あらすじ
孔明、渋谷に降り立つ。
五丈原の戦いの途中で病死した諸葛孔明は、若い頃の肉体に戻った状態で、現代日本へと転生した。孔明の転生先はハロウィンでにぎわう渋谷だったが、見慣れぬ光景に戸惑う孔明はここが死後の世界だと思い込んでいた。気づいた時には渋谷の若者たちに誘われ、孔明がたどり着いたのは軽快なダンスミュージックが鳴り響くクラブ「BBラウンジ」だった。孔明はそこで、プロの歌手を目指す月見英子と出会い、無意識に彼女の歌声に魅了される。その夜、よっぱらったまま路地裏で寝ていた孔明は英子に保護され、目覚めた時には彼女の部屋にいた。そこで自分が生きていることを実感した孔明は、ようやくこの場所が死後の世界ではなく、未来の日本だと確信する。一方で、孔明のことを歴史上の人物になり切ったコスプレイヤーだと思い込んだ英子は、スマートフォンやテレビすら知らないと言う彼に、現代のさまざまなことを教える。すぐにスマートフォンの使い方をマスターした孔明は、この渋谷で新たな人生を歩むことを決意。そのためにはまず軍資金が必要だと、英子のアルバイト先であるBBラウンジに面接に向かう。オーナーの小林は怪しく思いながらも、三国志について語り合える仲間ができたと喜び、孔明をあっさりと採用する。こうしてBBラウンジのバーテンダーを務めることになった孔明は、あっという間にバーでの仕事をマスターし、小林と英子を驚かせる。その後も英子との交流やアルバイトを通して、プロの歌手を目指す彼女の夢を支えたくなった孔明は、軍師(マネージャー)として全力でサポートすることを決意。三国時代、天下泰平のために生きた天才軍師・孔明は新たな夢と目標を胸に、圧倒的無双を誇る知略計略で、日本の音楽界に新たな伝説を誕生させていく。
孔明、進むべき道を知る。
死後、現代の渋谷へ転生した名軍師の諸葛孔明は、第2の人生で出会った歌手を夢見る少女、月見英子の軍師として、クラブ音楽による天下泰平を志すようになった。クラブ「BBラウンジ」での英子のライブをみごと成功させた孔明は、次なる戦場である野外フェスに、彼女と共に初参戦することになった。アウェーな舞台に立たされた英子は、早くも不遇ブースに悩まされる羽目になるが、孔明はあえて機材の不調を装うことで、不遇ブースを瞬時に盛り上げるための秘策を仕込んでいた。孔明は英子のステージを盛り上げるだけでなく、同日に出演したインディーズバンド「JET・JACKET(ジェット ジャケット)」が抱える悩みを見抜いたことで、JET・JACKETメンバーの心をもつかむことに成功する。その後もクラブ界隈(かいわい)で要領よく立ち回っていた孔明は、先日のステージで英子に興味を持った大物プロデューサーの近藤剛を英子に紹介する。剛から出された企画は、超巨大野外フェス「サマーソニア」の出場権を懸けた大型企画「10万イイネ企画」だった。クラブ音楽を騒がせる強敵たちも参加するこの企画に挑むことになった孔明は、さっそく英子や小林と共に作戦を練ることにする。勝利の鍵を握っているのが強力なラッパーの獲得にあると考えた孔明は、才能がありながらスランプに陥る天才ラッパーのKABE太人に目を付ける。コインランドリーでさりげなくKABE太人に接触した孔明は、彼を仲間に引き込むために、条件付きのMCバトルを仕掛ける。激しいラップの応酬の末に、バトルはKABE太人の勝利となるが、彼は孔明とのバトルや英子の歌声を通して音楽への熱意を思い出し、BBラウンジのラッパーとして協力してくれることになる。英子は企画で発表するためのオリジナル曲作りに乗り出す中、孔明の導きにより有名DJのスティーブ・キドと出会う。キドにオリジナル曲の編曲を頼むことになった英子だったが、彼からは英子の歌の未熟さを指摘される。
いざ決戦場へ
