パタリロ源氏物語!

パタリロ源氏物語!

魔夜峰央の代表作『パタリロ!』のスピンオフ作品。紫式部の「源氏物語」をコミック化し、『パタリロ!』の登場人物を要所に配している。物語は光源氏の濃厚な恋愛遍歴を中心に展開されるが、ラブストーリーとギャグシーン、さらにハードボイルド小説を彷彿させる鋭い対話シーンが瞬時に転換する、『パタリロ!』最大の魅力も健在。「MELODY」に2004年から2008年にかけて連載された。

正式名称
パタリロ源氏物語!
ふりがな
ぱたりろげんじものがたり
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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概要・あらすじ

桐壺更衣は身分が低いながらもの寵愛を受け、やがて帝の子を宿し出産する。これがのちの光源氏となる若宮である。帝はなおも桐壺更衣とその子若宮を寵愛し続けたが、既に正妻である弘徽殿の女御との間には一子・一の宮があった。若宮が3歳の時に、母親である桐壺更衣が死を迎え、7歳の時にはその美貌と利発さゆえに、将来の嫡子・一の宮との政争を避けるため、若宮は臣下の座に落とされ源氏の姓を与えられた。この時より若宮は光源氏と呼ばれることになる。ちなみにこの年、のとある場所に奇跡を起こす子供が生まれ、これが後に陰陽寮の一派賀茂家の当主となる賀茂波多利郎度摩利音羅(波多利郎)であった。 時は経ち、光源氏が17歳の時、彼は方違えを伝えに来た賀茂家の筆頭となった陰陽師の波多利郎と出会う。そこで陰陽寮の一派である安倍家の暗躍を知り、まもなく実母である桐壺更衣が呪い殺された可能性を波多利郎に示唆され、安倍家に対して復讐心を抱くのだった。

登場人物・キャラクター

光源氏 (ひかるげんじ)

幼い頃からの美形で文才も武力も兼ね備えた男性。父親である帝からも危険視されていた。14歳の時の初体験を皮切りに、都の宮中、街中を問わず数多くの女性と接し、プレイボーイとしての才能を存分に発揮する。美形だが、コミカルな場面では2頭身から3頭身ののっぺらぼうに描かれる。精神的な成熟が足りず苦悩したり、日頃の生活における不満をぶつけるところもある。 女性を一発で虜にする眼力を使うことができる。『パタリロ!』に登場したバンコランがモデル。

賀茂波多利郎度摩利音羅 (かものぱたりろどまりねら)

陰陽師の一族である賀茂家の当主の男性。生まれた時から天才的な実力を持ち、安倍家に対して弱小とされていた賀茂家を盛り上げつつある。また、都を守るという強い使命感を持っている。賀茂波多利郎度摩利音羅が10歳の時、17歳の光源氏と出会ったことをきっかけに、安倍家の陰謀から光源氏を守り続けるようになる。 光源氏の精神的未熟さを諭すことも多い。『パタリロ!』の主人公であるパタリロがモデルで、同様に小銭にがめつい性格。

紫の上 (むらさきのうえ)

幼少期には「若紫」と呼ばれていた女性。のちに光源氏の正室同様の存在となり、「紫の上」と呼ばれるようになる。当時では醜いとされていた栗色の癖毛を疎まれたが、瞳が母親の桐壺更衣にそっくりであるところから光源氏に一目惚れされる。大変なやきもち焼きで、嫉妬心が表面化すると誰も手を付けられなくなる。『パタリロ!』に登場したマライヒがモデルだが、性別は異なる。

頭中将 (とうのちゅうじょう)

光源氏の正室である葵の兄。政治と体制に関して頭の固いところがあり、自由な思想の持ち主である光源氏と対立する。検非違使の長を務めており、剣の腕が立つ。まだ見ぬ自分の娘にさえ愛欲を覚えるほどの重度のロリコン。『パタリロ!』に登場したヒューイットがモデル。

桐壺更衣 (きりつぼこうい)

光源氏の実母。身分が低いにもかかわらず帝の寵愛を独り占めしていたため、他の側室からの嫉妬による嫌がらせを受けていた。陰陽師による占いをもってしても、未来を予測することができなかったため、安倍家の手の者によって呪い殺された。『パタリロ!』に登場したエトランジュ王妃がモデル。

藤壺中宮 (ふじつぼちゅうぐう)

