あらすじ
今日明日と人に会う用事がないある日、今ニンニクを食べておかなければ後悔する気がすると、村崎ワカコは餃子(ギョウザ)屋を訪れた。ビールと焼き餃子を注文したワカコは、さっそく餃子をひとかじりし、口の中で強烈なまでのニンニクを感じるのだった。そのニンニク感が消えないうちにビール、そしてビールの爽快感が失われないうちに餃子と、ワカコは矢継ぎ早に食べ、飲み進めていく。そんなルーチンが止められず、テンションの上がっていたワカコの携帯電話に、彼氏のヒロキから、いっしょに食事をしようというメールが入る。だが、今日明日は人に会わないと決めていたワカコは、そんなヒロキの誘いを一蹴する。(4夜「焼き餃子」)
その日、ワカコは鬼気せまるほどの集中力で、黙々と仕事をこなしていた。そんな彼女の姿に、同僚のみぃさんはデートでもするのかと尋ねるが、ワカコはそんなものよりいいものだと答え、終業後に一人夜の町へと繰り出す。仕事に心を残さず、身ぎれいにして臨みたいとワカコが向かったのは、一軒の料理屋。そこでワカコは、これを食べなければ冬が始まらないと、焼き牡蠣(がき)を注文する。冷酒を口に含んで、まずは牡蠣の香りを堪能し、レモンを絞って牡蠣の身を殻から外す、そんな自分をじらすような工程を楽しみながら、ようやく牡蠣を口に運んだワカコは、そのおいしさに言葉も出ず、時が止まったような錯覚に陥る。そんな中、ワカコは彼氏のヒロキが牡蠣を食べられないことを思い出し、デートではなく一人で飲みに来るのも当然だと、自分を納得させる。(52夜「焼き牡蠣」)
会社の向かいのビルが工事中で終始騒音がうるさく、日中の業務においても満足に人の声が聞き取れないうえ、自分もつねに大声を上げて話さなくてはいけないことから、ワカコはストレスをため込んでいた。こんな日は静かに飲みたいと、ワカコは料理は美味しいものの、いつも空いている飲み屋へと向かう。ホタルイカの沖漬けをつまみに、日本酒の熱燗(あつかん)をゆっくりと楽しもうとしていたワカコだったが、そんな日に限って珍しく客の入りがよく、ワカコが通されたカウンター席のとなりでは、二人連れの男性客が大声で騒ぎながら飲んでいた。店で飲むからにはこういうことも仕方ないと、半ばあきらめにも近い思いを抱いた瞬間、ワカコはホタルイカの汁をテーブルにこぼしてしまう。すぐに拭こうとするものの、ペーパーナプキンは二人の男性客の近くにあり、手を伸ばすのも声をかけるのもはばかられた。そんなワカコの前に、逆側にいた人の好(よ)さそうな中年の男性客から、そっとペーパーナプキンが差し出される。みんなの居酒屋だから嫌なこともあるが、逆にみんなの居酒屋だからいいこともあるとしみじみとした思いにふけりながら、ワカコは日本酒を堪能する。(71夜「ホタルイカの沖漬け」)
ある雨の日、ワカコは雨宿りがてら目に入った立ち飲み屋へと足を踏み入れた。貼り紙やポスターなど、店内は昭和の雰囲気漂う佇(たたず)まいで、そんな様子に触発されたワカコは、トリスハイボールをチョイス。そして、ずらりと並ぶ店内の品書きから、ツナ缶マヨ焼きを選択する。出てきたのは、ツナ缶にそのままタマネギとマヨネーズを乗せて炙(あぶ)ったものだった。ツナ缶とマヨネーズの油、それに挟まれたタマネギと、さらにハイボールの爽やかさを交互に堪能しながら、ワカコはツナ一缶食いというささやかなぜいたくを楽しむ。(86夜「ツナ缶マヨ焼き」)
ある朝、急いでいたワカコは、コンビニのATMにキャッシュカードを置き忘れてしまう。すぐに気づいて慌てて引き返すと、ちょうど親切な女性客が店員に忘れ物のキャッシュカードを手渡しているところだった。気をつけなさいと優しく諭されながらキャッシュカードを返してもらったワカコは、小さな親切に触れてその日一日、温かな気持ちで仕事に励む。そして帰宅時、立ち寄った飲み屋で、ワカコはごぼう揚げと燗酒をしっとりほっこりと楽しみながら、人の情けの温かさを嚙みしめていた。すると、カウンター席のとなりにいた女性客が、グラスを倒して水をこぼしてしまう。こぼれた水が女性のスカートに垂れそうになった瞬間、ワカコはとっさに持っていたおしぼりで水をせき止める。服を汚さずに済んだ女性と、彼女の連れの青年から丁寧な礼を受けたワカコは、当たり前のことをしただけなのにと考えながらも、朝の出来事を思い返す。そして、自分がした親切より、受けた親切の方が印象に残りやすいのかもしれないと、改めて温かい気持ちになるのだった。(105夜「ごぼう揚げ」)
