概要・あらすじ
2世紀後半の日本。孤児であるナムジは於投馬(いずも)の鉱山に送られ、倭人の刺青(さしずみ)を入れられ、たくましく成長する。於投馬の大王スサノオの娘スセリの馬番となったナムジは、エミシから彼女を救ったことで恋仲となる。スセリの婿となったナムジは、出雲の勢力を率い、各地を転戦し、国造りにはげむ。
登場人物・キャラクター
ナムジ
於投馬(いずも)の海岸で拾われた孤児。鉱山で成長し、額に倭人の刺青(さしずみ)が入っている。並はずれた怪力の持ち主で武勇に優れる。於投馬の大王スサノオの跡取り娘スセリの婿となり、各地を転戦し、国造りを行うが、その後、出雲と邪馬台国(やまとこく)との戦に巻き込まれるなど、波乱に満ちた人生を歩んでいく。 日本神話の国津神・大国主命(オオクニヌシノミコト)がモデル。
スセリ
スサノオの末子。於投馬(いずも)を支配している布都族(ふつぞく)の後継者。気丈な性格で、鉱山にいたナムジを馬屋番として採用する。遠乗りに出かけところをエミシに襲われたが、ナムジに助けられる。これがきっかけとなりふたりは結ばれるが、ナムジはこの後、正式な婿と認められるため、様々な試練を課せられることとなる。 古事記に記された女神・須勢理毘売命(スセリビメ)がモデル。
スサノオ
於投馬(いずも)の大王。イザナミ、イザナギの息子。スセリ、イタケル、オオドシ、イワサカらの父。その先祖は韓国(からくに)からやってきたと伝えられる。木次(キツギ)のオロチを斬って於投馬の支配権を確立した。邪馬台国(やまとこく)侵攻と倭国(わこく)平定の野望を抱くスサノオは九州に侵攻し勝利を収める。 しかし、邪馬台国の女王ヒミコに心を奪われ夫婦となったことで、運命が狂い始める。日本神話の神・素戔男尊がモデル。
オオドシ
スサノオの三男。スセリの兄。頭脳明晰で度量もあり、父スサノオにも頼りにされていた。スサノオの軍に同行し、九州に攻め入ったが、邪馬台(やまと)の女王ヒミコに心を奪われた父を見限り、手勢を率いて、奈良盆地のヤマト勢力と戦っていたナムジの軍勢に合流した。 戦に勝利したナムジとオオドシだったが、オオドシは宥和政策をとり、ヤマトの族長の妹三炊屋姫(みかしぎひめ)を妻にめとり、ヤマトの王となった。この時、名をニギハヤヒと改めた。日本神話の神饒速日命がモデル。
イタケル
スサノオの二男。スセリの兄。怪力の大男で、戦時においては、父スサノオの右腕として勇猛をふるった。日本神話の神・五十猛神(いそたける)がモデル。
イワサカ
スサノオの五男。スセリの兄。気性が荒く、酒乱の気がある。酒に酔い、馬屋番だったナムジを斬ろうとしたが、反撃にあって、鼻柱と歯を折られた。以来、何かとナムジに反目し、何度も命を狙う。
スクナビコナ
国造りに悩むナムジの前に、葦船に乗って現れた不思議な老人。頭でっかちの小男だが、大変な知恵者で、土木や農耕の方法をナムジに教え、その国作りの補佐役となる。イザナギとイザナミの息子で、スサノオの兄。生まれた後、親にうとまれ、葦舟で流された。日本神話の少名毘古那(スクナビコナ)とヒルコの2神をモデルとしている。
イセポ
戦場でナムジに救われた稲羽の少女。以来、不思議な霊力で、ナムジを助ける。イセポは兎の意。古事記に登場する因幡の白兎を元に創作された人物。
ヒボコ
スサノオ不在の於投馬(いずも)を荒らして回った鬼面の男。ナムジは於投馬の軍勢を率いて、稲佐の浜でヒボコ軍を迎えうち、かろうじて撃退した。天孫族を名乗る斯盧(しろ・新羅)の王族の出だが、角の生えた容貌になったため、故国を追われた。日本神話に出てくる新羅の王子・天之日矛(アメノヒボコ)がモデル。
クエビコ