SNSでの反応が勝敗を決する「10万イイネ企画」で勝利をつかむため、諸葛孔明は歌手を目指す月見英子の軍師として全力で策を巡らせていた。一方、企画参加用の音源作りに励む英子は、制作中にスランプに陥ってしまう。そんな英子は孔明の指示で路上ライブに初挑戦する中、ボーカルとベースを担当する久遠七海と友人になる。お互いに悩みを抱えていることで、歌や演奏を通して意気投合した七海と行った路上ライブを通して、英子は歌い続けることの本当の意味を見出すのだった。しかし七海本人の口から、彼女が10万イイネ企画に参加している人気アイドルグループ「AZALEA」のリーダーであることが明かされ、英子も同じ企画に参加している歌手であることを打ち明ける。企画では敵同士であると知った二人だったが、互いの夢や目標のためにその後も全力で曲作りに励むことになった。孔明の策が発揮される新曲発表当日であるXデーまで4日を切ったところで、成長を認められた英子は、彼女が作曲した新曲をスティーブ・キドに編曲してもらい、曲を完成させるのだった。一方、AZALEAはプロデューサーの唐澤の指示により、100万円が当たるキャンペーン付きで新曲動画を発表。金でポイントを稼ぐようなやり方に疑問を覚える七海は、以前から唐澤に不満を抱きながらも、AZALEAを人気アイドルに押し上げてくれた恩人でもあるため、逆らうことはできなかった。
孔明と兄妹喧嘩
諸葛孔明の巧妙な策により「10万イイネ企画」で優勝した月見英子は、巨大フェス「サマーソニア」へのチケットをみごと獲得する。勝利を喜ぶ二人だったが、英子のオリジナル楽曲がまだ1曲しかないことから、孔明はアルバムを作成するという新たな目標を定める。10万イイネ企画で好評を博した「DREAMER」に続く新曲を生み出すために、孔明はジャズ界で若き才能を発揮する「若月三兄妹」に目を付ける。さっそく末っ子の若月みちるを通して、英子とのコラボ企画を依頼した孔明だったが、彼女たち三兄妹には昔から超絶不仲という大問題があり、コラボへの道はより困難なものになっていた。父親からも新たなケンカの火種を落とされたことで、若月三兄妹のにらみ合いは、さらに激しくなっていく。そんな三兄妹の争いを鎮めてなかよく曲作りに参加してもらおうと策を練る孔明は、みちるの依頼により今までやったこともないDJに挑戦することになってしまう。そして孔明は、ただふつうにDJの仕事をこなすだけでなく、三兄妹を仲直りさせるための策を張り巡らせる。
演芸合戦
諸葛孔明の策によって若月三兄妹を仲直りさせることに成功し、月見英子はアルバムのための新曲作りの協力を得ることができた。そんな中、順調に準備を進めていた英子たちのもとに、彼女が歌手になることに反対する母親の月見翔子が現れ、現実の厳しさを突きつけてくる。言い合いでは英子は翔子に勝つことができないため、彼女の夢見る音楽の道か、母親の示す堅実な道に進むかを決める勝負をすることになった。翔子は未完成の新曲「Flower Crown」が、人の心を惹(ひ)きつける曲であれば、納得して音楽への道を認めると言い放つ。家族愛をテーマにした新曲完成の鍵を握るのが、しがらみの多い英子の過去にあるとにらんだ孔明は、彼女の実家がある京都に赴くことになる。英子は孔明と共に、家族との因縁や思い出が詰まった京都で、歌を完成させるために足りない何かを見つけようともがいていた。しばらくは月見ウメの寺で世話になることが決まった英子はウメの頼みにより、「京都五商祭」の一大イベント商店街対抗演芸合戦に孔明と共に参戦することになる。この演芸合戦は、舞台が設置された巨大山車(だし)で京都の街を練り歩き、客の投票を多く獲得した商店街が勝利するという、シンプルな内容だった。しかし、ウメたちが所属する木屋町商店街は、演芸合戦に費やせる予算もない弱小商店街であった。連戦連勝の鴨川商店街が今年も優勝とあきらめている木屋町の人々だったが、孔明の知略により、ほかの商店街との一進一退の大勝負へと発展する。英子の歌やウメの願いもあってやる気を出した木屋町の人々は、孔明に協力して優勝を目指すようになる。地元のみんなのため、そして翔子に新曲を聞いてもらうために、英子は孔明たちと準備を整えて舞台に備える。演芸合戦当日、人気歌手に成長したミア西表を擁する鴨川に劣勢を強いられる木屋町だったが、孔明の偽撃転殺の計と英子の熱唱で逆転を狙う。しかし鴨川は孔明の裏をかいて、不敗神話の最強千人囃子(ばやし)を繰り出す。ミアにプロとアマチュアの差を見せつけられるも、英子は若月みちるが完成させて届けてくれた「Flower Crown」を、京都の人々と翔子の心に響き渡らせるのだった。
