あらすじ
皇女転生
ティアムーン帝国唯一の皇女であるミーア・ルーナ・ティアムーンは、民衆のクーデターにより、20歳にして断頭台でその命を落とした。その瞬間、飛び起きたミーアは、自分が12歳の頃の姿に戻っていることに驚愕(きょうがく)すると同時に、自分が死んだのは夢だったのかと胸をなでおろす。だが、そんな彼女のかたわらには、20歳で断頭台にかけられるまで日々の出来事をしたためた血塗れの日記があった。日記を見て、夢の内容が現実であったことを確信したミーアは、かつての自らの行いを反省する。
未来は変化する
前世のミーア・ルーナ・ティアムーンは、自分の嫌いな黄月トマトの料理を出してくることを理由に、料理長をクビにしたことがあった。この日も例に漏れず食卓には黄月トマトのシチューが並んでいたが、幽閉中の牢の中では粗末な食事しかできなかったミーアにとって、その味は格別のものだった。ミーアが嫌いな食べ物を、健康のためになんとか食べてもらおうと腕を振るった料理長の思いに触れたミーアは、このことをきっかけにそれまでの傍若無人な態度を顧みるようになる。そして、前世で最後まで自分に仕えてくれたメイドのアンヌ・リトシュタイン、税務官のルードヴィッヒ・ヒューイットに報いるため、二人を説き伏せて自らの側近に迎えるのだった。こうしてミーアの行動が前世と変わったことにより、前世のミーアが記した血塗れの日記にも変化が訪れていた。過去の記述が書き換えられ、未来の出来事に少々変化が訪れていたのである。だがそれでも、ミーアが断頭台にかけられる最期は未だ変わらないままだった。このことを知ったミーアは、未来を少しずつ変えて最終的な結末を覆そうと、決意を新たにする。そして、ルードヴィッヒの協力を得て貴族の出資を仰ぎ、将来帝国内に蔓延(まんえん)する疫病への対策として、貧民地区(スラム)に病院を建設。さらに、本来ならば遠からず命を落とすはずだった、アンヌの妹にして作家のエリス・リトシュタインを、お抱え芸術家として召し抱えるのだった。
セントノエル学園入学
ミーア・ルーナ・ティアムーンは、13歳になる年の春、全寮制のセントノエル学園に入学することとなった。そこには、前世でミーアを断頭台に送ることになったクーデターの立役者であるティオーナ・ルドルフォンとシオン・ソール・サンクランドもおり、この二人を特に警戒するミーアは、極力かかわらないようにしようと心に決めていた。だがそんな中、ミーアはいきなり街中でティオーナが貴族の子弟に因縁を付けられているところに出くわしてしまう。いっしょにいたアンヌ・リトシュタインが期待のまなざしを向ける手前、将来の天敵とはいえ困っている人を放っておくこともできず、ミーアはその威光をもって貴族の子弟を叱責し、ティオーナのことを助けるのだった。この時、ミーアが何気なく口にした言葉に、それまで帝国内で虐げられてきたティオーナは、帝国の王侯貴族から初めて帝国の民として扱われたと歓喜し、以後ミーアのことを心から慕うようになる。さらにこの一件はシオンにも目撃されており、彼がミーアに一目置く大きなきっかけとなるのだった。
新入生歓迎舞踏会
セントノエル学園では毎年、新入生歓迎舞踏会が開催されている。ミーア・ルーナ・ティアムーンは将来のため、軍事力の充実したレムノ国の第2王子であるアベル・レムノを狙っており、新入生が一堂に会する注目度の高いこのイベントを、アベルに近づくために利用しようと考えていた。だがアプローチ計画を練る中、ミーアはシオン・ソール・サンクランドにダンスパートナーに誘われてしまう。シオンと距離を置きたいミーアは動揺するが、時を同じくして、アベルが兄のゲインにチャラチャラと女性に声をかける姿を厳しく咎(とが)められている場面を目撃。そこに割って入ったミーアは、アベルが自分のダンスパートナーであるとウソをつき、アベルのプライドを傷つけない形でゲインから救うと同時に、シオンからの申し出を断ることに成功する。迎えた舞踏会当日、アベルはミーアとダンスを踊ることになるが、その途中、本当はもっと上手なミーアが、自分のレベルに合わせて踊ってくれていることに気づく。