ドラッヘンの騎士

ドラッヘンの騎士

ドイツの小さな町で、町興しのために騎馬試合を計画した観光局長と、騎士役となった青年。彼ら2人の友情、そして明らかになっていく町の真実の歴史を描く、歴史ミステリー作品。「モーニングオープン増刊」1996年6月3日号に掲載された。

正式名称
ドラッヘンの騎士
ふりがな
どらっへんのきし
作者
ジャンル
アクション
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概要・あらすじ

ドイツの小さな町・ハンメルブルクの観光局長であるペーター・ガンツは、町興しのために、中世祭りを成功させようと奔走していた。祭りの目玉に騎馬試合を計画したガンツは、その主役となるハラルト・ハンメル役として、バーデン騎士団で騎士を演じるロルフ・リーベックに目を付ける。ハラルトは暴君を倒してハンメルブルクの町を築いたことで有名な英雄だが、実はロルフはその時に殺された暴君・ドラッヘン公の子孫であった。

配役を不快に感じたロルフは、一度はその申し出を断るが、ガンツから「先祖の名誉を回復しろ」と熱心に説得されて出場を決意する。そんな中、仕事熱心なガンツはハラルトとドラッヘン公の歴史を詳しく調べ始めるが、何者かの妨害を受けて、祭りの開催が危ぶまれる事態となってしまう。

犯人を突き止めて真実を暴こうとするうちに、ガンツは長年隠されてきた町の歴史の秘密に迫っていく。

登場人物・キャラクター

ペーター・ガンツ (ぺーたーがんつ)

ハンメルブルクで観光局長を務める青年。強面で髪は短く目つきが鋭い。性格は真面目で、仕事は徹底的にやる主義だと、自分で口にするほど。細部までこだわり、理不尽な干渉や命令には絶対に屈しない人物。かつて空挺部隊に所属した元軍人だが、その後に州の観光局に勤務した時の手腕を買われ、ハンメルベルクの町に招かれた。現在は観光局長として町興しの事業を手がけている。 事業の一環として中世祭りを計画し、ハンメルブルクの英雄のハラルト・ハンメルを主役にした騎馬試合の開催を計画する。しかし、主役に選んだロルフ・リーベックは、偶然にもハラルトが倒したドラッヘン公の子孫だったため、彼に断られてしまう。それでも諦めることなく、騎士として先祖の名誉を回復しろと熱く語ってロルフを説得する。 自分のこだわりとロルフのために、ハラルトやドラッヘン公について調べ始める。

ロルフ・リーベック (ろるふりーべっく)

ドイツの騎士道保存協会の1つであるバーデン騎士団のメンバーの青年。ロングのくせ毛の髪型をしている。バーデン騎士団では、本物の甲冑を身に着けて中世の騎士を演じ、本番さながらの騎馬試合を披露する。団長から若手のホープと評されるほど武芸の才を持ち、アーサー王とジークフリートの役を得意としている。騎士の武芸だけでなく、慈悲深く高潔な騎士道精神をも受け継ごうとしている。 その祖先は、ハンメルブルクの元領主で、大悪人として有名なドラッヘン公。彼の三男であるコンラート・フォン・ドラッヘンの名が入った短刀を持っている。こうした事実から、ペーター・ガンツから騎馬試合での主役のハラルト・ハンメル役を依頼された際も、ハラルトが先祖を殺した人物だったことを理由に最初は断った。 しかしガンツから熱心に説得され、最終的には騎馬試合への出場を決意。その後は、先祖の名誉を回復したいと願い、ガンツの調査にも協力する。

ヨアヒム・フォン・ハンメル (よあひむふぉんはんめる)

ハンメルブルクの町を築いたハンメル家の現当主。ハンメル伯爵の称号を持つ貴族の初老の男性。温厚で優しく、あまり人を疑わない性格。家族は妻と息子の3人。中世にハンメル家がワイン作りを奨励した伝統を受け継ぎ、ヨアヒム・フォン・ハンメルがオーナーとしてワイン会社を経営している。名士として町にも貢献を続けており、ペーター・ガンツが町興しのために企画した中世祭りの開催を積極的に支援する。