大手レーベル
京都での商店街対抗演芸合戦で優勝を飾った諸葛孔明と月見英子は、京都での日々を経て成長し、月見翔子に素直な気持ちをぶつけようと決意する。そして翔子とも和解し、英子たちは今後も音楽活動を続けることができるようになった。東京に帰る直前、英子はライバルのミア西表から孔明と手を切って、大手レーベルと契約すべきと助言を受ける。悩みながらも東京に戻った英子は、これまでの彼女の活躍に注目した大手レーベルから、熱いスカウトを受けるようになる。これまでどおり孔明と組むべきか、大手レーベルと契約して未知なる一歩を踏み出すべきかと、英子は新たな苦悩や葛藤を抱えることになる。一方の孔明は、大手レーベルに対して新たな音楽会社「フォース・キングダム」の起ち上げを宣言。急ぎ過ぎる起業の話に驚く英子たちだったが、孔明はフォース・キングダムこそが、現在の音楽業界が抱えているある問題を是正するための会社だと語る。音楽業界中枢へ進軍開始した孔明の興行主としての初仕事は、大手レーベル3社に属する人気アーティストたちを、コラボミックスさせたうえでのライブ開催であった。異例のコラボに向け、孔明は正式な手順を踏むことなく、大手音楽会社の敏腕プロデューサーたちに虚実の妙技を仕掛ける。
メディア化
テレビアニメ
2022年テレビアニメ化。4月5日よりTOKYO MXほかで放送。監督は本間修、総作画監督は関口可奈味が務めている。キャストは、諸葛孔明を置鮎龍太郎、月見英子を本渡楓と歌唱担当の96猫が演じている。
テレビドラマ
2023年テレビドラマ化。9月27日よりフジテレビ系列で放送。キャストは、諸葛孔明を向井理、月見英子を上白石萌歌が演じている。
登場人物・キャラクター
諸葛 孔明 (しょかつ こうめい)
現代日本の渋谷に転生した男性。1800年前の中華三国時代に、蜀の丞相(じょうしょう)を務めた「諸葛孔明」その人で、若き日の姿で現代日本にやって来た。黒の長髪で顎ヒゲを生やし、どこへ行く時も軍師時代の服装をまとい、羽扇を持ち歩いている。かつて五丈原の戦いで病死し、死ぬ間際には命のやり取りがない平穏な世界へ生を受けることを願っていた。転生直後はハロウィンの仮装をした若者たちに囲まれたことから、地獄に落ちたものとカンちがいしていた。酔っぱらって寝ていたところを月見英子に介抱され、自分が未来の世界に転生したことを認識する。当初はスマートフォンの使い方すらわからなかったが、英子の協力もあってあっという間に現代社会に順応していく。英子の歌に惹かれると共に彼女の生い立ちや夢を知り、英子の軍師として夢を叶(かな)えることを目標に、第2の人生を歩み始める。また、英子の歌声を世界に響かせることで、前世では叶わなかった「太平の世を作る」ことを自分の目標としている。軍資金の調達のために英子に紹介されたクラブ「BBラウンジ」では、三国志の豊富な知識を気に入られてオーナーの小林に採用され、バーテンダーのアルバイトを始める。そんな中、軍師としての能力を活かして英子の才能を押し上げ、プロの歌手になるという彼女の夢に協力する。数々の高度な知略計略で英子をサポートしていく手腕から、小林からはただ者ではないと思われているものの、史実に詳しくない英子たちからは転生者ではなく、三国志の人物になり切っているコスプレイヤーだと思われている。事あるごとに軍師を名乗っているが、表向きは英子のマネージャーということになっている。複雑な都会で悩みを抱えている者を「民草」と称し、英子に限らず悩みを抱えている若者を導き、時には救っている。当初はBBラウンジを間借りしていたが、英子の協力を得ながら家探しを始めた。不動産屋との駆け引きを繰り返しながら、妥協せずに理想の部屋を手に入れようとするも、結局はBBラウンジで世話になっている。お茶が好きで、緑茶などの新商品は毎回チェックしている。実在の人物、諸葛亮がモデル。