一人で映画を見に行ったワカコだったが、後ろの席の二人連れが終始ぼそぼそと会話をしていたことで、まったくスクリーンに集中することができなかった。16時40分からの回を見て、その余韻に浸りつつ飲みに行こうという、そんな心躍るプランにも水を差された気分になって、ワカコはぷりぷりしながら飲み屋ののれんをくぐる。ビールを飲みながら、サクサクと歯ごたえのいいものを食べてこの「怒り」を解消しようと、ワカコはシャレも込みで「イカリング」を注文。まずはそのまま、続いてソース、さらに醤油と、さまざまな味付けでイカリングを楽しむワカコは、さらに焼酎の水割りを注文。こうして美味しいつまみと酒により、ワカコの怒りは完全に解消されるのだった。そしてワカコは、映画そのものはもう一度見たいくらい面白かったと、後日改めて16時40分の回を見に行こうと決意する。(136夜「イカリング」)
ワカコがひいきにして通っていた飲み屋が、閉店してしまった。しかもその跡地には、早くも別の飲み屋が入っていた。行ってみたいような、でも知りたくないような、複雑な思いを抱えながらもワカコはその新しい店に足を踏み入れる。以前は少々薄暗かった店内は明るくなり、奥のテーブル席が小上がりになっていたりと居ぬきではないながらも、店の構造自体はさほど大きく変わってはおらず、ワカコは過去の店に思いを馳(は)せる。そんな自分に気づいたワカコは、「ここはここ、前は前」と思い直し、揚げ出し豆腐と、出汁(だし)の味を楽しむための冷や酒を注文する。揚げ出し豆腐を口に運び酒で追っかけながら、ワカコは聞いてもいないのに料理の説明をしてくれた前の店の大将のことを思い出す。そして感傷的な気持ちに浸りつつも、今の店が美味しくて居心地のいい大人の店であることを認め、ワカコはごく小さく「ぷしゅー」と音を発するのだった。(174夜「揚げ出し豆腐」)
自分が毎日出来合いの弁当を食べているのに対し、すぐに飽きるとはいえ、美容研究に余念がないみぃさん、毎日手作りの弁当を会社に持ってくるほっしぃ、自分の分はもちろん、家族全員の弁当を作っているアベさんら同僚の女性陣は、ワカコの目には非常にがんばっているように見えていた。それでもワカコは「心の健康あってこそ」とうそぶき、面倒な自炊を避けてその日も飲みに行く。だが、少々の良心の呵責(かしゃく)を感じていたワカコは、肉が中心のその店で、あえて水ナスの塩もみを注文。合わせる酒は、ナスの淡泊さを邪魔しない麦焼酎の水割りに決定する。すっきりしたナスと麦焼酎を楽しみながら、ワカコは自らを見つめ直すと同時に自分が浄化されていくのを感じ、ほっしぃに教えてもらったサイトを見て自作の弁当作りに励もうと決意。そして気持ちを新たにしたところで、せっかくだからと肉料理を追加注文する。(第182夜「水ナスの塩もみ」)
日曜の朝、ワカコは上司のオカダさんに、「明日から会社に来なくていい」と告げられる悪夢を見て目を覚ました。嫌な気分を振り払うために外出したワカコは、午後4時半頃、ある飲み屋のショーウインドウに出ていた「晩酌セット」の文字を見かけ、まだ少々早い時間ながらも、さっそく飲もうと入店する。この店の晩酌セットは白身フライに枝豆、刺身にご飯がセットになったワンプレートの料理だったが、ご飯は冷ややっこに変えてもらえるという、ワカコのような吞(の)みすけにはありがたい仕様となっていた。いっしょにビールを注文し、まずは枝豆、続いて冷めないうちに白身フライと食べ進めるうちに、ビールはあっという間になくなってしまい、続けてワカコは残りの料理に合うようにと熱燗を注文。そんな中、ワカコはほかの客の会話から、常連の「トクさん」という人物が毎日平日の昼間から飲みに来ていることを知る。それを聞いたワカコは、トクさんのことをうらやましく思うものの、今朝見た夢のことを思い出し、仕事あってこそのものだと一瞬でその考えを改めるのだった。(213夜「晩酌セット」)
