ネクロマンス

ネクロマンス

勇者のシブキ・レイヴンは激闘の果てに魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらしたが、自らは魔王の呪いによってアンデッドとなってしまう。愛する人に触れることもできなくなったシブキの、呪いを解くための旅を描くファンタジーラブコメディ。「週刊少年マガジン」2019年39号から掲載の作品。

正式名称
ネクロマンス
作者
ジャンル
ファンタジー
 
ラブコメ
レーベル
講談社コミックス(講談社)
巻数
既刊5巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

GD1550年、突如現れた魔王により神様は封印され、世界は存亡の危機に立たされていた。神様は最後の力を振り絞って聖剣を生み出し、人類に託す。その聖剣を携えたシブキ・レイヴンと仲間たちは、激闘の果てに魔王を打ち倒すことに成功するが、シブキは魔王の最後の攻撃をその身に受け命を落としてしまう。魔王は倒されたものの勇敢な戦士の死に仲間たちは涙し、シブキは愛するサフィニア・パステルに見送られて火葬されそうになるが、突如、奇跡の復活を果たす。仲間たちはそのことを喜び、シブキはサフィニアに告白し、恋人同士となる。周囲は二人の仲を祝福するが、シブキがサフィニアに触れた瞬間、彼は大ヤケドを負ってしまう。実はシブキは動く死体「アンデッド」となっていたのだ。詳しく調べたところ、アンデッド化は魔王による呪いで、魔王は倒されたものの未だに何処(どこ)かに生き残っていると知る。サフィニアとの仲を引き裂く呪いに憤怒したシブキは、今度こそ本当に魔王を滅ぼすべく、サフィニア、リコリス・ルージュと共に新たな旅に出る。道中、悪さをしていた魔物のバニラを懲らしめたシブキたちは、改心したバニラを仲間に加える。しかしこの時、シブキはアンデッド化によって大幅に弱体化していることが発覚。このままでは魔王に勝てないと考えた一行は、まずは新たな装備を探すと方針を固めるのだった。

第2巻

バニラの案内で魔物たちの情報を得たシブキ・レイヴンたちは、アゲラタムと出会い、彼から聖属性を無効化する腕輪、常闇の加護を得る。これによってシブキはサフィニア・パステルとの距離を縮めることに成功するが、常闇の加護はわずか一晩で壊れてしまうのだった。新たな装備の手がかりを探して薬の街、モンサミツリーを訪れる一行であったが、シブキたちはそこで街の象徴である命の大樹が枯れ果てる異常事態に遭遇する。異常は魔王の側近であるシオンの仕業で、弱体化したシブキたちはシオンに苦戦を強いられる。しかし全員の力を合わせることで、辛うじてシオンを撃退することに成功する。魔物であるため、どこか距離があったバニラとも一行は距離を縮めることを成功するが、シオンとの戦いでシブキはより一層武器が必要だと実感する。意見を出し合う中、一行は教会の初代大聖女のソッフィオーネが伝説の魔剣を持っていた事実に行き当たる。

第3巻

伝説の魔剣を求めて教会本部を目指す一行は、道中、魔剣を持っていたとされる初代大聖女の情報を集める。「神様すら斬った魔人」とも「魔物にすら慈悲を掛けるやさしい人」ともいわれる謎の人物の情報を求めて、サフィニア・パステルは神様との謁見に臨む。そしてサフィニアは神様より新たな力を授けられると共に、ソッフィオーネは神様により神格を与えられ、1500年経った現在も生き続けているという事実を伝えられる。生き続けているが、神様にすら居場所がわからないことから、彼女の所在地が「誰も知らない深淵(ノヴァディービュス)」であると推測する。そして魔物ですら近づかない危険地域を目指して、一行は教会本部をあとにする。

登場人物・キャラクター

シブキ・レイヴン

聖剣の力を使う青年。黒髪の中肉中背の体格をしている。年齢は17歳。サフィニア・パステルとは幼なじみで、幼い頃から彼女に恋心を抱き続けていた。鍛冶屋の息子だったが、サフィニアが神様に選ばれる瞬間にも居合わせ、彼女を守るため神の力を代わりに引き受け、彼女と共に魔王を倒すため旅立つ。苦難の果てに遂に魔王を倒すものの、一度死んだあとに辛うじて復活するが、魔王の呪いによって動く死体「アンデッド」となってしまう。魔王を倒したあとサフィニアに告白して相思相愛となるも、神の力を持つサフィニアに触れるだけで火傷を負う体となってしまったため、呪いを解くため奔走している。アンデッド化によってサフィニアの回復魔法にも逆にダメージを受けるようになっており、聖剣にも触ることができなくなっている。また、ほかの装備もほとんど失い、死体になったことで肉体能力も低下しているため大幅に弱体化している。一方で首を落とされても死なないなど、アンデッドらしい特性も持っている。魔王討伐後は、その功績をたたえられプラチナ王国の国王より「勇者」の称号が送られている。

