あらすじ
第1巻
坂東晴希は、肩をケガした事に心底ほっとしていた。柔道一家に生まれながら、姉の坂東晴子や幼なじみの橋本一馬とは違って、実績がほとんどない自分にコンプレックスを抱き、柔道の道をあきらめようと考えていたのである。決意を固めた晴希が退部届を出そうと柔道部に向かうと、そこで一馬が柔道部を退部した事を知る。そして一馬は晴希も誘って、前代未聞の男子チアリーディングチームを発足させる。さらに溝口渉と遠野浩司を加え、チアリーディングチームは四人での活動をスタートさせるのだった。晴希達のチアリーディングチームには、その後も個性的で過去に訳ありの男子達が続々と集結。周囲からの厳しい言葉とさまざまな壁にぶつかりながらも、晴希は新たな仲間と支え合いながら、チアリーディングの世界に熱中していく。こうして、人を応援する事で主役になれる唯一のスポーツに青春を懸けた、男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の熱い日々が始まるのだった。
第2巻
坂東晴希達にとっての初舞台となる、命志院大学学園祭が開催された。高所恐怖症を克服し、無事学園祭での演技を終えた晴希は、今までにないほどの充実感に満ちていた。その後、男子チアリーディングチーム「BREAKERS」に新たなメンバーが加わり、高城さつきが専任コーチに就任。晴希達は「新生BREAKERS」として、新たな一歩を踏み出す。3月末に開催される「全国チアリーディング選手権」を目指す事になった晴希達だったが、全国出場には、1月末にある予選で基準点を獲得する必要があった。晴希達は予選に向け、さつきの指導を受けながら猛特訓を始める。しかし、晴希達は家族の事や過去の事で、それぞれが悩みを抱えていた。そんな中、徳川翔は高校時代の出来事から、スタンツのベースになる事に恐怖心を抱いていた。翔は晴希達に励まされ、再びスタンツに加わる事を決意。一方、晴希は坂東晴子が柔道でスランプ続きになっていた事を知る。予選当日、晴子の事を心配する晴希は、演技中に細かいミスをしてしまうが、からくも全国大会への出場を勝ち取るのだった。全国大会へ向けてさらなる特訓を始める「BREAKERS」だったが、予選を見ていた堂本仁の厳しい言葉を受け、メンバー達は強い焦りを覚え始める。
登場人物・キャラクター
坂東 晴希 (ばんどう はるき)
命志院大学に通う1年生の青年。愛称は「ハル」。人見知りなおとなしい性格で、高所恐怖症。道場を持つ柔道一家に生まれ、幼い頃から柔道に励んで来た。大学でも柔道を続けていたものの、姉の坂東晴子や幼なじみの橋本一馬とは違ってインターハイに出場した経験もなく、才能がない事を自覚して悩んでいた。しかし柔道で相手を投げ飛ばす時は、まるで自分が投げられたかのような複雑な表情を見せる事があり、一馬には「人の気持ちがよくわかる優しい奴」と評されている。肩をケガした事をきっかけに柔道から離れ、一馬の誘いで男子チアリーディングチーム「BREAKERS」を結成する。チアリーディング部に所属する前から、誰かを応援する時は立ち上がって誰よりも大きな声で声援を送る癖がある。当初はチアリーディングに自信がなく、あまり乗り気ではなかったが、新たな仲間との出会いや交流を経て、「昔の自分を壊したい」という気持ちで臨むようになる。スタンツのトップを任されるものの高所恐怖症が災いし、うまくいかず苦戦していたが、仲間達に支えられながら克服する。早朝練習中に出会った、酒井千裕の事が気になっている。
橋本 一馬 (はしもと かずま)
命志院大学に通う1年生の青年。坂東晴希の幼なじみ。愛称は「カズ」。両親の死をきっかけに転校した小学校で、晴希と出会った。以来、晴希とは10年以上の付き合いで、親友であると同時によき理解者でもある。晴希の事をつねに気にかけており、彼の成長を信じて見守っている。晴希と同時期に柔道を始め、インターハイ出場経験もある。晴希よりも柔道の才能に恵まれていたが、晴希が柔道を止めようとした頃に柔道部を退部した。晴希を誘って男子チアリーディングチーム「BREAKERS」を結成し、キャプテンを務める。亡くなった母親はチアリーディング部部員、父親はそのコーチをしていたため、昔からチアリーディングには強い興味を持っていた。現在はアルバイトをしながら、唯一の家族である祖母が入院する病院に通い、古いアパートで一人暮らしをしている。唯一の肉親であり、チアリーディングを始めるきっかけとなった祖母の体調が悪化した際に、チアリーディングを続ける意味がなくなる事を恐れ、一時的に練習から離れる。しかし晴希達の応援で孤独感を克服し、心強い仲間の存在を再確認して元気を取り戻す。