ホフマン

ハンメルブルクの町を築いたハンメル家の執事。職務に忠実な初老の男性。物静かながら底知れぬ迫力と堅牢な意志を内に秘め、ハンメル家を守るために心血を注いできた。当主のヨアヒム・フォン・ハンメルからも厚い信頼を受け、「ハンメル家の生き字引」と称されるほど、家の歴史や遺品の所蔵場所などを詳細に記憶している。ハンメル家の起源やドラッヘン公について調べるペーター・ガンツを警戒する。

カール

ヨアヒム・フォン・ハンメルの幼い息子。陽気な性格の少年で、いつも朗らかな笑顔を見せており、ペーター・ガンツにも気軽に声を掛ける。犬と遊んでいることが多い。

ハラルト・ハンメル (はらるとはんめる)

12世紀にハンメル家を興した男性。現在のハンメルブルク周辺を治めていたドラッヘン公の臣下だった。しかし、残忍な暴君の主人に反旗を翻して一対一の決闘を挑み、彼をハンマーの一撃で倒してドラッヘン家を滅ぼしたと伝えられている。領主となった後は、ワイン作りを奨励して町の経済の基盤を築いた。こうした功績から、現代でも町の英雄として賞賛されている。 なおハンメルブルクの地名はハンメル家の名前に由来している。ハラルトとドラッヘン公との決闘の場面は特に有名なため、ハンメル家が経営するワイン会社ではワインラベルの絵柄に採用している。

ドラッヘン公

12世紀まで現在のハンメルブルク周辺の地方を治めていたドラッヘン家の3代目領主の男性。名前は「ロタール」。ペーター・ガンツが騎馬試合に出場する騎士として選んだロルフ・リーベックの先祖にあたる。圧政を敷いて領民を苦しめ、妻まで殺した残忍な暴君として有名。臣下のハラルト・ハンメルに挑まれた一騎打ちで負けて殺された。 一族も根絶やしにされ、ドラッヘン家は滅亡したとされている。ところが、三男のコンラート・フォン・ドラッヘンだけが生き延びたため、子孫のロルフにその血が伝わっている。しかし、ドラッヘン公の子孫の存在は、町の人間や歴史学者にさえも知られていない。

ゲルラッハ

ドイツのハイデルベルグに本拠地を置く「ネッカー新聞」の記者。眼鏡をかけている若い青年。新聞記者であることを鼻に掛けて高慢な態度を取り、取材相手の都合や感情にまったく配慮しないため、取材相手からは快く思われていない。非礼な態度をペーター・ガンツに諫められて反感を持ち、ハンメルブルクの祭りを取材した時には挑発的な言葉を浴びせていた。 しかし、ガンツが何かを探し当てると見越して何かとまとわりつき、ついにはハンメル家に関わるスクープを新聞に暴露する。

ヘンケル

ドイツ中世史を研究する歴史学者の博士。あごひげを生やした青年。ハンメルブルク古文書保管所に勤務し、歴史史料を熱心に研究している。ハンメル家の歴史を詳しく調べようとするペーター・ガンツに協力的で、貴重な史料を見せたり、さまざまな情報を伝える。

アイゼンバッハ

ハンメルブルク郊外にあるザンクト・ヨハン修道院の院長。頑固で無愛想な老人で口が堅く、外部の者に対する警戒感も強い。頑なに何かの秘密を守ろうとしており、ハンメル家の歴史を探るペーター・ガンツの訪問を受けた際も強く警戒し、過去を探ろうとするなと警告する。

市長 (しちょう)

ハンメルブルクの市長を務める中年の男性。ペーター・ガンツの上司にあたるが、強面のガンツに恐れをなし、少々弱気な面がある。第二次世界大戦後に移り住んで来たため、町の古い歴史にはあまり詳しくない。ガンツが企画した町興しの計画を後押ししてきたが、地元の名士であるハンメル家の圧力に屈し、計画を変更するよう指示する。

団長 (だんちょう)

