あらすじ
フルカウント
仕事での発注ミスの責任を負わされ、取引先へ謝罪に向かうため、暗い気持ちでタクシーに乗り込んだ会社員。渋滞のためか運転手は機嫌が悪い。しかし、機嫌が悪い本当の理由は、運転手が大の巨人ファンで、巨人が負けそうだからであった。試合で苦闘するピッチャー・クワノは、会社員と同年齢。運転手によるクワノへのエールを聞いた会社員は、自分の心に変化が生まれるのを感じる。
ウィニングボール
女は、同棲中の恋人との交際5周年を、自宅で祝う準備をしていた。しかし、帰宅した男は、お祝いそっちのけでテレビのプロ野球中継を眺めている。男のささいな一言に腹が立った女は、男を家から追い出すが、男の忘れ物に気づく。
ホームスティール
田中は明日までにどうしても20万円が必要で、以前にアルバイトをしていたコンビニへ強盗に入ろうとしていた。しかし、ドラゴンズのキャップをかぶっていたので店長にすぐにバレ、そのまま人手不足の店番を頼まれてしまう。
ゲームメイカー
副社長の斉藤は、社長である父親の葬儀でてんてこまいだった。仕事の鬼だった父親が亡くなって、同じ会社に勤める叔父がなにやら画策しているという噂もあり、気が気でない。葬儀が進むなか、やがて斉藤は、仕事一筋だと思っていた亡き父の、意外な一面を知ることになる。
ワイルドピッチ
ヒデローは、普段はアイドルのコンサートチケットをさばくダフ屋のチンピラだったが、その晩はプロ野球のチケットさばきに駆り出されていた。チケットはまったく売れず、ヤクザの兄貴からは集金の催促が厳しく、おまけに恋人が兄貴と二股をかけているのではないかという疑いのなか、チケット売りに奔走する。
ルーキー
高橋ヨシノブは、恋人・久美子との結婚を認めてもらうため、広島にある久美子の実家を訪ねていた。しかし、久美子の父親は大の広島ファンで、巨人選手と同じ名前のヨシノブのことが気に入らず、相手にもしてくれない。ヨシノブが久美子の実家に通い始めて数日が経つが、今日も久美子の父親は、広島巨人戦を文句を言いながら観ているだけ。そこでヨシノブは思いもよらぬ反撃に出る。
ヒーロー
老人ホームで往年のスター野球選手の話題で盛り上がる老人たち。話は、かつて岡山セネターズにいた大エース・広川敦郎(あつを)の話題でさらに盛り上がる。すると、その場にいた元教師の老人が、旧制中学時代に広川とバッテリーを組んでいた、と語りだすのだった。
ファウルボール
あるロッテファンの男の妻が殺害された。刑事は事件を調べるが、被害者の夫・深田には、事件のあった時間、球場にいたというアリバイがあった。深田は、その日の試合のサヨナラホームランを確かにその目で見たという。
バッテリー
とある磯場へ夜釣りにやって来た社長と小堺専務。気がつくとすっかり潮が満ちて、陸へ渡る道がなくなっていた。岩場に取り残された2人は、やがて仕事のことで口論を始める。
ストライクゾーン
エーダイデパート本店の紳士服売り場で主任を務める主任は、パ・リーグの優勝決定戦の中継を、やきもきしながら見守っていた。エーダイイーグルスが優勝すると、優勝記念セールを行わなければならず、楽しみにしていた明日の宝塚公演に行けなくなるからであった。その夜、彼女はセールに必要な福袋が100個足りないことに気づくのだった。
メジャーリーガー
メジャーリーグで活躍するノモに触発され、アメリカ人に自分の寿司を食わせてやろうと、借金をしてロスに店を出した寿司職人の男。本格的江戸前寿司を目指したが、いまやアメリカ人や日本からの観光客に合わせるため、妥協して邪道なメニューを追加している。ある日、黒人の男性客と口論になった彼は、その客に本物の寿司を食わせてやる、と啖呵を切ってしまう。
ワインドアップ
リストラされて職探し中の梅本清は、サッカーの試合に出場していた小学生の息子を車で迎えに来ていた。車の中で、リストラされたせいで、父親が自殺してしまうのではないか、と口にする息子。梅本はそれを否定し、以前に息子としたキャッチボールの思い出を語りだす。
ビール&メガホン
熱心な阪神ファンの谷村は、年に一度の東北シリーズ、阪神対巨人を観戦するために球場にいた。スタンドからヤジを飛ばす谷村。毎年、その球場には巨人側から下品なヤジを飛ばす通称「ジャイ子」がいるのだが、その日は姿が見えない。気がつくと、谷村の隣には美しい女性が1人。谷村は彼女とすっかり意気投合してヤジを飛ばし続ける。
