あらすじ
言葉の時代
西暦xxxx年。第三次世界大戦により、世界は人口の三分の一を失っっていた。そして西暦最後の年、既存の世界はある政党の手によって終結する。人の精神に干渉する特殊なマイク「ヒプノシスマイク」をにぎった女性だけの政党「言の葉党」によって政権は奪取され、武力による戦争は根絶されていく。このマイクを通した言葉(リリック)は人の神経に作用し、物理的に傷つけることなく相手をさまざまな状態に変化させる力を持っていた。そして西暦の代わりに始まった「H歴」と共に、武力による争いと武器の製造売買を禁じる「H法」が施行された。男性を完全排除した中王区を中心に地名も変更され、女性による政治が行われるようになっていた。H法により、殺傷力のある武器が使えなくなるものの、人々は争いを完全にやめることはなかったが、武器に代わってヒプノシスマイクを使ったバトルが始まった。男性はイケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュク、ナゴヤ、オオサカといった区画で生活をしながら、領土争いを繰り広げていた。この領土争いは、各地で活動するラップチームがヒプノシスマイクによるラップバトルで勝てば、相手の領土を獲得して領土を広げることができるというルールだ。こうして、兵器よりも言葉が大きな力を持つことになった世界で、男たちの威信をかけた言葉をぶつけ合う、新たなテリトリーバトルが始まるのだった。そして、厳しい時代を生き延びようとする山田一郎、碧棺左馬刻、飴村乱数、神宮寺寂雷の四人が出会う時、それぞれの人生を大きく変えるほどの運命と戦いが始まろうとしていた。
一郎VS左馬刻
西暦が終わったH歴元年。女性が覇権をにぎった世界で、男たちは精神に干渉して攻撃できるヒプノシスマイクを使って領土バトルを繰り広げていた。女性たちが政治を行う中王区からの命令で暗躍する飴村乱数は、紛争地の病院で医者をしている神宮寺寂雷と接触。横暴な武装集団に襲われていた寂雷を助けた乱数は、彼からラップを教えてほしいと言われ、二人は行動を共にすることになる。一方、イケブクロでMCとして活動する山田一郎は、所属するチームのボスの紫藤百舌九より、同じイケブクロ内の勢力として知られる碧棺左馬刻のチーム「Mad Comic Dialogue」から領土を奪う仕事を任される。一郎はコンビを組んでいる波羅夷空却と共にチーム「Naughty Busters」として、ラップバトルを仕掛けてMad Comic Dialogueの領土を次々と奪っていた。そんな一郎たちは騒ぎを聞きつけた左馬刻たちと対峙し、ついに直接対決の時を迎える。その頃、ラップを教えるために海外に渡っていた乱数は寂雷と共に帰国して空港にいたが、中王区からビルでテロが起こったという緊急事態の報せが乱数の携帯電話に入る。戦いの中で打ち解けた一郎と左馬刻の家族にも百舌九の陰謀による危機がせまり、伝説の四人が邂逅(かいこう)する時が刻一刻と近づくとともに、それぞれに新たな試練が待ち受けるのだった。
新たな絆
自らの所属するイケブクロのチーム「天国へノ階段」の目的を知って決別した山田一郎は、碧棺左馬刻たちと共闘して紫藤百舌九を退ける。ラップバトルに敗れた百舌九は、裏で手を組んでいた鳳仙玄鳥と共に一郎と左馬刻の家族をさらい、商業ビルに立てこもる卑劣なテロを起こす。人質を取られて一気に不利なバトルに持ち込まれた一郎と左馬刻は、百舌九たちの卑怯な攻撃を次々と食らってピンチに陥る。そこに神宮寺寂雷と飴村乱数が駆けつけて一郎たちに協力し、四人で百舌九たちの撃破に成功。人質も無事に解放され、一郎たちのもとにはいつもの日常が戻るのだった。いくつもの命懸けのラップバトルを経て、一郎と左馬刻には新たな絆が生まれ、白膠木簓と波羅夷空却を含めた四人で行動を共にするようになり、次々とラップバトルで領土を広げていた。一方、寂雷とコンビを組んで暗躍を続ける乱数は、一郎と左馬刻をチームに誘いながらも、中王区からの指令を受けてある目的のために動き始めていた。そんな中、寂雷を全力でサポートする神奈備衢は、寂雷にラップを教えた乱数の経歴や不穏な態度を見て、不信感を抱き始めていた。それぞれの強い思いと中王区のもくろみが交じり合う中で男たちは戦いを続け、伝説のチーム「The Dirty Dawg」結成の時がせまっていた。