サフィニア・パステル

神に選ばれし大聖女。ベージュ色の髪を二つ結びにしている。年齢は15歳。仲間たちからの愛称は「サフィ」。シブキ・レイヴンとは幼なじみで、魔王討伐後はシブキの思いを受け入れて両想いとなるが、シブキがアンデッドとなってしまったため、お互いに触れ合うことができない状態となってしまっている。おとなしく健気な性格ながら、信心深く、神様の敵とされるものには辛辣な一面を覗かせる。また怒らせると怖い人物と知られ、怒りが限界に達すると通称「キレサフィ」と呼ばれる状態へと変貌する。ふだんは魔法で回復や浄化を担当するが、実は体を鍛えており肉弾戦も得意。キレサフィ状態では、怒りで我を忘れた状態でその肉弾戦能力を遺憾なく発揮し、周囲を破壊して回る。特に神の力を込めて放つ「神様パンチ」は必殺の威力を誇る。多くの聖女候補の中から選ばれた聖女、さらに、その中から神に選ばれたたった一人の「大聖女」で、その存在は民衆から特別視され、勇者一行の中でも人気は頭一つ飛びぬけて高い。街には彼女を象(かたど)った石像があるほか、サフィニア・パステル関連の数々のグッズが販売されているほど、その存在は民衆に愛されている。一部には彼女のグッズを金に糸目をつけずに集める熱狂的な「サフィマニア」も存在する。

リコリス・ルージュ

魔法使いの女性。真っ赤な髪をロングヘアにしている。年齢は17歳。強気で快活な性格をしており、ツンデレ的な言動が多い。仲間たちからの愛称は「リコ」。シブキ・レイヴンたちと共に魔王を倒したメンバーの一人で、魔法の能力や知識に長けている。なんらかの探し物があるらしく、そのついでとしてシブキがアンデッド化した際、旅への同行を申し出る。シブキとサフィニア・パステルとは幼い頃からの親友で、遠慮なく話せる相手として二人からよく相談を持ち掛けられることもある。ビバーナム・グレイに好意を抱いている。能天気な一行の中ではブレインとしての役割を担っており、冷静沈着な判断で仲間たちを助けている。一方で根は情に厚いところがあり、バニラが魔物であるため当初は疑っていたが、同時に信じたいと強く葛藤していた。その内心をバニラにも見透かされており、そのことを指摘されて以降はバニラと友人関係となる。魔法に関しては天才的で、バニラの魔力注入を一度経験しただけで再現し、回復魔法が効かなくなっているシブキの回復役も担当している。戦闘では多彩な攻撃魔法をあやつるほか、ホウキにまたがり空も自在に飛ぶことができる。

バニラ

魔物の一種であるサキュバスの女性。桃色の髪を長く伸ばし、扇情的な恰好をした美女の姿をしている。背中からはコウモリの羽、頭に2本の角と悪魔的な特徴を持つ。魔王が討伐されたあと、ラデェンツェの街で人間の女性に化け男性の精気を吸い集めていたが、たまたま通りすがったシブキ・レイヴンの精気を吸おうとして失敗。シブキとの戦いに敗北後、人間を襲わないことを条件に見逃される。のちにシブキに興味を覚え、彼らの旅に同行する。強いシブキを気に入っており、彼を「ダーリン」と呼んでいるため、サフィニア・パステルとは犬猿の仲。人目がある場所では魔物とバレないように、猫の姿を取ってシブキと行動を共にする。魔物であるため、人間ではまず知らない魔物界の知識に精通しており、その知識でシブキたちを手助けする。

ビバーナム・グレイ

グラジオラス・シルバーに仕える騎士の青年。年齢は20歳。爽やかな好人物で、誠実で実直な性格をしている。シブキ・レイヴンたちと共に魔王を倒したメンバーの一人で、性格のよさもさることながら、容姿端麗なのもあって女性人気が高く、リコリス・ルージュからも好意を寄せられている。シブキがアンデッド化した際、同行を申し出たが、国の復興を優先して欲しいというシブキの願いを受け入れ、グラジオラスと共に国に残っている。勇者一行の一人として各地でグッズ化されており、シブキより人気がある。

