あずみ

あずみ

江戸時代初期に泰平の世の築くため、暗殺集団の一人として育てられた少女あずみと、その仲間たちの闘いと苦悩を描いた長編時代劇漫画。小山ゆうの代表作の一つ。1997年度第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。1998年第43回小学館漫画賞青年一般部門受賞。映画『あずみ』2003年公開。あずみ : 上戸彩。ひゅうが : 小橋賢児。うきは:- 成宮寛貴。あまぎ: 金子貴俊。ひえい:瑛太。なち: 小栗旬。最上美女丸 :オダギリジョー。爺(小幡月斎): 原田芳雄。『あずみ2 Death or Love』2005年公開。舞台『あずみ Azumi on Stage』2006年。あずみ:黒木メイサ。舞台『AZUMI 幕末編』2015年。舞台『あずみ~戦国編』2016年。あずみ:川栄李奈。

正式名称
あずみ
ふりがな
あずみ
作者
ジャンル
アクション
 
時代劇
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

選ばれた子ら、あどけなき殺戮(第1巻~第3巻)

戦国時代、内乱を起こそうとする者たちを暗殺するため、密命を受けた小幡月斎(爺)の手によって、少女あずみを含む10人の子どもたちが刺客として養成されていた。あずみが淡い恋心を抱いている、なちや、あわ、ひゅうがうきはあまぎ達にとっては、爺の言葉のみが正義であり、彼らは疑うということを知らない最強の刺客群に成長する。 ある日、爺からいよいよ外の世界で働く時が来たと告げられる。 だが彼らが暗殺者として世にでるためには、修業の総仕上げとも言うべき、血も凍るような恐るべき試練が待ち受けていた。

戦乱の無い泰平の世を築くためという、爺の命令を受け、あずみ達は刺客としての活動を始める。浪人たちを集め内乱を起こそうとしている武将・片桐兵部の一党は加藤清正を首領として担ぎ上げようとしていた。爺は片桐兵部らのもとに、加藤清正からの偽の手紙を届け、京都・伏見に向かわせる。途中の山中で、あずみ達に襲わせ、片桐兵部一党を全滅させるのが狙いだった。片桐兵部一党にあずみ達最強の刺客が襲いかかる。

敵方となった加藤清正を襲ったあずみ達は、甲賀忍者に逆襲される。あずみの命を狙う、忍者の猪蔵や極悪非道な佐敷三兄弟は凶悪無比だった。激戦の中、あまぎは左腕にかすり傷を負い、その夜、高熱と激痛に襲われる。甲賀忍者の刀には、毒が塗られていた。

毒が全身に回るのを防ぐため、爺はあまぎの左腕を切り落としたが、最早手遅れだった。  遂にあずみの仲間は、ひゅうがとうきはだけになってしまう。加藤清正の側近である井上勘兵衛、 井上勘兵衛の子飼いの忍者・飛猿とあずみは命を賭けて切り結ぶ。

秀頼、最上美女丸(第4巻~第7巻)

家康が盤石な徳川の長期安定政権を築くために一番邪魔な存在は、大阪城の豊臣秀吉の遺児・秀頼だった。もし家康が死ねば、外様大名達は反旗を翻し、再び日本を東西に分けた大戦が始まることになる。戦以外に生活の手段を持たぬ者たちは大阪に集結していた。秀頼も有能な戦人を求めていたため、南光坊 天海が秀頼の一の即近・大野長治に、爺を剣豪で天才的な軍略家と信じ込ませて仕官させることは容易かった。あずみも爺と共に一気に敵方の中枢へ潜り込むことに成功する。

あずみが大坂城内の牢に捕えられる。うきはが救い出しに行くが、逆に自身も捕らわれる。うきはに愛人の新三郎を殺害された淀君は、あずみとうきはを戦わせ復讐しようとする。真田幸村から派遣された居あい抜きの達人、女装した剣豪・最上美女丸にひゅうがが倒された。 あずみはひゅうがの墓の側で呆然とするばかりだった。 美女丸は爺を傷つけ、あずみに迫る。

ようやく窮地を脱した爺だったが柳生新陰流の剣士達に襲撃される。危機一髪の爺をあずみは辛うじて救い出すが、徳川家お抱えの流派の柳生新陰流がなぜ自分達を襲うのか納得できない。あずみは徳川家にぬぐいがたい不信感を抱く。爺はこの襲撃は徳川家内の内紛のせいだと直感し、真相究明のため、徳川家康のブレーンである天海がいる駿府城に向かうが、そこにも柳生一派が待ち受けていた。

故郷へ、金角と銀角(第8巻~第10巻)