これにより、ミーアが周囲から低い評価を受けることが許せなくなったアベルは、彼女の本当の実力を周囲に見せつけるため、恥を忍んでシオンにミーアと踊ってあげて欲しいと申し出る。こうしてシオンと踊ることになったミーアは、息の合った華麗なダンスで周囲を圧倒。一方のアベルはシオンに及ばない自分に悔しさを覚えると同時に、激しいダンスを踊っていたミーアのため、彼女を待つあいだに飲み物を冷たいものと取り換えてあげていた。そんなアベルの優しさに触れたミーアは、シオンに「あなたにはほかにふさわしい人がいる」と告げてダンスを一曲で切り上げ、アベルのもとへ戻る。
舞踏会の裏で起きていたこと
アンヌ・リトシュタインは、新入生歓迎舞踏会が行われているあいだ、ミーア・ルーナ・ティアムーンに小遣いを渡され、自由時間を与えられていた。そのお金を使ってミーアのためになることをしようと考え、町に繰り出したアンヌは、そこでティオーナ・ルドルフォンの従者であるリオラ・ルールーと出会う。血相を変えたリオラから、ティオーナが搭に閉じ込められていることを聞いたアンヌは、急いでリオラと共に現地に向かう。ティオーナが幽閉されている搭には、屈強な男二人が見張りに立っていた。アンヌとリオラがどうしようかと頭を悩ませていると、そこにシオン・ソール・サンクランドの従者であるキースウッドが姿を現す。二人から事情を聞いたキースウッドは瞬時に見張りの男たちを叩(たた)きのめし、三人はティオーナを助け出すことに成功する。実はティオーナは帝国貴族の子弟からドレスを盗まれ、それを餌に搭へと呼び出されて監禁されていたのである。当然、彼女の一張羅であるドレスもめちゃくちゃにされており、ティオーナは助けてもらっても舞踏会には出られないと肩を落とす。するとアンヌは、ミーアから預かっていたお金をリオラに渡し、ドレスを買ってくるように指示。さらに渾身のメイクでティオーナが舞踏会に出られるように仕上げるのだった。そんなアンヌにキースウッドは、この事件はミーアが仕組んだものなのではないかと問いかける。実はミーアの前世でもこの事件は起きており、当時はミーアの従者は介在せず、ティオーナたちはセントノエル学園の生徒会長であるラフィーナ・オルガ・ヴェールガを頼っていた。事態を軽く見たミーアが自らの潔白を強く主張しなかったこともあり、ここにティオーナ、シオン、ラフィーナの強固な結びつきが生まれ、のちのティアムーン帝国内でのクーデターにつながっていったのである。だが、ミーアを心から信じるアンヌとティオーナは、そんなことがあるはずもないとキースウッドの言葉を笑い飛ばす。そして一行は万端の準備を整え、ティオーナを新入生歓迎舞踏会へと送り出すのだった。
増えていく友人たち
新入生歓迎舞踏会の翌朝。アンヌ・リトシュタインから昨日の出来事を聞いたミーア・ルーナ・ティアムーンは血相を変え、早急に実行犯をティアムーン帝国に強制送還。彼らは帝国貴族の子弟だったが、セントノエル学園の生徒ではなく、従者として来ている者たちだった。従者を強制送還された主の生徒たちは、中央貴族が地方貴族を虐げて何が悪いのかと抗弁するが、ミーアは厳しい口調で、ここではティアムーン帝国の常識は通用しないこと、そして自分はそのような差別的な考え方は好きではないことを伝える。さらに、セントノエル学園の大事な生徒がこのような被害に遭ったことを、ラフィーナ・オルガ・ヴェールガがどう思うか考えてみるように諭す。一方でミーアは、この事件は従者たちの独断であり、生徒たちはおそらく関係ないのだろうと考えていた。下手をすれば退学処分もありうる生徒たちに対してミーアは、自分がラフィーナに掛け合ってみると提案して恩を売り、ひとまずその場を収めるのだった。その日の昼休み、ミーアは内心震え上がりながらラフィーナのもとを訪れて、開口一番に帝国皇女として今回の事件のことを詫(わ)び、当事者たちへの処分を報告する。