月見 英子 (つきみ えいこ)
プロのシンガーソングライターを夢見る若い女性。京都出身。「EIKO」の歌手名で、主に渋谷のクラブ「BBラウンジ」で活動している。金髪のロングヘアを二つの三つ編みにまとめている。渋谷で酔っぱらっていた諸葛孔明を介抱したのをきっかけに彼と知り合い、マネージャーになることを決めた孔明のさまざまなサポートを受けながら、歌手として成長していく。複雑な家庭で育ち、高校時代の修学旅行で訪れた渋谷で飛び込み自殺を図ったところを、小林に救われた過去を持つ。この時に、小林が経営するクラブ「BBラウンジ」を訪れ、ゲスト出演していたアメリカの歌姫と知られるマリア・ディーゼルの歌声に感動して気力を取り戻し、歌を通して人々を感動させたいという夢を持つようになる。孔明に出会ったばかりの頃は、その夢をあきらめかけていたが、孔明の後押しもあって再び夢の実現を目指すようになり、彼の知略計略を通して徐々に歌手としての才能を発揮していく。孔明のことは歴史上の人物になり切ったコスプレイヤーだと思い込んでいるが、彼に何度も助けられているため、信頼を寄せるようになる。幼少期はミュージシャンの父親、承彦と母親の月見翔子の三人で暮らしており、彼の音楽を聞きながら育った。まだ幼い頃に両親が離婚して父親が家を出て行ってしまい、音楽にいい印象を抱いていない母親からは、歌手になることを反対されていた。実家を飛び出してからは翔子と絶縁状態だったが、孔明の後押しで歌手としての知名度を上げた頃に、渋谷を訪れた彼女と再会。翔子とは確執を抱えたままだったが、故郷の京都で挑んだ商店街対抗演芸合戦を通して彼女と和解する。また、この際に翔子から、父親がミュージシャンの夢をあきらめきれずに海外に行ったことを聞かされる。東京に戻ってからはさらに知名度が上がり、複数の大手レーベルからスカウトが来るほどになった。当初はマリアのカバー曲を中心に歌っていたが、孔明たちの協力によりオリジナル曲「dreamer」と「Flower Crown」を生み出した。
小林 (こばやし)
クラブ「BBラウンジ」のオーナーを務める男性。つねにサングラスをかけ、スーツを着用している。かつて渋谷で電車に飛び込もうとしていた月見英子に声をかけ、BBラウンジに誘った。これをきっかけに英子をアルバイトとして雇うと共に、彼女の夢を応援している。強面(こわもて)で厳しい人物に見えるが、実は極度の三国志オタクで囲碁を趣味としており、熱く深く三国志を語り合える仲間をひそかに探していた。アルバイトの面接にやって来た諸葛孔明が、三国志に詳しいと知った途端に意気投合し、BBラウンジのバーテンダーとして雇い入れる。英子の複雑な過去と歌の才能を知るよき理解者でもあり、彼女のマネージャーを務めるようになった孔明の知略計略をサポートする形で、活動を支えている。孔明が転生者であることは知らないものの、数々の知略計略で英子を導いていく姿から、孔明がたただ者ではないことには気づいている。
ミア 西表 (みあ いりおもて)
若き人気女性シンガー。SNSのフォロワーが10万人を超えている。黒のロングヘアをポニーテールにまとめ、細身で大人っぽい雰囲気を漂わせている。諸葛孔明も認める確かな歌唱力を持ち、クラブを中心に活動している。とある音楽イベントにメイン出演した際、孔明と共に視察に訪れた月見英子を、自らの当て馬に利用しようと目論む。そしてイベントのステージで、同じタイムテーブルで英子をセッティングして出演させたが、逆に孔明の策にはまり、結果的に英子の知名度を上げるための踏み台にされてしまう。それからは英子と孔明に逆恨みに近い感情を抱いていたが、歌手として努力を重ねてプロの道へ進んでいく。京都の商店街対抗演芸合戦では鴨川商店街の歌手として出演し、英子と対峙(たいじ)することになる。これをきっかけに英子の才能を認めるようになり、ライバルとして彼女に助言を与えることもある。