やって来たクリスマスの日。例年どおり、彼氏のヒロキは仕事が多忙でワカコといっしょに過ごす時間が取れなかった。そんな事情もあり、ワカコにとって毎年この日は、店より家で美味しいものを食べる日となっていた。クリスマスをいっしょに過ごせないことをメールで詫(わ)びるヒロキを、寛大な心で許したワカコは、スーパーで買ってきた出来合いのローストチキンに、せめてこの程度はと手作りしたポテトサラダ、さらにスパークリングワインをテーブルに並べる。さらに、BGMはテレビのクリスマス特番ではなく、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルのオラトリオ「メサイア」と、ワカコなりに浮かれた様子でクリスマスの食事を始める。そして、ローストチキンにかぶりつきながら、日常的に食べる鶏(とり)もも肉とはまた違った、この日ならではの楽しみを覚えるのだった。そうこうするうちにスパークリングワインがなくなり、ワカコは酒をふつうのワインに移行。さらに結局テレビをつけ、思うままに一人のクリスマスパーティを堪能する。(249夜「ローストチキン」)
ある日、会社でオカダさんと話していたワカコは、彼の顔に何か違和感を覚えていた。オカダさんの立ち去り際、いつもと眼鏡が違うことに気づいたワカコだったが、結局そのことには触れずに済ましてしまう。ところが次の瞬間、オカダさんの顔を見たみぃさんは彼の変化にすぐ気づく。そして、眼鏡を変えたのかと尋ねるみぃさんにオカダさんは、いつもの眼鏡が下の娘に壊されてしまい、予備の眼鏡をかけているのだと心なしか嬉しそうな様子で語るのだった。その夜、ワカコはいつものように一杯飲みに行き、自分もオカダさんの眼鏡について触れてあげればよかったかと思いながら、キス、カンパチ、ハモの昆布締め三点盛りと、昆布の風味を膨らませるぬる燗の酒を注文。そしてワカコは、口に入れた瞬間は淡泊ながら、あとからじんわりと働きかけてくる昆布締めの味をしみじみと楽しみながら、思ったことをすべてその場で表に出す必要もないかと考え直すのだった。(273夜「昆布締め三点盛り」)
オカダさんが不在の日、会社では心なしかみんな羽を伸ばしている様子だった。あくせくせずに働く日も必要だと自分を納得させながら過ごしたのち、ワカコはプライベートでものびのびしようと、入った飲み屋でいつもはやらないハイボールチンチロリンにチャレンジしてみることにした。これは、サイコロを三つ振ってゾロ目が出ればハイボールが1杯無料、目の合計が偶数ならば半額というサービスだが、目の合計が奇数の場合は、強制的にメガジョッキとなり、価格も通常量の倍になってしまう。ここでワカコは、なんとなく予感していたとおりに奇数を出してしまうものの、今日の気分にはこれもまたよしと盛り上がり、つまみも景気よくビフカツを注文。こうして、仕事ものびのびやって、程よく揚げたいい肉と飲んでも飲んでも減らない酒に囲まれ、ワカコは一日をいい気分で終えるのだった。迎えた翌日、前日の留守を詫びながら会社に出勤したオカダさんは、どういうわけかいつも以上に気合の入った様子でバリバリ仕事をする部下たちの姿を目の当たりにする。(286夜「ビフカツ」)