溝口 渉 (みぞぐち わたる)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」結成メンバーの一人。メガネをかけた理屈っぽい性格で、映画の名台詞や偉人の格言をよく引用する。体が固くリズム感もないが、一からなにかを作り上げる事が好きで、誰もやった事がない男子のみのチアリーディングチームに興味を持ち、「BREAKERS」結成に協力する。高校時代までは陸上部に所属して長距離走をやっていたが、当時はまともな友人付き合いがなく、一人で走る事が多かった。実家は高級料亭を営んでいるなど金持ちで、「BREAKERS」のユニフォームも自腹で用意した。
遠野 浩司 (とおの こうじ)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」結成メンバーの一人。通称「トン」。いつも笑顔を見せている巨漢で、超大盛りカツカレーを完食するほどの大食い。まともな運動経験はないが、自分を変えるために「BREAKERS」結成に協力する。
鈴木 総一郎 (すずき そういちろう)
命志院大学に通う青年。愛称は「イチロー」。関西出身で、関西弁を話す。高校では野球部に所属し、すぐにレギュラーを獲得するなど運動神経がよく、何でもそつなくこなす。幼なじみの長谷川弦とはよくつるんでいる。橋本一馬に誘われ、男子チアリーディングチーム「BREAKERS」に入った。まれにデリカシーのない発言をするが、仲間思いな一面も持つ。
長谷川 弦 (はせがわ げん)
命志院大学に通う青年。鈴木総一郎の幼なじみ。総一郎と同じく関西出身で、よく彼とつるんでいる。総一郎といっしょに橋本一馬に誘われ、男子チアリーディングチーム「BREAKERS」に入る。中学時代は総一郎と共に野球をしていたが、彼には敵わないと感じて高校からはサッカーをやっていた。明るくノリのいい性格。
徳川 翔 (とくがわ しょう)
命志院大学に通う青年。チアリーディング経験者。晴希達からチアリーディングチームに誘われるものの、素人同然の実力で男子のみのチームを作ろうとしている彼らには、厳しい意見を述べた。のちに晴希達のパフォーマンスを見て、初心者の彼らへのコーチングも兼ねて男子チアリーディングチーム「BREAKERS」に入る。元はチアリーディングチーム「SPARKS」に所属し、堂本仁の後輩にあたる。陽明高校出身で、当時はスタンツのベースをしていたが、サマーカップの演技中に高城さくらを落として大ケガをさせてしまった過去を持ち、スタンツには強いトラウマを抱えている。このため、「BREAKERS」に入った当初はスタンツに加わらないようにしていたが、のちに仲間達や高城さつきに励まされて克服し、再びベースとして活躍するようになる。美青年だが私服のセンスは壊滅的で、CMキャラクターの「リスジロー」のグッズやTシャツをよく身につけている。
坂東 晴子 (ばんどう はるこ)
命志院大学に通う女性。坂東晴希の姉。女子柔道全国優勝の実力を持ち、柔道部で活躍している。弟思いであると同時に、晴希の応援にはいつも勇気付けられている。弟の晴希には柔道を続けてほしいと思っており、柔道をあきらめてチアリーディングの道に進んだ彼を心配している。晴希が柔道を止めてしばらくした頃にスランプに陥り落ち込んでいたが、姉と真剣に向き合おうとした晴希の熱い応援を受け、元気を取り戻す。
堂本 仁 (どうもと じん)
陽明大学に通う青年。チアリーディングチーム「SPARKS」のキャプテンを務める。短髪のさわやかな好青年だが、厳しい一面も持つ。チアリーディングへの情熱は強く、男子のみでチアリーディングを始めた坂東晴希達には厳しい言葉を投げかける。陽明高校出身で、徳川翔、高城さくらとは同じチアリーディングチームに所属し、二人のあこがれの的となっていた。高校卒業後は翔とさくらにチームを任せたが、さくらの事故には自分にも責任があると感じている。
花咲 薫 (はなさき かおる)
陽明大学に通う青年。チアリーディングチーム「SPARKS」のルーキー。頭にカチューシャをしている。男子のみでチアリーディングチームを作ろうとしていた坂東晴希と橋本一馬に、厳しい言葉を投げかける。徳川翔と高城さくらのコンビにあこがれを抱く。
酒井 千裕 (さかい ちひろ)
命志院大学に通う女性。女子チアリーディングチーム「DREAMS」のメンバー。公園で早朝練習をしていた坂東晴希に出会い、男子チアリーディングチーム「BREAKERS」始動後も、合同練習などでたびたび言葉を交わすようになる。
高城 さつき (たかぎ さつき)