生徒たちに対する処分が甘いのではないかというラフィーナだったが、ミーアとの対話で「悪いことをするのは、悪いことだと知らないから」という考えに至り、そこを自覚し反省することで成長をうながすことこそ学び舎にふさわしいと、考えを改める。そして、そのような判断を下したミーアのことを認め、自らミーアに対して友達になってほしいと申し出るのだった。こうして歴史の大きな分岐点を越えたミーアは、この一件を皮切りに日々の生活の中で、騎馬王国屈指の戦士である林馬龍や、大商会の娘であるクロエ・フォークロード、ペルージャン農業国の第3王女であるラーニャ・タフリーフ・ペルージャンなど、多くの有力な知己を得ていく。
関連作品
小説
本作『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~ @COMIC』は、餅月望の小説『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』を原作としている。原作は餅月望が「小説家になろう」に投稿した作品で、TOブックスから刊行されている。イラストはGilseが担当している。
メディア化
舞台
本作『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~ @COMIC』の原作小説版『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』をもととした舞台『ティアムーン帝国物語 THE STAGE ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』が、2020年9月から新宿村LIVEで上演された。また、その続編となる舞台『ティアムーン帝国物語 THE STAGEⅡ ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』が、2021年7月から六行会ホールで上演された。脚本は西瓜すいか、演出は第1弾を篠目ゆき、第2弾を石毛元貴が務めている。キャストは、ミーア・ルーナ・ティアムーンを平松可奈子が演じている。
ボイスブック
本作『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~@COMIC』の原作『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー』がボイスブックとしてaudibleで配信されている。朗読のナレーターは斎藤楓子が務めている。
登場人物・キャラクター
ミーア・ルーナ・ティアムーン
ティアムーン帝国唯一の皇女。わがまま放題な性格で臣民を顧みずにいたが、17歳の時に革命軍によるクーデターが勃発。これにより捕らえられ、3年幽閉されたのち、国民の恨みを一身に浴びながら20歳の時に断頭台にかけられる。だが命を落とすその瞬間、転生し12歳の頃に逆戻りした。単にミーア・ルーナ・ティアムーン自身だけが若返っただけではなく、周囲の環境もまったく当時と変わりはないが、過酷な幽閉生活を送っていた時にしたためた日記はミーアの手元に残っており、20歳までの記憶も持ち合わせている。そのため、第二の人生では断頭台にかけられないように、「我が身の安全第一」をモットーに生活を送るようになった。幽閉生活による性格や価値観の変化は大きく、転生後は人や物をはじめ、周囲に感謝することも覚え、同時に帝国貴族特有の選民思想も消えて、物事を正面から見て素直に判断を下す柔軟性を身につけた。また、過酷な幽閉生活を送ったことにより、さまざまな事柄に対して強い耐性を持つようになった。少々ポンコツなところもあるが天性の幸運の持ち主で、失敗したと思われたことが予想外の展開を見せ、思いがけない好結果につながることも多い。これにより、ミーア自身はあくまで自分のためだけに行動しているにもかかわらず、図らずも周囲の人間関係はもちろん、ティアムーン帝国の在り様をも好転させていく。