ナース・ステーション

ナース・ステーション

ベテラン看護婦中山桂子が、同僚や患者たちとの関わりの中で、もがき苦しみながらも成長していく物語。生と死、人と人の繋がりをテーマに、前向きに生きる女性たちの姿を描いた島津郷子の長編代表作。

正式名称
ナース・ステーション
ふりがな
なーす すてーしょん
作者
ジャンル
医療
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概要・あらすじ

西里大学病院の外科に勤める中山桂子は、患者や同僚たちからの厚い信頼を受ける優秀な看護婦。重病と闘う患者たちと毎日向き合いながら、ナースステーション内で起こる看護婦同志の衝突にも悩み、精神はいつもギリギリの状態。そんなある日、考え事をしながら歩いていた桂子は、自分をよけて1台の車が柱と衝突事故を起こした事に気づく。

車から出てきた男性は修理代の請求もせず、ただ冗談を言って去ってしまうのだが、数日後、なんとその男性と病院で再会を果たし、デートに誘われてしまったのだ。強引だが魅力的な彼に、桂子は徐々に惹かれていってしまう。

登場人物・キャラクター

中山 桂子 (なかやま けいこ)

西里大学病院の外科に勤務する看護婦。中学の時に父親を亡くして以来、精神的依存を求めた母が自分に過度の愛情を向けてくるのに耐え切れず、看護学校を卒業後逃げるように東京へ出てきた。外科では7年目の古株であり、仕事はかなり優秀。患者や後輩ナースからは、精神的な支えとして慕われている。 側にいるだけで患者を癒し安心感を与えるという、看護婦としての天性の素質を持つ。看護婦としてあまりに完璧すぎるため、心ない同僚からの嫉妬を受けることもあるが、基本的に他人を責めたり恨んだりすることはなく、自分から歩み寄って解決しようとする。美人で人を惹きつける要素も多いことから、想いを寄せてくる男性は多い。しかし本人は惚れにくく、逆に一度好きになってしまうと大胆な行動をとったりする。 感情をあまり表にださないが、意外にも情熱的で仕事に対しても真っ直ぐな気持ちを持ち続けている。

村上 慎一郎 (むらかみ しんいちろう)

主人公中山桂子の恋人。ニューヨーク在住の建築プロデューサー。10年前に勘当された父親が倒れたと聞きつけ、日本に一時帰国する。その時桂子に出会い何度もデートに誘ううちに両想いになっていく。帰国の時が迫り桂子にプロポーズしたが、仕事に対する執着や母親に対する心配から、桂子はニューヨーク行きを断ってしまう。 そのまま遠距離恋愛となってしまったが、桂子に対する想いは冷めず手紙を欠かさず出し続けた。ニューヨークで3年ぶりに桂子と再会を果たしたすも、秘書で元カノのロージィ・アンダーソンが二人の関係を桂子に明かし、気まずい空気となってしまう。

高杉 (たかすぎ)

主人公中山桂子の初恋の相手。桂子が地元松山の看護学生だった頃、臨床実習先の病院で受け持った患者。27歳の美青年で、白血病を患っていた。いつも冗談を言う気さくな性格で、桂子が友達や親の事で悩んでいる時の精神的支えとなっていた。桂子が実習を終た後危篤状態となったが、最後の力を振り絞り専門学校まで桂子に会いに来る。 桂子とつかの間の時間を過ごし、軽い口づけをした後そのまま桂子の腕の中で息を引き取った。「いい看護婦になれる」という高杉の最後の言葉は、桂子の看護婦人生を支え続けることとなる。

竹沢 裕哉 (たけざわ ゆうや)

主人公中山桂子の2人目の恋人。桂子が雑誌の取材を受ける際にカメラマンとして病院に来たのが出会いのキッカケ。その時既に大病を患っており、残されている時間もわずかしかなかった。取材から数日後西里病院に入院する事になり、桂子と関わっていく中で本気で好きになってしまう。 2人は残された時間が少ないことを承知で激しく愛し合うようになる。病院での検査や延命治療を頑なに拒否し、最後の時を大好きなジャマイカ迎えたいと桂子に告げ、二人の出会いから1年経った頃本当にジャマイカに行ってしまう。それから1ヶ月後、休暇をとった桂子と穏やかな時を過ごし亡くなった。

渡辺 淳子 (わたなべ じゅんこ)