The Dirty Dawg結成
山田一郎と碧棺左馬刻が白膠木簓、波羅夷空却と共に結成した新生「Mad Comic Dialogue」は着実にラップバトルに勝ち進み、その領土を広げていった。そんな中、飴村乱数は一郎と左馬刻に対し、自分と神宮寺寂雷を加えた四人で新しいチームをつくろうと誘う。一郎と左馬刻は、簓と空却とまだチームを続けたいという理由でその誘いを断るが、乱数は自らのチーム「空寂ポッセ」とラップバトルをしてほしいと約束を交わす。暗躍を続ける乱数はMad Comic Dialogueをバラバラにするための策略に切り替えて簓と空却を打ち負かし、中王区から受け取っていたヒプノシスマイクを超える特殊なマイク「真正ヒプノシスマイク」を使って、二人を声で洗脳する。これにより、乱数の洗脳を受けたままの簓と空却は、それぞれの相棒である一郎と左馬刻に悪態と別れを告げて去ってしまう。そして迎えたMad Comic Dialogueと空寂ポッセのバトル当日、実力が拮抗するバトルは、唐突な乱数の降参宣言によって幕を閉じる。不思議に思う一郎と左馬刻に対して乱数と寂雷は、この四人でチームを組んで世界に平穏と秩序を取り戻そうとあらためて誘う。乱数たちの言葉に納得、共感した一郎たちを加え、四人は新チーム「The Dirty Dawg」を結成するのだった。その後、The Dirty Dawgとして数多のバトルに勝利し、日本の頂点へのぼり詰めた一郎たちは、わずかな期間で中王区以外の区画をすべて制圧していた。強大化したチームと共に、さらなる大きな目的のために共に戦うことを誓い合う一郎たちだったが、その裏では中王区の新たな計画が動き始めていた。
関連作品
音楽原作プロジェクト
本作『ヒプノシスマイク -Before The Battle- The Dirty Dawg』は、声優によるキャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」を原作としている。原作はTVアニメやゲーム、舞台化されており、武力による戦争が根絶されて女性が覇権をにぎるようになったSF世界を舞台に、人の精神に干渉する「ヒプノシスマイク」によって巻き起こる、男性同士のラップバトルが描かれる。シナリオは百瀬祐一郎が、キャラクターデザインは一為が務めている。
テレビアニメ
2020年10月から12月にかけて、本作『ヒプノシスマイク -Before The Battle- The Dirty Dawg』の原作「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」のテレビアニメ版『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- Rhyme Anima』が、TOKYO MXほかで放送された。監督は小野勝巳、キャラクターデザインは芝美奈子が務めている。キャストは、山田一郎を木村昴、碧棺左馬刻を浅沼晋太郎が演じている。
ソーシャルゲーム
2020年3月から、本作『ヒプノシスマイク -Before The Battle- The Dirty Dawg』の原作「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」のソーシャルゲーム版『ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-』がスマートフォン向けアプリとして配信された。ソーシャルゲーム版は中王区が開催する「オルタナティブラップバトル」を描いた音楽ゲームで、オリジナルキャラクターも登場するオリジナルストーリーとなっている。
登場人物・キャラクター
山田 一郎 (やまだ いちろう)