命志院大学の女子チアリーディングチーム「DREAMS」のOBの女性。コーチを務める。冷静で厳しい性格だが、優しい一面も持つ。「DREAMS」と男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の合同練習にて、坂東晴希達のコーチも務める。命志院大学学園祭後は、「BREAKERS」の専任コーチとなる。妹の高城さくらの事故がトラウマになっている徳川翔の事を気にかけている。
高城 さくら (たかぎ さくら)
高城さつきの妹。陽明高校出身で、当時はチアリーディングチームのキャプテンを務め、徳川翔とペアを組んでスタンツのトップをしていた。しかし、当時のサマーカップの演技中の事故で大ケガをして車椅子生活を送っている。翔と共に、先輩の堂本仁にあこがれを抱く。翔を応援しつつ彼と再びチアリーディングの舞台に立つのを夢見て、リハビリに励んでいる。
安藤 タケル (あんどう たける)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。髪型はふさふさのアフロヘアにしている。少々お調子者で目立ちたがり屋な性格。
佐久間 龍造 (さくま りゅうぞう)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。愛称は「サク」。小柄で愛らしい少年のような見た目とは正反対の、威厳のある名前が少々コンプレックスとなっている。子供の頃はバレエをやっていた。
金田 保 (かねだ たもつ)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。髪型は金髪のリーゼントで、通称「金」。首元にはタトゥーがあるが、実はシールを貼っている。
染谷 夏生 (そめや なつき)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。通称「銀」。金田保の舎弟として、彼を兄のように慕っている。
乗田 大地 (のりだ だいち)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。通称「銅」。金田保の舎弟として、彼を兄のように慕っている。
鍋島 卓哉 (なべしま たくや)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。鍋島卓巳の兄で、弟とダンスチームで活動していた。ブレイクダンスを得意としている。
鍋島 卓巳 (なべしま たくみ)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。鍋島卓哉の弟で、兄とダンスチームで活動していた。ブレイクダンスを得意としている。
森 尚史 (もり ひさし)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。短髪でさわやかな容姿をしている。チアリーディングにはもともと興味があったが、男子のみのチームである「BREAKERS」に惹かれて加入する。
陳 子軒 (ちん ずーしぇん)
命志院大学に通う青年。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の新メンバー。中国からの留学生で、京都弁で話す。元は体操をやっていた。
ヒマワリ食堂店主 (ひまわりしょくどうてんしゅ)
カフェサンフラワー（ヒマワリ食堂）の店主をしている中年男性。常連の坂東晴希と橋本一馬を優しく見守り、男子チアリーディングチーム「BREAKERS」を応援している。
集団・組織
BREAKERS (ぶれいかーず)
男子だけのチアリーディングチーム。坂東晴希と橋本一馬を中心に結成された。男子のみというだけでなく、メンバーの大半はチアリーディング初心者。「今までの自分」をはじめ「なにかを壊したい」という願いから、晴希の提案で「BREAKERS」と名付けられた。当初は七人でのスタートだったが、命志院大学学園祭後はメンバーが十六人に増え、高城さつきがコーチを務めるようになる。
SPARKS (すぱーくす)
陽明大学の男女混成チアリーディングチーム。大学チアリーディング界のトップに君臨する強豪チームで、堂本仁がキャプテンを務めている。
場所
カフェサンフラワー
坂東晴希と橋本一馬がよく通っているカフェ。通称「ヒマワリ食堂」。男子チアリーディングチーム「BREAKERS」の会議や休憩の場としてもよく利用されている。
クレジット
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朝井 リョウ
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