概要・あらすじ
安積班は殺人や強盗などの凶悪犯罪を取り締まる警視庁神南署の刑事課強行犯係。ゲームセンターで起こった強盗事件を解決したばかりだったが、再びゲームセンターで強盗事件が発生したとの連絡を受けてすぐに現場へと駆けつける。現場に残された遺留品から警察犬のサブローが突き止めたのは、カリスマ主婦としてマスメディアに取り上げられている料理研究家、山崎奈保子の自宅だった。
さらに後日の捜査で奈保子の娘、山崎七海は施設から引き取られてきた養女であること、そして施設で七海が兄のように慕っていた男性、藤岡裕二がかつてゲームセンターで働いていたということが捜査線上に浮かび上がる。
登場人物・キャラクター
安積 剛志 (あづみ つよし)
個性派ぞろいの安積班で班長を務める男性。階級は警部補。熱血漢で情に厚く、決して弱音を吐かず真摯に捜査にあたる姿勢は班の誰もが認めるところで、その人間性から彼を慕う者も多い。過去に結婚し娘を1人もうけたが、その妻とは既に離婚している。
村雨 秋彦 (むらさめ あきひこ)
安積班のサブリーダー的ポジションを担う男性刑事。何事も器用にこなす能力の高い人物で、安積剛志がいない時には安積班のメンバーをとりまとめる強いリーダーシップを持つ。その有能さから高野に本庁への栄転を勧められているが、決めあぐねている。犬が苦手。
黒木 和也 (くろき かずや)
安積班に所属する男性刑事。非常に几帳面で礼儀正しい人格者で、先輩を敬い後輩には優しく指導する生粋のスポーツマン。足が非常に速く、安積班の中でも常に一番で現場へと駆けつける。事件の際には、須田三郎とコンビを組んで捜査にあたる。
桜井 太一郎 (さくらい たいちろう)
安積班では最年少の男性刑事。事件に際しては一切手を抜かず、常に一生懸命捜査にあたる若者。童顔で見た目も若々しいため、安積剛志からは「お前のことを刑事だと疑うやつはいないだろう」と言われている。これを逆手に取り、矢吹香織の調査の際には近くのアパートへの潜入捜査官として任命された。
水野 真帆 (みずの まほ)
安積班の紅一点となる女性刑事。男勝りで気が強く、他の男性メンバーに勝るとも劣らない正義感を持つ。その真摯な姿勢故に、不平不満を隠すことなく安積剛志に吐露したり、犯人に対して平手打ちを喰らわせて説教することもある。
須田 三郎 (すだ さぶろう)
安積班の男性刑事で、刑事にあるまじき太った体型の男性。しかし、刑事としての能力やその人間性は安積剛志から高く評価されており信頼も厚い。業務中であってもかまわずおやつを食べるマイペースな性格で、課長の金子禄朗によく怒られている。ゲームが好きで、ネットゲームでは「すだっち」というキャラクターを使用している。 ちなみにキャラクターのレベルは48。
金子 禄朗 (かねこ ろくろう)
警視庁神南署刑事課の課長を務める男性。安積班を監督する立場にあり、いつも何かと問題を起こす安積班の行動に胃を痛めているため薬が手放せない。安積班のメンバーからは、密かに「カネゴン」というあだ名で呼ばれている。
速水 直樹 (はやみ なおき)
死傷者を出した路線バスの爆破事件で、身代金を受け渡した後に追跡要員を務めた男性刑事。犯人追跡には絶対の自信を持っており、「自分から逃げ切れる奴はいない」と豪語する通り、実際に白バイの運転は非常に巧みで大活躍を見せる。
高野 (たかの)
警視庁特別犯捜査係の男性警部。死傷者を出した路線バス爆破事件の捜査を取り仕切る人物。厳格にしてぶれない精神の持ち主で、報道陣の質問には一切答えずに常に冷静な意見を述べる。一方で安積剛志の意見には割と好意的に耳を傾けてくれる。
石倉 (いしくら)
安積剛志と顔なじみの男性鑑識官。担当鑑識官として剛志と現場で顔を合わせることも多い。また、剛志に届いている不審物の鑑識を業務とは別に独自に調べてくれるなど非常に協力的な人物で、剛志からも信頼されている。
田中 (たなか)
須田三郎が警察学校時代に同期だった男性。4月から神南署に異動してきたため、久しぶりの再会となるが、ネットゲーム上ではずっと交流を続けていた「ネッ友」。ネットゲームでは「しんしん」という名前の女性キャラクターを使っている。ちなみにキャラクターのレベルは55。
サブロー号 (さぶろーごう)