イケブクロで暮らす不良少年で、山田家の長男。年齢は17歳。イケブクロでは有名な不良として知られている。左目が赤で右目が緑のオッドアイが特徴。左目の下に泣きボクロが一つあり、耳にピアスをつけている。いつも赤いパーカーの上に学ランを着用している。口が非常に悪いがとても弟思いで情に厚い性格をしており、困っている者は見捨てられない正義漢で、義理堅い一面もある。イメージカラーは赤、真紅。中学生の頃に両親を亡くしており、弟の山田二郎と山田三郎と共に、児童養護施設で育った。14歳の時、とある事件がきっかけで二郎たちの信用を失うが、事件から約3年ものあいだは一人きりで弟たちを養おうとするなど、かなりの苦労人。二郎たちのための資金を手に入れようとアルバイトをしていたが、ケンカの強さを買われてからは紫藤百舌九の金融会社の下働きという危険なアルバイトをしていたため、さらに二郎たちに避けられるようになる。H法の施行後はヒプノシスマイクを入手し、当初は同い年の波羅夷空却と「Naughty Busters」というチームを組み、百舌九のチーム「天国ヘノ階段」の傘下として活動していた。しかし、百舌九が鳳仙玄鳥と手を組んで自分と二郎たちを利用していたと知り、天国ヘノ階段とは決別。この際にさらわれた二郎と三郎を助けたことで誤解が解け、和解する。百舌九と玄鳥を倒したあとは何度か共闘した碧棺左馬刻と行動することが多くなり、空却と共にチーム「Mad Comic Dialogue」に編入し、新生Mad Comic Dialogueとして活動を始める。しかし、突如別れを告げてきた空却とは仲違いして離れることになり、彼が真正ヒプノシスマイクで洗脳されていたとは知らないままで、チーム「The Dirty Dawg」を結成した。何度も命懸けの共闘をした左馬刻には、信頼と尊敬を寄せている。誕生日は7月26日。好きな食べ物はカレーとサバの味噌煮とコーラで、嫌いな食べ物は椎茸。
碧棺 左馬刻 (あおひつぎ さまとき)
イケブクロで愚連隊のリーダーを務める男性。年齢は23歳。銀髪のオールバックで耳にピアスをつけている。つねに不機嫌そうな顔で、気に食わないことがあるとすぐにケンカを始めるなど、血気盛んな性格をしている。口は悪いが仲間に対しては義理堅い一面があり、卑怯な手段を好まずに弱い者には手を出さないなど、心根は優しく仲間思い。同居している妹の碧棺合歓を溺愛する、重度のシスコンでもある。昔は暴力的な父親と母親、合歓と共に暮らしていたが、母親が父親を殺害したあとに自殺したという過去を持つ。それでも母親と合歓のことはリスペクトしているとともに、唯一の肉親である合歓のことはどんなときでも守ろうと決意している。H法が施行されてからはヒプノシスマイクを入手し、愚連隊をそのままラップチームにした「Mad Comic Dialogue」で相棒の白膠木簓と共に戦い、同じイケブクロで活動する山田一郎のチームとは敵対関係にあった。しかし、合歓がビルにさらわれた事件で紫藤百舌九、鳳仙玄鳥に対抗するために一郎と組んだのをきっかけに、一郎のチームを組み入れた新生Mad Comic Dialogueとして活動するようになる。この際に飴村乱数、神宮寺寂雷と出会ってチームに誘われているが、簓とチームを続けるために断っていた。しかしその後に、突如別れを告げてきた簓と仲違いし、彼が真正ヒプノシスマイクで洗脳されていたとは知らないままで、The Dirty Dawgを結成する。年下の一郎のことはラップの実力も人柄も認めて信頼を寄せており、彼からも慕われている。コーヒーを淹れるのが得意。誕生日は11月11日。好きな食べ物は肉類で、嫌いな食べ物はピーマンと人参。
飴村 乱数 (あめむら らむだ)
ファッションデザイナーを生業とする青年。年齢は22歳。ピンク色の髪と小柄な体型で、いつもキャップをかぶっている。小学生に間違えられるほどの幼い見た目だが、頭の回転が非常に早い。天真爛漫で遠慮がなく、時には空気を読まない発言もするが、無邪気なかわいらしさで周囲に愛されている。子供っぽい容姿や性格とは裏腹にラップの実力は高く、ヒプノシスマイクを通した幻惑能力を得意とする。幼く無邪気な振る舞いも多いが、たびたび誰かと連絡を取りながらあちこちで暗躍している様子があり、謎の多い人物。H法施行後、紛争地で武装集団の襲撃に遭った神宮寺寂雷を救出し、彼に頼まれてラップを教えるようになる。寂雷がラップを覚えたあとにいっしょに帰国し、彼とのチーム「空寂ポッセ」として活動する。いくつかの事件を経て山田一郎と碧棺左馬刻とも知り合い、寂雷を加えた四人で新しいチームをつくろうと誘うが断られ、代わりにラップバトルをしてほしいという約束を交わす。その正体は中王区から派遣されたスパイの一人で、ある人物に作られたクローンであり、まったく同じ姿と声を持つ別個体が各地で暗躍している。ふだんの明るさは演技であり、本性は計算高く冷酷な性格の持ち主。ふだんは「ボク」だが本来の一人称は「俺」で、素の口調は粗っぽい。中王区から受け取っていた真正ヒプノシスマイクで白膠木簓と波羅夷空却を洗脳して仲違いさせ、何食わぬ顔で臨んだ一郎と左馬刻とのバトルでは、わざと降参して新チーム「The Dirty Dawg」を結成した。さらには碧棺合歓を洗脳し、中王区を仕切る言の葉党に引き入れた。実は喫煙者でもあるが、ふだんは棒付きキャンディを咥(くわ)えていることが多い。誕生日は2月14日。
