あらすじ
第1巻
谷の街道で暮らす浮浪児のシンは、悪徳商人に捕まって虐待されていた少女、マユラを偶然助けた。マユラの右手には、書いた文字が持つ意味が具現化するという特別な能力が宿っており、彼女はその能力のせいで世間から隔絶されていたのである。強欲な人々から虐待を受け、裏切られ、人として扱われる事なく生きてきたマユラは、人を信じる事ができずにいたが、真っ直ぐなシンに助けられ、少しずつ考え方を変化させていく。
そんな中、マユラとシンはクニが推進する「巫女狩り」の対象者として、警備隊長のクランドから追われる身となってしまう。二人は追手から逃れるため、さまざまな集落に立ち寄りながら旅をするが、マユラはその都度、自分の能力を隠す事なく使う。そのせいで、彼女の能力を悪用しようとする者があとを絶たず現れる事に気づいたシンは、社会常識のないマユラにうまく生きるコツを教え始める。一方のマユラは、そんなシンの生き方に感銘を受け、その代わりにと、シンに漢字の成り立ちや意味を教えるのだった。そんな旅の最中、突如マユラは何者かによって連れ去られ、シンのもとから姿を消してしまう。
第2巻
マユラは、海辺の集落で巫女として奉られ、幽閉されている姫様の差し金で、突然連れ去られ、捕らわれの身となった。そしてマユラは両手を縛られ、自由を奪われた状態で、姫様に次ぐ二人目の巫女として村人から崇められる事になる。シンから学んだ事を教訓に、マユラは村人達におとなしく従い、逃げるチャンスを窺っていた。一方で、マユラが書き残した「探」の文字を使ってマユラを探していたシンは、海辺の集落に辿り着いたものの、そこで二人を追い続けていた警備隊長のクランドに捕まってしまう。この集落でマユラが捕らわれている事を知ったクランドとシンは、彼女を救い出すという同じ目的を掲げ、一旦協力体制を取る事を決める。
同じ頃、集落では巫女の力を巡って人々が争いを起こし始めていた。何とか自力で逃げ出したマユラと合流を果たしたシンは、彼女を連れて逃げようとするが、そこでクランドに見つかってしまう。クランドは、すべての元凶がマユラの右手にあるとして、右手を切断しようと剣を振り上げる。しかし、マユラの右手はマユラの意思とは無関係にこれを拒絶し、クランドの喉元めがけて攻撃し、喉を潰すという荒業を成す。それにより、マユラとシンはその場を逃れる事に成功。その後、王都のある「嘏」を離れ、クニを巡る事を提案したマユラは、シンと共にまずは赤承へ向かおうと決めるのだった。
第3巻
南の海に面した国、赤承で、マユラとシンは、以前とは打って変わって噓のように穏やかな毎日を過ごしていた。そこで二人は、100年に一度の踊り手と呼ばれる巫女のアイシャと、彼女が率いる踊り巫女の一座と出会う。マユラとシンは、アイシャからの申し出を受け、一座と共に旅する事になった。当初はアイシャや一座の人間を心から信用する事ができず、戸惑いを隠せないマユラだったが、生活を共にするうちに、心から信頼を寄せるようになっていく。
実はアイシャは、マユラにヒノメの力を持つ者、ヒノコの片鱗を感じ、意図的に近づいていた。それを悟られないようにしながらも、マユラの不思議な能力を目の当たりにしていくアイシャは、マユラがヒノコである事を確信していく。そんな中、王都からの密偵がヒノコを殺すため、一座の前に姿を現す。
第4巻
捕らわれたアイシャを救うため、赤承の都に向かったマユラとシン、そしてクランドは、そこで赤承の王、アソウギに出会う。王都の密偵からヒノコだと思われているアイシャは実はアソウギの妹であり、表向きには捕らわれて牢に入れられたとされていたが、実際はアソウギのもとに保護されていたのである。そしてアソウギは、本当のヒノコであるマユラを歓迎し、仲間として迎え入れる。
そんな中、赤承ではヒノメの復活を願って行われる特別な祭り、七年祭りが開催される事となった。緑哿の王子、ハイタカや、白ソウの王子、カイエンも招かれ、祭りは最高の盛り上がりを見せる。そして祭りの締めくくりに、アイシャの華麗な舞に応え、古の女王・ヒノメが降臨。ヒノメは、失った自分の腕を持つマユラに襲い掛かり、その腕を取り戻そうとする。その姿は、もはやただの怪物に過ぎなかった。シンは身を挺してマユラを守るが、空に現れた光の矢に貫かれ、大ケガを負ってしまう。
