タピシエール 椅子張り職人ツバメさん

タピシエール 椅子張り職人ツバメさん

椅子を愛する「タピシエール」のツバメさんが営む「アトリエツバメ」には、椅子や家具にまつわるさまざまな思いを抱く客が訪れる。ツバメさんと、ユニークな友人や客との触れ合いを描いた、心の疲れを癒すほっこり職人物語。「ミステリーボニータ」2016年1月号から掲載の作品。

正式名称
タピシエール 椅子張り職人ツバメさん
ふりがな
たぴしえーる いすはりしょくにんつばめさん
作者
ジャンル
その他職業・ビジネス
 
ヒューマンドラマ
関連商品
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あらすじ

ある日、椅子張りを得意とする「タピシエール」のツバメさんのもとに、一脚の椅子が持ち込まれた。椅子の持ち主の女性は、「背板が気に入らない」「脚は本当は四角ではなくて丸がよかった」と文句を言いながら、ツバメさんにきれいな布を手渡して張り替えを依頼し、出来上がり次第すぐに連絡するように強く言い含めて店を慌ただしくあとにする。まるで嵐のような客が立ち去ったあとにツバメさんは、持ち主はいつもあんな様子なのかと、持ち込まれた椅子に優しく話し掛けながら、細部をチェックしていく。するとその椅子は、細部までとてもきれいに磨かれ、オイルもしっかりとぬり込んであり、何十年も大事に扱われてきたことがうかがわれた。文句を言いながらも椅子を大事にしてきただろうと持ち主に思いを馳せたツバメさんは、てきぱきと張り替えを済ませ、椅子の帰りを待ちわびているであろう持ち主に連絡を入れるのだった。(第1話)

登場人物・キャラクター

ツバメさん

2階建ての自宅の1階に「アトリエツバメ」という店を構え、「タピシエール」を生業としている若い女性。フルネームは「春日ツバメ」。黒髪を後ろで一つに結び、オーバーオールを身につけている。タピシエールとは、革や布を使ったインテリアを作ったり直したりする女性職人のことを指すが、ツバメさんは椅子張り専門の「タピシエ」だった父親の影響もあり、中でも特に椅子張りを得意としている。また職業柄、腕力が強く重いものの持ち運びも楽々こなす。のんびりとマイペースな性格で、人と接することがあまり得意ではないが、一方で椅子を見れば、それを使っていた人の人となりを察することができる。傷んだ椅子を見ると放ってはおけず、旅行先のバス停の椅子なども、ちょっとした待ち時間についついきれいに修復してしまう癖がある。そのため、持ち歩いているコスメポーチの中身も、リップクリームと日焼け止めを除くと、ほとんどが工具で占められている。非常に手先が器用で、仕事用のミシンのカバーや腰に下げたハサミホルダーも自作なうえ、あんこまで自分で作ったりと料理も得意。こういったものを自作するのは、自分にぴったり適したものがなかなか見つからないというのが理由である。ちなみに「ツバメ」と名づけたのは、彼女と同じくタピシエだったツバメの父親ということもあり、周囲には「座ろう」から「Swallow」、転じて「ツバメ」になったのではないかと考えられている。

小泉氏 (こいずみし)

百貨店勤務でアパレル販売の仕事に就いている若い女性で、ツバメさんの友人。フルネームは「小泉三雲」。ボリュームのある前髪を横に流した特徴的な髪型で、明るくさばさばした性格をしている。ツバメさんとは学生時代からの付き合いで、基本的に椅子としか話ができないツバメさんの唯一の人間の友達にして、よき理解者。職業柄ファッション関係に明るく、オーバーオールしか服を持っていないツバメさんに、慶弔時には服を貸してあげたりしている。ちなみに、自分の手を汚さないズルい男だという認識から、手のきれいな男性のことは絶対に信用しない主義。

たくみくん

小学1年生の男子。下校時、元気なさそうに下を向きながらツバメさんの店「アトリエツバメ」の前を通りがかり、心配したツバメさんに声を掛けられた。一見ごくごくふつうの少年ながら、年齢のわりに冷静で、大人びた口調で話す。話す内容も達観したもので、自分の状態がまさしく五月病であることを認識しており、ツバメさんに、世間一般によくあることなので特に心配する必要もないと諭した。この一件をきっかけにツバメさんと意気投合し、小泉氏に次ぐツバメさんの新たな友人となって、ちょくちょくアトリエツバメを訪れるようになる。

夏木 (なつき)

ツバメさんの父親の代から付き合いのある木工所「ミドリ木工」の、新人職人の青年。ツバメさんが新たな椅子を作る際にはミドリ木工に木造部分の加工を依頼しているが、それらの納品時に余った木材で夏木が作った恐竜や、火星人などのかわいい木工インテリアをツバメさんにプレゼントしている。小泉氏には、ツバメさんに思いを寄せているのではないかと見られていたが、夏木自身は、なんでも作れてなんでも直せて力持ちで物を大切にするツバメさんに、理想のおばあちゃん像を重ねていただけと語っている。それを聞いたツバメさんは、ずっとそういうおばあさんになりたかったと大いに喜び、小泉氏には「職人の世界は深すぎる」と妙な感想を抱かれることとなった。なお、夏木のこの弁明はもちろん本心ではあるが、実際はそれだけでなく、女性としてのツバメさんにもほのかな思いを寄せている。

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