神宮寺 寂雷 (じんぐうじ じゃくらい)
「ill-DOC」の異名を持つ、天才医師と知られる男性。年齢は33歳。長髪の長身痩躯で、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。貧しい者に対しては自腹で治療を行うなど、優れた医者であると同時にかなりの人格者ながら、邪悪な者には容赦がない。ふだんはおだやかな物腰で争いを好まないが、成人男性を倒せるほどの体術の心得がある。口癖は「興味深い」で、変わり者を好む。元は異国の紛争地で名医としての腕を振るい、H法の施行後も助手の神奈備衢と共に多くの命を救っていた。しかし、武装集団に病院を襲われてしまい、持ち前の体術で対抗するもののピンチに陥っていたところを飴村乱数に救われ、彼に興味を持つようになる。これをきっかけに、乱数にラップを教えてもらうようになり、ある程度マスターしたあとは乱数、衢と共に帰国。乱数と共にチーム「空寂ポッセ」で活躍するようになり、衢のサポートもあって傘下を多く抱えるほどの強力なチームに成長させていく。いくつもの戦いを経て、ヒプノシスマイクのラップを通して他者を回復させるスキルを目覚めさせていった。乱数と共に山田一郎、碧棺左馬刻とも知り合い、のちにチーム「The Dirty Dawg」を結成する。つねに冷静沈着に振る舞い、ヒプノシスマイクもむやみなことには使わない。ラップを覚えた当初は他者のまねをしていたが肌に合わず、罵詈雑言を含まない独自のリリックを作り上げていった。ふだんは酒類を避けているが酒癖が異常に悪く、一口でも飲むとふだんの姿からは想像もつかない江戸っ子口調に豹変し、しつこい絡み酒になる。しかも酔っているあいだの記憶は、酔いがさめたあとにはすっかり消えている。誕生日は1月9日。趣味は座禅と釣り。
碧棺 合歓 (あおひつぎ ねむ)
碧棺左馬刻の妹。年齢は17歳。両親を亡くしてからは兄の左馬刻と二人暮らしをしている。芯が強くて家族思いな優しい性格で、理不尽な暴力をとことん嫌い、修羅場でも勇敢に行動するなど肝が据わっている。イケブクロサンセットビルの立てこもり事件に巻き込まれ、同時にさらわれていた山田二郎、山田三郎と出会い、窮地の中で怯える彼らを励ましていた。この事件を通して山田一郎とも知り合い、同い年ということもあり、左馬刻を通して親しくなっていった。一方で、暴力を嫌いながらも事件の中で無力だったことを悔やみ、左馬刻たちに守られてばかりな自分の現状に悩んでいる。のちに飴村乱数による真正ヒプノシスマイクを使った洗脳の被害に遭い、左馬刻と決別する。実は左馬刻に劣らぬほどのラップの才能を秘めている。誕生日は8月1日。料理が得意。
東方天 乙統女 (とうほうてん おとめ)
内閣総理大臣を務める女性。中王区を仕切る女性だけの政党「言の葉党」の党首でもある。黒のロングヘアで、凛々しく気高い雰囲気をまとっている。ある人物から買い取ったヒプノシスマイクを使ったラップで前首相にダメージを与え、その様子を緊急放送として全国中継し、クーデターを成就させて覇権を奪い取った。その後はH法をはじめとする法整備により、武力による戦争を世界から廃絶させていく。訳あって男性を心底憎んでおり、野蛮な存在と見下している。デスクには息子の写真が飾られているが、現在はその息子と離れて暮らしている。誕生日は6月24日。
勘解由小路 無花果 (かでのこうじ いちじく)
内閣総理大臣補佐官および警視庁警視総監、行政監察局局長を務める女性。中王区を仕切る「言の葉党」の党員で、党首の東方天乙統女には恩があり、心から崇拝するとともに、側近として彼女を支えている。時折飴村乱数と連絡を取っており、各地で暗躍する彼の別個体にもさまざまな命令を下している。乙統女と同様に男性を嫌っている様子があり、男性相手には厳しく当たるが、女性の前では柔和な態度を見せる。誕生日は12月1日。
