概要・あらすじ
公にはされていない鬼と呼ばれる存在を取り締まる警官である安斎結貴は、連続婦女暴行事件の容疑者である鬼を確保したが、現場にいた犯人の友人である平つかさがショックで動けなくなっていたため、家まで送ることになる。確保の際に口元に怪我をしたつかさを見た結貴は身体の底から湧き上がる吸血衝動を抑えきれず、つかさの傷を舐め、そのままキスをしてしまう。
ヒトと鬼のハーフである結貴は初めての吸血行為に戸惑いながらも、つかさに惹かれていく。
登場人物・キャラクター
安斎 結貴 (あんざい ゆうき)
警視庁公安五課第2係F班に所属する巡査で、ヒトと鬼のハーフである21歳の男性。「オンロ」の鬼専門孤児院の出身で、「オンロ」の要請により健康管理の一環として体温と脈拍をモニタされている。鬼特有の高い身体能力を活用して、ヒトの捜査官と共に鬼の犯罪者を確保する任務に就く。「鬼とヒトは別々に生きるべき」を信条としており、自分の中に在る鬼の存在を嫌悪し、鬼への変異後に蘇る過去の断片的な記憶に対しても苦悩を続けていたが、連続婦女暴行事件の際に出会った平つかさに吸血行為をしたことで、いけないと思いつつもつかさに惹かれてしまった自分に気づく。 普段はクールだが、怒られると素直に謝ったり、つかさより年下だということを気にしたりと、年相応の可愛らしい一面も持っている。 実はむっつりスケベでチョコと牛乳が好物。
平 つかさ (たいら つかさ)
景央大学大学院に通う22歳の女の子。料理と手芸が得意で好物はじゃこおろし。恋愛に奥手で今まで人を本当に愛したことはなかったが、連続婦女暴行事件で出会った安斎結貴にキスをされてからは彼に惹かれ始める。鬼になった結貴を見ても恐れることはなく、苦悩する彼を心配して、自分に何ができるかを常に考えている。温和で素直なため誰からも好かれるが、結貴のためなら危険を顧みず事件現場に現れたり、変異して暴走中の結貴の前に立ちふさがるなど、時に周囲を驚かせる大胆な行動に出る。
沢崎 孝 (さわざき たかし)
警視庁公安五課第2係F班の班長を務める巡査長。安斎結貴の上司で38歳の男性。恋愛には疎く、好きな食べ物は水餃子。ヒトも鬼も区別なく接する人格者で、常に部下を気にかけ、結貴やジュリアナ・ロイドが能力を仕事に活かし、充実した人生を送れることを望んでいる。元々は警視庁刑事部の捜査第一課に在籍していたが、5年前に発生した20代の鬼の女性失踪事件の際に公安五課と合同捜査をした頃から、鬼の存在理由を考えるようになった。 池袋事件の後に新班長の石丸惠巳が赴任してきたため、以後は彼の下に就くことになる。
ジュリアナ・ロイド (じゅりあなろいど)
警視庁公安五課第2係F班所属の巡査。安斎結貴の同僚であり、アメリカとロシアのハーフである鬼で、スタイル抜群の美女。裏社会における鬼への差別が苛烈な海外から日本へ移住してきた両親のもとに産まれ、日本で育った。結貴と同様に鬼の犯罪者を追う捜査官で、下ネタを平然と口にする男気のある性格。最初は結貴に気のあるそぶりを見せていたが、沢崎孝とルームシェアをすることになった後は孝を気に掛けるようになる。 仲のいい同僚からは「ジル」と呼ばれている。
朝海 洋祐 (あさみ ようすけ)
警視庁刑事部捜査第一課殺人犯捜査第1係所属の警部補。38歳。沢崎孝とは同期で、5年前に発生した鬼の女性失踪事件では一緒に捜査をしていた。本来は公安五課が臨時体制に入る不測の事態が起きた際に、一時的に招集される人員だったが、池袋事件の後に菊原桐郎がF班の班長交代と人員の再編成を申し出たため、自ら志願してF班に配属された。 桐郎が「孝は部下である鬼を管理できていない」という理由で班長交代を進言したことに不信を抱き、桐郎の推薦でF班の新班長となった石丸惠巳を信頼しきれていない。
石丸 惠巳 (いしまる めぐみ)
警視庁公安五課第2係F班の新班長で警部補。34歳。元はA班に所属していたが、池袋事件の後に菊原桐郎の推薦でF班の班長となる。目の下にクマがあるが鬼ではなく、徹夜でマンガや小説を読むことによる寝不足でそうなっているだけ。物静かで鬼への理解も深いが、安斎結貴を無理やり変異させたり、自身の血を飲ませるなど、まれに暴走をすることもある。 正体は「CCC」に所属する「ジェイソン(13)」という名のスパイであり、内部から警察の動向を探っていた。
柳 劉生 (やなぎ りゅうせい)
