ビールの時間

ビール専門バー「BEER CAT」のマスターが、客に合わせて提供する世界各国、古今東西のビールが、人々の思い出を紡いで心の重しを取り除いていく。訪れた人に奇跡が起こるというバーを舞台に展開される、ハートフルストーリー。各エピソード中には、登場したビールの詳細な情報を記したコラムページも設けられている。「漫画ゴラクスペシャル」と「週刊漫画ゴラク」に、2015年から2018年にかけて不定期に掲載された作品。

正式名称
ビールの時間
ふりがな
びーるのじかん
作者
ジャンル
レーベル
ニチブンコミックス(日本文芸社)
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あらすじ

第1巻

ある晩、常連客の男性は会社の同僚の男性を伴い、行きつけのビール専門バー「BEER CAT」を訪れた。ビールの種類が多すぎて何を飲んだらいいかわからないという同僚の男性に対し、マスターは「ギネス」をお勧めする。しかし、その名を聞いた同僚の男性は、表情を曇らせながらその申し出を断り、別のビールを注文する。実は同僚の男性は10年前、付き合っていたギネス好きの女性と同棲していたが、ある日、彼女は何も告げずに彼の前から姿を消したという過去があったのである。その後、話を終えた常連客の男性と同僚の男性は店をあとにするが、傘を忘れたことに気づいた同僚の男性は再び店へと戻る。するとそこには、新たな一人の男性客がいた。彼はギネスを好んで飲んでいたが、それはすべて妻の受け売りなのだと語る。さらに男性は、彼の妻が10年前に家出をしていたこと、そして数か月後にふらりと帰ってきたことを明かす。同僚の男性が、そんな彼の話にかつて付き合っていたギネス好きの女性との奇妙な共通点を見いだす中、10歳くらいの少女が男性客を迎えに現れる。同僚の男性はその少女の笑顔を見て、何かいいようのない懐かしさを感じるのだった。(VOL.1「ドラフトギネス」。ほか、8エピソード収録)

登場人物・キャラクター

マスター

ビール専門バー「BEER CAT」でマスターを務める初老の男性。短く刈った髪をオールバックに撫でつけ、いつもにこやかな笑みを浮かべている。客の要望があればそのビールを出すが、相手の様子を見て、その時その人物に最適なビールをお勧めすることもある。そしてマスターの提供したビールが、客に奇跡を起こす引き金となる。

常連客の男性 (じょうれんきゃくのだんせい)

ビール専門バー「BEER CAT」の常連客の男性。背が低く、無造作なくせ毛に太い眉、分厚い唇をしている。日々BEER CATに入り浸っており、マスターとも懇意な関係。知り合いをBEER CATに連れてきたり、一見の客に積極的に話し掛けて緊張をほぐしたりと、客ながらもはやBEER CATの一員と化している。

同僚の男性 (どうりょうのだんせい)

常連客の男性の会社の同僚。まじめそうな風貌の青年で、眼鏡をかけている。今から10年ほど前、自宅の近所の弁当屋で働いていたギネス好きの女性と知り合い、トントン拍子に交際までこぎつけて同棲していた。しかし、交際から1か月ほど経ったある日、なんの前触れもなく手紙一つ残さずに姿を消してしまい、今でもそのことが心に大きな傷を残している。彼女の受け売りでギネスビールに関する深い知識を持つが、当時のこともあって現在はギネスビールを避けている。

ギネス好きの女性 (ぎねすずきのじょせい)

10年前、同僚の男性の家の近所にある弁当屋でアルバイトしていた女性。セミロングのソバージュヘアで、同僚の男性を一目で虜にしたほどの魅力的な笑顔を持つ。よく店に来る同僚の男性に、半ば逆ナンの形で声を掛けて交際を開始し、すぐに同棲を始めた。しかし、交際してからおよそ1か月後、同僚の男性に何も告げずに彼の前から突如姿を消した。ギネスビールに詳しく、付き合っているあいだは同僚の男性にもよくその知識を披露していた。