波羅夷 空却 (はらい くうこう)
僧侶の青年で、チーム「Naughty Busters」のメンバーの一人。由緒ある寺の息子で、年齢は17歳。群れるのを嫌うが、本来は仲間思いな性格をしている。言葉づかいが粗くあまり僧侶らしくないが、仲間を決して裏切らない男気にあふれる熱血漢。14歳の時に父親の灼空が達成できなかった荒行を成功させるなど、僧侶としては天才的な才能を秘めている。相棒の山田一郎とはかつては敵対していたが、次第に意気投合し、チームを組んでイケブクロで活動するほどの仲となった。のちに一郎と共にチーム「Mad Comic Dialog」に編入し、新生Mad Comic Dialogueの一員となる。真正ヒプノシスマイクを使った洗脳の被害者であり、飴村乱数の策略によって一郎と決別し、新生Mad Comic Dialogueからも脱退した。少年漫画が好きで、趣味は山登りとパンクロック。誕生日は8月21日。好きな食べ物は唐揚げで、嫌いな食べ物は精進料理。
白膠木 簓 (ぬるで ささら)
お笑い芸人をしている男性で、チーム「Mad Comic Dialogue」のメンバーの一人。年齢は24歳。短髪に糸目が特徴のピン芸人で、関西弁で話す。人を笑わせることが何よりも好きで、仕事では優れた話術で多くの客を笑わせているが、プライベートではオヤジギャグやベタなダジャレを連発している。相棒の碧棺左馬刻と活動し、山田一郎たちと知り合ったあとは新生Mad Comic Dialogueの一員となった。血の気の多い左馬刻とはよく衝突もしていたが、冷静に彼を受け止めることもあり、よき信頼関係を築いていた。真正ヒプノシスマイクを使った洗脳の被害者であり、飴村乱数の策略によって左馬刻と決別し、新生Mad Comic Dialogueからも脱退した。趣味は食べ歩き。誕生日は10月31日。好きな食べ物はクリームソーダとお好み焼きで、嫌いな食べ物はもんじゃ。喫煙者でもある。
神奈備 衢 (かんなび よつつじ)
神宮寺寂雷の助手を務める青年。異国に渡った寂雷に同行し、紛争地にある小さな治療所で治療を手伝っている。かつて交通事故で両親を亡くし、一人だけ生き残った際に、寂雷の治療を受けて命を救われた。その後、身寄りがないために寂雷に引き取られた過去を持ち、彼には強い恩義がある。寂雷といっしょに飴村乱数からラップを習ったが上達せず、自らのラップ修業はあきらめて寂雷の修業のサポートに徹するようになった。のちに乱数や寂雷と共に帰国し、チーム「空寂ポッセ」の管理や情報収集をはじめとするサポート役を務めている。帰国後に乱数の経歴を調べたことで疑問を持つようになり、不審な行動が見られる彼に不信感を募らせていく。
紫藤 百舌九 (しとう もずく)
イケブクロの金融事務所の社長を務める中年男性。切りそろえた黒髪で、黒いスーツを着用し、不気味な雰囲気を漂わせている。山田一郎のケンカの強さに目を付け、金に困っていた彼を借金取りとして雇うようになった。H法施行後にはヒプノシスマイクを入手し、イケブクロのチーム「天国へノ階段」のリーダーを務め、イケブクロをラップで支配するようになる。実は鳳仙玄鳥と裏で手を組み、一郎のことも目的のために利用していた。それを知った一郎と決別後にラップバトルで敗れ、イケブクロサンセットビルに立てこもるテロを起こす。この際に山田二郎と山田三郎、碧棺合歓をさらって人質にしていたが、飴村乱数たちの介入で失敗する。夢は覇権を奪った女性たちを追い出して領土を獲得し、紫藤百舌九自身が王になること。
鳳仙 玄鳥 (ほうせん げんちょう)
イケブクロに住む中年男性。山田一郎と弟たちが暮らしている児童養護施設の園長を務める。温和で優しい性格で、山田二郎と山田三郎からは信頼されているが、一郎からは冷淡な態度を取られている。実は裏で紫藤百舌九と手を組み、目的のために一郎たちのことを利用していた。一郎とのラップバトルに敗れたあとはイケブクロサンセットビルに立てこもるテロを起こし、レストランスタッフを殺害したが、飴村乱数たちの介入で失敗する。本性は狂気的なサディストであり、相手を苦しめながら殺すのを楽しんでいる。これらの本性は、以前より不信感を抱いていた一郎から察知されていた。
山田 二郎 (やまだ じろう)
