G線上のあなたと私

G線上のあなたと私

婚約破棄された小暮也映子が通うようになった大人のバイオリン教室を舞台とするラブコメディ。也映子とそのバイオリン仲間である北河幸恵、加瀬理人の三人を中心に、彼女たちを取りまく複雑な人間関係や恋愛模様などを描く。「Cocohana」2013年1月号に読み切りとして掲載されたあと、2018年6月号まで不定期連載された作品。

正式名称
G線上のあなたと私
ふりがな
じーせんじょうのあなたとわたし
作者
ジャンル
ラブコメ
 
恋愛
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

寿退社の当日、小暮也映子は結婚予定だった婚約者の智史に婚約破棄される。也映子は意気消沈のままに立ち寄ったCDショップで流れていた「G線上のアリア」を偶然耳にして癒され、この曲に大きく惹かれるようになる。「G線上のアリア」を自分で演奏してみたいと思った也映子は、結婚のために貯めていた貯金と持て余した時間を費やすために、大人のバイオリン教室に入会する。そして毎週月曜の夜にバイオリン教室に通う也映子は、同じグループの加瀬理人北河幸恵となかよくなる。始める前はバイオリンが優雅な趣味だと思っていた也映子だったが、人間関係もバイオリンも一筋縄ではいかず、特に也映子と幸恵はなかなかバイオリンが上達しなかった。そんな中、講師の久住真於の提案により、也映子たちは発表会への出演が決定。思いどおりにきれいな音を出せない也映子たちは、カラオケボックスに集まって発表会に向けた自主練習を励むようになる。也映子は理人や幸恵と共に過ごす中で、幸恵は姑との関係に悩み、理人は真於に片思い中だが望み薄だと悩んでいる事実を知る。也映子は自分だけが傷ついて悩んでいるわけではなく、二人も複雑な悩みを抱えていることを知り、バラバラだった三人は悩みを共有することで結束を強めていく。

第2巻

初めての発表会は無事に終了し、小暮也映子たちは次の発表会に向けて練習を続けていた。次の発表会では、也映子のあこがれの曲「G線上のアリア」を演奏することが決まり、発表会に向けて彼女たちはますます結束が強まっていく。そんな中、加瀬理人は発表会が終わったら思いを寄せる久住真於に告白し、ふられた場合は大人のバイオリン教室を辞めると宣言。その言葉を聞いた也映子は理人を応援しつつも、心の底では複雑な思いを抱いていた。そして三人は発表会当日を迎えるが、北河幸恵幸恵の義母が急病で入院したことで発表会に参加できなくなってしまう。幸恵が不在のまま、也映子と理人は二人だけの演奏で無事発表会を終え、終了直後に理人は也映子の前で真於に告白する。しかし、あっさりと玉砕してしまった理人を目の当たりにした也映子は、彼を酒に誘って励ましながら号泣。理人が教室を辞めるのを寂しく思った也映子は、まだまだ三人でバイオリンをいっしょに続けたいと泣きながら訴える。酔って笑い上戸になった理人にはその言葉は届かなかったものの、その直後に彼が放った言葉は、也映子にとって予想外の一言だった。

第3巻

小暮也映子は発表会に参加できなかった北河幸恵のために、三人での演奏発表会「三人コンサート」を企画する。大人のバイオリン教室を去ることになった加瀬理人との最後の演奏になるかもしれないという寂しさから、理人への複雑な思いを抱えていた也映子は、三人コンサート成功のためにも前向きにがんばろうと練習を重ねていた。その一方で、就職活動を中断して婚活を始めた也映子は、婚活パーティで出会った白鳥と付き合うようになる。しかし、白鳥と何度か会って価値観や感覚の違いを感じた也映子はうまくいかないと確信し、彼との交際を断念。婚活も中断して再び也映子は、三人コンサートの練習に力を入れるようになる。也映子だけでなく理人や幸恵にも少しずつ生活の変化が訪れる中、あっという間に三人コンサートの当日が訪れる。也映子たちが選んだ演目は、三人にとっての思い出の曲「G線上のアリア」だった。それぞれの親族や友人を招いた三人コンサートは無事終了するが、幸恵や理人からお礼の言葉をもらった也映子は、「三人でバイオリン教室に通っていた時間に後戻りしたい」と強く願う。だが、この日を境に燃え尽きた也映子は音楽から離れ、バイオリンにも触らなくなってしまう。