その結果、ティアムーン帝国内のみならず広く大陸にその名を知られ、のちに「帝国の叡智」と評されるようになる。13歳になる年に入学したセントノエル学園で寮生活を送るようになってからは、有事の際にすばやく逃げることを目的に馬術クラブに入部。社交ダンスに関しては類まれな実力を誇るが、学校の勉学においてはそれほど優秀な成績を収めているわけではない。なお、一般的に水での清拭で済ませる貴族にしては珍しく、温水のお風呂が大好きで、転生後はなるべく質素倹約に努めてはいるものの、唯一の贅沢(ぜいたく)としてお風呂の入浴だけは欠かさない。ちなみにこの習慣は、いつも肌艶がよく髪もサラサラといった具合にミーアの外見を向上させることに大いに役立っているが、ミーア自身はそのことに気づいていない。
アンヌ・リトシュタイン
ティアムーン帝国の帝室に仕えるメイド。ミーア・ルーナ・ティアムーンより5歳年上。顔にそばかすのある、朴訥(ぼくとつ)とした雰囲気を漂わせた女性。かなりのドジっ娘で、前世では何かと失敗してはミーアの怒りを買い折檻(せっかん)されていた。だが、クーデターによりミーアが捕らえられたあとも、彼女が20歳で断頭台にかけられるまで献身的に仕えて身の回りの世話をするなど、最後までミーアに付き従った。アンヌ・リトシュタインの忠義心がミーアに与えた影響は大きく、転生したミーアが人々への接し方や生活態度を改めるきっかけの一つとなった。転生したミーアからは、前世でアンヌが見せた忠義心を高く評価され、専属メイドに抜擢(ばってき)される。以来、つねにミーアに付き従い、ミーアが13歳になる年にセントノエル学園に入学し寮生活を送ることになった際にも、ただ一人の従者としてミーアと共にセントノエル学園へと赴いた。ちなみに、有力者の子弟とのコネを作ることを目的としたミーアから、よく恋愛相談を受けているが、その知識は妹のエリス・リトシュタインの書いた恋愛小説「お花畑で抱きしめて」からの受け売りであり、アンヌ自身は恋愛経験がまったくない。
ルードヴィッヒ・ヒューイット
ティアムーン帝国の三等税務官の男性。眼鏡をかけた理知的な青年で、商人の家の次男として生まれ、幼い頃からその利発さで知られていた。不正を許さない非常にまじめな堅物で、前世では皇女であるミーア・ルーナ・ティアムーンに対しても、歯に衣(きぬ)着せない物言いをする毒舌家だった。その性格が災いして上司に目を付けられ、地方に飛ばされることとなった。その後、革命軍のクーデター発生に伴って皇都に帰還し、国を立て直すために孤軍奮闘しながら、幽閉されていたミーアが釈放されるよう手を尽くすが、すでにルードヴィッヒ・ヒューイット一人の力ではどうにもならず、ミーアは断頭台にかけられることとなった。ミーアが転生したあとは、地方に飛ばされそうになったところをミーアの鶴の一声で回避。さらに、前世で自分がミーアに投げかけた言葉を彼女の口から聞いたことにより、腐った帝室にありながら聡明な唯一の希望としてミーアに心酔。以来、彼女の側近としてティアムーン帝国の政治にかかわり、その手腕によって、本来訪れるはずであったティアムーン帝国のさまざまな危機を巧みに対処・回避していく。
エメラルダ
ティアムーン帝国の門閥貴族にして四大公爵家の令嬢。ミーア・ルーナ・ティアムーンとは非常に親しく、エメラルダ自ら「親友」と口にするほどだったが、革命軍のクーデターが起こると真っ先にミーアを裏切ったこともあり、転生したミーアにはいっさい信用されていない。
エリス・リトシュタイン
アンヌ・リトシュタインの妹。ミーア・ルーナ・ティアムーンとは同い年。体が弱く、床に臥せていることが多い。創作好きで、「貧しい王子と黄金の竜」という物語を書いている。実はこの物語は、前世のミーアが革命軍のクーデターにより幽閉生活を送っていた際、面会に訪れたアンヌが語って聞かせており、当時のミーアにとって唯一の楽しみであった。だが、ミーアが断頭台にかけられる前にエリス・リトシュタインが亡くなったため、未完となっていた。転生したミーアがアンヌの家族に挨拶しに行った際に知り合い、作品の感想を熱く語られると同時に、療養しながら物語をしっかりと完結させるよう、ミーアのお抱え芸術家としてスカウトされる。エリスはこの一件でミーアに心酔し、のちに「聖女ミーア皇女伝」という、ミーアを礼賛する高純度の妄想(フィクション)本を執筆。これが大ヒットを飛ばすこととなる。
