バターナッツ!

バターナッツ!

女子大学生の藍川りょうは、勘違いにより同じ大学の男性の先輩、柿山千聖と一つ屋根の下で暮らすこととなる。最初は気まずい雰囲気だった2人が、日々の共同生活や映画サークル「バターナッツ」を通していつしか理解し合い、恋に落ちていく様子を丁寧に描いたラブコメディ作品。「月刊サンデーGX」2014年3月号から2015年5月号にかけて連載された。

正式名称
バターナッツ!
ふりがな
ばたーなっつ
作者
ジャンル
ラブコメ
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あらすじ

藍川りょうと柿山千聖の出会いとバターナッツへの入部(第1巻)

藍川りょうは東京にある大学、紅学館に進学し、福岡から上京して来た。紅学館の生徒だけが利用できるインターネット上のルームシェア掲示板で見つけた部屋に引っ越し、後は同居人である女性と顔を合わせるだけという状態にあった。そんな中、大学でサークルの新人勧誘をしていた指方百恵に誘われるがまま、彼女が部長を務める映画サークル「バターナッツ」の制作した映画を鑑賞する。仲間と協力して映画を作る工程が面白そうだと感じたりょうは、「バターナッツ」に入部を決意。その後に催された新人歓迎会で、その入部動機を語る。しかし、その動機が軽々しいと、副部長の柿山千聖に激しく否定され、彼に対して苦手意識を抱くようになる。嫌な気分で新居に戻ると、そこには先ほど叱責してきた千聖がいた。見知らぬ相手とのルームシェアを最後まで心配していたりょうの父を、振り切って実家を出て来たため、相談する相手もおらず、りょうはしばらくの間だけ千聖との共同生活を受け入れる。一方の千聖もまったくりょうを受け入れず、キッチンやテーブルにビニールテープを張って「1センチでも入ってくるな」と冷たく突き放した態度を取るのであった。

初めての映画製作と上映会(第1巻)

映画サークル「バターナッツ」では、新入生を迎えて初めての短編映画製作を行うこととなった。くじ引きで4人1組のチームを決めることとなり、藍川りょうは同じ文学部所属の浪速野々子、新入生の羽広雄大、そして柿山千聖と同じチームになってしまう。撮影どころか映画にもあまり詳しくないりょうは、とりあえず千聖から録音を任されることとなる。床に這いつくばってマイクを向けることもある録音の仕事はハードであり、動きやすい服が必要だと感じたりょうは、偶然部室にあったつなぎを見つけてそれを身に着ける。その姿はかつて「バターナッツ」に所属していた女性、立川りょう子とそっくりであり、千聖からも驚かれてしまうほど似ていた。そしてりょうは指方百恵から、千聖がかつてりょう子と同居していた、という意外な事実を聞かされるのだった。つなぎを着て以来、まったく千聖が絡んでこなくなったので、りょうは疑問を抱きつつも、プライベートに立ち入るのはやめようと、深く詮索せずにいた。そうこうするうちに映画は完成し、撮影した映画の上映会が開かれることとなった。映画はいずれも酷い出来の作品ばかりで、りょうのチームも落胆するが、羽広を中心に「次回はもっとうまくなりたい」と奮起を誓う。一方、努力したのにこんなものかと退部する者も多く、りょうは映画製作の厳しさを早くも知ることとなる。

明かされる柿山千聖と前同居人、立川りょう子の関係(第1巻)