オカダさんと紺野さんが、スマホでさまざまなアプリを使いこなしている白石を前に、時代の流れが速すぎて自分たちにはついていけないと談笑していた。その話を聞くとはなしに聞いていたワカコは、自分もそのうち時代についていけなくなるかもしれないと小さな恐怖を覚えると同時に、今の時代、止まったら負けなのだろうかと考え込む。そんな思いを抱いたまま入店した飲み屋で、ワカコは冷酒とハモの卵とじを注文する。無限に形を変える卵料理の中で、定義はあいまいながらもまさしくこれが「卵とじ」だと確信できるその姿と味を堪能したワカコは、人間もそうそう動き続けてはいられないと呟(つぶや)きながら、それまでの悩みに回答を出すのを先送りにするのだった。(314夜「ハモの卵とじ)
同僚のハラさんに、一人飲みで何をしているのかと聞かれたワカコは、酒を飲んでいるに決まっていると頭の中で即答しつつも、彼の質問の真意を探る。一人で飲んでいると手持無沙汰にならないか、という意図だと思い至ったワカコは、改めてある日の自分の飲み方を振り返ってみることにした。まず、目の前に並べられた酒瓶のラベルを眺めつつ、注文した北国の冷酒を堪能。そうするうちに間もなく、つまみとして頼んだホヤの刺身が到着。ホヤの独特の食感、味と香りに酒が止まらなくなってしまう。そしてワカコは、酒と料理に夢中になれば、時間など忘れてしまうことを再認識する。(326夜「ホヤ刺し」)
みぃさんやホッシーとの会話中、ワカコがもんじゃ焼きを食べたことがないことが発覚すると、それを聞いていたハラさんは、広島出身のワカコにとって、東京の粉ものを食べることなどプライドが許さないのだろうと茶々を入れる。事実、ワカコももんじゃ焼きに対してはなんとなく「薄めたお好み焼き」というイメージを持っており、これまであえて食べようとはしてこなかった。だがこの話を機に、食べない理由を挙げるよりもまずは一度食べてみようと、ワカコはもんじゃ焼き屋に足を踏み入れる。自分で上手に焼けるかどうか緊張しながら、ワカコが瓶ビールを飲みながら待っていると、もんじゃ焼きのタネが入ったボウルを手に現れた店員は、自分が焼こうかと申し出てくれる。手際よく、手順を説明しながら店員にもんじゃ焼きを焼いてもらったワカコは、ビールのお供に最高だともんじゃ焼きを認め、次に食べる時には自分で焼いてみようと心に誓うのだった。(354夜「もんじゃ焼き」)
ある日、ワカコは思いがけず、後輩の白石が花屋で小さなブーケを買っているところを目撃した。花と白石という、あまりにも意外な組み合わせに動揺する心を抑えながら入った飲み屋で、ワカコは大将からほっけの刺身を勧められる。ほっけといえばもっぱら焼き魚で、刺身など見たこともなかったワカコは、勧められるままにほっけの刺身と、冷酒を注文。淡泊でしっとりと甘いほっけの刺身で進む冷酒を飲みながら、ワカコは、自分が知らなかっただけで、ほっけの刺身は焼きほっけと同様に、ふつうに存在していた料理であることに思い至る。そして、先ほど白石が花を買っていたのも意外な一面などではなく、そもそもの彼の持ち味の一つなのだろうと思いを巡らせる。(384夜「ほっけ刺し」)
いつものなかよし三人組で会話中、「1か月くらいドカンと休みを取ってゆっくりしたい」というほっしぃの心からの願いに大いに賛同したワカコは、その日の夜、せめて優しい味の料理に癒されたいと沖縄料理店に足を踏み入れる。そこで「ふーチャンプルー」という品書きに興味を覚えたワカコは、それが車麩(くるまふ)を使ったチャンプルーであることを知る。香りのいいジャスミンハイと、ふんわりとした繊細な味のふーチャンプルーを楽しみながら、ワカコは1か月の休みとまではいわないまでも、このような夜がどれだけ自らの心身を癒しているかを嚙みしめるのだった。(395夜「ふーチャンプルー」)