キクチ

きまじめで気弱そうな青年で、髪をセンター分けにしている。会社の営業先である丸亀商事で働く岩崎咲子という女性に思いを寄せているが、彼女とはまともに話したこともない。咲子がベルギービールにハマっているという話を小耳にはさみ、酒が弱いにもかかわらず、ビール専門バー「BEER CAT」を訪れた。そこでマスターに、ピンクの象、クロコダイル、ドラゴン、最後にはアルフレッド・ヒッチコックの『鳥』の幻覚が見えるという、アルコール度数の高いベルギービール「デリリウム トレメンス」を勧められる。口当たりのよさからどんどん飲み進めるうちに、そのとおりの幻覚を見ることとなる。

岩崎 咲子

丸亀商事の受付を務めていた女性で、キクチの思い人。肩までのセミロングヘアで、清楚な雰囲気を漂わせている。姫菊女子大を卒業したばかりで年齢は22歳、彼氏はいない。酒が強く、現在はベルギービールにハマっており、ビール専門バー「BEER CAT」にもよく訪れている。キクチは知らなかったが実は派遣社員で、契約切れにより、すでに丸亀商事を退社している。丸亀商事に営業に来るキクチのことは名前までしっかり覚えており、彼のことを憎からず思っていた。

熊井

列車に乗るまでの時間潰しに、ビール専門バー「BEER CAT」を訪れた青年。太眉に団子鼻で、髪を七三に分けている。実は同棲している女性がいるが、都会に出て成功したいという野心を満たすためにウソをついて彼女を捨て、列車で一人旅立とうとしていた。BEER CATに来たのは初めてだが、そこで自分の名を知る謎の男性と出会い、彼と酒を酌み交わすこととなった。そして、20年後の熊井自身であると素性を明かした謎の男性から現在の身の上を明かされ、考えを改めるようにと諭される。

20年後の熊井

ビール専門バー「BEER CAT」に現れた熊井に声を掛け、共に酒を飲むことになった中年男性。髪型こそオールバックだが、太眉に団子鼻で熊井に似た雰囲気を持つ。実は女性を裏切って列車で旅立つという選択をした熊井の、20年後の姿である。都会に出てそれなりの成功をおさめはしたものの、故郷に捨ててきた彼女のことがずっと忘れられずにいた。そんな中、癌に侵されて余命半年と宣告され、ショックで街をさまよううちに、いつの間にかBEER CATへとたどり着いた。そこで20年前にBEER CATに訪れていた列車に乗る前の自分自身、すなわち熊井に出会い、考えを改めて彼女といっしょになるようにと諭す。

尾崎

常連客の男性の高校時代の恩師。背が低くマッシュルームカットで、口ひげを生やした気難しい中年男性。常連客の男性の同窓会に招待され、その帰りに彼といっしょにビール専門バー「BEER CAT」を訪れた。「今のビールはまったく苦くない、あんなものは女子供の飲み物だ」とビールを毛嫌いしていたが、マスターに苦みの強い「YOKOHAMA XPA」を勧められ、その偏見を解消する。大学教授だった年老いた父親と、彼より20歳も年下だったホステスの母親のあいだに生まれ、愛情もないできちゃった婚の末に母親を苦しめた張本人として、父親に恐れとも憎しみともつかない、強い苦手意識を抱いていた。ただし、両親ともに子供の頃に亡くしているため、母親が本当に不幸だったのかどうかは確証が持てずにいる。常連客の男性とビールを飲みながらそんな話をしているうちに、かつて亡くなる直前の父親から、彼の書斎の机にある赤い本を開けてみるようにと告げられていたことを思い出す。

吉田

大きな顔に小さな垂れ目の、ボーッとした印象の中年男性。気がついたらなぜかビール専門バー「BEER CAT」に居て、さらに着ていたスーツの背中が燃えているという不可思議な状態にあった。ビールは苦いために苦手だったが、BEER CATに来ていた客のピエールに、苦くないビール「ヒューガルデン ホワイト」を勧められて大いに気に入る。長年勤めた大手企業で未だに平社員だが、娘のキミコを社長の息子に見初められ、舞い上がりながら家族に報告。話はトントン拍子に進み、明日には社長の息子とキミコの婚約が行われる予定となっていた。だがこのタイミングで、実はキミコには別に思い人がおり、社長の息子との結婚を決めたのも、すべては吉田のためだったことを知って苦悩している。