ティオーナ・ルドルフォン
セントノエル学園に通う女子。ティアムーン帝国の南の外れ、農耕地が広がる辺境地域に領地を持つ貴族の令嬢。大きな力を持たない地方貴族ということもあり、周囲からは貴族としてはもちろん、帝国の民としても満足な扱いをされずに、悔しい思いをしてきた。セントノエル学園在学中のとある事件からシオン・ソール・サンクランドと親しくなり、それを逆恨みした前世のミーア・ルーナ・ティアムーンに、さんざんにいびられていた。これが原動力となり、民衆の怒りを代弁する聖女として革命軍を指揮し、帝室を打倒しミーアを断頭台へと送る立役者となった。穏やかそうな外見に反して反骨心が強く、自分を蔑んだ相手を見返すために幼い頃から勉学や剣術に励んできた過去がある。今世では、セントノエル学園に入学してすぐ、有力貴族の子弟に嫌がらせを受けていたところを転生したミーアに助けられ、同時に自分を初めて帝国の民として認めてくれた彼女の言葉に感激。以来、ミーアのことを強く信頼すると同時に慕うようになる。だが前世での一件により、ミーアには天敵の一人として強く警戒されており、極力かかわり合いを持たないよう避けられている。
リオラ・ルールー
ティオーナ・ルドルフォンの付き人の少女。ティアムーン帝国の森林地域に住む少数民族、ルールー族の出身。大陸共通言語が苦手なためしゃべる時は片言だが、非常に優れた身体能力を持つ。前世では革命軍を指揮したティオーナのかたわらでティアムーン帝国の帝室を打倒するために戦ったこともあり、ミーア・ルーナ・ティアムーンには、ティオーナと並んで警戒されている。
シオン・ソール・サンクランド
セントノエル学園に通う男子。ティアムーン帝国と並ぶ大国にして歴史と伝統を持つサングランド王国の第一王子。金髪の甘いイケメンで穏やかながら正義感あふれる性格の持ち主。さらに成績優秀、剣の腕は教師ですら並ぶものはごくわずかという文武両道で、全女子生徒のあこがれの的となっている。一方で大国の第一王位継承者としての自分の立場をわきまえ、特定個人と親しくならないように心掛けたりと思慮深い一面もあり、大陸各国の王侯貴族の腐敗には胸を痛めている。その性格から、前世ではミーア・ルーナ・ティアムーンから上から目線のアプローチを受けていたものの歯牙にもかけずにいた。そして、のちにティアムーン帝国で革命軍を率いたティオーナ・ルドルフォンに協力し、クーデターを成功へと導く。これがミーアを断頭台に送るきっかけとなったため、転生したミーアには天敵の一人として強い警戒心を抱かれ、極力かかわりあいを持たないよう避けられている。一方でシオン・ソール・サンクランド自身は、転生したミーアの言動から、自らと同様に統治者としてふさわしい存在として高く評価しており、同時にミーアのことを憎からず思っている。
キースウッド
シオン・ソール・サンクランドの執事の青年。セントノエル学園ではシオンの付き人を務めている。飄々(ひょうひょう)とした性格で、主人にして王子でもあるシオンに対しても、まるで兄か友達のようにざっくばらんな口調で接している。正義感の塊のようなシオンに仕えていることもあって隠密行動や荒事には慣れており、高い戦闘力を誇る。また頭の回転が速く絡め手も得意で料理もうまいことから、多彩な才能でシオンを陰に日向に支えている。
ラフィーナ・オルガ・ヴェールガ