スサノオから杵築の里を与えられ、国造りを命じられたナムジの補佐役。当初はナムジを軽く見ていたが、苦難を共にするうちに忠実な家臣となっていく。スクナビコナの名とその知恵深さをナムジに伝えた。古事記に登場するカカシの神・久延毘古(クエビコ)がモデル。
タニグク
杵築の里の民の子供だったが、洪水で両親を亡くす。以来、子供の身でありながら、ナムジの国造りや戦に付き従う。邪馬台国(やまとこく)の捕虜となった後、流浪の身となったナムジを沖の島でヒボコと共に迎えた。古事記に登場するヒキガエルの神・多邇具久(タニグク)がモデル。
イザナミ
霊体。於投馬(いずも)の大王スサノオの母親。スセリを娶る条件として、鬼魅払い(おにはらい)を命じられたナムジは、比婆(ひば)の御山に赴き、霊体のイザナミに会い、その身を清めた。この試練を乗り越えたことで、ナムジはスセリの婿として認められた。日本神話の女神・伊弉冉(イザナミ)がモデル。
ヒミコ
邪馬台国(やまとこく)の女王にして巫女。侵攻してきたスサノオの虜になることで、逆に彼を籠絡して、その侵略の野望を潰えさせた。スサノオとの間にタギリサヨリタギツの3人の娘をもうける。捕虜にしたナムジを十年幽閉した後、邪馬台に迎え、協力者となることを求めた。魏志倭人伝に伝えられる卑弥呼(ヒミコ)と日本神話の大神・天照大神(アマテラスオオミカミ)をモデルとする。
タギリ
邪馬台国(やまとこく)の女王ヒミコと於投馬(いずも)の大王スサノオの娘。双子の姉妹サヨリ・タギツの姉。幽閉されたナムジを気遣い、果物を与えるなどして心の支えとなった。後に自由の身となったナムジの妻となり、息子ツノミをもうける。日本神話の女神で宗像三女神の多紀理毘売命(タキリビメ)がモデル。
ニニギ
邪馬台国(やまとこく)の女王ヒミコとオシホミミの息子。邪馬台国軍の大将として、ミナカタ率いる於投馬(いづも)の軍勢と戦った。ナムジを伴い、奴国(なこく)の地で於投馬軍を攻めたが、流れ矢を受けて戦死する。日本神話の神・瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)がモデル。
ミナカタ
ナムジとスセリの息子。生まれつき身体が大きく頑強で、赤子の頃よりナムジに反抗的な態度をとった。長じて於投馬(いづも)の軍勢を指揮するようになり、邪馬台国(やまとこく)と激しく戦った。日本神話の神・建御名方神(タケミナカタノカミ)がモデル。
アビヒコ
纒向(まきむく)のヤマト国の族長。秦族。ナガスネヒコの兄。銅鐸を鳴らして占術を行う。ナガスネヒコと共に於投馬の軍勢と戦ったが、降参した。妹の三炊屋姫(みかしぎひめ)の婿にオオドシを迎え、ヤマト国を任せる。古事記に登場する大和地方の豪族安日彦(アビヒコ)がモデル。
ナガスネヒコ
纒向のヤマト国の将軍。秦族。琵琶湖畔でナムジ率いる於投馬の軍勢と戦った。巨大な体躯の異丈夫だが、兄のアビヒコの占いにはよく従う。古事記に登場する大和地方の豪族那賀須泥毘古(ナガスネヒコ)がモデル。
場所
於投馬 (いずも)
朝鮮半島を経て渡来した騎馬民族の末裔である布都族が支配している。周辺との勢力争いが激しい。主人公ナムジは童の頃、異国の難破船で於投馬に流れ着いた。現在の島根県出雲地方。
邪馬台国 (やまとこく)
『ナムジ』に登場する国。九州の筑紫を本拠とし、女王のヒミコに率いられる。於投馬(いずも)と並ぶ強国で激しく争った。
ヤマト国 (やまとこく)
『ナムジ』に登場する国。徐福の子孫・秦族が建てた国で纒向を本拠とする。筑紫の地の邪馬台国(やまとこく)から分かれてできた国。ナムジとオオドシの率いる於投馬(いずも)と戦ったが、卜占に従って降伏した。族長アビヒコの妹・三炊屋姫(みかしぎひめ)を娶ったオオドシは名をニギハヤヒと変え、ヤマト国の支配者となった。