キミコ

吉田の娘で、ロングヘアの優しそうな雰囲気を漂わせた女性。社長の息子に見初められたという話を吉田から聞き、その話をすんなり受け入れた。実は片思い中の男性がいたが、吉田が望むならとそちらはあきらめ、社長の息子のもとへ嫁ごうと考えていた。

ピエール

ビール専門バー「BEER CAT」の客で、白髪の老人。ビールが苦手という吉田に、苦くないビール「ヒューガルデン ホワイト」を勧めた。実はヒューガルデン ホワイトの生みの親である「ピエール・セリス」その人。さまざまな要因から権利を手放さざるを得なかったヒューガルデン ホワイトを「娘」になぞらえ、ピエール自身と「娘」が、どうあるのが一番の幸せだったのかを吉田に説く。実在の人物、ピエール・セリスがモデル。

角刈りの男性 (かくがりのだんせい)

5年ぶりにビール専門バー「BEER CAT」を訪れた男性。角刈りで、がっしりした体格をしている。今から5年前にBEER CATにやって来た際、店を出たところで酔っ払いとトラブルになり、誤って相手を殺してしまった過去がある。現在は殺人罪で懲役5年の刑期を終え、刑務所から出てきたばかり。この事件により妻とは離婚し、一人娘にも今後は会わないようにと妻に告げられていた。しかし、妻に隠れてこっそり会いたいと娘から手紙が届き、待ち合わせのために再びBEER CATにやって来た。マスターに、長期熟成により5年目が飲み頃という「サミクラウス2011」を勧められたものの、当時のことを反省しており、酒は飲まないと一度は断る。

若い常連客 (わかいじょうれんきゃく)

角刈りの男性が訪れる数日前から、ビール専門バー「BEER CAT」に通い詰めるようになった男性。マッシュルームカットにスリムな体型をしたにこやかな笑顔が特徴的な青年で、常連客の男性とも旧知の仲のようにすっかり打ち解けている。実は5年前に角刈りの男性に殺された相手の息子で、復讐を果たすために彼の刑期満了に合わせ、BEER CATで張っていた。

はだしの男性 (はだしのだんせい)

ビール専門バー「BEER CAT」に靴もはかずに裸足で現れた中年男性。無精ひげを生やし、くたびれた雰囲気を漂わせている。店に入るなり「この世で一番うまいビール」を注文し、マスターに「モレッティビール」を勧められる。しかし、いざビールを持つと手の震えが止まらず、なかなか口をつけられずにいた。実は親から継いだある小さな会社の社長を務めていたが、悪質な投資詐欺に引っかかって多額の借金を負ってしまい、はだしの男性自身の死亡保険金で返済しようと考えていた。しかし自殺による死亡の場合、保険加入から3年が経過しないと保険金が下りないため、そのタイムリミットまで借金取りから逃げ続けていた。いよいよタイムリミットを目前に控え、最後にビールを一杯飲んでから死のうと考えていた。

福の神

ビール専門バー「BEER CAT」を訪れていた客。逆立った髪に豊かな口ひげを生やした中年男性で、つねににこやかな笑みを浮かべており、「モレッティビール」のラベルに描かれた男性に似ている。自らの友人の話だと前置きしながら、はだしの男性の境遇をことごとく言い当てていく。そしてはだしの男性に対し、その友人は追い詰められたところで「福の神」に会ったため、死なずに済んだと告げる。

永田

草野球チーム「Attackers」のメンバーの青年。非常に背が高く、がっしりした体格をしている。チームメイトの新山とは小学生時代からの友人だが、彼のことを見下しており、当たりも非常にきつい。小学生時代に美少女と評判だったクラスメートのチャコに思いを寄せ、新山といっしょにラブレターを渡したことがある。この時、新山が書いたのは実はラブレターではなく、永田のいいところを書き連ねた、ぜひ彼となかよくしてあげてほしいという内容のものだったが、永田自身はその事実を知らない。