柳生宗矩一派の激しい斬撃から爺を救い出したあずみ達は、武蔵国・川越の喜多院を目指す。喜多院は天海が住職を務めたこともある名刹であり、爺の故郷も近かった。柳生宗矩一派から身を隠し、二人で静かに暮らしてゆこうと爺は、まるで人が変わったように優しい言葉をあずみにかける。橋に差し掛かったところへ突然、柳生宗矩一派の襲撃。その瞬間、爺はあずみを川に投げ込み、どこまでも生きろと叫ぶのだった。

徳川家の内紛により柳生宗矩一派よって爺が殺された。今まで徳川家のために豊臣方を殺してきた自分達の命を、なぜ徳川が狙ったのか、あずみにはわからなかった。今まで殺された仲間や爺のことを考えると、あずみの心は重く沈んでいた。

徳川方の小野忠明の道場に、あずみは身を隠した。ここには旧・豊臣方の家臣・井上勘兵衛が家康暗殺の機会をうかがいながら潜んでいた。勘兵衛は偽名を用い、顔も火傷でまったく別人のようだったが、偶然立ち寄った本多正純に正体を見破られてしまう。正純は、大坂夏の陣で家康の本陣に切り込んできた火だるまの勘兵衛を覚えていた。勘兵衛とあずみは小野道場を去る。家康暗殺を諦めない勘兵衛の執念に動かされ、あずみは家康を討つことを決心する。

松井凛太郎、貢喬介を斬ったことで苦しんでいたあずみに、井上勘兵衛が勝負を挑む。勘兵衛は自分の主・加藤清正を殺害したあずみをそのままにはしておけなかった。あずみはためらいながらも勝負を受ける。

徳川の体制が盤石になるまで家康の死を隠し通すため、本多正純は家康の影武者をたてた。その家康そっくりな影武者の自分をさげすむような態度に腹を立てた秀忠は、彼を殺してしまう。勘兵衛をやむなく斬ったあずみは、やえを訪ね丹後に向かっていた。増水した川に足止めされ、宿場に留まったあずみ。そこへ顔に隈取をした傾き者で無法者集団の首領・金角と銀角が現れる。彼らは派手な着物を着た乱暴者たちだった。

爆矢襲来、領主の罠、苦悩(11巻~12巻)

ようやくあずみと心を通じたきくが、病気になり農民・弥吉の家で世話を受ける。あずみは弥吉や家族たちの心の温かさに癒された。しかし、容赦なく送り込まれる刺客たちは、弥吉の子供たちを襲い、あずみを無抵抗にさせた上で殺害しようとする。あずみは子供たちを守り、力の限り奮戦する。 

あずみは“道々の輩”と知り合い、ともに旅を続けていく。彼らは剣を持たず、誰にも支配されない自由の民だった。真弓俊次郎も子供達へ学問を教えていた故郷を捨て、同行していた。あずみは一時、無法者集団の首領・金角と銀角に捕らえられたが逃れる。そんな時、あずみと“道々の輩”たちは突然、領主から城へ招待される。有り難い思し召しと喜んだ“道々の輩”たちだったが、実はこれは、領主が巧妙に仕掛けた罠だった。領主の権力に従わない彼らや浪人たちを城に集めた上で、一網打尽にすることが狙いだった。次々と浪人たちが惨殺される。あずみや俊次郎は“道々の輩”を守るため、ある戦略を立てる。

告白、果たし合い、毒矢の波紋、きくの選択(第13巻~第14巻)

“道々の輩”たちを先に行かせ、きくと二人であずみは旅をしていた。立ち寄った茶店で休んでいると、天才剣士・倉石左近が近づいてきた。左近は終生のライバル小野派の竜虎、松井凛太郎と貢喬助を切り捨てたあずみに深

い興味を抱いている。一方、真弓俊次郎は、父と兄が自分の裏切りのせいで、切腹させられたことに深く自責の念を持ち、心を閉ざしていた。あずみには慰める言葉もなく、ただ見守ることしかできない。

肺を病み、自分の命が残り少ないことを自覚した左近が、柳生新陰流の誇りを賭けて、あずみに勝負を挑んでくる。

毒矢により身体の自由を失ったあずみは、左近から辛くも逃れるが身体は思うように動かない。覚悟を決めたあずみの前に現れたのは俊次郎だった。俊次郎に介抱されたあずみは、解毒の薬草を探しに行こうとする俊次郎に、薬草を探してくれるよりも、ずっと、そばにいてほしいとと告げる。束の間の安息の時を過ごすあずみだったが、左近の剣がすぐそばまで迫っていた。

無双の剣の達人となったあずみは、純朴なまでの従順さで爺に仕向けられるまま殺戮を繰り返していく。自らの過酷な運命に疑問を抱き、苦悩しながらも刺客としての使命から逃れられない。