警視庁公安五課第2係F班所属で安斎結貴の担当医。東京都立烏丸病院より出向している紅目人種血液内科医である。元ヤンキーで嫁と子供もいる31歳。「オンロ」の要請により健康管理の一環として結貴の体温と脈拍をモニタしており、変異した際に使う鎮静剤の処方もしている。結貴の担当医ということで彼を何かと気にかけており、現場で血を見る機会の多い結貴のために「におい」と「色」を遮断できる高性能の防毒マスクを用意してくれた。
李 ハンス (り はんす)
本名はヨハネス・クレーマン。鬼とヒトのハーフで、左目だけに変異の症状が現れる珍しいタイプ。独自のルートで探した提供者から少量づつ血液を売ってもらい、朝夕に一定の血液を摂取することで吸血衝動をほぼ完璧にコントロールしている。陽気で好奇心旺盛なため誰とでもすぐに打ち解けられるが、真実とも冗談とも取れない発言が目立つ。「オンロ」出身者で安斎結貴らも知らないハーフの鬼に関する情報を持っているが、自身でしか試したことがないためその真偽は不明。 自分は「オンロ」で行われていた「第15期ハイブリット出産計画、白組7番」であると語り、結貴にも出生を問いただしていたが、結貴は何も覚えていなかった。一部の人間からは「闇の子供」と呼ばれている。
阪木 敏郎 (さかき としろう)
日本人の父親とアメリカ人の母親を持つバー「サカキ」の店主。通称は「マスター」だが、バーは趣味で同ビルの賃貸経営も行っている。店はF班の打ち合わせなどに使用されることが多く、頻繁に貸し切りにされている。安斎結貴に物件を貸し出しており、のちに平つかさや李ハンスも同ビルに住むことになった。
加納 昭雄 (かのう あきお)
かのう診療所の所長で専門は心療内科。埼玉で鬼向けの診療所を経営しており、週の半分は自身の診療所で診察を行っている。10年ほど「オンロ」に隣接する鬼専門の総合病院に勤めており、柳劉生の知り合いだったため、彼を介して安斎結貴と出会う。鬼の行動指針を改定する紅目人種権利保護団体、通称「R2PC」の委員も務めている。
菊原 桐郎 (きくはら きりお)
警視庁公安五課第2係A班の班長で警部。41歳。容姿端麗で穏やかな性格をした警官だが、実は「CCC」の指揮官であり、コードネームは「ゼロツー(02)」。謎の黒幕である「ゼロイチ(01)先生」と呼ばれる人物からの指示で「CCC」を指揮しているが、目的遂行のためなら仲間を殺すことも厭わない冷酷な一面も持つ。警部補時代、捜査の一環で「オンロ」を訪問した際に少年時代の安斎結貴に出会っていた。 結貴にはその時の出来事はトラウマとなっており、記憶障害や鬼を嫌悪する原因にもなっている。
牧村 武史 (まきむら たけし)
警視庁公安五課第2係B班の巡査部長。沢崎孝や朝海洋祐の同期で37歳。「CCC」の戦闘員でスナイパーを務めており、天城那々子に狙撃の技術を仕込んでいた。コードネームは「レーロク(06)」。「CCC」からの指令を受け、池袋事件の重要な情報を抱える片桐龍之介が勤務する完全会員制の鬼専用バーで、ヒトの店長と鬼の店員を殺害して逃走。 その後、菊原桐郎から天城那々子と吉井健一を消すように伝言を受けるが、逆に那々子によって耳を撃たれてしまう。
牛尾 直也 (うしお なおや)
警視庁公安五課第2係C班の巡査部長。癖毛で左頬に大きい痣があるイケメン。「CCC」のメンバーで戦闘員担当、コードネームは「ゼロゴ(05)」。「CCC」からの指令で天城那々子、吉井健一と行動を共にしていた平つかさを殺害しようとするが失敗。つかさに「鬼に恨みがあるのか」と問われた際には、「かわいそうな運命から早く解放してやりたい」と返している。
天城 那々子 (てんじょう ななこ)
「CCC」の戦闘員でスナイパー、コードネームは「ゼロナナ(07)」。24歳。幼い頃に母親を鬼である森澤研一に吸血強姦されたうえ、目の前で殺害されたことから鬼に対し強い恨みを抱いている。「CCC」に入ってからはサーモスコープを使って対象者の体温を判別し、鬼だけを狙って狙撃していた。池袋事件を阻止しようとしたことから命を狙われ、吉井健一と共に「CCC」を脱退する。
吉井 健一 (よしい けんいち)
「CCC」の開発担当でコードネームは「ゼロキュー(09)」。16歳の男性。天城那々子のサーモスコープや、メンバーの居場所が分かるGPS追跡システムなどを開発。那々子に好意を抱いているが本人に伝える勇気はなく、こっそりと寝顔の写真をコレクションしている。池袋事件を阻止しようとしたことで命を狙われた那々子を助けるため、「CCC」を脱退する。