新山

草野球チーム「Attackers」のメンバーの男性で、眼鏡をかけている。いつもにこやかで優しい性格の青年。チームメイトの永田とは小学生時代からの友人。小学生時代に美少女と評判だったクラスメートのチャコに、永田といっしょにラブレターを渡したことがある。しかし、実は新山が渡したのはラブレターではなく、永田のいいところを書き連ねた、ぜひ彼となかよくしてあげてほしいという内容の手紙だった。それにもかかわらず永田がチャコにふられたことで失望した様子を見せ、その真相を知らない永田には女々しい奴だとさげすまれることとなった。

チャコ

永田や新山が小学生だった時に、クラスメートだった女性。美少女と評判で、違う学年の生徒からもその存在を知られていたほど。実は当時、新山に思いを寄せていたが、彼からは永田との交際を熱心に勧める手紙をもらったことで、自らの気持ちを伝えることができなかった。現在はビール専門バー「BEER CAT」の近くにある整形外科で医師を務めており、新任ながら腕がいいと患者からも評判がいい。明るく屈託のない性格で、その美貌にもますます磨きがかかっている。

雨宮 和(なごむ)

雨宮和(なごみ)の夫。厚い唇で無造作なくせ毛に無精ひげを生やしている。離婚届を出す前、最後に一杯やろうと夫婦でビール専門バー「BEER CAT」を訪れた。何事も決断を先延ばしにするだらしないところがあるわりに、ちょっとしたことですぐに頭に血をのぼらせ、暴力的に振る舞う。そのため和(なごみ)と衝突を繰り返し、離婚騒ぎに発展した。ちなみに「和(なごむ)」という名前は、何度騙されても人を信じ続けたせいで多額の借金を負うに至った、あまりにも人のいい祖父から受け継いだもの。そんな祖父と同様に、頼まれると嫌とは言えないお人よしなところもある。ただし、祖父は雨宮和(なごむ)が生まれる前に失踪したため、和(なごむ)自身は祖父がどんな人だったのかは知らない。

雨宮 和(なごみ)

雨宮和(なごむ)の妻。ウエーブヘアを肩まで伸ばした、勝気そうな女性。離婚届を出す前、最後に一杯やろうと夫婦でビール専門バー「BEER CAT」を訪れた。何事にもせっかちで、少々口の悪いところがある。そのため和(なごむ)と衝突を繰り返し、離婚騒ぎに発展した。実は雨宮和(なごみ)の母親は若くして和(なごみ)を妊娠したが、男に逃げられて頼るべき身寄りもなく、自殺しようとしていたところを「和(なごむ)」という老人に命を救われたという経緯がある。「和(なごみ)」という名前は、その老人の名が由来となっている。ただし、母親は和(なごみ)が幼い頃に他界しているため、和(なごみ)自身はそのことを知らない。

古い常連客 (ふるいじょうれんきゃく)

ビール専門バー「BEER CAT」のカウンターの片隅で、いつも居眠りしている老人。髪は薄く総白髪で、鼻が大きい。本名は「和」。実は雨宮和(なごむ)の祖父で、雨宮和(なごみ)の母親の命の恩人。また、同時に和(なごむ)と和(なごみ)の名前の由来となった人物でもある。もともとはとある小さな会社の社長を務めていたが、30年前、人に騙され続けて多額の借金を背負った末に失踪し、その後は和(なごみ)の母親を助けた直後に、その足でBEER CATにたどり着いた。以来、毎日のように店に通ってはビールを一杯飲み、カウンターで居眠りをしている。

場所

BEER CAT (びーるきゃっと)

悩みを抱える人の前に忽然と姿を現す、世界各国、古今東西のビールをそろえたビール専門のバー。BEER CATでは毎晩、訪れた人に奇跡が起こるとされている。カウンターだけでなく複数のテーブル席も備えた広いバーだが、働いているのはマスターと数人のウエートレスのみ。店の大きな看板には「THE BEER・CAT」と記されているが、基本的には「BEER CAT(ビールキャット)」と呼ばれる。また、店の中にはその名のとおりビールを飲む猫がおり、店のマスコットキャラクターとなっている。

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