トリックスター

トリックスター

三億円事件から15年。その時の実行犯で「トリック・スター」と騒がれた四ツ柳四朗。個性豊かなメンバーと綿密に練られた計画が読者を惑わせる心理サスペンス。

正式名称
トリックスター
ふりがな
とりっくすたー
作者
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

三億円事件の実行犯、四ツ柳四朗の計画により女優の美季村レナ、麻雀打ちの竹島彬、プロレスラーの大沢巨樹が集められた。彼らの目的は、大富豪の室岡金蔵の過去を暴き、その資産を騙し取ること。だが四ツ柳の計画は、生涯をかけて三億円事件を調査していた元刑事の岩下源吉に嗅ぎつけられていた。

登場人物・キャラクター

四ツ柳 四朗

「SY企画」の社長を務める男性で、「喫茶クリスティ」のマスターも兼務する。日本の重大事件として知られる「三億円事件」の実行犯で、当時は「トリック・スター」と呼ばれた。事件当時は21歳の若者であった。事件を担当した刑事の岩下源吉には、三億円事件の犯人と確信されていたが、証拠がなかったため逮捕されずに時効を迎えた経緯がある。 美季村レナと大沢巨樹を信用させるために一芝居打った時は「柳総一郎」という偽名を使った。ターゲットの室岡金蔵に会う時は別人に見えるよう「八木沢」と名乗るなど変幻自在に変装する。

美季村 レナ (みきむら れな)

25歳の女優。NBSテレビ「ウィークリードキュメント」の仕事をしていたが、ディレクターの江本と折り合いが悪い。降板を考えていたところに、「SY企画」からミュージカル女優のオーディションの誘いが舞い込む。オーディションを受けるため「SY企画」に電話した時には「水橋礼子」と名乗るが、これが本名かどうかは不明。 四ツ柳四郎にオーディション先で、テレビよりも面白い仕事があると誘われ仲間になった。原田絹江という往年の美人女優に似ている。家族はなく天涯孤独の身。

竹島 彬 (たけじま あきら)

35歳のプロ雀士。口ひげを生やした無口な男姓。「SY企画」からの雀荘の支配人にならないかという打診に当初は目もくれなかったが、暴力団「勝田組」の代打ちを断ったことから雀荘に出入りできなくなり、最終的に「SY企画」の打診に応じた。室岡金蔵を騙すために四ツ柳四郎と組んだ際には、映画「幻のUボート」の監督「深田六郎」を演じた。 妻の恭子と娘の芽生がいるが、現在は別居している。

芽生 (めい)

竹島彬と恭子の6歳の娘。父親である竹島を慕っており、習っているピアノの発表会に竹島が来れなかった時には非常に悲しみ、誕生日こそは来てほしいと手紙を送った。竹島とはこっそり電話で連絡をとっている。

恭子 (きょうこ)

竹島彬の別居している妻で30歳。プロ雀士の竹島より、真面目な加山の方が夫としても娘の父親としても相応しいのではと考え、竹島との離婚を視野に入れて別居している。娘の芽生には、仕事が忙しいせいで竹島はピアノの発表会や誕生日に来られないと言い聞かせている。

加山

竹島彬の別れた妻と娘に好意を抱く、真面目そうな青年。誕生日には恭子と芽生のもとを訪れ、芽生にプレゼントを渡した。その姿を、同じく芽生へのプレゼントを持って現れた竹島に目撃される。

大沢 巨樹 (おおさわ ひろき)

24歳の大柄な青年。元Jr.へビー級チャンピオンのプロレスラーで、現在は悪役として活躍している。「大日本プロレス」に所属していたが、現チャンピオンの看板スター選手を倒したことでクビになってしまう。「SY企画」がプロレスの新団体を設立することを聞いていたが、当初はプロレスをやめて故郷に帰ろうと考えていた。しかし上野駅で小さな男の子に応援されたことで思いとどまり、「SY企画」に応募する。

楠 俊平

「SY企画」の唯一の平社員で21歳。定職がなく雀荘でブラブラしていたところを四ツ柳四朗に拾われた。「喫茶クリスティ」を手伝いながら、助手兼雑用係をしている。麻雀以外にも競馬、競輪、競艇とギャンブル好きで、暴力団「勝田組」に600万円近い借金がある。

江本

NBSテレビ第一制作部ディレクター。典型的な業界人で、やや長めの髪に大きな眼鏡をかけている。美季村レナにポルノ的な演技をするように要求するなど、自らの立場を笠に着て横柄に振る舞うため、反感を抱かれやすい。局で一番強いと言われるほど麻雀には自信がある。麻雀好きな金持ち「柳総一郎」に扮した四ツ柳四朗と麻雀で対戦する。