第4巻

街中で偶然に智史と再会した小暮也映子は、いっしょに食事をしながらお互いの近況を報告し合う。その後、智史と別れた也映子は、なんとなく大人のバイオリン教室を休んでしまう。それから1か月後、久しぶりに加瀬理人と電話で話した也映子は、くすぶっていた気持ちを思わず吐露してしまい、理人と気まずい状態になってしまう。一方、バイオリン教室を辞めたあとも清水結愛と微妙な関係を続けていた理人は、結愛に本音と不満を打ち明けられたうえで別れを告げられる。自分なりに結愛のことを考えた理人は也映子に相談するが、話を聞いた也映子は理人にある問いかけをする。これをきっかけに也映子は理人とますます気まずくなるが、一方で也映子は、理人に対する感情が恋心であったことを少しずつ自覚していく。そんな中、大人のバイオリン教室は別の建物への移転が決まる。報告や相談を兼ねて理人と再会した也映子は、結愛と別れることになった理人に、自分の素直な気持ちを打ち明ける。也映子は告白したことを激しく後悔するものの、素直な気持ちで応じた理人と付き合うこととなる。そしてその日のレッスンで、幸せな気持ちのすべてを込めて「情熱大陸」を演奏するのだった。

メディアミックス

本作『G線上のあなたと私』は、2019年10月よりTBS系列で実写ドラマ化されている。キャストは小暮也映子を波瑠が、加瀬理人を中川大志が、北河幸恵を松下由樹がそれぞれ演じた。

登場人物・キャラクター

小暮 也映子 (こぐれ やえこ)

大人のバイオリン教室に通っている元OLで、初登場時の年齢は25歳。ふだんは眼鏡をかけているが、時折コンタクトにしている。明るい性格のがんばり屋で、周囲への気配りもできる。智史と結婚予定だったが、寿退社当日に一方的な理由で婚約破棄される。傷ついた心を癒すために立ち寄ったCDショップで偶然聞いた「G線上のアリア」に心惹かれて自分で演奏したいとの思いから、バイオリンを習い始める。同じ教室に通う加瀬理人、北河幸恵と知り合い、レッスン以外の時間も三人で練習をしたり食事をしたりと共に過ごすうちに、不思議な友情が芽生えていく。婚約破棄されたあとは無職のままで、結婚のために貯めていた貯金と持て余した時間を有効活用するかのようにバイオリンに情熱を傾けている。幸恵とは年齢が離れているものの仲がよく、友人のような関係。また理人のことが気になるようになり、彼の周囲の女性への嫉妬心を覚えたり、久住真於に片思いする理人を応援しつつも複雑な思いを抱くようになる。「三人コンサート」を控えた頃に婚活を始め、一時は婚活イベントで出会った白鳥と交際するが価値観の違いを悟って別れることとなる。その後は婚活も中断し、三人コンサート成功のために再びバイオリンに熱中する。

加瀬 理人 (かせ りひと)

小暮也映子と同じ大人のバイオリン教室に通う大学生の青年。初登場時の年齢は19歳で、大学やレッスン以外の時間は居酒屋でアルバイトをしている。兄の加瀬侑人の婚約者だった久住真於に高校生の頃から片思いしているが、恋愛には少々不器用で侑人の弟という立場上、真於と恋人同士になることは望み薄な現状に悩んでいる。また、真於をふって別の女性と結婚した侑人に対しては、現在でも複雑な思いを抱いている。クールな性格で少々不愛想だが、也映子や北河幸恵と練習したり悩みを共有したりするうちに打ち解けていく。カラオケボックスで自主練習をしていたため、バイオリンの上達は也映子や幸恵よりも早い。ふだんは物憂げな表情やそっけない態度を取ることが多いが、姑との関係に悩む幸恵を心配して励ますなど、優しい一面もある。真於への思いは半ばあきらめたまま長らく抱え込んでいたが、也映子や幸恵の励ましを受け、2回目の発表会終了後に真於に告白すること、ふられたらバイオリン教室を辞めることを宣言する。そして意を決して発表会終了直後に真於に思いを告げるが、ふられてしまう。宣言したとおり1か月後にバイオリン教室を去るが、「三人コンサート」終了後も、バイオリンの練習や也映子や幸恵との交流は続けている。成人して酒を飲めるようになってからは也映子の酒に付き合うことも多くなり、酔うと笑い上戸になる。