登場人物・キャラクター

あずみ

『あずみ』の主人公で、師である小幡月斎(爺)によって凄腕の刺客に育てられた少女。無垢で無邪気な性格で、師の言うことは絶対とまで信じる純粋さを持つ。それゆえ、暗殺者として人を殺すという使命と役割は淡々と果たしていく。小幡月斎(爺)に買い与えられた南蛮織のマントがトレードマーク。身体能力が高く、動体視力や俊敏さは常人をはるかに超えている。 刀の扱いが得意で、柄の部分にも仕込みを施した刀を巧みに使いこなし、幾つもの死線を乗り越える。異国人の血が混じっているらしく、頭髪は茶色っぽく、目は青みがかっているのが特徴。大抵は髪を縛って行動している。

小幡 月斎 (おばた げっさい)

主人公あずみを含む10人の子どもたちを、精鋭の刺客として育て上げた老人。幾多の戦を生き抜いた剣の達人でもある。天下太平の名の下に、南光坊天海から受けた命をあずみたちに指示していく。南光坊天海への忠誠心は深く、屈強な暗殺集団を作るため子供たちに殺し合いまでさせるほど。

南光坊 天海 (なんこうぼう てんかい)

徳川家康に仕える、天台宗の大僧正。天下泰平のため、小幡月斎(爺)に密命を送っていたが、小幡月斎(爺)の死後はあずみに直接命を与え、庇護する。詳しい素性は謎に包まれており、生年もハッキリしていない。一目見れば寿命が延びるとまで言われた高僧。同名の実在人物をモデルにしている。

ひゅうが

小幡月斎(爺)によって育てられた少数精鋭暗殺集団の一人。小柄で二刀を器用に使いこなす。明るい性格だが、口が悪い。繋がった眉毛が特徴的。性のことに関心を持っているが、それらを教わらず生きてきたゆえ、悶々とする行動が多い。

うきは

小幡月斎(爺)によって育てられた少数精鋭暗殺集団の一人。常に冷静に物事を判断できることから、小幡月斎(爺)から理想の戦士になるだろうと期待されていた。あずみに好意を抱いていた。

あまぎ

小幡月斎(爺)によって育てられた少数精鋭暗殺集団の一人。性格は素朴で素直。加藤清正暗殺の際、甲賀忍者より受けた毒により息絶えてしまう。

飛猿 (とびざる)

井上勘兵衛に仕えていた忍者。鼻がとても利き、血の臭いも嗅ぎ分けることができる。あずみとは敵対関係にあったが、井上勘兵衛の死後、南光坊天海に出会い、あずみと共に働くことを決意する。

井上 勘兵衛 (いのうえ かんべえ)

加藤清正の側近。幼少期、徳川家康によって両親と姉を惨殺されたことにより、復讐を生涯の目的としている。大坂城落城の際、徳川本陣に単独で斬り込んだことで半身に火傷を負ってしまう。同名の実在人物をモデルにしている。

柳生 宗矩 (やぎゅう むねのり)

柳生宗厳の五男。徳川三代に仕え、柳生新陰流を伝授する。二代目将軍徳川秀忠の参謀として仕える。あずみを利用して徳川家康を暗殺させようと目論んでいたが失敗。以後はあずみを暗殺するため、次々と刺客を差し向ける。同名の実在人物をモデルにしている。

倉石 左近 (くらいし さこん)

柳生の里では有名な剣士。柳生江戸道場の師範代たちに一本も取らせず、すべてを打ちのめしたほどの天才。終生の宿敵と思っていた松井凛太郎、竜虎、貢喬助に打ち勝ったあずみに興味を抱く。肺の病により命が残り僅かとなったときあずみに勝負を挑んだが敗北してしまう。

やえ

弟を殺されたことにより、一時期あずみらと共に旅をすることとなった少女。控えめで優しく、常に他人を優先する性格。あずみらと別れた後は母親の住む丹後へ行く行き、女郎として働くこととなる。

最上 美女丸 (もがみ びじょまる)

真田幸村が放った刺客。居合抜きの達人で、暗殺集団の一人ひゅうがを殺害し、小幡月斎(爺)にも重傷を負わせる。女装をし、言葉遣いも女性のように振る舞う。自惚れている相手をじわじわ痛めつけて殺すという非情な性格。

真弓 俊次郎 (まゆみ しゅんじろう)

武家に生まれた次男。剣よりも学問を志し、師である烏丸天山と共に諸国を旅する夢を持つ。あずみに心惹かれ、あずみも思いを寄せていた。

烏丸 天山 (からすま てんざん)