桐壺更衣と瓜二つの美しい女性。光源氏の元服前に帝の妻として迎え入れられ、仲睦まじく過ごしていた。光源氏は彼女を母親としてだけでなく、女性としても惹かれていたため、のちに関係を持ってしまい子供を宿す。表向きは帝の子となっているが、実際は光源氏の子であるため、後々まで2人の苦悩の種となる。

太郎丸 (たろうまる)

光源氏の飼っている猫。実際は、賀茂波多利郎度摩利音羅(波多利郎)が、幼い頃の光源氏を見張るために忍び込ませた甲賀の忍び猫。熱い茶が好き、ネズミと仲がいい、一輪車に乗れるなど、周囲から怪しまれる行動を頻繁に取るが、光源氏は気にしていない。波多利郎が送り込んだ猫であることを光源氏が知った後も、変わらず仲良く過ごしていて、波多利郎への使いにもしばしば出されている。 『パタリロ!』に登場したスーパーキャットがモデル。

安倍仲人 (あべのなかひと)

賀茂家と対立する安倍家の当主の男性。その正体は魔界の四大実力者ベールゼブブの影。安倍家を魔界からの邪法を用いる集団に変貌させ、都を裏から支配することを企てている。冷酷非情な性格で、無能な部下には厳しく、仕える陰陽師らを刀で脅している。占いでも将来が読めなかった光源氏を監視し、彼を守る賀茂家の陰陽師と戦闘を繰り広げる。 『パタリロ!』に登場したベールゼブブがモデル。

猿形那須与一兵衛 (さるがたなすのよいちべえ)

光源氏の剣術の師匠の男性。人の心を読む術など、不思議な力を持つ。ベールゼブブの影である安倍仲人を警戒し、光源氏と賀茂家に対して秘密裏に協力している。『パタリロ!』に登場した魔王サルガタナス准将がモデル。

女官 (にょかん)

光源氏の身の回りの世話をする女御2人組。名前は不明。幼少期から彼の傍に仕えており、一度は結婚のために離れたが、再びパートタイマーとして戻ってきた。光源氏の女性騒動にも動じず、身の回りの雑用だけでなく料理、工作、日曜大工などさまざまなことができる、頼りがいある女性たち。

(みかど)

光源氏の父親。桐壺更衣を寵愛していた時期には単に「帝」、その後は「桐壺帝」と呼ばれるようになる。正室との間に男子・一の宮を有しているが、光源氏の早熟さを危険視して、正室の子を皇太子に指名し、光源氏を家臣の1人とした。

(あおい)

光源氏が12歳の時に結婚した正室。結婚当時は16歳。しかし、元々はのちの帝と決められた光源氏の兄宮へ嫁ぐ予定であったため、光源氏への対応はすこぶる冷たい。長い年月の後、ようやく光源氏と夫婦らしい仲睦まじさを見せるようになるが、その直後、一子を出産した後に、安倍家の手によって呪い殺されてしまう。

六条御息所 (ろくじょうのみやすどころ)

高貴で裕福な未亡人。かつて光源氏と仲睦まじかった。その後疎遠になったにもかかわらず、光源氏の心を取り戻そうと燃えている。安倍仲人の邪法に頼ることで、光源氏の周囲の女性の前に怨霊として現われる。

夕顔 (ゆうがお)

光源氏のうばやの隣に居を構えている美女。光源氏と恋仲になるが、まもなく安倍仲人の邪法と六条御息所の嫉妬から発する悪霊に、呪い殺されてしまう。光源氏にとっても公にできない関係であったため、賀茂波多利郎度摩利音羅の手によって秘密裏に、ねんごろに弔われた。

弘徽殿の女御 (こきでんのにょご)

帝の后の1人で最初の妻となった女性。本来、最大の寵愛を受ける立場でありながら桐壺更衣にその座を奪われ、激しい憎悪を抱く。帝との間に一男二女を授かり、男の子はのちに皇位を継承する。

末摘花 (すえつむばな)

常陸宮の娘御が住む屋敷で貧しく暮らす女性。屋敷に泊まる客から金品を略奪する行為で生計を立てていたが、光源氏に正体を明かされてしまう。それ以降は光源氏と恋仲になり、彼の心配りで別の屋敷に住んで面倒を見てもらうことになる。のちに紫の上の住む二条の屋敷に呼ばれることになる。

朧月夜 (おぼろづきよ)