北河 幸恵 (きたがわ ゆきえ)

小暮也映子と同じ大人のバイオリン教室に通う女性。初登場時の年齢は41歳。パート主婦で幸恵の義母との関係はあまり良好ではなく、嫁姑問題に直面している。平凡な主婦生活を送っていたが、ピアノを習っている娘の北河多実といっしょに演奏してみたいという思いから、家事や仕事の息抜きも兼ねてバイオリンを習い始めた。明るくおおらかな性格で、年齢の離れた也映子とすぐに意気投合した。也映子とは友人のようになかよくなり、プライベートな悩みも相談し合っている。また也映子や加瀬理人に対しては、年長者らしい冷静で大人な助言をしている。仕事や家庭の都合でレッスンを休むことが多く、演奏の上達は遅いもののバイオリンを心から楽しみ、二人との自主練習や交流などにも積極的に参加している。少々おしゃべりなところがあり、也映子や理人の抱える複雑な事情を多実にしゃべってしまう。2回目の発表会に向けて練習に励んでいたが、義母の急病によって発表会は無念にも不参加となる。後日、也映子の提案により「三人コンサート」の開催が決まり、也映子たちと共に再びバイオリン練習に励むようになる。義母の退院後は多実のフォローもあって義母からの嫌がらせや小言が減り、嫁姑問題も少しずつ改善されつつある。

久住 真於 (くずみ まお)

大人のバイオリン教室の女性バイオリン講師。小暮也映子、加瀬理人、北河幸恵の担当を務めている。理人の兄、加瀬侑人の元婚約者でもある。理人の気持ちに気づきながらも、自分からそれに触れないようにしており、理人とはレッスン中もあくまで「講師と生徒」の関係を貫いているが、時折彼に対して複雑な思いを抱いている。おっとりしたまじめな性格で、也映子たちにも熱心で温かい指導をしている。理人からの第一印象は「なんかふわっとした人」。2回目の発表会後に理人に告白されるものの断り、のちに同僚の庄野と交際を始める。さらに数か月後に教室の移転が決まった頃、庄野との結婚が決まる。

加瀬 侑人 (かせ ゆうと)

加瀬理人の10歳年上の兄で、久住真於の元婚約者。当初は真於と結婚する予定だったが、彼女との婚約を破棄して加瀬史と結婚した。真於に片思いしている理人からは複雑な思いを抱かれており、現在も時々衝突することがある。要領がいいため女性にモテるが、あまり細かいことは考えない単純な性格で、少々粗暴な言動が目立つ。弟の理人とは見た目も性格もあまり似ておらず、特に恋愛に関しては不器用な理人と真逆のタイプ。

北河 多実 (きたがわ たみ)

小学生女子で、北河幸恵の娘。ピアノを習っている。年齢の割に少々ませており、したたかな一面を見せることもあるが、母親思いでしっかりした少女。嫁姑問題で悩んでいる幸恵をさりげなくフォローするなど、彼女のよき理解者でもある。おしゃべりな幸恵を通して、小暮也映子と加瀬理人の抱える複雑な事情を、二人と出会う前から把握している。時折幸恵たち三人のバイオリン演奏にピアノで参加しており、「三人コンサート」でもピアノを担当した。好物は幸恵と訪れたレストランで食べたタンシチュー。

清水 結愛 (しみず ゆうあ)