上映会の帰り、柿山千聖に貸していたカメラを返してほしいと、指方百恵がりょうたちの住居を訪れることとなる。藍川りょうは千聖との同居を内緒にしようと、靴を隠して部屋に閉じこもっていた。そこに、東京出張中だった姉、藍川あきらがやって来る。妹の部屋に男性がいることをあきらがいぶかしがる中、さらにそこに、百恵も到着する。実はあきらと百恵は、互いにオーストラリアに留学中に知り合っており、これが久々の再会であった。そこへ顔を出したりょうは、千聖と同居をすることとなった経緯を説明。そして百恵から、千聖と立川りょう子が同居するに至った経緯も聞くのだった。実は千聖はりょう子に想いを寄せていたが、その気持ちを伝えないままにりょう子が卒業。その後、代わりにやって来た新たな同居人であるりょうを、素直に受け入れることができずに、冷たく当たっていたのだった。あきらと百恵に問い詰められた千聖はりょうに謝罪し、2人の同居が再スタートする。しかし、千聖のことを簡単に許せないりょうは、たびたびりょう子のつなぎを着用しては、千聖を動揺させて楽しむのだった。

2度目の映画撮影と縮まる2人の距離(第1巻~第2巻)

1回目の映画は納得のいかない作品となり、羽広雄大はどうしてももう一度同じメンバーで映画製作をしたいと、藍川りょう浪速野々子、そして柿山千聖に声をかける。リベンジしたいという気持ちは皆同じだったので、4人での映画撮影が再スタート。そんな中、OKテイクとNGテイクをメモした大切なノートをりょうが落とし、間違って紅学館の男子学生に持ち去られてしまう。その男子学生は休学中であり、新幹線で新潟に向かうため大学内を出た後だった。千聖とりょうは上野まで彼を追いかけていくが、途中で大雨のために電車が止まってしまう。千聖はりょうを電車に残し、上野駅まで大雨の中、ノートを取りに走っていく。ノートを落した罪悪感を覚えていたりょうは千聖に心から感謝し、この出来事が2人の距離を一気に縮めることとなった。その後、2作目の映画撮影は無事終了し、技術的にはまだまだながらも、納得のいく作品ができあがる。

柿山千聖に恋心を抱きはじめる藍川りょう(第2巻)

交流を重ねるうちに柿山千聖の態度も優しくなり、藍川りょうは心穏やかな生活を送っていた。しかし、立川りょう子のことが話題に上がったり、りょう子の影を感じるたびに、なぜかりょうの心はざわめくのだった。さらに千聖から「りょうはただの後輩」「りょう子にはアプローチを続けていきたい」という言葉を聞いて、りょうは深く傷つく。このモヤモヤした気持ちを藍川あきらに相談したりょうは、自分が千聖に恋心を抱いていることを自覚する。その後、映画サークル「バターナッツ」の飲み会で、卒業生の間宮にアルコールを大量に飲まされたりょうは、酔った勢いで男女問わずにメンバーたちに抱き着くのだった。しかし、複雑な想いを抱く千聖にだけは抱き着くことができず、千聖はりょうに嫌われているのだとショックを受けてしまう。

柿山千聖の恋の行方(第2巻)

映画サークル「バターナッツ」で、サークルメンバー全員で映画を撮影する計画が持ち上がる。まずは柿山千聖がロケハンをすることになったが、その際、嫌われているのならば親睦を深めて解消したいと、藍川りょうも誘う。図らずも2人きりのデートとなったためりょうは大いに浮かれ、楽しそうに振る舞うりょうを見ているうちに、千聖の心にも変化が現われる。そして、帰りの電車で眠ったりょうが自分にもたれかかってきたので、千聖は胸をときめかせるのだった。その後、千聖が1人で部室で作業をしていたところ、りょうを狙っている卒業生の間宮が現われる。間宮は千聖とりょうの2人を街で見かけたと話し出し、りょうは立川りょう子の代わりなのか、と千聖を責め立てる。そんな間宮に対し、千聖は思わず「りょうが好きだ」と叫んでしまう。部室に偶然入って来たりょうは、その言葉を聞いて呆然とする。思わず言葉にしたことにより、りょうへの気持ちを完全に自覚した千聖は、なぜか長らく片想いをしていたりょう子のもとへと向かうのだった。

登場人物・キャラクター

藍川 りょう (あいかわ りょう)