主人公中山桂子の同期。外科病棟では桂子と同じく古株で、後輩看護婦に対し容赦なくキツイ言葉を浴びせている。物事をハッキリ言うだけで、実際は優しくて情深い性格なので、後輩たちからも懐かれている。要領の悪い明石まりのことも、最初は過剰に目を光らせているように見えたが、実際は放っておけず誰よりも面倒を見ているだけだった。 桂子とは看護婦寮の部屋が同じだったことから仲良くなり、苦しい時代を共に成長してきただけにその絆は深い。自分を犠牲にして患者や後輩の事ばかり考える桂子のブレーキ役になったり、村上真一郎との恋で悩んでいる桂子を常に支え続けている。桂子にとって淳子は絶対的拠り所で、淳子が高校からの夢だった留学を決意した時は、日ごろの過労に大きなショックが重なったことで倒れてしまった。

明石 まり (あかし まり)

主人公中山桂子の後輩看護婦。同期に浜名里美がいる。介護していた祖母が亡くなった事がキッカケで、看護婦を志した。一生懸命で真面目だが、要領が悪くかなりのドジなので、先輩看護婦たちからいつも叱られている。自分は看護婦に向いていないのでは?と一度は自身を喪失してしまうが、桂子の励ましや患者との関わりの中で立ち直っていく。 実際、患者の立場で物事を考えたり細かな気配りもできるので、桂子には看護婦としての素質を買われている。周囲に対しても思いやりがあり、自分を見下す後輩の芹沢渉が周囲から孤立したときも、芹沢の内面の弱さを見抜き、優しく歩み寄った。恋愛経験が無いため、患者に対してすぐ恋心を抱いてしまう。

赤坂 晴子 (あかさか はるこ)

主人公中山桂子が働く外科病棟の主任。表面上は不愛想で口調もキツイが、患者や看護婦に対する情は深く、病院内では高い支持を得ている。36歳にして彼氏いない歴20年な事を焦り、従妹に紹介された服部研次とそのまま男女の関係を持つようになるが、服部にとって晴子は遊びでしかなかった。 それに気づいた晴子は服部と別れ、軽薄だった自分を反省。この事で、患者や後輩看護婦たちの存在の大きさを改めて感じ、以前より物腰が丸くなったと同時にさらに仕事に精を出すようになる。いつも落ち着いて感情を表に出さない桂子が、ことあるごとに相談を持ちかけ涙も見せるほど信頼を寄せる存在。後に婦長になり、桂子が主任のポストを引き継いだ。

芹沢 渉 (せりざわ わたる)

主人公中川桂子の後輩看護婦。先輩に対する生意気な発言や、患者のケアを露骨に嫌がる態度から、病院内で強い非難を浴びる。患者との揉め事で厳重注意を受けている途中、病院を飛び出しそのまま退職しようとしていたが、桂子と明石まりが家を訪れるようになり、心を開くようになる。昔から高齢の父親がコンプレックスだったことや、小さい時に母親が家を出たことが影響して、どうしても他人に対して反抗的なところがる。 しかし根は優しく、「じじい」と呼んでいた父親のことも、亡くなる間際まで懸命に介護していた。看護婦内でも気性の激しい強烈なキャラだが、桂子や主任の赤坂晴子の愛情を受け、立派な看護婦へと成長していく。

浜名 里美 (はまな さとみ)

主人公中山桂子の後輩看護婦。同期の明石まりが要領が悪くオドオドしているのに対し、新人ながらハキハキと発言し仕事もてきぱきにこなしている。真っ直ぐすぎる性格のため、末期患者に嘘の病名を伝えるのが我慢できず、医師の許可なく病名を告げてしまう。この一件で看護婦たちからの批判を浴び、自ら壁を作って孤立するようになってしまう。 内心では自分がしてしまった事をひどく悔やんでおり、その患者が亡くなったときは死に化粧を施しながら号泣した。しばらくふさぎこんでいたが、桂子からの言葉で立ち直り、看護婦たちとの関係も修復することができた。

千堂 ゆかり (せんどう ゆかり)

主人公中山桂子の同僚。ICUにいた時は、患者と深く関わる暇なく、正確で機械的な仕事が求められていたため、わがままな患者に対して嫌悪感しか感じず、頭ごなしに注意するだけで患者の立場になって考えようとしない事から、度々クレームを受けている。また、看護婦たちの和やかな空気に緊張感のなさを感じてしまい、見下したような発言からナースステーションでも孤立するようになってしまう。 誰からも慕われ頼られる桂子にコンプレックスを抱き、目の敵にしていたが、親友が入院してきた際、お見舞で仕事を抜ける度に桂子がフォローしてくれた事から、徐々に心を開きだす。後輩たちに対するキツイ態度は相変わらずだが、その中にも優しさを見せるようになった。

魚住 里加 (うおずみ りか)