グラジオラス・シルバー

魔王に滅ばされたシルバー王国の王。年齢は38歳。無精ひげを生やした中年の男性で、シブキ・レイヴンたちと共に魔王を倒したメンバーの一人。勇者一行の中では最年長で、年若いシブキたちを見守る面倒見のいいところがある。シブキがアンデッド化した際、同行を申し出たが、国の復興を優先して欲しいというシブキの願いを受け入れ、ビバーナム・グレイと共に国に残っている。

サクラ・プラチナ

プラチナ王国の王女。年齢は16歳。髪をストレートロングに整えた少女で、豪華なドレスを着ている。シブキ・レイヴンに懐いており、王族でありながら彼には友人のように気安く接する。シブキに仄(ほの)かな恋心を抱いていたため、シブキがサフィニア・パステルに告白するのを目の当たりにした際には大きくショックを受けた。

神様 (かみさま)

世界の創造神にして唯一神。ヒゲを生やした威厳のある男性の姿をしている。魔王に封印されたが、その間際に聖剣を生み出し、シブキ・レイヴンに手渡している。サフィニア・パステルを娘のように溺愛しており、自分のことを「パパ」と呼ぶように厳命している。聖剣も本来はサフィニアに手渡すつもりだったが、シブキが寸前に彼女に代わり受け取ったのが真相で、シブキの存在は苦々しく思っている。魔法討伐後は封印より解放されており、力の大部分は失っているが、サフィニアなら比較的気軽に会うことができる。

ツルバキア・ヒース

教会で大司教を務める男性。眼鏡をかけた好々爺然とした老人で、温和な性格をしている。幼少期のサフィニア・パステルの教育係を担当していた過去があり、今もサフィニアに対しては孫に向けるのに似た愛情を抱いている。若くして尊い身分となったサフィニアが自由に友人を作ることもできず、孤立してしまったことを気にかけ、シブキ・レイヴンと知り合ってサフィニアが明るくなったことを喜ばしく思っている。シブキには強い感謝の念を抱いており、婚約後もシブキに自分の胸の内を語り、彼女のことを託している。

エリーゼ・スノウ

教会の聖女。事実上の教会のNo.2で、年齢は15歳。不在になりがちなサフィニア・パステルの代理を務めている。怜悧な雰囲気を漂わせた少女で、物事を合理的に考えながら、仕事をテキパキとこなしている。教会の教えにも忠実で、魔物やアンデッドを滅ぼすべきだと考えている。アンデッド化したシブキ・レイヴンのことも敵視しており、サフィニアがシブキや魔物の存在を看過していることを苦々しく思っている。仕事にはいっさい私情を持ち込まないが、私生活では身銭を切って病人に薬を届けたりするなど、根は善人。

カルミア・ヴォルカン

教会で大司教を務める中年の男性。髭をたくわえた紳士で、合理的な考えの持ち主。エリーゼ・スノウを擁立し、彼女と共に実質的に教会の実務を取り仕切っている。物事を理路整然と現実的に考え、正論で相手をバッサリ切り伏せる。サフィニア・パステルを大聖女として尊びつつも、理想論ばかり語る彼女を「夢見るお飾り大聖女」として、その在り方を真っ向から否定している。

イバラ・レンブラント

プラチナ王国で将軍を務める中年の男性。筋骨隆々とした身体を、無骨な鎧で包んでいる。豪快な性格で、一度に100匹の魔物を相手にしたこともある猛者(もさ)で、「豪鉄の城壁」の異名でも呼ばれる。民を守るため率先して戦っているため、シブキ・レイヴンたちからも信頼されている。

アゲラタム

男性のゾンビ。身体のほとんどが骨が、露出するほど腐り果てている。陽気な性格で、いつも笑顔を浮かべている。そのため「世界一元気な死体」と評され、「笑顔のアゲラタム」とも呼ばれている。いつもはプラチナ王国のゴスロー地方にある地下墓地が住処(すみか)で、その地方のゾンビをまとめる頭領を務めている。「腐っても生きてる」を信条にしており、ゾンビの中でも珍しく知性があることから、人を襲わずに仲間たちと平和に暮らしてる。常闇の加護を手に入れるために魔物よろずやを訪れた際、シブキ・レイヴンと出会い、アンデッドの先達として彼にさまざまなことを教える。面倒見がよく、人間のサフィニア・パステルにも分け隔てなく接したため、シブキたちからは「ゾンビ先輩」と呼ばれている。知性と意思はあるが、生前の記憶はほとんど失われており、自分と同じ棺に納められていたゾンビの「ネグリタ」を自分の妻と慕い、大切にしている。いつも笑顔でいるのも、ネグリタが人間だった頃を思い出してくれるのを期待しているからで、ゾンビにもかかわらずその胸には人一倍熱い情熱を秘めている。サフィニアからはゾンビであることから敵視されていたが、その思いを知ってからは彼らも「人」であると考え始めるなど、彼らの存在はサフィニアに大きな心境の変化をもたらす大きなきっかけとなっている。