KABE太人 (かべたいじん)
若き天才ラッパーの青年。無敵のフリースタイラーとして知られている。黒髪短髪で長い前髪を真ん中分けにしており、三白眼が特徴。本名は「河辺」。MCバトル選手権「DRM」を、3年連続で制覇した経歴があり、すれ違う人の言葉を即座にラップに変換できるほどの才能の持ち主。しかしプレッシャーに弱く、過去のMCバトルで胃潰瘍を患って倒れてからは、音楽から離れている。これらのトラウマからメンタルを病み、現実逃避するような日々を送っていた。ラッパーを求めていた諸葛孔明と出会い、月見英子への協力を賭けてクラブ「BBラウンジ」で孔明とMCバトルを繰り広げる。孔明とのバトルには勝利するものの、この時に聞いた英子の歌に感動したこともあり、音楽への熱意を取り戻していく。それからは、BBラウンジのラッパーとして再起し、英子の音楽活動にも手を貸している。学生時代は目立たない根暗な少年だったが、クラスメイトの佐々木に誘われたのをきっかけにラップを始めた。
赤兎馬カンフー (せきとばかんふー)
ストリート出身のカリスマラッパーの男性。KABE太人が現れるまでは、MCバトルで無敗を誇っていた。KABE太人にとっては、昔からあこがれの有名ラッパーだったが、KABE太人にMCバトルで敗れた過去を持つ。しかしその後、KABE太人がラップから離れて燻(くすぶ)っていることに不満を抱き、いつか再起した彼と再戦できることを望んでいる。
久遠 七海 (くおん ななみ)
若い世代に人気のある三人組のアイドル風ガールズバンド「AZALEA」のベーシスト兼ボーカルを担当する若い女性。切りそろえた黒髪をロングヘアにしている。メンバーの双葉、一夏とは学生時代からの付き合い。大型フェス「サマーソニア」への出演が決まる「10万イイネ企画」に参加しており、月見英子にとってはライバルグループとして諸葛孔明からもマークされていた。大手事務所「KEY TIME」に所属し、唐澤がプロデュースを務めている。一人で渋谷で路上ライブをしていた際に出会った英子と意気投合し、彼女と路上ライブで歌うことに喜びを感じていた。英子とは互いの立場を知らぬまま、ライブ以外の時間もいっしょに過ごすようになり、音楽を通して親友と呼べる関係を築いていく。しかし、あるきっかけで自らがAZALEAメンバーであることを明かし、英子からも10万イイネ企画に参加するシンガーであることを知らされる。お互いの立場を知ったあとも、10万イイネ企画勝利のために奮闘するが、知名度を上げるためなら手段を選ばない唐澤の方針には以前から嫌気が差しており、本音では彼から離れたいと思っている。しかし、無名バンドだったAZALEAを人気バンドに押し上げたのが唐澤であるため、メンバーのためにも従うしかなかった。10万イイネ企画本番では唐澤の卑怯(ひきょう)なやり方に我慢ができなくなり、英子の優勝が決まったあとは現在のアイドル風衣装を脱ぎ捨て、売れる前の本来のAZALEAのスタイルでオリジナル楽曲を披露した。これらをきっかけに、新生AZALEAとして再始動する。
スティーブ・キド
大型フェス「サマーソニア」にも出演経験のある有名DJの男性。黒髪ロングヘアで色黒の肌を持つ。メンマが大好物で、「世界の最強イケメンマDJ」を自称している。やる気がなさそうな飄々(ひょうひょう)とした態度ながら、DJとしての実力は高い。サマーソニア出演が懸かった「10万イイネ企画」に勝利するため、諸葛孔明の導きによって月見英子と出会い、彼女の新曲の編曲・レコーディングを担当することになる。本来なら1000万円くらいの報酬が必要だが、孔明との賭け勝負により、楽曲の出来次第では報酬を無料にするという条件を決めていた。英子に対してはテスト代わりにマリア・ディーゼルの人気曲を歌わせていたが、この際に歌声の欠点を指摘し、彼女が路上ライブに出るきっかけを作った。英子の成長を認めたあとは、英子が驚くほどの編曲によってオリジナル曲「dreamer」を完成させた。好物のメンマをプリンに何本も刺してから食べるなど、変わった嗜好(しこう)を持つ。