登場人物・キャラクター
会社員
エピソード「フルカウント」に登場する。34歳の男性会社員。仕事での発注ミスの責任を負わされ、取引先へ謝罪に向かうため、タクシーに乗り込む。
女
エピソード「ウィニングボール」に登場する。29歳の独身女性。同じ職場の後輩の男性と交際を始めて5年になり、半ば同棲状態になっている。この頃は、その男性との関係もマンネリ化している。
田中
エピソード「ホームスティール」に登場する。明日までにどうしても20万円が必要で、以前アルバイトをしていたコンビニに、包丁を持って強盗に入ろうとしている青年。ドラゴンズファンで、球団のキャップをかぶっている。
斉藤
エピソード「ゲームメイカー」に登場する。町工場から一代で二部上場企業まで成長させ、仕事の鬼と呼ばれた社長の息子。現副社長を務めている。眼鏡をかけた恰幅のいい人物。
ヒデロー
エピソード「ワイルドピッチ」に登場する。ダフ屋をやっているチンピラ。普段はアイドルのコンサートチケットをさばいているのだが、突然プロ野球のダフ屋に駆り出され、勝手の違いに苦戦している。
高橋 ヨシノブ
エピソード「ルーキー」に登場する。恋人である久美子との結婚を認めてもらうために、広島の実家にいる久美子の両親を訪ねて来た男性。大の巨人ファン。久美子の父親は大の広島ファンであり、さらに巨人選手と同じ名前の高橋ヨシノブのことが気に入らず、相手にしてくれなかった。それでも粘り強く説得を続ける。
老人たち
エピソード「ヒーロー」に登場する。老人ホームで暮らす男性の老人たち。ボケてしまってうめき声を上げるが、左手に何かを握らせるとおとなしくなるアーさん、孫に巨人戦のチケットを渡そうとしている山本さん、なんでもメモするメモ魔の久保田さんなど、懐かしいプロ野球の選手の話に花を咲かせる。
深田
エピソード「ファウルボール」に登場する。妻を殺害されたばかりのロッテファンの男。妻が殺害された時間は、球場にいたというアリバイがあるが、刑事から疑われている。
社長
エピソード「バッテリー」に登場する。とある企業の社長を務めている。中肉中背で生え際の後退した中年男性。ワンマン社長で敵が多い。部下の小堺と磯釣りをしていたが、満潮で帰り道がなくなり、沖の岩場に取り残される。
主任
エピソード「ストライクゾーン」に登場する。エーダイデパート本店の紳士服売り場で主任を務める独身中年女性。野球に興味はないが、エーダイイーグルスがパ・リーグで優勝すると、優勝記念セールを行わなければならない関係で、試合結果を見守っている。
寿司職人
エピソード「メジャーリーガー」に登場する。ロサンゼルスで「武士道」という名のスシバーを経営している男性。日本で親方や先輩の顔色をうかがいながら寿司を握るのに嫌気がさしていた。その頃、メジャーリーグで活躍するノモに触発され、アメリカ人に自分の寿司を食わせてやろうと、借金をしてロスに店を出した。
梅本 清 (うめもと きよし)
エピソード「ワインドアップ」に登場する。リストラされて職探し中の中年男性。年齢は42歳。サッカーをやっている小学生の男の子がいる。その息子から、リストラされたせいで自殺するのではないかと心配されている。
谷村
エピソード「ビール&メガホン」に登場する。東北に住む、熱心な阪神ファンの男性。球場で大声でヤジを飛ばしている。あまりに白熱して下品なヤジを飛ばしてしまうため、連れて来た女性に逃げられてしまうこともある。
運転手
エピソード「フルカウント」に登場する。会社員が乗り込んだタクシーの運転手。年齢40、50代と思われる気の強そうな男性。大の巨人ファンで、巨人が負けているラジオの実況中継にすこぶる機嫌が悪い。
刑事
エピソード「ファウルボール」に登場する。深田の妻が殺害された事件を調査している刑事。パンチパーマの中年男性。事件のあった時間、深田には球場にいたというアリバイがあるが、粘り強く事件を調べている。
小堺
エピソード「バッテリー」に登場する。社長の会社で専務を務める中年男性。白髪頭の気弱なタイプ。社長と一緒に磯釣りにやって来て、岩場に取り残される。
ジャイ子
エピソード「ビール&メガホン」に登場する。巨人ファンと思われる女性。女性とは思えない下品なヤジを金切り声で飛ばすことで、一部の人によく知られている。