概要・あらすじ
東都大学4年生の剣崎龍之介は、最終面接を受けるために講談社にいた。廊下に落ちていた漫画のネームを見つけ、つい読みふけっていると、小鳥遊翼という女性にネームを取り上げられた。小鳥遊を編集者だと思った龍之介は、ネームがすごく面白かったと漫画家に伝えてくれと話す。しかし、小鳥遊もまた面接を受けに来た一人であった。
小鳥遊は、ネームは自分が社員に手渡すと言って、面接会場に消えていった。やがて自分の番になり、龍之介は最終面接を受ける。緊張のあまり、まともな受け答えができずにいたが、ヒゲの面接官に好きな漫画を尋ねられると、目を輝かせて、講談社の『トラベリング』だと答えた。さらに続けて、特に好きな回の事を熱弁するが、面接官に「あの漫画は、人気がなくて打ち切りになった」とバッサリ切り捨てられる。
打ち切り漫画を絶賛してしまった事で、龍之介はがっくりと肩を落として面接場をあとにした。しかし、龍之介は講談社に合格し、週刊少年マガジン編集部に配属された。編集長は山城廉太郎という男で、あのヒゲの面接官だった。山城編集長に、「適当に仕事をしてろ」といい加減な指示をもらった龍之介は、仕事を教えて欲しいと八神千虎編集次長に話しかけるが、先輩編集者の仲田帝士に張り倒される。
仲田が言うには、八神は編集部の大エースで、担当作品の発行部数が累計1億8000万部。新入社員の世話に付き合わせていい人ではないのだという。他にもずば抜けて成績の良い「週マガ四天王」がおり、担当作品の発行部数が高いほど評価され、発言力が増すのだと説明を受ける。
この世界では、数字は己の戦闘力で、結果こそすべてなのだ。電話番でもしてろと言われて、ふてくされる龍之介だったが、気を取り直して原稿持ち込みの電話を待った。この世界では、持ち込み電話を受けた者が、その作家の担当編集になれるのだ。さっそく1本の持ち込み電話を受け、ロビーに向かう龍之介。
そこにいたのは、面接会場で出会った小鳥遊翼だった。あの時廊下に落ちていたネームは、翼のものだったという。龍之介にネームが面白いと言われた翼は、面接を受けずに漫画家になる決意をしたのだ。面白いと言った責任をとってくれと詰め寄る翼に気圧(けお)されながらも、龍之介は応接室で翼の漫画を読む。
ネームの時より断然面白くなっている、と興奮気味に話す龍之介は、原稿を新人賞に出す約束をして別れる。しばらくして、龍之介の名刺をもらい忘れていた翼は、編集部に舞い戻る。翼はそこで、龍之介と八神編集次長の口論を立ち聞きする。それは翼の原稿の事であった。典型的なハズレだと切り捨てる八神に、食い下がる龍之介。「面白いものは面白い。
自分の責任で、翼を日本一の漫画家にしてみせる」龍之介はきっぱりと言い放った。それを聞いた翼は涙を拭い、歯を食いしばって前を向く。翼は、「もっと面白くするので原稿を直したい」と龍之介にラインでメッセージを送った。所変わって、大衆居酒屋。売れっ子漫画家の桂木と山城編集長が、桂木の漫画の9000万部突破を祝っていた。
彼らはかつて、二人にとって初の週刊連載『トラベリング』を立ち上げた仲であった。今年の面接で、山城が「特A」をつけた社員がいると聞いた桂木は、優秀な子だったのかと尋ねた。龍之介の事である。しかし、「優秀」という言葉にはかぶりを振る山城。ただ、龍之介は、打ち切り漫画『トラベリング』が唯一、ブッチギリで人気アンケート1位を獲得した回を言い当てたのだと答えた。
龍之介は、作品が面白くなるための核(コア)となる部分を嗅ぎ分ける事のできる天性の嗅覚を持っていたのだ。こうして、未熟ながらも天性の嗅覚を備えた編集者と、未完成ながら不屈の闘志と情熱を持った新人漫画家の二人三脚が始まった。
登場人物・キャラクター
剣崎 龍之介 (けんざき りゅうのすけ)
講談社週刊少年マガジン編集部に配属された新人編集者。男性。漫画に対して一途な情熱を持つが、経験不足から軽率な言動も多い。ただ、作品が面白くなるための核(コア)となる部分を嗅ぎ分ける天性の嗅覚を持ち合わせており、ダイヤの原石である可能性を秘める。講談社に持ち込みをしてきた新人漫画家の小鳥遊翼の担当となり、二人で漫画界の頂点を目指す。
小鳥遊 翼
新人漫画家。赤くて長い髪が似合う美女。講談社の最終面接の前に、剣崎龍之介と出会う。龍之介に自分の漫画のネームを褒められた事から面接をキャンセルし、漫画家を目指す。講談社に漫画を持ち込んだところ、龍之介と再会。担当編集となった龍之介と意見を戦わせながら、二人で漫画を創り上げていく。画力や構成力はないが、4日でネームを4本も上げる、集中力・生産力はある。
山城 廉太郎 (やましろ れんたろう)
講談社週刊少年マガジン編集部編集長。メガネと口ひげが特徴の中年男性。剣崎龍之介の最終面接で、龍之介の漫画に対する天性の嗅覚を見抜いた人物。龍之介に対して意地の悪い態度を見せるが、遠くから見守り、さりげなくアドバイスを送る。
八神 千虎 (やがみ かずたけ)
講談社週刊少年マガジン編集部編集次長。入社16年目。スラリとした体軀にメガネを掛けたクールな人物。担当作品の累計発行部数が1億8000万部という、編集部きっての大エース。小鳥遊翼を典型的なハズレの新人と酷評し、剣崎龍之介と対立する。
仲田 帝士 (なかた たいし)
講談社週刊少年マガジン編集部入社3年目の平社員。男性。担当作品の累計発行部数は1.5万部という、まだまだ駆け出しの編集者。編集部のヒットメイカーである八神千虎に気安く話しかけた剣崎龍之介を諫めた人物。また、マンガ業界が数字と結果の世界だと、龍之介に教えた人物でもある。
桂木 (かつらぎ)
自著「タッチアップ」が9000万部を突破したという売れっ子漫画家。ニット帽と無精髭が特徴の男性。かつて、山城廉太郎と二人で初めての週刊連載「トラベリング」を執筆した。しかし、アンケート人気がボロボロで打ち切りになってしまった過去を持つ。
書誌情報
ヒットマン 13巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2018-10-17発行、 978-4065130872)
第2巻
(2018-12-17発行、 978-4065134924)
第3巻
(2019-03-15発行、 978-4065144480)
第4巻
(2019-05-17発行、 978-4065151419)
第5巻
(2019-09-17発行、 978-4065157282)
第6巻
(2019-10-17発行、 978-4065171684)
第7巻
(2019-12-17発行、 978-4065175484)
第8巻
(2020-03-17発行、 978-4065182680)
第9巻
(2020-05-15発行、 978-4065188576)
第10巻
(2020-07-17発行、 978-4065201091)
第11巻
(2020-10-16発行、 978-4065210161)
第12巻
(2020-12-17発行、 978-4065216347)
第13巻
(2021-03-17発行、 978-4065226544)