山田一郎の弟で、山田家の次男。幼少期に両親を亡くし、兄の一郎と弟の山田三郎と共に児童養護施設で育った。黄色と緑のオッドアイが特徴。センター分けの黒髪と垂れ目で、目元と口元にはホクロがある。直情的かつ素直な性格で、人をあまり疑うことはない。怪しいアルバイトをしている一郎を毛嫌いしていたが、イケブクロサンセットビルの立てこもり事件に巻き込まれ、信頼していた鳳仙玄鳥の本性を知り、一郎に助けられたことで彼と和解した。これ以来、みんなに慕われる一郎を尊敬し、自分も一郎のようになりたいと思うようになる。また、三郎とはよく意地の張り合いをしている。家族以外には知られていないが、右肩に戦争で負った傷痕がある。誕生日は2月6日。好きな食べ物はカレー。
山田 三郎 (やまだ さぶろう)
山田一郎の弟で、山田家の三男。幼少期に両親を亡くし、兄の一郎と山田二郎と共に児童養護施設で育った。青と緑のオッドアイが特徴。怪しいアルバイトをしている一郎を毛嫌いしていたが、イケブクロサンセットビルの立てこもり事件に巻き込まれ、信頼していた鳳仙玄鳥の本性を知り、一郎に助けられたことで彼と和解した。これ以来、一郎を尊敬して慕うようになる。また、二郎とはよく意地の張り合いをしている。家族以外には知られていないが、左肩に戦争で負った傷痕がある。誕生日は12月16日。好きな食べ物はカレー。
安東 保 (あんどう たもつ)
イケブクロに住む中年男性。小太りな体型で眼鏡を掛けている。山田一郎が14歳の時に入所していた児童養護施設の園長を務めていた。優しい性格で、一郎だけでなく当時12歳だった山田二郎と9歳だった山田三郎からも慕われていたが、その本性は子供嫌いの女好きで、多額の借金も背負っている。さらに、一郎が二郎たちのためにアルバイトをして稼いだ金を、ひそかに女遊びで浪費していた。それらが知られたあとは一郎に制裁を食らい、二郎や三郎と共に施設を出て行かれることとなった。
集団・組織
The Dirty Dawg (だーてぃーどっぐ)
山田一郎、碧棺左馬刻、飴村乱数、神宮寺寂雷の四人が結成した伝説のラップチーム。略称は「TDD」。結成後すぐに中王区以外の全国制覇を果たし、チーム名とメンバーはよく知れ渡っていった。チーム名の意味は「非道な奴ら」で、命名者は左馬刻。
その他キーワード
ヒプノシスマイク
人の精神に干渉する特殊なマイク。H法施行後、争いは武力ではなく、このヒプノシスマイクにとって代わった。希望者にのみ中王区から配布され、主に男性が新たな争いの手段として入手していった。このマイクを通したリリックは、人の交感神経や副交感神経に作用し、さまざまな状態にすることができる。ヒプノシスマイクによるラップバトルで繰り広げられる領土争いは、各地域で活動するラップチームがラップバトルで勝てば相手の領土を獲得し、領土を広げることができるというルールになっている。誰にでも使いこなせるわけではなく、ラップバトルに勝つにはより強い精神力とラップのスキル、味方との連携が必要。のちに精神により強く干渉して洗脳すら可能とする「真正ヒプノシスマイク」も作られたが、その存在は広く知られておらず、中王区の一部の者のみが使用している。
H法 (えいちほう)
西暦に代わる「H歴」の始まりとともに施行された法律。武力による争いと武器の製造、売買を全面的に禁じている。施行と同時に男性を完全排除した「中王区」を中心に地名も変更され、覇権をにぎった東方天乙統女を中心とする女性による政治が行われるようになった。殺傷力のある武器は使えなくなったが人々は争いをやめることはなく、武器に代わるヒプノシスマイクを使ったラップバトルによる領土争いが始まった。これにより、世界は兵器よりもヒプノシスマイクを通して発せられる言葉(リリック)が大きな力を持つようになった。
クレジット
- 原作
-
EVIL LINE RECORDS
- シナリオ
-
百瀬 祐一郎
書誌情報
ヒプノシスマイク -Before The Battle- The Dirty Dawg 4巻 講談社〈マガジンエッジKC〉
第1巻
(2019-05-30発行、 978-4065161111)
第2巻
(2019-10-17発行、 978-4065174258)
第3巻
(2020-04-17発行、 978-4065193129)
第4巻
(2020-10-16発行、 978-4065210918)