大学1年生の女子。年齢は18歳。りょうの父、母親、姉の藍川あきらの4人家族。福岡県出身で、東京にある大学、紅学館文学部に進学するため単身上京して来た。その際、紅学館の生徒だけが利用できるインターネット上のルームシェア掲示板を利用して、同居人として柿山千聖と出会う。もともと、写真が送られてきた時に千聖と一緒に写っていた女性が同居人だ、と勝手に勘違いし、入居してしまった。 仲間と協力して映画を作る工程が面白そうだと感じ、映画サークル「バターナッツ」に入部。新人歓迎会で入部動機を話したところで千聖に激しく否定され、以降、千聖が苦手となった。しかし、「バターナッツ」の活動を通して距離を縮めていき、最終的には恋心を抱く。 本来明るく素直でまっすぐな性格ではあるが、恋愛経験に乏しいため、千聖にどう接して良いのか分からず、避けてしまう傾向がある。初めての映画製作で柿山千聖、浪速野々子、羽広雄大と同じチームになり、録音を担当。撮影時には立川りょう子が部室に残していったつなぎを愛用している。

柿山 千聖 (かきやま ちひろ)

紅学館に通う大学3年生の男子。映画サークル「バターナッツ」の副部長を務めている。藍川りょうからは「ちひろ先パイ」と呼ばれている。黒髪で眼鏡をかけ、一見穏やかそうな容姿をしているが、言いたいことははっきりと口にするうえに、毒舌家である。「仲間と協力して映画を作るなんて面白そうだから」と「バターナッツ」に入部して来たりょうに対しても、仲良しこよしでできるものじゃないと否定し、辛辣な言葉を投げかけた。 元同居人が家を出たことをきっかけに、インターネット上のルームシェア掲示板に投稿した。古いガラケーを使っているため大きいサイズの写真が表示できず、十分に確認しないまま、りょうを男だと思って話を進めてしまった。りょうが引っ越して来る前は、「バターナッツ」の先輩で、入部以来ずっと片想いをしていた立川りょう子と同居していた。 最初はりょう子と入れ替わりで入居していたりょうを認められずに、冷たく接していたが、指方百恵や藍川あきらからの助言もあって反省。以降は急速に態度を軟化させていく。りょう子のことは今でも好きで、アプローチはずっと続けていこうと思っている。 新入生にとっての初めての映画製作で、りょう、浪速野々子、羽広雄大と同じチームになり、サポートや編集作業を担当する。

立川 りょう子 (たちかわ りょうこ)

紅学館の卒業生の女性。映画サークル「バターナッツ」の前部長を務めていた。柿山千聖や指方百恵の1つ上の先輩にあたる。藍川りょうと入れ替わりに卒業し、現在はテレビ局の営業として働いている。サバサバとした性格の美人で、千聖が「バターナッツ」に入部以来、ずっと片想いをしていた相手。以前ルームシェアをしていた女友達が妊娠し、結婚するために出て行ってしまった。 そのため、「バターナッツ」で同居人を探していたところ、千聖が同居を申し出たという経緯がある。千聖と2年間同居した後、卒業に伴って同居を解消した。同居中は千聖の気持ちには気づいておらず、男性として意識することもなかった。映画撮影時にはつなぎを愛用しており、偶然部室で見つけたりょうが引き続き着ている。

浪速 野々子 (なにわ ののこ)

紅学館文学部1年生の女子大学生。年齢は18歳。映画サークル「バターナッツ」に所属している。藍川りょうとは学部が同じということもあり、新人歓迎会で出会ってすぐに打ち解けた。「バターナッツ」に入部したのは、高校時代に脚を怪我して陸上部を退部し、落ち込んでいた時に偶然観た映画に救われたことがきっかけ。眼鏡をかけた一見おとなしそうな風貌だが、映画のこととなると熱くなり、羽広雄大とはお互いの意見や理想を激しくぶつけ合うことが多い。 柿山千聖には、女優の池脇千鶴に似ていると言われているが、浪速野々子自身は否定している。初めての映画製作でりょう、千聖、羽広雄大と同じチームになり、役者として出演。