須田三郎と同じ名前ということで金子禄朗からは快く思われていない警察犬。警察犬としての能力は高く、山崎七海誘拐事件では事件解決に一役買った功労犬として東報新聞にも大きく掲載された。
山口 友紀子 (やまぐち ゆきこ)
東報新聞の女性記者。安積班に興味を示し、彼らの追っている事件の取材もしているため、安積班のメンバーとも顔見知り。唯一、安積班の水野真帆に対してだけは苦手意識を持っている。
山崎 奈保子 (やまざき なほこ)
料理研究家としてマスメディアで活躍するカリスマ主婦。山崎七海の母親だが、七海は3年前に亡くした実子の代わりに施設から引き取った養女で、山崎奈保子とは血は繋がっていない。料理本やオリジナルの鍋などがよく売れており、自らがプロデュースしたフライパンは1つ3万円もする。そのため非常に羽振りが良く、豪邸に住んでいる。
山崎 七海 (やまざき ななみ)
山崎奈保子の娘で、血の繋がりはなく、3年前に亡くなった奈保子の実子の代わりに施設から引き取られてきた養女。したくもない習い事をさせられたり、母親に兄のように慕っていた藤岡裕二を悪く言われたりしており、現在の生活に不満を抱いている。
藤岡 裕二 (ふじおか ゆうじ)
山崎七海が施設で実の兄のように慕っていた18歳の青年。かつてゲームセンターでアルバイトをしていた。七海が山崎奈保子に引き取られた後も携帯電話のメールでお互い連絡を取りあっているが、奈保子からは快く思われていない。
岩淵 浩司 (いわぶち こうじ)
死傷者を出した路線バスの爆破事件の被害者男性。20年前に無免許運転でひき逃げ事件を起こし、ある家族3人の命を奪ったという過去がある。当時は18歳で、地元では相当なワルとして知られていた。
二川 茂夫 (ふたがわ しげお)
20年前に岩淵浩司と共に無免許運転で事故を起こした男性。現在は結婚しており、犯罪歴を隠すために妻の苗字を名乗っている。旧姓は「辰沼」。娘は妻の連れ子のため血は繋がっていないが、実の娘のように可愛がっており、近日中に行われる彼女の結婚式を楽しみにしている。
結城 篤人 (ゆうき あつと)
20年前に岩淵浩司が起こした家族3人ひき逃げ事件の、ただ1人の遺族の男性。家族を失ってからは施設に預けられて育ち、その後アパートで一人暮らしを始めてすぐに足取りが途絶えていた。現在28歳。
末松 由紀 (すえまつ ゆき)
六本木のキャバクラで働く女性。ゴミの分別もせずに捨てたり浪費癖があったりと生活面では多少問題があったが、有名企業の重役の名刺を多く所持する売れっ子のホステスだった。自宅マンションで刺され、死亡しているのが発見される。
末松 敦子 (すえまつ あつこ)
末松由紀の母親。「白百合美容室」という美容室で働いている。由紀の殺人事件に関する聞き込みで、水野真帆に「犯人は死刑になるのか」と尋ね、1人を殺しただけでは死刑にはならないことを知ってホッとした様子を見せるなど、言動が怪しい。
板倉 裕人 (いたくら ひろと)
末松由紀と2年前から交際している男性。仕事はバーテンダーで、六本木で働いている。由紀が殺されたと思われる日の翌日には何事もなかったかのように出勤しており、桜井太一郎から「愛がなかったのではないか」と疑われる。
柴田 奈美 (しばた なみ)
8年前に起きた、引きこもりの男性が起こした無差別殺傷事件の現場に居た女性。その時に親友が目の前で刺されて死亡している。親友を救えなかったことや自分だけが生き残ってしまったことを気に病み、罪悪感を感じている。
遥 (はるか)
8年前に起きた、引きこもりの男性が起こした無差別殺傷事件の被害者の女性。親友の柴田奈美とともに遊びに出かけている時に無差別殺傷の現場に遭遇。奈美に逃げるよう促されたが、恐怖で足がすくみその場で刺殺された。
遥の母 (はるかのはは)
遥の母親。無差別殺傷事件によって娘を失ったショックから当時はかなり取り乱し、その場にいて無事だった柴田奈美に「どうしてあなたじゃなかったのよ」と泣きながらつめ寄った。これが奈美に生きる罪悪感を植え付ける大きな原因となった。
牧野 和樹 (まきの かずき)
自宅で死体となって発見された青年。階段の一番上から落ちた後、後ろから首を絞められ窒息死した。3年前に突然引きこもりになり、バットを持ち出して家の中で暴れるなど家庭内暴力を振るっていた。
牧野 真 (まきの まこと)