唐澤 (からさわ)
日本の3大大手レーベルの一つ「KEY TIME」に勤務する男性。アイドル風ガールズバンド「AZALEA」のプロデューサーを務めている。AZALEA売り出すために露出度の高いアイドル風の衣装やダンスをメンバーに強制し、自らが作った楽曲を提供している。売るためには手段を選ばないため、久遠七海たちからは嫌われているが、ミュージシャンへの敬意は大切にしている。七海たちが参加した「10万イイネ企画」では勝利を確信していたが、諸葛孔明の策により月見英子に敗れてしまう。昔はミュージシャンとして活動していたが夢半ばであきらめた過去を持ち、自分の夢をAZALEAに託していた。敗北を素直に認め、AZALEAからも手を引こうとしていたが、七海たちの要望もあって、心を入れ替えてプロデューサーを続けることになった。
近藤 剛 (こんどう つよし)
大物プロデューサーの男性。代々木フェスはじめ、数々の大型音楽フェスをプロデュースしている。白ひげをたくわえた強面の紳士で、サングラスをかけている。代々木アートフェスの不遇ブースで活躍した月見英子の才能を見込み、大型フェス「サマーソニア」のブッキング担当者の名刺を参加チケット代わりに渡し、参加権を懸けた「10万イイネ企画」に誘う。自分の言葉の大半を秘書に代弁させたり、英語やスラングを混ぜたりしながら話しているが、ふつうに日本語を話すことができる。
佐々木 (ささき)
KABE太人の学生時代からの友人で、小太りな体型の青年。当時のKABE太人からは底辺の根暗キャラのように思われていたが、実際はラップを趣味としており、放課後は仲間たちとヒップホップを楽しんでいた。赤兎馬カンフーのCDを聞かせるなど、KABE太人をラップの世界に誘った張本人でもある。
若月 巧 (わかつき たくみ)
若きジャズユニット「若月三兄妹」の長男。世界で活躍している音楽家、若月幸三を父親に持つ。黒髪短髪で、なんでも器用にこなす頭脳派の天才ミュージシャン。妹の若月燈火と若月みちるとは昔から不仲でケンカが絶えない。みちるを通して月見英子とのコラボ企画を持ち込まれたが、当初は拒否していた。父親の幸三によって兄妹ゲンカが財産争いに発展しそうになるが、諸葛孔明の策により家族の絆(きずな)を取り戻した。
若月 燈火 (わかつき とうか)
若きジャズユニット「若月三兄妹」の長女。世界で活躍している音楽家、若月幸三を父親に持つ。技巧に秀でた天才ピアニストとして知られている。兄の若月巧と妹の若月みちるとは昔から不仲でケンカが絶えない。みちるを通して月見英子とのコラボ企画を持ち込まれたが、当初は拒否していた。父親の幸三によって兄妹ゲンカが財産争いに発展しそうになるが、諸葛孔明の策により家族の絆を取り戻した。
若月 みちる (わかつき みちる)
若きジャズユニット「若月三兄妹」の末っ子で、ミュージシャンの女性。世界で活躍している音楽家、若月幸三を父親に持つ。天才肌のサックスプレイヤーとして知られている。パーマヘアで天真爛漫(らんまん)な性格の持ち主。明るく天然気味ながら少々無神経なところがあり、悪気はないものの兄の若月巧や姉の若月燈火を時おり怒らせている。しかし、巧と燈火のことは心から尊敬しており、なかよくしたいと思っている。諸葛孔明から持ち込まれた月見英子とのコラボ企画に参加し、孔明にDJを依頼する。巧や燈火とは異なり、孔明や英子を歓迎して好意的に接する。父親の幸三によって兄妹ゲンカが財産争いに発展しそうになるが、孔明の策により家族の絆を取り戻した。その後は巧、燈火と協力し、英子の新曲「Flower Crown」を完成させる。
英子のファン1号 (えいこのふぁんいちごう)
諸葛孔明に影で雇われていたスタッフの青年。パーカーを着用し、眼鏡をかけている。月見英子の大ファンで、彼女の写真を報酬に孔明の手足として働いている。映像編集や情報収集を中心に、英子の音楽活動をサポートしている。ほかにもネット工作や観衆に紛れての工作で暗躍しており、英子の躍進を陰から支えている。
