パエトーン

パエトーン

1986年のチェルノブイリ原発事故を受けて、原子力発電の危険性に警鐘を鳴らした短編。1988年5月号の「月刊ASUKA」で発表された。マンガの形式ではあるが、ストーリーはさほどなく、原発の怖さを論理的に訴える内容になっている。パエトーンとは、ギリシア神話のひとつで、人間の身で神の火を操れると思いあがり、暴走させて自滅した少年の名前。その思い上がりぶりと、神の火の威力を、原子力を操ろうとする人間の行為に当てはめている。2011年の福島第一原発の事故を受け、同年に無料でWeb公開し、「今日の事態を予見したかのような内容だ」と話題になった。

正式名称
パエトーン
ふりがな
ぱえとーん
作者
ジャンル
神話・伝承
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概要・あらすじ

古代ギリシア。少年・パエトーンは、クラスメイトであるエパプスに何度もレスリングで挑むが、一度も勝てない。全能の神・ゼウスの血を引いているエパプスに対し、自分も太陽神・アポロの子だと主張するが、かえってクラスメイトたちの失笑を買い、その屈辱から、パエトーンは太陽神の宮殿を訪れ、「自分があなたの子である証しとして、日輪の馬車を貸してくれ」と訴える。

アポロは無理だと説得するが、友人の鼻をあかしたい一心のパエトーンは引き下がらず、無理やり借り出してしまい、その結果、あっという間に炎の馬たちは暴走し、海は干からび、大地は燃えた。怒ったゼウスはパエトーンに雷を落とす。そして現代。似たような愚かな物語は引き継がれているのではないか。

チェルノブイリ原発で恐ろしい事故が起きた後になっても、核の平和利用は本当に安全だと言い切れるのか。太陽は今も核融合を続けて、地球はその恩恵を受けているが、太陽に匹敵するエネルギーを地球上で生み出そうというのは、パエトーンと同じく愚かな行為をしているのではないだろうか。

登場人物・キャラクター

パエトーン

ギリシア神話にでてくる少年。クラスメイトのエパプスの鼻をあかしたいという愚かな目的だけで、父であるアポロの日輪の馬車を無理やり借りて、制御できないままに大地を焦がす。

エパプス

パエトーンのクラスメイト。ギリシア神話に出てくる、ゼウスの血を引く少年。クラスの中心的存在。

クリュメネ

パエトーンの母親。 ギリシア神話に出てくる、エチオピア王の妃。パエトーンの父親がアポロだというのを、「母親の見栄」だと友人たちに笑われたと聞き、太陽神の宮殿への道をパエトーンに教える。

アポロ

パエトーンの父で、ギリシア神話の太陽神。パエトーンから「息子である証拠として日輪の馬車を貸してほしい」と頼まれ、難色を示すが、押し切られる。

ゼウス

ギリシア神話に出てくる、全能の神。日輪の馬車の手綱一本持つこともできず暴走するパエトーンに、このままでは万物が滅びてしまうと考え、稲妻を投げつける。

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