ある日の終業後、白石は大きな決意と共に町へと向かった。今日こそ、かねてより考えていた一人飲みを決行するのだ。だが、渋い飲み屋にもオシャレなバーにも気後れしてしまう白石は、結局チェーン店へと入店。幸いにも店内は空いており、テーブル席へと案内してもらう。ビールに加え、唐揚げにだし巻き卵、刺身、フライドポテトにカプレーゼと、ふだんの会社の飲み会と大して変わらないものを注文し、冒険しない自分を軽く自嘲しながら、白石は店での初めての一人飲みを開始する。そして、気を散らすもののない環境の中、ただゆっくり食べ物と酒の味を楽しむという、一人飲みの醍醐味(だいごみ)を理解するのだった。あまり飲めない白石は、結局酒はビール一杯にしてご飯セットを追加注文し、残りの料理は食事として楽しみながら一人飲みの時間を満喫。そして、この行為により少しだけ自信をつけた白石は、これまでただ面倒だった会社の飲み会を、楽しみにしている自分に気づくのだった。(433夜「白石くんのひとり飲み」)
スピンオフ
本作『ワカコ酒』のスピンオフ作品に、猫原ねんずの『大衆酒場ワカオ ワカコ酒別店』がある。『ワカコ酒』と世界観を共有しており、居酒屋の店主であるワカオの視点で物語が描かれる。また、作中にはたびたび『ワカコ酒』の主人公である村崎ワカコも登場する。
関連作品
レシピ本
2015年6月、本作『ワカコ酒』に登場する各種居酒屋メニューのレシピ本『ワカコ酒 レシピブック』が、朝日新聞出版から刊行された。第1章 すぐ出るおつまみ、第2章 煮物・蒸し物、第3章 焼き物・炒め物、第4章 揚げ物の4章立てで、全48種類のレシピが紹介されている。
ガイドブック
2015年7月、本作『ワカコ酒』に連動したガイドブック『わたしも今夜はワカコ酒』が、徳間書店「タウンムック」から刊行された。テーマは「お酒党女子御用達の店」となっており、東京・関西から村崎ワカコがいかにも好みそうな、値段が手ごろで雰囲気のいい店が、65店舗紹介されている。
コラボレーション
広島空港
2015年3月、本作『ワカコ酒』と広島空港のコラボレーション企画が行なわれた。内容は、広島空港内の物販店で買い物をすると、1万枚限定で新久千映の『ワカコ酒』および『まんぷく広島』のイラストが描かれたショッピングバッグがプレゼントされるというもの。
岩塚製菓 大人のおつまみ
2015年から2018年の4年にわたって夏季限定で、本作『ワカコ酒』と岩塚製菓「大人のおつまみ」シリーズのコラボレーション企画が行なわれた。内容は、「えびカリ」「えび黒こしょう」「塩わさび」「枝豆あられ」の4商品が、村崎ワカコが描かれた限定パッケージ版で販売されるというもの。
メルシャン 浅黄うさぎ
2015年、期間限定で本作『ワカコ酒』とメルシャンの芋焼酎「浅黄(うすき)うさぎ」のコラボレーション企画が行なわれた。内容は、「浅黄うさぎ」が、村崎ワカコが描かれた限定パッケージ版で販売されるというもの。
K&K 缶つま
2018年3月から1か月限定で、本作『ワカコ酒』とK&Kの缶詰「缶つま」シリーズのコラボレーション企画が行なわれた。内容は、「缶つまレストラン 厚切りベーコン プレーン」「缶つまプレミアム 日本近海どり オイルサーディン」「缶つまプレミアム 広島県産 かき燻製油漬け」「缶つまSmoke 鮭ハラス」の4商品が、村崎ワカコが描かれた限定パッケージ版で販売されるというもので、同時に、「缶つま限定 村崎ワカコ フィギュア」と、ワカコ酒コラボバージョンの缶つま四つがセットになった「缶つま×ワカコ酒 宅飲みセット」がプレゼントされるキャンペーンも行われた。
比嘉酒造 残波
2019年4月、期間限定で本作『ワカコ酒』と比嘉酒造の琉球泡盛「残波(ざんぱ)」のコラボレーション企画が行なわれた。内容は、「残波ホワイト」が、村崎ワカコが描かれた限定パッケージ版で販売されるというもの。
メディア化
テレビアニメ
2015年7月から9月にかけて、本作『ワカコ酒』のテレビアニメ版『ワカコ酒』が、TOKYO MX、サンテレビで放送された。また、シネマート、ニコニコチャンネル、GYAO!ほかでもネット配信されている。アニメーション制作はOffice DCIが担当し、監督は山岡実、キャラクターデザインは古佐小吉重が務めている。キャストは、村崎ワカコを沢城みゆきが演じている。
テレビドラマ
