ハロー、イノセント

ハロー、イノセント

偶然出会った、ぶっきらぼうでつかみどころのないミステリアスな少女の宝生結以と、自分に好意を寄せてくれる面倒見のいい幼なじみの少女、杉本遙夏のあいだで揺れ動く、恋を知らない男子高校生、早瀬雪灯の姿を描いた青春ラブストーリー。「りぼん」2020年7月号から掲載の作品。

正式名称
ハロー、イノセント
ふりがな
はろー いのせんと
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
りぼんマスコットコミックス(集英社)
巻数
既刊8巻
関連商品
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あらすじ

雪灯と結以の出会い

中学時代から剣道部で活躍していた早瀬雪灯は、高校に進学しても剣道を続けるつもりでいた。また、雪灯は学費全額免除の特待生として入学しており、勉強も剣道以上に頑張らなくてはと気合いを入れていた。そして雪灯が入学して間もないある日、以前から病気がちだった祖母が倒れ、そのまま長期入院することになる。雪灯には両親がおらず、小学生の妹、早瀬名桜しか身内がいないこともあり、これから頻繁に病院に通うことを考えると、剣道を続けることをあきらめるしかなかった。家族を大切にしたい思いからの決断だったが、唯一の楽しみであった剣道を失った雪灯は気落ちし、ふだんは足を運ぶことのない夜の繁華街に繰り出す。そこで雪灯は不良とトラブルを起こし、偶然その場に居合わせた宝生結以に助けられる。すると雪灯は、初めて出会った結以に自身の家庭の事情や複雑な胸の内を打ち明け、初めて安らぎを覚える。その日はそのまま結以と別れた雪灯だったが、次の日に登校すると偶然にも彼女が同じクラスだったことが判明する。

オリエンテーション合宿へ

入学して以来、登校拒否をしていた宝生結以だったが、早瀬雪灯の呼びかけもあって学校に顔を出すようになる。そんな中、雪灯の学校では新入生を対象としたオリエンテーション合宿が催される。雪灯と杉本遙夏の働きかけもあり、気が乗らないながらも結以は参加することになる。そこで結以は周囲と距離を取りながらも、少しずつクラスに馴染(なじ)んでいく。その夜に肝試し大会が行われ、くじ引きによって雪灯と結以がペアになる。飯島豊から、結以とペアになりたいから代わって欲しいとお願いされた雪灯だったが、とっさに譲りたくないと断ってしまう。さらに結以が女子に質問され、交際中の隆生について話をしている時にも、雪灯は嫌な気持ちになっていることを自覚する。一方の結以はオリエンテーション合宿最終日、森の中で一人迷ってしまい、さらに足をケガして動けなくなってしまう。

初めての定期試験

早瀬雪灯たちが通う高校では、初めての定期試験が近づいていた。そこで飯島豊は成績優秀な雪灯に勉強を教えて欲しいと頼み込み、雪灯、杉本遙夏山崎の四人で勉強会が催されることになる。それに巻き込まれるかたちで宝生結以も加わり、遙夏の家へと向かう。遙夏の家には夕食を食べに来た早瀬名桜もおり、名桜は結以が雪灯を狙っているに違いないと考え、彼女に悪態をつく。

雪灯と名桜のすれ違い

両親が他界し、経済的に余裕のない早瀬名桜は、欲しいものがあっても我慢していた。最近おしゃれに目覚めたクラスの女子との話題にもついていけず、さらに男子からは貧乏なことをからかわれ、名桜は寂しい思いをしていた。そんなある日、名桜は杉本遙夏からおさがりのファッション小物をもらい、かわいらしいヘアアレンジもしてもらったことで、クラスの人気者となる。しかし、それが気に入らない関根は名桜のヘアピンをわざと壊し、さらに早瀬雪灯が作ったお弁当をバカにしたことで名桜ともみあいになり、関根がケガを負ってしまう。先生から呼び出しを受けた雪灯だったが、雪灯は名桜を怒るどころか、自分が至らないばかりに名桜がトラブルを起こしてしまったことを謝罪する。名桜は自分を責めない雪灯にいら立ちを覚え、彼が傷つく言葉をかけてしまう。

雪灯のアルバイト

宝生結以がアルバイトをしているライブハウスで、バイトの欠員が出てしまう。そして店長からの指名もあり、急遽(きゅうきょ)早瀬雪灯がシフトに入ることになる。これまでライブハウスに行ったことのない雪灯は、初めての世界に戸惑いながらも、刺激的な時間を過ごす。そんな中、ライブを観戦していた客が興奮し、結以は押しつぶされそうになる。そこに助けに入った雪灯は、結以と密着して向き合う姿勢になってしまう。