大泉 喬花 (おおいずみ きょうか)
不動産屋「GOGOHome」に勤務する女性。部屋探しを始めた諸葛孔明が、GOGOHomeに月見英子と共に訪れた際に出会った。孔明にはさまざまな物件を紹介したが、面倒な要望ばかりで難癖をつけられ却下されてしまう。つねに笑顔を絶やさない接客を心がけていたが、孔明の図々しい態度にストレスが溜まり、三国志ゲーム内に登場する蜀を一晩で3回も滅ぼしていた。
小笠原 蕎子 (おがさわら きょうこ)
旅行代理店に勤務する女性。友人の大泉喬花とルームシェアをしている。うっかり口を滑らせた喬花を介して、諸葛孔明に高級ホテルのスイートルームを格安で案内する羽目になった。趣味で同人活動をしており、孔明への怒りが募り、「孔明討つべし」という同人漫画を完成させた。
劉備 玄徳 (りゅうび げんとく)
諸葛孔明のかつての主君だった男性。前世の孔明が死力を尽くして支えていた。孔明の思い出の人物としてたびたび回想に登場するが、彼が思い悩んでいる時には幻影のように姿を現し、進むべき道に導いていた。つねに民草を思い理想主義なところがあるため、孔明とはたびたび意見が食い違うこともあった。実在の人物、劉備がモデル。
月見 翔子 (つきみ しょうこ)
月見英子の母親。歌手になるために家を飛び出した英子とは長らく決別状態にある。塾講師を務めているため、ホワイトボードを持ち出して説明する癖がある。ミュージシャンをしている夫の承彦と別れたあとは、幼い英子を一人で育てていた。この影響から音楽にはいい思い出がなく、歌手を目指している英子に対しても冷たく接している。口ゲンカでは英子はまったく月見翔子に歯が立たない。三国志はもちろんさまざまな知識が豊富で、諸葛孔明との論戦でもいい勝負をしていた。英子に渋谷で再会し、彼女の進むべき道を決めるため、1か月以内に新曲を完成させてそれが自分を納得させる出来であれば、音楽の道に進むことを認めるという条件で勝負することになる。京都五商祭の商店街対抗演芸合戦では実行委員を務めた。当初は新曲の出来不出来にかかわらず、英子の夢を認めるつもりはなかったが、演芸合戦当日に英子の歌を間近で聞いて感銘を受け、長らく封印していた承彦との思い出がよみがえった。孔明の助言を受けた英子が、素直な気持ちを翔子に吐露したことで和解した。その後は彼女の夢を認めるようになり、口うるさく小言をいいながらも応援している。
月見 ウメ (つきみ うめ)
月見英子の母方の祖母。京都の月之見寺の住職を務めている。眼鏡をかけ、京都弁でしゃべる。おおらかな性格で、幼い頃から英子をかわいがっており、英子の歌手になる夢も応援している。帰郷した英子を商店街対抗演芸合戦に誘い、自らの所属する木屋町商店街の面々と共に英子の活躍を見守っている。頑固で生真面目な娘、月見翔子のよき理解者でもある。演芸合戦の準備中に過労で倒れて入院するが、英子が木屋町の人々と協力し合うことを望み、諸葛孔明にあとのことを託した。のちに退院し、英子の活躍を見守り続けている。
門叶 鞍馬 (とかのう くらま)
商店街対抗演芸合戦で毎回勝ち続ける鴨川商店街をまとめている男性。和服を着用しマフラーを巻いている。京都弁でしゃべる。事業拡大のために地元を捨てた父親にコンプレックスを抱いており、祖父からの期待を一身に背負っている。これらのプレッシャーやプライドの高さから、勝つためには手段を選ばずに汚い手を使うこともいとわない。諸葛孔明がただ者ではないことを早くから見抜いてライバル心を燃やし、演芸合戦では孔明の策略の裏をかいて、鴨川商店街への注目度を押し上げた。
城之内 きすく (じょうのうち きすく)
日本の3大大手レーベルの一つ「SSSミュージック」のプロデューサーを務める男性。長身で派手なジャケットを着用し、スキンヘッドで色黒の肌を持つ。年末音楽番組にも出演している人気バンド「わがものがおり」をはじめとする大物アーティストのプロデュースを務めており、京都で活躍していた月見英子をスカウトした。傲慢と評されることもあるが、わがものがおりのメンバーからの信頼は厚い。諸葛孔明を邪魔者扱いしたため、英子にはスカウトの話を断られてしまう。