本作『ワカコ酒』のテレビドラマ版『ワカコ酒』が、2015年1月から3月にかけてBSテレビ東京(一部、当時BSジャパン)で放送された。その後、2016年1月から3月にかけて『ワカコ酒 Season2』、2017年4月から6月にかけて『ワカコ酒 Season3』、2019年1月から3月にかけて『ワカコ酒 Season4』、2020年4月から6月にかけて『ワカコ酒 Season5』、2022年1月から3月にかけて『ワカコ酒 Season6』、2020年12月に2夜連続で『ワカコ酒スペシャル 飛彈酒蔵めぐり』が、それぞれBSテレビ東京で放送された。これらの一部は、3か月遅れでテレビ東京で地上波放送もされている。キャストは、村崎ワカコを武田梨奈、みぃさんを山田キヌヲ、白石を永井響が演じている。また、ドラマ版のオリジナルキャラクターも多い。
登場人物・キャラクター
村崎 ワカコ (むらさき わかこ)
携帯電話関係の会社で事務員として働く女性。年齢は26歳で、広島県出身。酒と酒のつまみが大好きな、いわゆる「酒呑みの舌」の持ち主。物事を一度頭の中で整理してから口に出すため、会話のタイミングがズレがちなことに加え、表情にも乏しく、周囲からは何を考えているかわかりにくいと評されることもある。仕事帰りに飲み屋に一人で立ち寄って、夕飯代わりに美味しいつまみをあてに一杯嗜むのが日常のルーチンとなっており、美味しいものを口にすると目を見開いて、口から「ぷしゅ~」という気の抜けた音を発するクセがある。ちなみにこの音は、食べたものや感情に応じて「ぷしゅーる」「ぷしゅしゅしゅしゅ」など、非常に多彩なバリエーションがある。村崎ワカコが、酒や酒に合うつまみが何よりも好きなことは、友人知人など身の回りの人々には周知の事実となっているほか、ワカコが美味しそうに食べたり飲んだりする姿は、店の店員に好感を与えることも多い。夕飯といえばもっぱら酒とつまみという組み合わせのため、「ご飯のおかず」も呑みすけのワカコにとってはあくまで酒のつまみであり、食事を「ご飯を食べること」と考える人に対しては、表立って否定はしないもののどこか相入れない思いを抱いている。ただし底なしというわけではなく酒の強さはあくまで人並みで、ビールなど炭酸物も、お腹を圧迫してしまうためあまり量は飲めない。ちなみに酒はどんなものでもいける口で、その日にチョイスしたつまみに合うものを選ぶようにしている。幼虫系の食べ物以外、基本的に好き嫌いはないが、皮や加工食品も含めて特に鮭(サーモン)が好き。歴史に詳しく、好きな戦国武将は陶晴賢(すえはるたか)。
ヒロキ
村崎ワカコと交際している男性。だが、基本的にワカコのモノローグに現れるのみで、外見や人となりはほとんど明らかになっていない。ワカコとはつかず離れずのいい距離感で交際しており、ワカコの友人たちからは結婚も秒読みと見られているが、現時点では当のワカコにその気がいっさいない。ワカコの作る料理が大好きで、酒もいける口ではあるものの、しっかり夕飯を食べ、酒はそれとは別に改めて嗜(たしな)むというタイプ。そのため、夕飯といえばもっぱら酒とつまみという呑みすけのワカコとは食に対する姿勢が今一つ合わない。また、何かと仕事が忙しく、クリスマスなどの記念日もワカコといっしょに過ごせないことが多い。
みぃさん
村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社で働く同僚の女性。ワカコとは同年代でプライベートでも仲がいい。さばさばとした朗らかな性格で、男女を問わずコミュニケーション能力が高く、子供の扱いもうまい。実は情報通で、ワカコもみぃさんに紹介された店に行ってみることがよくある。仕事が長引いたという理由で、待ち合わせにはいつも遅れてくるという特徴がある。プロ野球の「北星ゼノンズ」の大ファンである「ゼノン女子」で、同じくゼノン女子のさちこと試合観戦のためによく球場に足を運んでいる。イケメン好きで、店にせよ野球チームにせよ、判断基準は店員や選手がイケメンかどうかが大きなウエートを占めている。ちなみに本名は「三村」。なお、虫が大の苦手。