その後、自らの運命を悟ったマユラは、大切なシンが自分のために危険な目に遭う事を恐れ、「忘」の字を用いてシンの記憶を消し、自分とのつながりを絶ってしまう。そしてマユラは倒れたシンをクランドに託し、ヒノメの能力を地上から完全に消し去る事を目的に、赤承の正位の巫女になるのだった。
第5巻
マユラとの記憶をすべて失ったシンは、クランドに引き取られ、クランドの縁者として王都で暮らしていた。ヒノコを討つため、修練に励む日を送るシンは、3年の時を経て、自分の中に失われた記憶がある事、ケガの治りが異常に早い事に疑問を抱き始める。自分の中にぽっかり空いてしまった記憶の穴をふさぎたいと、唯一残った記憶を胸に、昔暮らしていた谷の街道を訪れたシンは、かつていっしょに暮らしていた子供達から、当時の自分についてさまざまな話を聞く。その中でシンは、自分がヒノコらしき少女と旅をしていたという事実を知り、彼女に興味を抱く。
同じ頃、赤承のアイシャは、大王の息子、シセとの縁談を受け、王都に嫁ぐ事を決意していた。それから1年後、アイシャは周囲の心配をものともせず、姿を変えたマユラをお供として連れ、敵地である王都へと足を踏み入れる。
第6巻
マユラは、皇子に嫁いだアイシャのお供「まっさん」として、王都への潜入を果たした。そしてヒノメの伝説の真実を探るために忍び込んだ深夜の役所で、マユラは思いがけず青年へと成長したシンとの再会を果たす。「まっさん」として姿を変えてはいても、シンと再会した事に戸惑いを隠せないマユラ。しかしシンは、そんなマユラに目を輝かせ、興味津々で付きまとい始める。そんなシンを必死に遠ざけようとするマユラだったが、そうすればするほど、無意識のうちにシンはマユラに惹かれていく。
一方で、皇子のシセは、自身を外界に触れさせようとしない母親、大王の目を盗み、シンを通してヒノメの伝説や赤承との関係について知る。自分の妻でありながら、アイシャとは婚儀以降会う事はおろか、言葉を交わす事もできない状態にあったシセは、シンの力を借りてアイシャとの密会を果たす。そして、真実が記されているという書物の原典を読み解く事で、ヒノメとオビトアギについての真相究明を始める。
第7巻
マユラは、「まっさん」としてではなく、本当の姿でシンと再会を果たした。しかしクランドの罠にはまり、マユラもシンも捕らわれの身となってしまう。同じ頃、皇子のシセと密会を繰り返していたアイシャは、大王にその現場を押さえられてしまう。大王の怒りを買った事で、住んでいた離宮にも火を放たれ、事実上追放された形となったアイシャは、マユラを気にかけながらも一旦自国へと戻る事を決める。
クランドに捕らえられたマユラとシンは、互いを思い合いながらも、長い時間を牢の中で過ごす事になった。季節が変わった頃、突然食事を取らなくなったシンは、激しい衰弱を見せ始める。一方で、マユラはそんなシンの存在について考えを巡らせていた。彼はいつもマユラに巻き込まれる形で、つねに物事の中心に存在していたが、マユラはそれが自分のせいではなく、シンの宿命によるものなのではないかと考え始めるのだった。
その頃、クランドの友人、アズサヒコは、シュリとのかかわりから、文字を認識する事ができない「失読」と呼ばれる者が存在する事を知る。そして、王家と失読が切り離せない関係にある事を悟る。そんな中、アズサヒコは胸に「護」の印を持つオビトアギの姿を夢に見る。これにより、実はシンこそが、約束のしるしを受けた者として、王家にとって重要な存在だった事が判明する。
第8巻
王都を脱したマユラとシンは、赤承へと向かった。シンは記憶を失って以降、何度も同じ男性を夢に見ていた事をマユラに明かす。彼のピンチを救うべく夢に姿を現す、胸に「護」の文字が記されている古代人は、紛れもなくオビトアギその人だった。一方、王都では、ヒノメの伝説について疑問を感じていた皇子のシセが秘密裏に行動を起こしていた。シセは、神殿の奥の御山に眠っているという事以外ほとんど何も知られていないオビトアギについて調べようと、御山に分け入る。だが、始祖神として祀られているオビトアギ本人の前まで進んだところで、シセは突然目を開けたオビトアギによって、その身を憑代とされ、オビトアギを復活させてしまう。