牧野和樹の弟で13歳の中学生。和樹を殺害したのは母親の牧野敬子ではなく自分だと言い張り、実際にその現場に居合わせた者でしか知りえない殺害方法を自供している。和樹が引きこもりになっていることはクラスメイトにも知られており、学校ではそれが原因でいじめられていた。
牧野 敬子 (まきの けいこ)
牧野和樹と牧野真の母親。和樹の家庭内暴力に耐えられなかった末に自ら殺害したと自供しており、捜査線上の最有力容疑者とされている。一方で現場の状況とは食い違っている供述が数多くあり、真をかばっている可能性も視野に入れられている。
矢吹 草太 (やぶき そうた)
西都銀行強盗事件の容疑者となっている31歳の男性。3年前には窃盗で捕まっており、当時学生だった妹の矢吹香織に50万円を弁償させた。昔から何かと問題を起こすことが多く、香織からは煙たがられている。
石川 恒男 (いしかわ つねお)
西都銀行の融資担当をしている銀行員。プライベートではギャンブル好きが高じて金に困っていたという情報もあり、西都銀行強盗事件を矢吹草太と共謀した内通者ではないかと疑われている。草太とは同級生。
矢吹 香織 (やぶき かおり)
矢吹草太の妹。現在は劇団に所属しつつ、アパート近くの喫茶店でアルバイトをしながら生計を立てている。兄の草太の存在を迷惑に思っており、彼が以前に起こした窃盗事件では自ら50万円を払って弁償した。それからは3年間、草太とは会っておらず、現在は連絡先すら知らない状況になっている。
門倉 (かどくら)
矢吹香織がアルバイトとして働いている喫茶店のマスター。香織とは同じ富山県出身で、香織が上京してから何かと世話をしている。店内に香織の劇団の公演ポスターを張るなど、香織に対して理解を示す。
小淵沢 茂雄 (こぶちざわ しげお)
暴力団「亜麻田組」の幹部を務める男性。柴崎卓が不良グループを率いてオヤジ狩りをした際、そのことをどこからか聞きつけ、報復のため組をあげて不良グループに暴力を振るった。その後何者かに後ろから拳銃で撃たれ、公園で死亡しているのを発見される。
本宮 照之 (もとみや てるゆき)
みどり銀行青山支店主任調査役を務める男性で、柴崎卓の不良グループに暴行を受けた被害者。暴行を受けた後に告訴したものの、すぐにそれを取り下げている。理由を「銀行員としてのイメージを守るため」と語っているが、その後の調査では不審な点も多く見られ、警察には何か隠しているのではないかと疑われている。
柴崎 卓 (しばざき たく)
渋谷を縄張りにした不良グループの、リーダー格の少年。川越の実家には帰らず、もう2年間も音信不通になっている。両親にも関心を寄せられず、実質親子の縁は切れているも同然の状態にある。趣味は絵を描くことで、その腕はプロレベル。
滝本 哲也 (たきもと てつや)
警視庁の警部で、かなり厳格な性格の男性。中原一平とは同じ警察学校の出身で、お互いを良く知る間柄。そのため、一平の妹である中原美奈子の相談も頻繁に受けており、その際には助言も行っていた。
中原 美奈子 (なかはら みなこ)
3年前、逃走中の容疑者が保育園に立てこもった際に人質に取られていた女性で、当時は21歳。その事件は安積剛志によってスピード解決された。数年後、剛志のもとに送られてきた不審物から彼女の指紋が検出されたが、その後の捜査で半年前に自殺していたことが判明する。
中原 一平 (なかはら いっぺい)
中原美奈子の兄。42歳の現職警察官で、歳の離れた妹の美奈子のことを誰よりも可愛がっていた。美奈子が死んだのは安積剛志が親密な関係になった後に捨てたせいだと思い込んでおり、剛志に対して強い恨みを抱いている。
内藤 英治 (ないとう えいじ)
過去に拳銃密輸で厳重注意を受けたことのある男性。その際は須田三郎が取り調べを担当し、ゲームの話題でお互い盛り上がったため三郎は彼の人間性を知っている。当時の印象から三郎に「度胸のあるヤツではない」と見なされ、殺人などを犯すような人物ではないとされている。現在はサーフショップを経営している。
集団・組織
安積班 (あづみはん)
警視庁神南署刑事課強行犯係の通称。6人のメンバーで構成されており、それぞれ違った個性を持つバラエティ豊かな捜査班。いつもは班長である安積剛志が先頭で指揮を執っているが、何らかの事情で剛志が不在な場合は、サブリーダーの村雨秋彦が取り仕切ることもある。
クレジット
- 原作
-
今野敏