オカダさん
村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社で主任を務める中年男性。ワカコの上司にあたり、既婚者で、子供に二人の幼い姉妹がいる。細身で眼鏡をかけ、神経質そうにいつも険しい表情をしている。主任になってまだ1年ということもあり、何かと客や上司、部下らの板挟みになってカリカリしており、部下に対しては感情のままにヒステリックな物言いをすることも多い。ワカコたちからは冗談半分に、細身なのはストレスからの体調不良によるものではないかと考えられている。一方で、残業中の部署の部下たちのため、宅配ピザを注文して気分転換をさせたりと、リーダーシップに富む一面もある。部署内では家族思いとして知られているが、実は上の娘が生まれてしばらく経った頃、育児に疲れた妻にキレられたことがあり、以降、それまで以上に家族を大切にするようになったという経緯がある。そのため、子供の誕生日には仕事を早く切り上げ、ふだんから同僚と飲みに行っても遅くならないうちに帰宅するクセがついている。ちなみにフルネームは「岡田圭一」で、妻には「圭一っちゃん」と呼ばれている。
シンさん
村崎ワカコがボトルを入れている、行きつけの飲み屋の常連客。細身で落ち着いた初老の男性。毎日のように店に通い詰めており、入れたボトルはすでに300本を数えるほど。若者が成長していく姿を見ることがシンさんにとって何よりの楽しみで、時折店の若い従業員を食事に連れて行き、ごちそうしてあげたりしている。
ほっしぃ
村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社で働く同僚の女性。ワカコとは同年代でプライベートでも仲がいい。クールな性格で非常に落ち着いており、何事にもソツがなく何かとよく気がつく。一方で、黙っているとどこか声を掛けにくい、人を寄せ付けないオーラを発している。少々毒舌家なところがあるが、空気を読む能力に長けているために周囲からは「辛口の物言いが爽快」と評されており、ほっしぃ自身が口を開いた際には、盛り上げ役となることも多い。ただし、デリカシーに欠けるハラさんに対しては少々辛辣で、時にワカコをヒヤヒヤさせている。ちなみに本名は「中野」。
ハラさん
村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社で働く同僚の男性。眼鏡をかけて小太りな体型をしている。陽気な性格で部署内のムードメーカー的な存在だが、非常に大雑把でデリカシーに欠け、何かにつけて一言多いため、同部署の女性陣、その中でも特にパートのアベさんの神経を逆なですることが多い。そのせいで、口が達者なほっしぃに手厳しくやり込められることも多いが、ハラさん自身は、これも会社の人間関係を円滑に回すための潤滑剤と、道化役を甘んじて受け入れている。また、取引先の相手が戦国武将好きと知るや否や、自分は興味がなくても本を買い漁って勉強してみたりと、仕事に関しては非常にまじめで、同時にそんな姿を人に知られるのをよしとしない、独自の美学を持つ。一方でその憂さを晴らすように、自分一人のときには自由でいたいと考えており、健康など細かいことは考えず、仕事終わりには毎晩ビールと大好きな唐揚げなどの定食をガッツリ楽しんでいる。
アベさん
村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社でパートとして働く女性。二人の子供を持ち、自ら望んではないながら職場でもお母さん的なポジションとなっており、ワカコら若手とオカダさんら中年組との緩衝役を担っている。基本的には落ち着いているものの、デリカシーに欠けるハラさんとは馬が合わず、わりと感情が顔に出やすい性質ということもあって、周囲にもそれは認識されている。独身時代はワカコのように一人飲みが好きで、当時行きつけだった渋い店が何軒もある。それらは一見さんには入りにくい、一人飲みに関してはかなりの経験を持つワカコですら緊張するような店ばかりだが、料理の味は確かで、なじんでしまえば居心地もいい。時々ワカコにそういった店を紹介することもある。