道々の輩の中心人物で、真弓俊次郎が師としている人物。技術や知識を交流させて産業を発展させるため諸国を渡り歩く。一行からは先生と呼ばれている。

きく

柳生宗矩が放った刺客。騙し討ちが得意であずみに近付き共に旅をすることとなったが、徐々にあずみに心を惹かれていく。男の体だが、女の心を持っている。

兵介 (ひょうすけ)

南光坊天海の部下としてあずみらの仲間に加わった男性。一度顔を見た人間を絶対に忘れないという特技を持っており、その人間がどんなに変装をしていても瞬時に見破ることができる。この特技を生かし、伊達政宗らの謀略に加わる一味達を次々と発見していくこととなる。また、手先も器用で、様々な工芸品を巧みに制作できるという特技も持つ。

金井 虎之助 (かねい とらのすけ)

南光坊天海の部下で、あずみと共に働く青年。故郷の道場では敵なしの腕前だが、人を斬った経験はない。あずみと共に生活することで徐々に好意を抱くようになり、使命を全うすることよりも彼女を守ることを優先するようになる。

立花 彦四朗 (たちばな ひこしろう)

南光坊天海の部下で、あずみらと共に働く青年。金井虎之助とは幼馴染で、剣の腕前も引けを取らないが、実際に人を斬った経験は全くない。あずみに思いを寄せつつも、南光坊天海からの使命を全うする。

小西 静音 (こにし しずね)

雪国の領地で暮らす宣教師の落とし子。雪国の領地ではキリスト教の教祖として崇められており、普段は断絶された山谷の地に住んでいる。雪国の領地では彼に逆らう人間は一人としていないほどの信頼を得ている。人を殺すことに何の躊躇いもなく、非情。

小西 忠音 (こにし ただね)

小西静音の双子の兄弟。雪国の領民たちは彼らが双子であることを知らないため、どちらのことも静音様と呼んでいる。これを利用して、奇跡に見えるトリックを仕掛けたりし、領民からの信頼を得ている。性格は残虐で、人を痛めつけることに何も感じない。

伊達 政宗 (だて まさむね)

奥州の雄として勇名を馳せた戦国武将。独眼竜とも呼ばれている。天下統一の野望を持ち、黄金を持っていることで豊臣秀吉や徳川家康に抗っていたことで有名。徳川による天下泰平に不満を持っていたため、自軍の忍たちを使って、徳川秀忠ら幕府の中心人物を討ち取ろうという陰謀を企てている。 同名の実在人物をモデルにしている。

宮本 武蔵 (みやもと むさし)

作州宮本村で生まれた高名な剣士。飯屋で偶然出くわしたあずみを剣技したことから興味を引かれ、以降はあずみと立ち合うことを目的として追いかける。どこかへ士官するすることも目的としており、一時は伊達政宗に仕えることとなる。同名の実在人物をモデルにしている。

豪山 (ごうざん)

十二歳の時、小幡月斎に声をかけてもらい、以来六年間傍で仕えていた男性。南光坊天海からあずみを無事甲斐までお連れせよとの命令されたことによりあずみと出会う。身体が大きく、餅が大好物。紋という馬と共に行動している。

万様 (まん さま)

豪山を追いかけてきた女性。豪快な性格で、巨乳。強い男性と結婚し、父の営む剣道場を継ぐことを使命としている。道場の腕の立つ者をことごとく投げ飛ばしたことから豪山のことを気に入り、子を作ることを決めた。

場所

下谷の村 (しもたにのむら)

かつて忍者として働いた者たちが暮らす村。あずみらの忍び技は、ここに住む弥衛門に教わったもの。忍びの訓練場もあり、忍びたちが家族を作って暮らしていたが、あずみら暗殺集団によって一人残らず抹殺された。

大坂城 (おおさかじょう)

太閤秀吉の遺児である豊臣秀頼が城主として治める城。徳川家康の孫娘である千姫や、太閤秀吉の側室である淀の方もここに滞在していた。後に徳川家康らによって焼き払われる。

京都 (きょうと)

あずみが毘沙門天らを一掃した後に訪れた地。小幡月斎(爺)を師と仰ぐ西田弁蔵と出会い、寺にかくまわれながら刺客と戦うこととなる。ここであずみは初めて南光坊天海と出会う。

雪国の領地

街道から遠く離れ、深い山々に囲まれている領地で、冬は厳しい雪に閉ざされている。徳川幕府に知られてはならない秘密を抱えていたため、他国から侵入しようとする者や、領地から出ようとする者を厳しく詮議し阻んでいた。

庭内 (にわうち)

荒くれ者たちが集まる巣窟。食いつめ浪人が集まり、また逃げ出していく場所でもある。女郎屋や博打場などがあり、ここ一帯をお鏡なる女親分が取り仕切っている。

SHARE
EC
Amazon
logo