住森 麻由 (すみもり まゆ)
「CCC」の情報収集、経理担当でコードネームは「イレブン(11)」26歳。簿記2級を持っているが、細かい作業が苦手でミスも多い。菊原桐郎を好きで肉体関係もあったが、池袋事件が作戦通りにいかなかったことで、桐郎に対する気持ちが急速に冷めていった。現在は牧村武史に恋心を抱いている。両親姉妹とも美形な家族の中で、自分だけが死んだ祖母に似て不細工なことにコンプレックスを持っている。
神埼 昭仁 (かんざき あきひと)
「CCC」所属の医師、コードネームは「クイーン(12)」。白勢病院に勤務している医師の男性で、アイラインが濃く首筋に縦に並ぶ2つのほくろがある。菊原桐郎が心を許している数少ない人物で、桐郎は神埼昭仁の部屋で寝ることが多い。何人の部下も抱えている。
仲村 航平 (なかむら こうへい)
「CCC」の戦闘員でコードネームは「ゼロヨン(04)」。カメラマンとしてテレビ局に勤めている40~50代の男性。普段は温和で人懐こい性格をしているが、任務遂行時には攻撃的な一面も見せる。池袋事件の目撃者である片桐龍之介を襲撃するが、駆けつけた安斎結貴と李ハンスにより確保される。
村上 蓮 (むらかみ れん)
「CCC」の戦闘員でコードネームは「ジューゴ(15)」で、21歳の男性。池袋事件のきっかけとなる傷害事件を起こした人物。菊原桐郎に憧れており、桐郎が掲げる社会から鬼を排除するという思想に賛同し、阻止しようと駆けつけた天城那々子を桐郎の命により刺してしまう。その直後、桐郎によって殺害された。
安斎 環 (あんざい たまき)
安斎結貴の父親である鬼。妻である佐古みどりとは10年近く付き合っていた。心優しく人間的であったのが逆に災いし、わずか1年で15人ものヒトを殺してしまい、史上最悪の吸血鬼となった。逮捕直後に姿を消したが、現在は「オンロ」に収監されている。
佐古 みどり (さこ みどり)
佐古は旧姓で本名は安斎みどり。安斎環の妻で安斎結貴の母親であるが、誰にも口外はしていない。ONL生態研究部部長を務めており、紅目人種権利保護団体の委員会では「医師立ち合いのもと、ヒトと鬼のセックスを可とする」という紅目人種行動指針113条を撤廃するよう発言する。その会場で息子の結貴に出会い、急ぎ北海道へ戻って環に息子のことを報告した。
ユリウス クルツ
ONL生態研究部課長で紅目人種権利保護団体の委員でもある。「オンロ」にいた時は主任を務めており、同じドイツ人である李ハンスに多数の本を差し入れしていた。佐古みどりに対して少なからず好意を抱いており、一人で北海道へ戻るというみどりに同行していた。
片桐 龍之介 (かたぎり りゅうのすけ)
「おりょう」という名で女装し、飲食店に勤めていた鬼。36歳。飲食店で殺人が起き、濡れ衣を着せられて逃げていた途中で安斎結貴と平つかさに出会う。心優しい鬼で、学生時代に殴った相手を流血させてしまい、その時に吸血をしてからは決してヒトに怪我をさせないと心に誓っていた。容疑が晴れた後は沢崎孝の紹介で完全会員制である鬼専用バーに勤めるが、池袋事件を起こした犯人が何者かに突き落とされるのを目撃したために、命を狙われてしまう。
秋村 肖太 (あきむら しょうた)
景央大学大学院学生で平つかさの友人。つかさに好意を抱き、告白するが振られている。ごく普通の学生を装っているが本当は鬼であり、無差別に3人の女性を襲って殺害した連続婦女暴行犯。愛する人へ吸血欲を向けないための秋村肖太なりのつかさを守る術ではあったが、最終的に安斎結貴によって逮捕された。鬼の存在は公にされていないため、大学ではカナダへ留学したことになっている。
田丸 裕子 (たまる ゆうこ)
安斎結貴の「オンロ」時代の幼なじみでおとなしくて気の優しい鬼。田丸裕子が鬼であると理解しているヒトと結婚している。夫が料理中に指を切ってしまい「舐める?」と言われた裕子は我を失い、夫を刺して吸血行為をしてしまう。逃走中、警察に追い詰められビル屋上に逃げ込むが、そこに現れた結貴に諭されて自我を取り戻し、その場で逮捕された。
森澤 研一 (もりさわ けんいち)
元警視庁公安五課第2係AR班警部補で32歳の鬼。天城那々子の母親と付き合っていたが、ある夜、那々子を抱きしめているところを母親に目撃され、激昂した彼女に発砲される。奪った銃で母親を撃った後、瀕死の母親を那々子の目の前で吸血強姦してしまい、動転した那々子により頭を撃ち抜かれて死亡する。職場では真面目で優秀、心優しく人当たりがいいと評判の人物だった。