ヒノメとオビトアギの真実の物語、そしてシンの本当の役割が明らかになる中、ヒノメ復活の時が刻々と迫る。そして、マユラとシンは抗えない運命に導かれていく。
登場人物・キャラクター
マユラ
不思議な力を持つ少女。右手だけ爪が赤く色付いており、その右手で文字を書くと、文字が持つ意味を具現化することができる。そのため物心ついた時から周囲より隔離され、ひたすら文字を教えられて育った。その後、外に出てからは、他人にこの力を何度となく利用されては裏切られてきた。そのため人を信用できずに心を閉ざしており、他人の気持ちを慮ることが苦手。 しかし、シンと出会い、行動をともにするうちに、他人の気持ちに思いを巡らせるようになったり、文字の意味を考えたりと、その心境に変化を生じさせる。そして次第にシンに頼るようになり、互いにかけがえのない存在になっていく。のちに自分がヒノコであることを知り、自分とともにいることでシンに危険が及ぶことを案じて、自分に関する記憶をシンから奪って彼のもとを去り、正式に赤承の王宮に入る。 また、「まっさん」を名乗り、王都「嘏(か)」に嫁ぐアイシャの女官として、秘密裏に王都を調べる密偵として奔走する。
シン
龍の谷に住む浮浪児の少年。谷の街道を通る商人を脅かして、荷を奪い取ることで生活している。商人から奪い取った荷の中にいたマユラを偶然ながら助けたことをきっかけに、その後行動をともにすることになる。明るく前向きだが子供っぽいところもあり、思ったことはつい口に出してしまう。一方で、何も考えていないように見えて、実はマユラには考えも及ばない部分にまで考察を巡らせたりと、思慮深い一面もある。 マユラに対しては1人の男として接しているつもりで、時に格好をつけることもあるが、大抵は外見に似合わない口ぶりにドン引きされて終わっている。背中の上部には、シンを守るようにとマユラが願いを込めて書いた「護」の字がある。当初は敵として出会ったクランドに男として勝てない部分があることを認めており、ジェラシーもあって「ジジイ」と悪しざまに呼んでいる。 のちにマユラに関する記憶をすべて失い、途方に暮れていたところをクランドに救われる。その後はクランドの縁者として、王都「嘏(か)」で彼と生活をともにすることになり、武術を習う他、学寮へも通うこととなる。その後、大王の前で舞を披露したことがきっかけとなって、皇子であるシセのお相手をする者として出世する。
クランド
王都「嘏(か)」の武官で、警備隊長を務める男性。クニが「巫女狩り」を推進し、不思議な能力を持つ巫女を探し集めていたとき、商人からマユラの話を聞いて、彼女を捕らえようと追いかける。その基本的な目的は、巫女を王都のヒノメの神殿に送ることだが、マユラに関しては存在を知られてはいけない強い力を持つ者であると危惧しており、殺すか腕を斬り落とすことを目的としている。 武骨者で、血も涙もない人物のように振る舞っているが、女性には優しく親切なためもてる。のちに、ヒノコの正体を掴んだ唯一の者として兵部省の役人にまで昇進し、裏では密偵としてヒノコを探す役割を担うことになる。また、王都に居を構えることになり、そこで新たにシンとの生活をスタートさせる。 本名は「ワケクランド」といい、シンからは「ジジイ」と呼ばれている。
ササラ
予知能力を持つ巫女。その力を独占しようと考えた小さな村に、洞窟の奥で監禁されていた。従順で柔らかな雰囲気を持つ少女。長い監禁生活により歩けず、両目を針で突かれたため視力を失っている。ある時、クランドに助けられ、監禁生活に終止符を打つことになる。夢を通してマユラを知り、彼女の力で両目の視力を取り戻す。その後、夢見の巫女としてヒノメの神殿に入るが、夢の中で知り合ったアズサヒコが両目を失っていること、そして恩義のあるクランドの知り合いということを知り、自分の右目をアズサヒコに譲り渡す。
アズサヒコ