新馬

プロレスのプロモーターを務める男性。「大日本プロレス」の社長を尊敬しており、プロレスはドラマだと言いきる。ドラマティックなキャスティングを心がけており、ショーとして観客を楽しませるためには、ただ強いだけではダメだと大沢巨樹を諭す。麻雀でメシを食っていたこともあると豪語し、麻雀好きな金持ち「柳総一郎」に扮した四ツ柳四朗と麻雀で対戦する。

岩下 源吉

かつて府中警察署に所属していた元刑事。現役時代は「スッポンの源さん」と呼ばれ、ヤクザにも一目置かれる存在だった。担当していた三億円事件が時効となり、勤続30年で唯一解決できなった事件となったことをいまだに悔いている。三億円事件の真相を解き明かそうとスクラップブックとノートをとり、四ツ柳四朗が犯人であることを確信している。 退職後はNBSテレビに守衛として勤めており、美季村レナとは顔見知り。偶然雀荘で出会った竹島彬が「四ツ柳」という男から電話を受けたことをきっかけに、竹島の後をつけて「喫茶クリスティ」で四ツ柳と再会する。

室岡 金蔵

全国長者番付1位の大物相場師で、大企業の顧問や相談役を歴任してきた70歳の男性。麻雀はプロ級の腕前で、20代の頃に投資した金はすべて麻雀で稼ぎ出した。室岡邸では毎年各界の著名人を招いての麻雀大会が行われている。映画好きでも知られ、往年の美人女優・原田絹江の大ファンである。四ツ柳四朗の今回のターゲットで、三億円事件の黒幕。

原田 絹江 (はらだ きぬえ)

往年の人気女優で、当時若者のマドンナ的存在だった。しかし未婚の母となって芸能界を引退してからは、本人もその娘の原田美江も行方は知れない。生きていれば現在は55歳くらい。

原田 美江 (はらだ よしえ)

原田絹江の一人娘で、16歳まで孤児院で育った。室岡金蔵が絹江を強姦して産ませた子供で、室岡は全財産300億円を原田美江に譲渡しようと考えている。室岡は美季村レナが美江ではないかと、鳴海に調べさせている。

鳴海

室岡金蔵の秘書。眼鏡をかけ、常にスーツ姿のインテリ風の中年男性。室岡の側近中の側近で、彼に近づく者を警戒している。室岡に命令されて、四ツ柳四朗、美季村レナ、竹島彬、大沢巨樹、楠俊平のことを細かく調査している。

集団・組織

SY企画

社長の四ツ柳四郎と、社員の楠俊平の2人だけの会社。電話番号は(246)1576。実務は「喫茶クリスティ」の経営のみだが、四ツ柳が計画を実行するために美季村レナ、竹島彬、大沢巨樹を集めた時にこの会社名を使った。ターゲットの室岡金蔵に近づく際にもこの会社名を使い、映画「幻のUボート」を制作すると偽った。

勝田組

山内組系暴力団。竹島彬の麻雀の腕に目をつけ、「勝田組」の専属代打ちにしようと狙っている。何度誘っても首を縦に振らない竹島に業を煮やし、彼の出入りする雀荘で竹島はプロだと言いふらし出入り禁止にさせた。また、楠俊平に600万円を貸しつけ、その取り立ては竹島を勧誘していた同一人物が担当している。

NBSテレビ

ディレクターの江本が所属しているテレビ局で、岩下源吉も守衛として働いている。美季村レナが女優として出演する「ウィークリードキュメント」を制作、放映している。ここのロビーで、四ツ柳四朗は麻雀好きの金持ち「柳総一郎」に扮して江本と出会う。

場所

喫茶クリスティ

四ツ柳四朗がマスターを務める喫茶店。楠俊平も他に仕事のない時はここで働いている。「SY企画」の本拠地でもあり、室岡金蔵を騙す計画のために美季村レナ、竹島彬、大沢巨樹を集めた。

その他キーワード

三億円事件

日本の重大事件として知られる現金輸送車強奪事件。昭和43年12月10日午前9時30分頃、東芝府中工場社員のボーナス2億9430万7500円を積み込んだ日本信託銀行国分寺支店の現金輸送車が、府中刑務所裏の学園通りで強奪された。この時奪われた現金のうち、通し番号がはっきりしていたのは新札の500円札100万円分のみだった。 結局犯人が捕まらず、7年後の昭和50年12月10日午前0時に時効を迎えた。実行犯であった四ツ柳四朗は、この事件で手に入れた500円札を未だに使用できずにいる。

幻のUボート

「SY企画」が制作し、「大東映画」が配給予定と謳った映画。実はダミー企画で、映画好きの室岡金蔵に映画の制作資金15億円を出資させようと四ツ柳四朗が企んだもの。変装した四ツ柳が、プロデューサーの「八木沢」と名乗って室岡に企画を持ち込んだ。主演はハリウッドの大物俳優であるロバート・グリーンフォード、ヒロインに美季村レナ、監督は深田六郎。 この深田六郎は、実は竹島彬の変装した姿である。室岡に信じさせるため、練馬の撮影所で実際にワンシーンを撮影している。

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