村崎 十字郎 (むらさき じゅうじろう)
伊藤伊衛朗と共にアメリカへと渡った元肥後藩の士族。隠れキリシタンの一家に生まれ、キリスト教を深く信仰するようになる。そのため周囲から白い目で見られていたが、信仰の違いなどを気にせずに友達と呼んでくれた伊藤伊衛朗に独占欲とも思える異常なまでの友情を抱くようになる。西南戦争にも参加、敗北後は自由平等の国として憧れを抱いていたメリケン(アメリカ)へと移住する。 共に移住した土村半助を切り捨てたことで伊衛朗と袂を分ち、その後ブルーと出会い彼の思想に共感、彼の為に動くようになった。スカーレットのことを、世界で一番悲しい少女で聖女マリアの生まれ変わりと信じている。卓越した剣さばきの持ち主で、居合を得意としている。
ジョン・テレンス (じょんてれんす)
第七騎兵隊・ブルー小隊の副官を務めていた軍人。A分隊隊長。白人至上主義を掲げ、性格は残虐で冷酷無比。目的のためには手段を択ばない。ブルーのことを心より崇拝し、彼の忠実な右腕として活躍する。しかし、ある時ブルーがレッドと友達になるために部下を犠牲として差し出したということを知ると、いつ自分が切り捨てられるかと疑心暗鬼に陥っていく。
オセオラ
故人。狩りの腕に秀で、頭も良かったレッドの幼少期の親友。両親を幼くして亡くしたレッドを励ましていた。ホワイトリバーの虐殺の時、族長となったレッドを守るよう部族に呼びかけ、盾となり死亡した。死に際に残した「仇を打ってくれ」という言葉が、レッドの復讐の動機となっている。
集団・組織
ウィシャ
『RED』に登場する部族。長い間白人に抵抗してきたスー族の一部。誇り高い部族だったが、文明の前に規模を縮小させざるを得なくなり、ついには老人と女子供しか残らなくなってしまった。第七騎兵隊・ブルー小隊によって居留地へと連行されるさなか、ホワイトリバーにて虐殺の憂き目にあう。全滅したものと思われていたが、若き族長のレッドとその日に誕生したスカーレットが生き延びている。
第七騎兵隊ブルー小隊 (だいななきへいたいぶるーしょうたい)
『RED』に登場する部隊。アメリカ軍大尉・ブルーが率いる一部隊。25名の隊員がおり、4つの分隊で構成される。ブルーに引き寄せられるように、残虐な嗜好を持つ者が多い。ウィシャの生き残りを連行する際、ホワイトリバーにて虐殺を行う。その後隊員のエドワード・ゴールドスミスによって事件を告発され、解散されている。 ウィシャの生き残りレッドにとっては、全員が復讐の対象。
その他キーワード
ヘイトソング
ライフル弾を発射可能な重厚長大なリボルバー。型式番号は「S&W M03A7 HATESONG」グレイによって渡された後、レッドが愛用している。大きさに違わぬ威力を持ち、また反動も強力ためレッドのような筋力を持つ者にしか扱いが難しい代物。また、オートマティック式で連射も可能。 銃身の下部に銃剣のようにナイフを取り付けることで白兵戦にも対応できる。