落合 慶司 (おちあい けいじ)
景央大学大学院教授。結婚して子供もいるが、わいせつ行為の常習犯で、借りていた本を返しに来た平つかさにもわいせつ行為を行う。現場に現れた安斎結貴によってつかさは助けられ、落合慶司は顔の骨を折ったうえに懲戒免職となった。
戸田 ミワコ (とだ みわこ)
景央大学大学院学生で平つかさの友人。2人でクリスマスパーティーをするほど仲が良く、いつもつかさを気にかけている。つかさの好きな人が鬼だと知った後も、つかさが好きな人を信じるように、自分もつかさを信じるとメールを送る。
その他キーワード
鬼 (おに)
「吸血鬼」とも称される、生物学的にヒトに極めて近い存在。全人口の0.01%しか生息しておらず、その存在は公にされていないが、区役所や保険会社、病院、警察は名簿リストを保管している。身体能力や視力、嗅覚はヒトを上回り、変異すると目が紅くなり口に牙が生えて狂暴化してしまう。変異する原因はヒトの血を見た時や激昂した時、性的興奮した時など。 故にセックスの最中ほとんどの鬼は変異するため、ヒトとの性交渉は限りなく成功率が低い。ヒトとして生活している鬼のほとんどが変異を収める鎮静剤を常備している。平熱がヒトより10℃前後低く、吸血をしていないと目の下に深いクマができる。
警視庁公安五課第2係 (けいしちょうこうあんごかだいにがかり)
警視庁に設立された、鬼の監視や吸血犯罪の捜査を目的とする非公開の課。ヒトの捜査員の大半は捜査中に鬼に遭遇してしまった者が多い。鬼の捜査員も所属しているが、吸血行為を行った者は入庁できない。現在確認できるのはA班からF班までで、多くの班がヒトと鬼とで合同捜査をしている。
オンロ
「Obihiro National Laboratory Orphanage」の頭文字を取った通称。本体は「帯広国立研究所(ONL)」で独立行政法人。常に一定数の孤児が保護されており、高等部では警官志望者が多い。表向きは鬼のための児童養護施設で、鬼の生態や医療についての研究もされているが、その実態は謎である。
CCC (しーしーしー)
「Chosen Civil Community(選ばれた市民の共同体)」の頭文字を取った団体の通称。鬼は危険だという思想のもと、鬼の殲滅を目論む一種のテロリスト。素人の寄せ集めだが一部警察の人間も存在しており、指揮官や戦闘員、スナイパーなど人員は一通りそろえている。メンバーにはそれぞれ01から15までのナンバーが割り振られているが、3、8、10、14は欠番になっている。
池袋事件 (いけぶくろじけん)
「池袋西噴水広場における東央テレビ中継現場殺人未遂事件」のこと。番組の生放送中に気象予報士が刺され、その場にいた鬼による吸血行為が全国に流れた。番組を視聴していた鬼のほとんどが変異し、鬼を脅威と判断したヒトが集団で変異した鬼を襲撃するという惨事に発展する。この事件をきっかけに警察の鬼課員は一部の例外を除き出動禁止となったが、実は「作戦B」という「CCC」が立案した仕組まれた事件だった。
書誌情報
デビルズライン 14巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2013-09-20発行、 978-4063872552)
第2巻
(2014-04-23発行、 978-4063883299)
第3巻
(2014-08-22発行、 978-4063883633)
第4巻
(2015-01-23発行、 978-4063884180)
第5巻
(2015-06-23発行、 978-4063884708)
第6巻
(2015-11-20発行、 978-4063885330)
第7巻
(2016-04-22発行、 978-4063885880)
第8巻
(2016-09-23発行、 978-4063886344)
第9巻
(2017-02-23発行、 978-4063886986)
第10巻
(2017-07-21発行、 978-4065100479)
第11巻
(2018-03-23発行、 978-4065108079)
第12巻
(2018-08-23発行、 978-4065126394)
第13巻
(2019-02-22発行、 978-4065146705)
第14巻
(2019-06-21発行、 978-4065160251)