加瀬理人と同じ大学に通う女子大学生で、理人と同じ居酒屋でアルバイトをしている。理人に片思いし、積極的にアプローチしている。久住真於にふられた理人と付き合うようになってからは、たびたび小暮也映子と北河幸恵を加えた理人のバイオリン練習を見学している。しかし、理人が演奏しているからという理由で応援しているだけで、バイオリンやクラシック音楽にはまったく興味がない。バイオリンに夢中の理人と会える機会が少なくなり、理人が大人のバイオリン教室を辞めたあとも彼との距離を感じるようになり、友人に戻ろうと別れを告げてアルバイトも辞めた。

幸恵の義母 (ゆきえのぎぼ)

北河幸恵の姑。孫の北河多実のことはかわいがっているが幸恵との関係は良好ではなく、幸恵が大人のバイオリン教室に通っているのをあまり快く思っていない。少々頑固で気難しい性格で、近所の人にあることないことを吹き込むなど、幸恵に遠回しな嫌がらせをすることがある。軽い脳梗塞を発症してしばらく入院するが、無事退院した。退院後もしばらくは幸恵に小言を言うことがあったが、多実に指摘されてからは幸恵への嫌がらせや小言を控えるようになった。

加瀬 史 (かせ ふみ)

加瀬侑人の妻で、加瀬理人の義姉。明るく天真爛漫な性格をしている。侑人の実家に嫁入りし、彼の両親や理人との仲も良好。現在妊娠中で、生まれてくる子供の名前をいくつも考えているが、「星絵夢(ぽえむ)」や「苺郎(いちごろう)」などネーミングセンスは少々奇抜。料理の味付けは濃いめ。

晴香 (はるか)

小暮也映子のいとこで、愛称は「晴ちゃん」。幸せな結婚生活を満喫中で、時々也映子の家に遊びに来ている。年齢が近い也映子とはなかよしだが、ストレートな物言いをする。のちに妊娠し、双子を出産予定。お腹にいる子供のことは「米ちゃん」「麦ちゃん」という仮名で呼んでいる。

智史 (さとし)

小暮也映子の元婚約者の男性。也映子が寿退社した当日に「ほかに好きな人ができた」という一方的な理由で、彼女との婚約を破棄した。怒った也映子に殴られて別れてからは長らく絶縁状態だったが、街中で偶然也映子と再会して近況を報告し合った。父親が重病になって入院するなど多忙な状態が続き、也映子との婚約破棄後に付き合っている女性とは結婚していない。

庄野 (しょうの)

大人のバイオリン教室で受付をしている男性。おだやかで落ち着いた性格で、バイオリン初心者の小暮也映子たちを温かく見守っている。のちに同僚の久住真於と付き合うようになり、結婚が決まる。

コーちゃん

清水結愛の友人の青年で、結愛とよくいっしょに遊んでいる。しばしば結愛に振り回されながらも、彼女の恋を見守っている。

白鳥 (しらとり)

小暮也映子が婚活パーティで出会った、文房具メーカーに勤める男性。垂れ目で小太りな体形で、優しくまじめな性格をしている。婚活パーティで也映子とカップルが成立し、交際を始める。かなり計画的でまめなことから、数回目のデートの時には也映子と住む物件の候補リストを用意していた。この少々癖のある性格が災いし、価値観や感覚が合わないという理由で也映子にふられてしまう。

場所

大人のバイオリン教室 (おとなのばいおりんきょうしつ)

小暮也映子、加瀬理人、北河幸恵が通っている大人向けのバイオリン教室。久住真於が講師を務めている。練習コースはグループレッスンと個人レッスンに大きく分かれている。のちに老朽化した建物の取り壊しが決まり、別の建物へ移転する。

その他キーワード

三人コンサート (さんにんこんさーと)

2回目の発表会に家の都合で来られなかった北河幸恵のために、小暮也映子の提案で開かれることになったミニコンサート。会場はカラオケボックスのパーティルームで、略称は「三コン」。演奏者はバイオリンの幸恵、也映子、加瀬理人とピアノの北河多実の四人。それぞれの親族や友人が観客として招かれる。

SHARE
EC
Amazon
logo