王都「嘏(か)」で文官を務める男性。クランドとは学生時代からの友人。古文書が何より好きな古文書マニアで、クランドから頼まれて、クニの王朝の資料室でヒノコについて調べ始める。それが仇となり、役人から赤承のスパイ容疑をかけられて両目を失ってしまうが、夢の中で出会った巫女のササラから右目を譲り受け、片目だけは視力を取り戻す。 のちに王都で生活を始めたシンに勉強を教え、これがきっかけで王都中の子供たちに勉強を教えることになる。
姫様 (ひいさま)
巫女の1人。その力を独占しようと考えた海辺の集落に、出入り口が高い天井の穴にしかない小さな洞穴に捕らわれている。未来を水鏡に映し見て予言するという特殊な力を持っている。その力を使い、マユラを捕らえて巫女として祭り上げる代わりに、自分が自由になろうと画策する。
ミツワ
クランドの部下にあたる男性。漢字マニアであり、漢字の意味や成り立ちについて詳しい。同じくクランドの部下である2人の男性と行動をともにすることが多いが、クランドの片腕として働き、彼に直接進言する役割は主にミツワが担っている。
トキ
山賊を始めたばかりの少年。山中の街道を通る者を襲い、盗みを働くことで生計を立て、小さな妹と弟2人を養っている。妹弟思いで明るく、心優しい性格。もともとは近隣にある村に住んでいたが、街道を広げるために村が立ち退くことになったため、役所の畑で働いていた。しかし、奴隷同然の生活に疲れた両親は早くに命を落とし、役人に取り入ることで暮らしを楽にしようとする者が現れたりと、村人たちの関係も悪化。 そんな状況に嫌気がさして、1人で山賊になることを決意し、畑を離れようとしない妹弟を養うことになった。
街道警備長 (かいどうけいびちょう)
役所の男性。山中の街道に、治安を脅かす山賊らしき子供が出るという通報を受け、処罰を与えにやって来た。しかし、マユラの力で処罰内容が変更された結果、トキと妹弟を引き取ることになった。その後はトキらとともに家族のように過ごす。ヒノコについてそれなりの知識を持っており、一介の警備長とは思えないほど頭がキレる謎の多い人物。
アイシャ
赤承で人々から崇められている踊り子の女性。100年に1人といわれる当代一の「踊り巫女」で、剣舞を踊って魔を祓い、幸運を呼ぶ特別な踊り子。踊り巫女の一座にマユラとシンを誘い、行動をともにすることになる。大きな胸とショートヘアが特徴。わけあって身分を隠しているが、その正体は赤承の王であるアソウギの義妹。 マユラをヒノコと知ったうえでともにあろうとし、マユラにとっての良き理解者となる。のちに大王の息子であるシセと婚約することになる。
イワオノオ
赤承で人々から崇められている「踊り巫女」の一座の男性。大柄でひげを蓄えており、口数が少ないが優しい人物。わけあって素性を隠しているが、その正体は神殿警護の長官。アイシャがいつも胸をあらわにした服を着て歩くため、そのつど胸をしまえと追いかけている。マユラにパン作りを教えた。
アソウギ
赤承の王で、アイシャの腹違いの兄。王都「嘏(か)」に取り入るため貢物をして役人をたらしこみ、その裏で異国との取引により莫大な財力を蓄えている。わけあって、ヒノコを捕らえ亡きものにしようとしている無慈悲な王を演じているが、実は心優しく、人望も厚い。一方で暑苦しい性格であり、妹のアイシャへの執着心はシスターコンプレックスに近い。 マユラをヒノコと知ったうえで保護し、のちにヒノメの再来として正式に赤承の王宮に迎え、良き理解者となる。
ハイタカ
緑哿の王子。まだ年若い少年で、王子としての役割を果たすのも初めて。長い髪を三つ編みにしている。七年祭りのため、赤承へやって来た。王都「嘏(か)」からは、大王の姫君との縁談の話が上がっており、受け入れることも断ることもできずに頭を痛めている。
カイエン
白ソウの王子。クールで物静かな印象で、汗をかくことを嫌う。七年祭りのため、赤承へやって来た。アソウギとは旧知の仲。王都「嘏(か)」からは、大王の姫君との縁談の話が上がっており、受け入れることも断ることもできずに頭を痛めている。
シセ
大王の息子。まだ幼い少年だが、皇子として赤承の王妹であるアイシャと婚約することになる。王家の特徴である漆黒のつややかな髪と、切れ長の美しい目の持ち主。世間知らずなところがあるが、そんな自らの欠点に気付くほどに利発で、過保護な母親を説得してさまざまなことを学ぼうと努力する。自分の妻になる予定のアイシャに対しては、一目見て恋心を抱く。