遙夏の焦りと告白

早瀬雪灯宝生結以といっしょにライブハウスでアルバイトをして以来、ますます彼女のことが気になるようになっていた。さらに雪灯は結以が動物園に行ったことがないと知り、二人はデートの約束を交わす。一方、杉本遙夏は雪灯と結以の距離が確実に縮まっていることに焦りを覚え、雪灯のスマートフォンを盗み見てしまいたい衝動にかられるほど、精神的に追い詰められていた。そして気持ちを抑えきれなくなった遙夏は、ついに雪灯に告白をする。雪灯はこれまで自分を理解し、力になってくれた遙夏の気持ちを受け入れ、二人は付き合うようになる。そして雪灯は約束どおり結以と動物園に行き、その帰りに遙夏と交際をスタートさせたことを伝える。

飯島家での夏合宿

夏休みに入り、早瀬雪灯杉本遙夏と共に、9月に開催される文化祭の打ち合わせをしていた。雪灯と遙夏の交際は順調に進んでいるように思われたが、遙夏はこれまでの関係性から、彼が自分の告白を断れるはずがないということを理解していた。遙夏は複雑な思いを抱きつつも、雪灯にとって特別な人になるにはどうすればいいのか悩んでいた。一方、宝生結以は雪灯と遙夏が交際をスタートさせたと聞き、落ち込んでいる自分に気づく。そして結以は半同棲していた隆生と別れたものの、運悪くこれまで自宅代わりに使用していたライブハウスの一室がトラブルによって使えなくなり、行き場を失ってしまう。そんな時にタイミングよく、飯島豊の自宅で文化祭準備のための夏合宿をしようという話が持ち上がる。雪灯、遙夏、豊、山崎、さらに行き場所のない結以も参加し、泊まり込みで準備を始める。そんな中、飯島家に飯島杏南が遊びやって来る。杏南は自分勝手な行動でみんなに迷惑をかけ、ついにはボヤ騒ぎを起こしてしまう。さらに杏南は身体を張って自分を助けてくれた結以を犯人だと騒ぎ立て、周囲の大人も結以に疑いの目を向ける。

登場人物・キャラクター

早瀬 雪灯 (はやせ ゆきと)

とある高校に通う文武両道の1年生の男子。両親は故人で、病気がちな祖母と小学生の妹、早瀬名桜の三人で暮らしている。背が高く整った顔立ちをした美男子。基本的にクールでどこか冷めた性格ながら、年相応の喜怒哀楽を見せることもある。中学時代から剣道で優秀な成績を収めており、さらに入学試験も首席で合格したことから、特待生として学費が全額免除されている。裕福とはいえない家庭のため、何がなんでも特待生の資格を維持するために努力している。高校に進学してからも剣道を続けようと考えていたものの、祖母が入院したことで部活動を続けられる状況でなくなり、きっぱりと辞めている。絶望的な気分の中、夜の繁華街を徘徊(はいかい)していた際に宝生結以と出会い、彼女が気になる存在へと変わっていく。中学時代から女子にモテていたが、生活することで精いっぱいだったため、結以と出会うまでは女性を意識した経験もなかった。飯島豊からは「ゆっきー」と呼ばれている。

宝生 結以 (ほうしょう ゆい)

早瀬雪灯と同じ高校に通う1年生の女子。雪灯のクラスメイト。雪灯が夜の繁華街を徘徊していた際、不良とトラブルになっている場面に遭遇し、彼を助けたことで知り合いになる。以降、雪灯とかかわりを持つようになり、いつの間にか気になる存在へと変わっていく。黒髪ロングストレートヘアで、折れそうなほどスレンダーなスタイルの持ち主。一見清楚(せいそ)ではかなげな容姿ながら、ずぼらな性格でぶっきらぼう。言葉づかいも悪く、周囲に馴染もうとしない。また、自分については多くを語ろうとしないミステリアスな一面を持つ。ただし一般常識はあり、困っている人を放っておけないなど正義感も強い。母親はいないが、父親と二人だけの裕福な家庭に育つ。子供にはお金だけ与えていればよいと考えている父親に反抗し、現在は家出中で、隆生の家で半同棲をしている。また、アルバイト先のライブハウスの一室を借り、自宅にしている。高校に入学してからは学校に行くのが面倒だからと登校拒否をしており、周囲からは怖い人物だとカンちがいされていたが、雪灯と親しくなるうちに周囲と少しずつ打ち解けていく。

杉本 遙夏 (すぎもと はるか)

早瀬雪灯と同じ高校に通う1年生の女子。雪灯のクラスメイト。雪灯の幼なじみで、小学校から高校までずっと同じ学校に通っているため、複雑な家庭に育った彼の事情を汲(く)み、何かと世話を焼いている。幼い頃から雪灯に思いを寄せているものの、告白する勇気を持てないでいる。周囲からすると雪灯に好意を寄せていることは明らかだが、雪灯は恋愛ごとに関心がないため、気づいてもらえずにいる。かわいらしい顔立ちの美少女なため目立つ存在だが、雪灯に片思いをしていることを周囲は知っているため、恋人はいない。また、鈴宮をはじめ一部の女子生徒からは、雪灯が絡むことに介入してくる邪魔者として疎まれている一面もある。雪灯の妹の早瀬名桜とも親しくしており、彼女からは将来的には雪灯と結婚して姉になって欲しいと望まれている。

