概要・あらすじ
浦島太吉は三十年ぶりに郷里を訪れたが、村はすでにダムに沈み、妻も他界した後だった。懐かしさと後悔を胸に湖畔の林を歩いていると、いつの間にかダムに沈んだはずの郷里の村にたどり着く。郷愁とタイムパラドックスを描いたSF短編。
登場人物・キャラクター
浦島 太吉 (うらしま たきち)
里子という妻がいたが、婚礼直後に学徒動員で出兵する。終戦後もその事実を知らず、発見されるまで長い年月ジャングルに隠れ続けていた。伯父を伴い三十年ぶりに郷里へと帰るが、村はダムに沈み、妻の里子もすでに他界していた。懐かしさと後悔を胸に湖畔の林を一人歩いていると、いつの間にダムに沈んだはずの郷里の村にたどり着く。 終戦から28年後、グアムで発見された残留日本兵・横井庄一がヒントになったと思われる。
気ぶりの爺さん (きぶりのじいさん)
浦島家の縁者であるらしいが、気がふれているらしく、それを恥じた浦島太吉の父によって土蔵に監禁されている。土蔵の窓から太吉と里子に向かって「抱けえっ!!」と叫んだり、抜け出して太吉と里子の逢引をじっと見ていたりと、二人の様子を気にしている。
里子 (さとこ)
浦島太吉の幼馴染で妻。立宮村で太吉と共に育ち結婚するも、太吉の出兵により離れ離れに。太吉が生きて帰ることを願って待ち続けるも、叶わぬまま他界。太吉の戦死公報が入っても、生涯再婚することはなかった。
場所
立宮村 (たつみやむら)
浦島太吉の故郷。太吉は幼馴染の里子と共にここで青春時代を過ごした。太吉の住んでいた屋敷、里子逢引した大きなかしの木などがあった。しかし、出兵から三十年ぶりに太吉が帰ってくると、村はすでにダム湖の底であった。