東海林 ハジメ (しょうじ はじめ)
日本の3大大手レーベルの一つ「SSSミュージック」に務める男性。小太りな体型をしている。代々木アートフェス以来、月見英子の大ファンになり、諸葛孔明にはひそかに契約の話を持ちかけていた。それと同時に孔明にもあこがれるようになり、彼を老師と慕いながら三国志オタクとなった。実はSSSミュージックの人気バンド「わがものがおり」の陰の立役者であるが、アーティスト・ファーストを優先し過ぎたため、すでにプロデュース事業部からは外されている。孔明からは新レーベルの起ち上げに誘われ、迷うことなくSSSミュージックを退社し、孔明と英子に協力するようになった。孔明と同じく、以前からレーベルのボーダーレス化を計画していた。城之内きすくとは対照的に理想主義者のため、SSSミュージック内では冷遇されがちだったが、孔明からの評価は非常に高い。
鈴木・エイヴィル (すずきえいゔぃる)
日本の3大大手レーベルの一つ「KEY TIME」のプロデュース部門のトップで、音楽事業部の部長を務める女性。唐澤の上司でもある。筋肉質な体型で、ショートヘアにしている。月見英子をスカウトしようと思っており、「10万イイネ企画」で参謀役を務めていた諸葛孔明にも一目置いている。気が強く肝の据わった性格で、城之内きすくからは着信拒否されるなど警戒されている。趣味は水泳。
集団・組織
JET・JACKET (じぇっと じゃけっと)
男性三人組のインディーズバンド。代々木アートフェスでは、月見英子と同じタイムスケジュールで、向かいのブースで演奏していた。当初は英子のことを見下していたが、ライブ中に機材トラブルを装った諸葛孔明の策略により、英子のブースに観客を取られてしまう。ギタリスト兼ボーカルが喉に問題を抱えており、体が温まるまでは人気曲を歌えないという弱点を抱えている。当初は孔明のやり方を汚いと思っていたが、弱点を見抜いた孔明から渡された薬で喉の状態が改善し、最終的にはメンバー全員でお礼を言って立ち去る。
クレジット
- 原作
-
四葉 夕ト
書誌情報
パリピ孔明 19巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2020-04-08発行、 978-4065192191)
第2巻
(2020-07-08発行、 978-4065201985)
第3巻
(2020-10-14発行、 978-4065209981)
第4巻
(2021-01-13発行、 978-4065220122)
第5巻
(2021-04-14発行、 978-4065229286)
第6巻
(2021-07-14発行、 978-4065239896)
第7巻
(2021-11-18発行、 978-4065258859)
第8巻
(2022-01-06発行、 978-4065264850)
第9巻
(2022-04-06発行、 978-4065274651)
第10巻
(2022-07-06発行、 978-4065284827)
第11巻
(2022-10-06発行、 978-4065294802)
第12巻
(2023-01-06発行、 978-4065303825)
第13巻
(2023-04-06発行、 978-4065313770)
第14巻
(2023-07-06発行、 978-4065322512)
第15巻
(2023-10-05発行、 978-4065333716)
第16巻
(2024-01-09発行、 978-4065342961)
第17巻
(2024-04-05発行、 978-4065352434)
第18巻
(2024-08-06発行、 978-4065365410)
第19巻
(2024-11-06発行、 978-4065374498)