弘徽殿の女御の妹。光源氏が中宮の奥深くまで侵入した時に偶然出会うが、その時点では光源氏は彼女が何者か知らなかった。その後も光源氏はたびたび彼女のもとを訪れるが、その現場を弘徽殿の女御に発見されたことにより、大変な怒りを買う。

右大臣 (うだいじん)

弘徽殿の女御の夫。宮中では第一の実力を持った人物。安倍家から派遣された官吏である陰陽博士を警戒し恐れているものの、政治的なセンスは決して悪くない。

魔夜 峰央 (まや みねお)

黒髪にサングラス、菱形の口の男性。物語の難解なところを解説し、時には本筋を外れて笑いに走ったり、ナレーションだけで絵を描かずに楽に物語を進めようとする。作者である魔夜峰央がモデル。

集団・組織

玉葱 (たまねぎ)

賀茂家に仕える陰陽師集団。外見は皆同じで、メガネをかけて菱形の口、タマネギの印が付いた烏帽子が特徴。賀茂波多利郎度摩利音羅(波多利郎)をからかったり、その反動で波多利郎にこき使われたりしている。波多利郎が生まれた時から側近として付き従っている。『パタリロ!』に登場したタマネギ部隊がモデル。

陰陽寮 (おんみょうりょう)

宮中に設置されている役所のひとつ。陰陽師が配属されている。占いによって政治の行方や宮中に仕える人の吉、不吉を判断する場所。身分は高くないものの、大きな発言力と影響力を持っている。作品の中では安倍家と賀茂家が、月ごとに交代で役目を行っている。

安倍家 (あべけ)

かつての偉大な陰陽師である安倍晴明によって権力を肥大化させた家系。陰陽の術と忍びの術をもってその力となしていたが、晴明の死後に変容し、魔界からの邪法を研究して用いる集団となってしまった。現在の当主は安倍仲人で、邪法による呪いの術を多用し、宮中を裏から支配しようと企てている。

賀茂家 (かもけ)

安倍家に対抗する陰陽師の家系。当主は賀茂波多利郎度摩利音羅(波多利郎)。陰陽の術と忍びの術を持ち、都を暗躍する組織である。都を守る使命、またはお金を稼ぐ目的であっても邪法を使わないという波多利郎の掲げた方針により、安倍家に反抗する勢力を盛り返しつつある。部下である玉葱を使い、情報収集や光源氏の警護を裏から行っている。

場所

(みやこ)

平安時代における首都のような場所。帝やその后、その世話や政治を行う大内裏を頂点とする。そこで必要となるものを作る職人たちの集まる場所、更に身分の低い人々がいる場所などがある。光源氏は身分に関わらずそのような場所を自由に訪れて、さまざまな人の暮らしぶりや政(まつりごと)の問題点を知ることになる。

大内裏 (だいだいり)

主要な登場人物たちが生活し、仕事を行う場所。特に帝が住み、政を行う一帯は「内裏(だいり)」と称され、寵愛する女性はこのどこかに部屋を与えられて生活を送っている。桐壺更衣が帝に会うために片道200メートルの距離を歩いたなど、その規模の大きさは相当なもの。

イベント・出来事

方違え (かたたがえ)

居場所や移動する方角を変えること。陰陽道の考え方で、都を歩くさまざまな神様に出会って、不幸を招かないようにするためのもの。陰陽師が貴族などに対して方角の吉兆を伝えた。面倒なことではあるものの、光源氏は方違えによって新しい恋人に出会うなど、それなりの結果は得られている様子。

元服 (げんぷく)

成人の儀式。男子が12歳になった時に行われる。以降、衣装と髪型が大人のものに変えられる。これより成人と見なされることで、早々と婚礼の話が舞い込むこともある。また、この年齢より酒を飲むことができるようになる。

葵祭 (あおいまつり)

都にある上賀茂神社と下鴨神社両者のお祭り。期間中、家々に葵の花を飾ったことからそう呼ばれる。貴族も身分の低い人々も祭りに参列する。普段見ることができない貴人の姿を見るため、牛車の列が並ぶほどに大きな祭り。六条御息所と葵の牛車が隣り合ったことがきっかけで、「車争い」と呼ばれる争いごとにまで発展した。

その他キーワード

双六 (すごろく)

平安時代に、身分の上下にかかわらず流行したボードゲーム。現在のバックギャモン。貴族の嗜む教養としての囲碁とは異なり、博打として広まった。短時間で勝負が決まり、戦術の上手さが結果に現われやすいのが特徴。物語中にも要所でバックギャモンの用語が引用されている。

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