紺野さん (こんのさん)
村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社で働く同僚の中年男性。つねに穏やかな表情を浮かべた気配り上手で、部署内の円滑な人間関係の潤滑油となっている。そのため、紺野さん自身は控えめで物静かな性格をしているが、個性派ぞろいのメンバーの中にあって、確かな存在感を放っている。自分より稼ぎのいい出張族の妻・さゆりと、一人息子・翔の三人家族。家族のことを何より愛しており、自分の人生において欲しいものは大体すべて手に入れたと考えて、満ち足りた気分で日々を送っている無欲な人物。そんな生活を維持するためには心と体の健康が最も重要だと考えて、何かと野菜を食べることを心がけている。実は外飲みも好きで、渋くていい店を知っており、ワカコに紹介したりしている。ちなみにフルネームは「紺野孝」。
白石 (しらいし)
村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社で働く同僚の青年。年齢は23歳。ワカコの後輩にあたり、ワカコが白石の教育係を務めている。口数が少なく野暮ったい雰囲気であまり気が利かず、女性と目を合わすことができない。また、他人と自分を比べて卑下してしまう悪いクセがある。周囲には少々ぼーっとした印象を与えるが、特に気が弱いだけではなく、心の中では周囲に対して結構辛辣な思いを抱いていたりもする。物静かで、他人と積極的にかかわろうとしないワカコにシンパシーを覚えながらも、彼女のどこか余裕のある立ち居振る舞いに自分との大きな違いを感じ取り、あこがれにも似た不思議な感情を抱いていた。そんな中、ワカコが一人酒を楽しんでいる姿を目撃。これをきっかけに、白石自身は酒は弱いながら、ワカコのまねをして酒に親しむようになっていく。仕事に対しては新人ながらまじめで、ワカコの指導のもと少しずつ実力を伸ばしていくが、その性格上、人とコミュニケーションを取ることがどうしてもうまくいかず、結果的に先輩たちの手を煩わせることが多い。スマホのパズルゲームが好きで、どんなに疲れていても日課として欠かさずプレイしている。
さちこ
かつて村崎ワカコと同じ携帯電話関係の会社で働いていた女性。現在は結婚し、退職している。豪快な性格のしっかり者で、「ミミ」「アミ」という双子の子供がいる。ワカコをはじめとする当時の同僚たちとは今でも友人関係が続いており、時にワカコたちといっしょに飲みに行ったり、自宅に招いて女子会のような集まりを開催したりしている。プロ野球の「北星ゼノンズ」の大ファンである「ゼノン女子」で、同じくゼノン女子のみぃさんと試合観戦のためによく球場に足を運んでいる。
書誌情報
ワカコ酒 23巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉
第3巻
(2020-04-01発行、 978-4867200964)
第10巻
(2020-04-01発行、 978-4867201039)
第11巻
(2020-04-01発行、 978-4867201046)
第19巻
(2022-08-20発行、 978-4867204047)
第20巻
(2023-02-20発行、 978-4867204719)
第21巻
(2023-08-19発行、 978-4867205341)
第22巻
(2024-02-20発行、 978-4867206195)
第23巻
(2024-08-20発行、 978-4867206805)