セントノエル学園に通う女子。ミーア・ルーナ・ティアムーンより2学年上の先輩。セントノエル学園がある神聖ヴェールガ公国を治める公爵、ヴェールガ家の長女にして、入学以来セントノエル学園の生徒会長を務めている、学園随一の権力者。大陸の民に古くから信仰されている中央正教会の聖女として、国民はもちろん、周辺国にも大きな影響力を持つ。いつもにこやかでおっとりしているように見えて、芯が強く底知れない迫力がある。前世のミーアもラフィーナ・オルガ・ヴェールガの権力を目的に近づこうとアプローチを繰り返したものの、ラフィーナは当時のミーアの言動から統治者たる資格なしと厳しい評価を下しており、のちにティアムーン帝国で革命軍を率いたティオーナ・ルドルフォンの後ろ盾となって、クーデターを成功へと導いた。前世で冷たくあしらわれ、蔑まれたことからミーアはラフィーナに対して恐怖心を抱いている。一方で転生後のミーアに対しては、ラフィーナの方から友達になって欲しいと申し出るなど、「帝国の叡智」の名に恥じない才媛にして人格者と、ミーナのことを高く評価している。
アベル・レムノ
セントノエル学園に通う男子。ミーア・ルーナ・ティアムーンの同級生。大陸の中堅国家群の中にあって、特に軍事力の充実したレムノ王国の第二王子。黒髪のイケメンだが、軟派な女好きで性格も少々軽い。国の格と、第二王子ということもあって婿に迎え入れやすい点、さらにレムノ王国はクーデターを起こした革命軍に助力したサンクランド王国を挟んだ反対側にあるため、最悪の時には援軍を出してもらい挟撃することも可能という点から、自己保身を望むミーア・ルーナ・ティアムーンに、入学前から目を付けられていた。もともとは純粋でまじめな性格で、質実剛健を是とする国の方針にのっとって鍛錬を重ねていたが、たまたま見かけた同年代のシオン・ソール・サンクランドの剣の腕に圧倒され、二流は二流らしく楽しく生きようと、努力することをあきらめた過去がある。そのため、前世ではギャンブル三昧のカード遊戯クラブに所属し、退廃的で自堕落な学校生活を送っていた。だが、兄で第一王子のゲイン・レムノにその軟弱さを叱責されていたところを転生したミーアに助けられ、同時に彼女に励まされたことをきっかけに、ミーアにふさわしい男になろうと前を向き、今世では馬術クラブに所属して黙々と自己研鑽に励むようになった。本来は非常に優しく気配りのできる性格で、当初は打算で近づいたミーアも、皇女としてではなく、初めて女性としての自分に優しくしてくれた相手として、アベルのことを憎からず思うようになっていく。
場所
ティアムーン帝国 (てぃあむーんていこく)
大陸にある大国の一つ。帝都は「ルナティア」。唯一の皇女としてミーア・ルーナ・ティアムーンがいる。非常に差別意識が強い国で、国の実権を握る中央の門閥貴族は、自分たち以外の者は地方貴族・平民・奴隷の区別なく、人間扱いしていない。これが大きな原因となって国家中枢の腐敗が進んでおり、財政も悪化している。さらに飢饉(ききん)が発生して疫病が蔓延したことを機に、不満を爆発させた民衆が革命軍を結成。諸外国からの支援を受けたティオーナ・ルドルフォン率いる革命軍のクーデターにより、帝室は滅び、ミーアも断頭台にかけられることとなった。ミーアが転生し12歳に戻ったことでティアムーン帝国は当時と変わらない姿を取り戻したが、ミーアの持つ日記により、ここから数年後に実際に財政が悪化し飢饉と疫病が発生することが予見されている。それを知ったミーアが事態を改善するため奔走することによって、少しずつ未来が変わっていく。
セントノエル学園
大陸の民に古くから信仰されている中央正教会の本拠地、神聖ヴェールガ公国にある学校。近隣諸国の王侯貴族の子弟が集められた全寮制の超エリート校で、13歳になったミーア・ルーナ・ティアムーンも6年間通うこととなった。セントノエル学園に通うあいだは、生徒たちは王侯貴族といえども従者を一人しか付けることが許されていない。寮は主人と従者の二人で一部屋となっており、ベッドなどは同じものが二つずつ用意されている。本来であれば、使用人が主人と同じものを使うことなど許されないが、従者は一人だけというセントノエル学園の規定上、従者自身が大貴族の血筋ということもありうるため、このような措置が取られている。
クレジット
- 原作
-
餅月 望
- キャラクター原案
-
Gilse