フリージア

エルフの女王。長い髪をたなびかせた美女で、露骨なまでのブリっ娘的に振る舞っている。500年の永きにわたって結界に隔てられ、女性しかいないエルフの中で育ったため、男性への免疫はまったくない。森のエルフは男性がいないため、種の存亡の危機に陥っており、男性が得意ではないが、女王としての使命感から率先して男性に接している。偶然、結界を破って森を訪れたシブキ・レイヴンと強引に婚姻を結び、子供を作ろうとする。しかし、本心をシブキに見抜かれたうえで説得され、サフィニア・パステルが出入り自由な結界を張り直したため、最終的に和解する。

魔王 (まおう)

魔物たちの王。GD1550年に突如世界に現れて神様を封印し、各国に魔物の軍勢を差し向けた。激闘の果て、自らの居城である魔王城で聖剣を持つシブキ・レイヴンに倒されるが、倒される間際に最後の力を振り絞りシブキを殺害する。これによってシブキはアンデッド化した。シブキたちはアンデッド化したことを魔王の呪いと考え、魔王を倒して呪いを解呪しようとしている。一方、シオンは魔王がシブキをアンデッド化する理由がないと考えており、呪いに関しては謎が多い。シブキに打ち倒されて以降は、かなり深い傷を負って力を失っているが、完全に倒されるまでには至っておらず、何処かに潜伏して傷を癒やしている。

シオン

魔王の側近の一人。いくつもの魔物の死体を継ぎはぎにした人型の魔物で、頭の部分には人間の男性の頭が備え付けられているため、一見すると人間に近い姿をしている。血をあやつる力を持ち、その存在は「血濡れのシオン」の異名で知られる。魔王城での決戦の際に、シブキ・レイヴンと戦い顔半分を損傷しているため、その傷を隠すため現在は仮面をかぶっている。魔王が討伐されて以降は、魔王と共に潜伏しており、魔王復活のため暗躍している。

その他キーワード

命の大樹 (いのちのたいじゅ)

生命エネルギーを生み出す貴重な樹木。薬の街、モンサミツリーの中央に根差す大樹で、街の外からも見えるほどの大きさを持つ。1000年以上枯れたことがないといわれるほど、生命力に満ちあふれている。命の大樹よりもたらされる恩恵でモンサミツリーの街は薬の製造と研究が盛んとなり、栄えたという経緯がある。そのためミンサミツリーの街では、ほかの街では見られない珍しい薬も売られている。シオンの襲来の際に、シオンに大樹の生命力を吸われ、枯れ果ててしまう。

常闇の加護 (ゔぃえおぷすぶろす)

腕輪の形をしたアイテム。魔力を秘めており、装着すれば聖属性を完全に無効化することができる。聖属性が天敵のアンデッドが装着すれば、強力な聖属性の魔法も無効化することができるが、あまりに強力なものであった場合は完全に無効化するには至らず、ある程度のダメージは受ける。アゲラタムが教会の魔法兵器に対抗するため手に入れ、その後、サフィニア・パステルが魔法兵器を殲滅(せんめつ)したため、シブキ・レイヴンにお礼として手渡されている。魔法兵器との戦いの時に傷ついており、性能が劣化していたが、常闇の加護を付けることでシブキはサフィニアと触れ合うことができるようになった。しかし劣化していたため、すぐに壊れて使用不可能となってしまう。非常に珍しい魔法のアイテムで、再入手は絶望的だとされている。

リコバッグ

小さなポーチ型のアイテム。魔力を秘めており、魔法によって中の空間がいじられているため、小さな見た目にもかかわらずタンス1個分の荷物が入るバッグとなっている。制作者はリコリス・ルージュで、偶然の産物で開発した。シブキ・レイヴンたちのなくてはならない旅の必需品となっており、これによってシブキたちは身軽に旅をすることができている。

書誌情報

ネクロマンス 5巻 講談社〈講談社コミックス〉

第1巻

(2019-11-15発行、 978-4065177471)

第2巻

(2020-02-17発行、 978-4065186732)

第3巻

(2020-05-15発行、 978-4065191293)

第4巻

(2020-10-16発行、 978-4065210130)

第5巻

(2021-01-15発行、 978-4065220740)

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