主人公中山桂子の後輩看護婦。高校から付き合っている恋人和史が、自分に対して思いやりがないことや、家事に非協力的なことに不満を感じ、ケンカばかりしている。そんな中妊娠が発覚するが、仕事への執着や和史との将来に対する不安から、一度はおろそうと想い和史にも別れを告げた。しかし、子持ちの先輩看護婦や、恋が報われぬまま亡くなっていった患者との関わりの中で、和史の存在の大きさに気づかされ復縁を望み、出産も決意する。 無事出産を終えた後は、桂子たちのいる外科に戻り働いている。患者想いの優しい看護婦。

戸辺 みどり (とべ みどり)

主人公中山桂子の地元の親友。高校からの大親友桂子とは、同じ看護学校に入学し、永遠の友情を誓うほどの関係だった。高校から片思いしていた同級生神坂に告白をし、晴れて交際するこになるが、実は神坂はずっと桂子に想いを抱いており、自分と体の関係を持ちながら桂子への欲情を発散している事を知ってしまう。 すぐに妊娠が発覚し、絶望の中で自殺を図ったものの一命はとりとめた。見舞いに来た桂子にひどい言葉を浴びせ、一方的に友情の縁を切ってしまったまま9年の時が過ぎていたが、桂子が帰省した際過去の出来事を謝り、元の親友に戻った。

遠野 達生 (とおの たつお)

主人公中山桂子に想いを寄せる人物。桂子の地元松山で、高砂第一病院の医者をしている。同じ病院の看護婦戸辺みどりが持っていた写真に、若き日の桂子が映っているのを見つけ一目惚れ。すぐにお見合いを申し込むも、桂子からきっぱり断られてしまう。それでも想いが断ち切れず、桂子の母が倒れた後は、主治医として桂子との接触を何度も試みた。 強引だが、無邪気で憎めない性格のため、桂子からも親しい友人として好かれている。最後は桂子への想いを諦め、お見合いを決意した。

別所 拓海 (べっしょ たくみ)

芹沢渉の恋人。潰瘍性大腸炎を患い入院してきた25歳の美青年。父親が不倫中に実の母親を亡くしたことや、父の再婚相手にひどい仕打ちを受けてきたことから、高校で家を飛び出し、母方の祖母の所で暮らしていた。父親の面会も頑なに拒否し、同室の患者たちとも関わろうとしなかったが、桂子にだけは心を許し、恋心まで抱いてしまう。 一方で、入院当初から犬猿の仲だった看護婦芹沢渉が、自分に対して不器用な優しさを向けてくるのにも気づき、次第に惹かれるようになる。退院後、芹沢に想いを告げて交際するようになった。

ロージィ・アンダーソン

村上慎一郎に想いを寄せる人物。13歳の頃、ニューヨークへ来たばかりの村上に一目惚れれし、それ以降一方的に想いを寄せている。叔父が村上のビジネス上の恩人であることから、何かと近くに身を起く事ができ、最終的には村上の秘書という地位まで手に入れた。一時は村上と交際していたが、日本に一時帰国した村上が桂子に惚れてしまったため別れを告げられる。 ニューヨークを訪れた桂子に強いライバル心を燃やし、二人の関係を壊そうとしてくる。

花咲 千代美 (はなしろ ちよみ)

主人公中山桂子の後輩看護婦。他の看護婦たちに反発を買う言動ばかりし、特に桂子のことを異常に目の敵にしている。母親から出来そこないのレッテルを貼られながら育ったため、非常に屈折した性格で人間嫌い。自分に否定的な言葉を浴びせる母親を恐れ続けていたが、次第に反抗するようになり暴力まで振るうようになる。 誰からも人気があり仕事も完璧にこなす桂子に対して激しいコンプレックスを感じ、病院内で桂子の悪評を流したり嫌がらせをしている。やがてそれらの行為が明るみなってしまい、普段からの同僚に対する悪態も影響し、激しく叩かれるようになる。しかし、桂子や同期の玉城友子だけは最後まで見放さず、心を入れ替えるためのサポートをしてくれたため、素直に心を開くようになる。 最終的には別人のように変り、他の看護婦たちとも和解した。そのあとすぐに内科に移動している。

玉城 友子 (たましろ ともこ)

主人公中山桂子の後輩看護婦。以前は西里大学病院の分院で勤務していたが、医師との不倫が病院内で噂いなってしまい移動してきた。新しい職場で他の看護婦たちと打ち解けようと努力するも、どこか壁を感じてしまい孤独を感じている。同期の花咲千代美が自分や桂子に嫌がらせをするのが我慢できず激しく対立していたが、どんどん周囲と孤立する花咲を放っておけず、自分から歩みよるようになる。 最後は良き理解者として花咲が改心していくのをサポートしている。

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