飯島 豊 (いいじま ゆたか)

早瀬雪灯と同じ高校に通う1年生の男子。雪灯のクラスメイト。入学して早々、文武両道な雪灯に興味を抱き、山崎を交えて親しい友達となる。マイペースな性格のトラブルメーカーで、雪灯たちを振り回すことが多い。ただし、飯島豊の常識外れの言動により、状況が好転する場合もある。日本でもトップレベルの大手家電量販店を経営する一族に生まれた長男で、幼い頃から非常に甘やかされて育った。宝生結以に交際して欲しいとつきまとってはきっぱりと拒絶されているが、豊自身はまったく気にしていない。気の多いタイプで結以に限らず、つねに彼女が欲しいと思っている。

山崎 (やまざき)

早瀬雪灯と同じ高校に通う1年生の男子。雪灯のクラスメイト。雪灯、飯島豊と親しくしている。人とコミュニケーションを取るのが下手な雪灯と、マイペースな性格でトラブルメーカーの豊との板挟みになっている苦労人で、二人に振り回されることが多い。見ていないようで他人をしっかり観察しており、雪灯に何か変化があった時には声をかけ、フォローすることも多い。

鈴宮 (すずみや)

早瀬雪灯と同じ高校に通う1年生の女子。雪灯のクラスメイト。雪灯に思いを寄せており、彼が剣道部に入部しなかったことを知り、心配して遊びに行こうと声をかけた。祖母が入院したことで雪灯が部活動を辞めたことや、彼に両親がいないことは知らない。雪灯に声をかけているだけなのに、何かと介入してくる杉本遙夏のことを快く思っていない。ただし、あくまでお節介な遙夏が気に入らないだけで、彼女自身のことが嫌いなわけではない。また、宝生結以に対しても悪態をつきながらも、面倒を見ることも多い。

早瀬 名桜 (はやせ なお)

早瀬雪灯の妹で、小学生の女子。両親を早くに亡くし、病気がちな祖母と雪灯と三人で暮らしている。雪灯のことを非常に慕っており、雪灯と幼なじみで自分に対して優しくしてくれる杉本遙夏のことも大好きで、将来は雪灯と遙夏が結婚して欲しいと望んでいる。自分の家は金銭的な余裕がないことに気づいており、同じクラスの女子の会話についていけないことにコンプレックスを抱いているものの、誰にも打ち明けられずにいる。また、関根など一部の男子からは貧乏なことをからかわれ、傷ついている。しかし、雪灯や祖母には心配かけたくない気持ちから、学校でのトラブルのことは伝えていない。早瀬名桜本人は自覚していないが、華やかな顔立ちをした美少女。

隆生 (りゅうき)

宝生結以と交際している高校2年生の男子。結以とは中学生の頃から交際している。結以と同様に実家は裕福であるものの、両親からは育児放棄されており、高校生ながらも豪華なマンションで一人暮らしをしている。家出中の結以をたびたび自宅に招いており、半同棲状態にある。早瀬雪灯や結以とは別の高校に通っているが、ほとんど登校していない。軟派な性格で、何ごとに対しても不真面目な態度を見せる。

関根 (せきね)

早瀬名桜と同じ小学校に通う男子。名桜のクラスメイト。名桜の家庭が裕福ではないことを知っており、クラスの男子といっしょに貧乏人だと言っていじめている。しかし名桜からの反応が薄く、相手にされないことにいら立ちを覚えている。実は名桜をいじめているのは好意を抱いているためで、どう彼女と接すればいいかわからないでいる。

飯島 杏南 (いいじま あんな)

飯島豊の叔父の娘で、小学1年生。夏休みに豊の自宅に遊びに来たことで、早瀬雪灯たちと知り合いになる。雪灯に対しては、まるで王子様のようだと好感を抱く一方で、豊たちの前ではわがままに振る舞う。特に自分に対して厳しい姿勢を崩さない宝生結以に対しては、敵意をあらわにしている。裕福な家庭に育った一人娘で甘やかされてきたこともあり、非常に自己中心的な性格の持ち主。

店長 (てんちょう)

宝生結以がアルバイトしているライブハウスを経営している男性。結以がケガをして動けなくなった際に、ライブハウスまで送り届けたことで、早瀬雪灯と知り合いになる。彼の顔立ちを気に入っており、アルバイトに急な欠員が出た際には、雪灯にヘルプに入ってもらっている。雪灯にとって学校外で初めて接点を持った大人の男性であり、人生の先輩として雪灯から相談を受けることも多い。家出中の結以に、ライブハウス内にある空き部屋を貸している。また、結以と隆生との交際には賛成しておらず、結以には雪灯と恋人同士になって欲しいと望んでいる。

書誌情報

ハロー、イノセント 8巻 集英社〈りぼんマスコットコミックス〉

第5巻

(2022-06-23発行、 978-4088676630)

第6巻

(2022-11-25発行、 978-4088676869)

第7巻

(2023-04-25発行、 978-4088677125)

第8巻

(2023-09-25発行、 978-4088677279)

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