大王 (だいおう)
オビトアギの子孫であり、クニを統治する女王。王殿の深くに守られているため、クニの民がその姿を見ることはまずできないが、色の淡い豊かな巻き毛がゆったりと床まで波打っているその姿は、語り継がれるヒノメの姿とそっくり。その姿ゆえに、ヒノメに関わるさまざまな苦しみを味わってきており、ヒノコを殺して息子のシセに揺るぎない王座を用意すべく奔走する。 シセを溺愛しており、彼のためになると思えばどのような手段も辞さない。
偉い大臣の息子 (えらいだいじんのむすこ)
王都「嘏(か)」の学寮に通うようになったシンの友人の少年。太い眉毛がチャームポイント。大臣の息子ということで自身の家柄に優越感を持っており、シンを猿だと蔑んだことがきっかけで喧嘩になった。しかしそれ以降はお互いを認め合い、機密情報をも共有するほどの親友になる。大王の前で舞を披露したことがきっかけとなって、皇子であるシセのお相手をする者として出世する。
シュリ
アズサヒコのもとで字を習いたいと、突然現れた男性。誰よりも一生懸命学習しようとするものの、一向に覚えることができず、頭を抱え悩んでいる。しかし、それは文字を認識することができない「失読」であるため。また、まったく覚えられないわけではなく、時間をかければ多少の理解は可能。
大巫女 (おおみこ)
ヒノメの神殿の奥にいる、絹糸のような純白の長い髪に紅玉の瞳を持つ巫女。一見幼い少女のようだが、何十年も大巫女の座に就いており、その強力な力により姿が変わらないまま100年以上も生きている。ヒノコに関して、何もかも知っているそぶりを見せる。
オビトアギ
クニの初代王となった伝説の男性。もとは小さな豪族の長の不良息子で、あまりの不良ぶりにあきれた父親から村を追い出された。旅をしながら恋や冒険に勤しむ日々を送り、人食い鬼や龍、荒ぶる神々を退治し、やがてクニの起源である東国の王となった。その後、西国の女王ヒノメとの対決を経て、「嘏」の初代王となった。
ヒノメ
クニの起源である西国の女王だった女性。赤い目、赤い口、赤い手を持ち、天地を自在に操ったといわれている。人々は女王を畏れ、その姿を見ることができなかった。しかし、東国のオビトアギにはその神力は通じず、戦いの末倒された。彼女が死ぬ間際に「やがてヒノコが現れ、その時自分が蘇る」と言い遺したとされている。
イオ
山間にある龍の谷の龍門で、街道の番人を務める男性。街道が通ったことで、戦といっては人々に踏み荒らされ、怪しげな者が出入りするようになった龍の谷の変化を悲しみ、人も街も乾いてしまったことを嘆いている。
商人 (しょうにん)
マユラの力を使い、私腹を増やしてきた強欲な男性。王都「嘏(か)」の貴族とお近づきになるため、「宝物」と称して秘密裏にマユラを都へと運び込もうと画策していたが、龍の谷で突然現れた龍に荷を奪われた。その後、マユラを取り返そうと、王都の役人であるクランドを連れて戻る。
ヒトメ
両手に鋭く長い爪を持つ鬼のような山男で、「剣双鬼」と呼ばれるもの。頭に一本角を持ち、目は1つ。山奥で倒れていたマユラとシンを助けた。幼い頃森の中で泣いているところを村人に保護され、それ以降山奥の村で他の子供と同じように育てられきた。自分の異形を恥じているため、村人に遠慮して森のねぐらで暮らしているが、誰よりも優しく温かい心の持ち主。 彼の持つ鋭い爪が、何にも勝る武器になるからと、クランドに両腕を斬り落とされてしまう。
村の男 (むらのおとこ)
山奥の小さな村で暮らしている男性。幼い頃からヒトメと一緒に育ってきたため、家族のように慕っている。幼い頃、誤ってヒトメの爪に切られたことがあるが、ヒトメが心優しいことを知っているため、怖れることもない。
老夫婦 (ろうふうふ)
町で食堂を営む夫婦。働きたいとやって来たマユラを雇い、寝食を提供していた。ある時、マユラが字を読み書きできることに気付き、彼女が不思議な能力を持っていることを知る。それ以降、自分たちのためだけに力を使わせるため、マユラを監禁しようとする。
テッセイ