ドイツの騎士道保存協会の1つであるバーデン騎士団の団長。口ひげを生やし、たくましい体格をした中年男性。気さくな人柄で、団長としてメンバーを大事にしている。メンバーのロルフ・リーベックがペーター・ガンツの企画する騎馬試合に出場することを容認していた。しかし、対戦相手が禁じ手を使うイタリアの騎士、パオロ・プッチーニだと知ると、ロルフの怪我を心配して出場に反対する。

パオロ・プッチ-ニ

イタリアの騎士協会に所属する騎士の青年。髪はロングのくせ毛で、たくましい体格の持ち主。騎馬試合での派手な演技が受けて地元イタリアでは人気だが、形勢が不利になると、禁じ手を使って対戦相手を負傷させる危険な男として有名。ハンメルブルクの祭りの騎馬試合では、協会の名誉会長であるミラノの貴族から推薦されて、ドラッヘン公の役を演じる。

集団・組織

ハンメル家 (はんめるけ)

ハンメルブルクの名士である伯爵家。現在の当主はヨアヒム・フォン・ハンメル。その起源は12世紀にさかのぼり、初代のハラルト・ハンメルが、この地方の領主で主君だったドラッヘン公を倒し、ハンメル家を興したのが始まりである。ハンメルブルクを築いて町の発展に寄与してきた家柄のため、町の至るところにその権威が及んでいる。

ドラッヘン家 (どらっへんけ)

ハンメルブルクの周辺を12世紀まで治めていた領主の家柄。残忍な暴君として知られる3代目領主のドラッヘン公が、臣下のハラルト・ハンメルに敗れて殺され、ドラッヘン家は滅亡したとされている。しかし、ドラッヘン公の三男コンラート・フォン・ドラッヘンだけが秘密裏に生き延びたために、ドラッヘン家は密かに存続している。 子孫のロルフ・リーベックが、その証拠となる短刀を受け継いでいる。こうした事実は、町の人間や歴史学者にさえも知られていない。

バーデン騎士団 (ばーでんきしだん)

ドイツの各地にある騎士道保存協会の1つ。中世ドイツ騎士の武芸と伝統を保存し継承することを目的とする団体。騎士役の役者が本物の甲冑を身に着けて対戦する騎馬試合の公演を催している。ロルフ・リーベックが役者の1人として所属する。ペーター・ガンツがハンメルブルクの祭りで開催する騎馬試合の主役にロルフを指名したために、バーデン騎士団も祭りに協力することになる。

ネッカー新聞 (ねっかーしんぶん)

ドイツのハイデルベルクに本拠地を置く新聞社。記者のゲルラッハが所属している。ゲルラッハがハンメルブルクの観光局長であるペーター・ガンツをつけ回して手に入れたスクープをもとに、ハンメル家の秘密を暴露する記事が紙面に掲載されることとなった。

場所

ハンメルブルク

ドイツのネッカー川沿いの山あいに位置する小さな町。古い歴史ある街並みを持つ。12世紀までドラッヘン家が支配していたが、残忍な暴君だった3代目領主のドラッヘン公を臣下のハラルト・ハンメルが倒したため、その後はハラルトの興したハンメル家が領主となった。ハンメルブルクの地名はハンメル家の名に由来している。 現代になっても、町では誰もがハラルトを英雄として尊敬しており、町の中央広場には銅像が建ち、ドラッヘン公をハンマーで倒した場面が市庁舎の壁画に描かれている。主な産業はワイン作りであり、ハンメル家がワイン会社を経営している。観光産業を発展させる必要性から、町の当局がペーター・ガンツを観光局長として迎え、町興しの事業を任せた。

ザンクト・ヨハン修道院 (ざんくとよはんしゅうどういん)

ハンメルブルク郊外にある修道院。12世紀にドラッヘン家が設立した修道院の1つ。ハンメル家がドラッヘン家を滅ぼした時に、他の修道院は破壊された。しかし、ザンクト・ヨハン修道院だけは、ハンメル家に帰順したために存続を許され、現在まで修道院の組織や教会の建物が受け継がれている。現在では、修道院長であるアイゼンバッハの他に、30人の修道士が信仰生活を送っている。

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