羽広 雄大 (はびろ ゆうだい)

紅学館に通う大学1年生の男子。年齢は18歳。映画サークル「バターナッツ」に所属している。初めての映画製作で藍川りょう、浪速野々子、柿山千聖と同じチームになり、監督を務めた。上映会で自分の力の至らなさを痛感し、次回はもっとうまくなりたいと奮起を誓う。野々子とはお互いの意見や理想を激しく言い合う仲である。

指方 百恵 (さしかた ももえ)

紅学館に通う大学3年生の女子。映画サークル「バターナッツ」の部長を務めている。大人びた優しい雰囲気の持ち主で、サークルの新人勧誘合戦に疲れて休憩していた藍川りょうに、自分たちが製作した映画を観にこないかと声をかけた。無理強いはしなかったので、その姿勢が却ってりょうの興味を惹くこととなった。高級な撮影機材を個人的に複数所有するなど、謎の多い人物として「バターナッツ」内でもたびたび噂になっている。 オーストラリアへの留学経験があり、その際にりょうの姉、藍川あきらと知り合いになった。

間宮 (まみや)

紅学館の卒業生の男性。映画サークル「バターナッツ」の元部員。現在も、暇があると「バターナッツ」の飲み会に参加している。人当たり良く見えて性格は腹黒く、人を蹴落としたり、手のひらを返したりすることを何とも思わない人物である。女性に対しては比較的優しいが、男性には辛辣で嫌味ばかり口にする。そのため、「バターナッツ」内でも厄介者として知られており、特に指方百恵や柿山千聖からは強く警戒されている。 自分と同じ福岡県出身の藍川りょうに目をつけ、アルコールを大量に飲ませてお持ち帰りをしようとしたが、百恵と千聖の機転によって計画は失敗した。

りょうの父 (りょうのちち)

藍川りょうの父親。福岡県在住。東京の紅学館に進学するりょうを心配していた。また、インターネット上で知り合った人物とルームシェアすることに最初から反対し、実際に家を出る直前まで気にかけていた。そのため、りょうが柿山千聖と同居することになった際、彼女は引っ越しを相談することができなかった。

藍川 あきら (あいかわ あきら)

藍川りょうの姉。福岡県在住。姉妹仲は良好で、りょうが東京の紅学館に進学することは特に心配しておらず、インターネット上で知り合った人物とのルームシェアに関しても、りょうの父とは異なって否定はしなかった。東京出張の際にりょうの部屋を訪れ、柿山千聖と同居していることを知る。しかし、その場に以前オーストラリア留学で知り合った指方百恵がいたので、同居の経緯や千聖の人柄を知ることになった。 その後はりょうが引っ越すまで、この事実を父親に隠しておくことを約束した。

集団・組織

バターナッツ

紅学館にある映画サークル。自主製作映画を撮影することを目的としている。部長は指方百恵、副部長は柿山千聖が務め、新入生の藍川りょうや浪速野々子らが入部して来た。毎年ある程度の新入生は集まるものの、映画を1本製作するたびにお互いのエゴや理想がぶつかり合い、退部する者が後を絶たない状態にある。なお、「バターナッツ」の名は、かぼちゃの品種名から取ったもので、特に深い意味はない。

場所

紅学館 (こうがくかん)

東京都内にある男女共学の4年制大学。映画サークル「バターナッツ」をはじめサークル活動も盛んで、のびのびとしたカレッジライフが送れる、自由な校風で知られている。インターネット上には、紅学館に通う生徒だけが書き込めるルームシェア相手を募る掲示板があり、新入生が上京する際によく利用される。この掲示板が、藍川りょうと柿山千聖が知り合い、同居するきっかけとなった。

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