赤承の町にある市場でマユラが出会った少年。病気がちで床に伏している血の繋がらない姉のために、小さいながらも必死で働き世話をしている。もし願いが叶うならというマユラからの問いに、「今すぐ大人になりたい」と答える。
鄭 (てい)
海の向こうの大陸の大きな都からやって来た男性。赤承では、自国で生まれた文字をマユラに教える先生として活躍している。言葉は片言だが、文字は達者。自国には帰れない事情があったが、マユラの力を借りて故郷に帰る決意をする。
場所
ヒノメの神殿 (ひのめのしんでん)
クニが推進する「巫女狩り」によって、王都「嘏(か)」に集められた者が送られる神殿で、ヒノメが祀られている。何百年も昔、クニは女王の治める西の国と、男の王が治める東の国に別れていた。西国の女王はとてつもない能力を持つ巫女で、天地を自在に操り恐怖で人々を支配していたが、東国の王が西国の女王を倒したことでクニに平和をもたらしたといわれている。 クニの王朝の初代王となったオビトアギは、敵であった女王ヒノメを祀る神殿を建て、魂がやすらかであるように祈りを捧げるように命じた。これがヒノメの神殿であり、その儀式は数百年の時を経た現在に至るまで続けられている。なお、儀式を行うためには特別な力を持つ者が必要とされ、巫女がヒノメの神殿に送られる理由の1つとなっている。
クニ
日本に似た形の島国。王朝が治めており、大王がいる王都「嘏(か)」と、王都の支配下にある北の雪の国・白ソウ、東の草原の国・緑哿、南の海の国・赤承に別れて成り立っている。白ソウ、緑哿、赤承の三国は、ヒノメの復活を願って互いの絆を深めているが、「嘏」は三国と対立し、ヒノメの復活を阻止しようとしている。
赤承 (せきしょう)
クニの王朝が統治している国の1つで、南の海に面した国。王はアソウギ。気候は穏やかで、珍しいフルーツにあふれている。この国を建てた最初の王は、いつか現れるはずの人を全力で守れるようにと願いを込めて「赤承」と名付けた。それは、敬愛する女王ヒノメの能力を受け継ぐ特別な巫女で、右手の爪が赤い、文字を操る巫女であると伝えられている。
緑哿 (りょくか)
クニの王朝が統治している国の1つで、東の草原の国。王子はハイタカ。この国には、かつてヒノメの能力を受け継ぐ特別な巫女である、赤い口を持つ「口のヒノコ」が生まれた。その力は強く、赤ん坊の産声を聞いただけで気を失うほどだったため、口をふさいで育てられていたが、王都「嘏(か)」の者に殺害された。
白ソウ (はくそう)
クニの王朝が統治している国の1つで、北の雪国。王子はカイエン。この国には、かつてヒノメの能力を受け継ぐ特別な巫女である、赤い目を持つ「目のヒノコ」が生まれた。その力は強く、目のヒノコの目を見た者は死んでしまうため、目隠しをして育てられていたが、王都「嘏(か)」の者に殺害された。
イベント・出来事
七年祭り (しちねんまつり)
7年ごとに赤承で行われる特別な祭。ヒノメの復活を願い、7日間かけて行われる。赤承の他、緑哿や白ソウの王子が招かれ、舞が披露されることで、三国の絆をより深める意味合いも含まれている。「神迎え」から始まり、舞や踊りでもてなし、「神送り」で締めくくられる。
その他キーワード
ヒノコ
特別な力を持つ巫女。伝説に伝えられる女王ヒノメが、死ぬ間際に言い残した「やがてヒノコが現れ、その時自分が蘇る」という言葉から、「ヒノメ(日の女)の子」「ヒノコ(日の子)」という意味を持つ者だと考えられている。クニが「巫女狩り」を行うのは、いずれ現れるはずのヒノコを探すためであるともいわれている。なおヒノコは、ヒノメが持っていた赤い目、赤い口、赤い手を持つと言われている。 赤い爪(手)を持つマユラの他、赤い目の巫女、赤い口の巫女が存在するが、その2人は成長する前に王都「嘏(か)」の者に殺害された。
巫女 (みこ)
不思議な能力を持つ少女の総称。クニは「巫女狩り」と称して巫女を探し出し、王都「嘏(か)」に集めることを推進している。しかし古来より、巫女を手に入れた者は栄えるといわれていたため、大王の再三の命令にもかかわらず誰も巫女を差し出そうとしなかった。たいていは、村の中、屋敷の奥、森、洞窟など誰にも見つからないところに巫女を隠し、自分だけのものにしようとしている。