バーテンダー

フランス帰りの若きバーテンダー佐々倉溜を主人公に、さまざまな酒にまつわるエピソードをからめながら描かれる人間ドラマ。原作は城アラキ。連載終了後、同じく城アラキ原作による世界観を共有する作品『バーテンダー à Paris』、『バーテンダー à Tokyo』が発表されているが、これらの作画担当は加治佐修に代わっている。

あらすじ

第1巻 優しい止まり木

8年振りに日本に帰国した佐々倉溜は、偶然知り合った来島美和にホテル・カーディナル料飲部の実技試験に連れて行かれる。同ホテルの料飲部に所属する美和は、「神のグラス」で有名なバーテンダーの溜を使って、バーテンダーを軽視する部長・神嶋の鼻を明かしてやりたいと考えていたのだ。しかし溜が神嶋に出したカクテルは、まさかの水割りだった。出された瞬間に憤慨して溜を追い出そうとした神嶋だったが、その水割りのうまさに圧倒される。溜は神嶋を観察し、その荒れた舌に合う硬い氷を中座してまで探していたのだ。(Glass1「優しい止まり木」。ほか、6エピソード収録) 

第2巻 完璧な味

来島興業の会長・来島泰三に連れられ、佐々倉溜葛原隆一の「バー・K」を訪れる。泰三の狙いは溜と葛原に同じカクテルを作らせ勝負させる事だった。二人が作ったマンハッタンを目をつぶって飲んだ来島美和は、溜のカクテルの方がおいしいと感じる。だが、溜は葛原のカクテルを飲んで絶句する。数分後、美和は葛原のカクテルの方がおいしくなっている事に気づく。葛原のマンハッタンは、時間が経っても味が崩れない完璧なカクテルだったのだ。(Glass8「完璧な味」。ほか、6エピソード収録)

第3巻 バーの顔

佐々倉溜は銀座の「バー東山」でヘルプとして働く事になった。だが溜は、ホステスの可奈子を伴い訪れた峰岸隆一への請求額を見て、金持ち相手のぼったくりバーだと反発を覚える。しかしオーナーバーテンダーの東山稔は、バーにも客にもいろいろな顔があると、溜を諭す。そんな中、再び訪れた可奈子にグラスでシャンパンを出した溜だったが、彼女からまだ青いと苦言を呈される。東山はなにがダメなのかがまったくわからない溜に、客の見せたい顔とはなにかを教える。しかし溜は、お客様が見せたい顔だけを見るのがバーのルールだと言う東山に納得がいかない。そこで東山は峰岸の接客を、次回は溜に任せる事にする。(Glass16~18「バーの顔」。ほか、3エピソード収録)

第4巻 旅人のための一杯

佐々倉溜は歌舞伎町のバー「North Wind」で、8年振りに北方と再会する。しかし、溜に「バーは魂の病院」だと教えてくれた北方は、やさぐれており、客を酔い潰すためのカクテルを出していた。後日、北方は気取った店が苦手な慶子を伴い「バー東山」を訪れる。そんな彼女に溜は、ブラジルの国民的スピリッツを使ったカイピリーニャというカクテルを出して慶子の心をほぐす。腕を上げた溜を見た北方は、バーテンダーは職業ではなく生き方だといい続けて来た師匠・加瀬五朗の末路を見せるべく、彼を病院に連れて行く。変わり果てた師匠の姿に言葉をなくす溜だったが、北方は加瀬が倒れて以降、加瀬の面倒を見ながら、自分の店を切り盛りしている事を後日慶子から聞かされる。(Glass24「ふたつの顔」、Glass25「お嬢さんのスピリッツ」、Glass26「旅人のための一杯」。ほか、5エピソード収録)

第5巻 One for the Road

珪子は雨宿りがてら、「バー・イーデンホール」を訪れた。佐々倉溜に酔いたいがお酒ではないモノがいいと、わがままな注文をするが、溜が出したブルショットというカクテルに珪子は癒される。帰り道に酔いが醒めないように飲む最後の一杯「ワン・フォー・ザ・ロード」は、今日の嫌な自分にサヨナラを言う意味かもしれないという、溜の言葉が胸にしみわたる。(Glass35「One for the Road」。ほか、5エピソード収録)

第6巻 葉巻の煙

仕事で苛立っていた早瀬は、「バー・イーデンホール」で葉巻を吸わずに、くゆらせているだけの君島瑠美とトラブルとなる。早瀬は佐々倉溜から、女医である瑠美が、担当していた子供が元気になったらその葉巻を吸おうと思っていた事を聞かされ、後日お詫びのしるしに彼女に葉巻をプレゼントする。そんな中、瑠美の地方病院勤務が決まり、早瀬は彼女を思い切って食事に誘う。だがその日、急な仕事で早瀬は約束をキャセルせざるを得なくなってしまう。(Glass40~41「葉巻の煙」。ほか、5エピソード収録)

第7巻 マティーニの顔

カクテルコンクールに出場すると決めた川上京子は、師匠の南浩一にコンクールの課題となるマティーニを試飲してほしいと申し出る。だがそれを飲んだ南は、京子のマティーニには「顔がない」と、冷たくつき放す。傷ついた京子は「バー・イーデンホール」の佐々倉溜に愚痴をこぼすと、溜はそんな京子を「バーHell's arms」に連れて行く。そこで、3年目のバーテンダー金城ユリが作る自己主張の強いマティーニを飲み、京子はある事に気づく。(Glass48~49「マティーニの顔」。ほか、4エピソード収録)

第8巻 イーデンホールの幸運

若い頃、名取は「バー・イーデンホール」のオーナー真木裕輔と薪炭屋で丁稚奉公をしていた。成功者となった彼はバーを訪れ、50年前には口をつける事ができなかったという、ミリオンダラーというカクテルを佐々倉溜に注文する。当時、ミリオンダラーを飲んだと名取に自慢していた真木も、バーを訪れ、同じカクテルを注文。貧乏という同族嫌悪から、互いに憎み合うかのように生きて来た二人だったが、一方で自分の分身のようにも思っていたのだ。真木はそんな名取を待つために、今日まで「バー・イーデンホール」を続けて来たのだ。そして、真木は溜に店を閉店すると告げるのだった。(Glass56~58「イーデンホールの幸運」。ほか、4エピソード収録)

第9巻 最初の客

ホテル・カーディナル内に移った「バー・イーデンホール」で接客シミュレーションが行われた。ホテル・カーディナルのメインラウンジ・バーでチーフを務める西沢弘之、コンシェルジュの三谷淳一、部長の神嶋はシングル一杯分しか残っていないマッカランの樽出し原酒を、あえて飲みたいと申し出た。佐々倉溜は料金は頂かないとして、ショット3000円のマッカランを三人に振る舞う。しかし西沢は、採算を無視したサービスは許されないと苦言を呈する。(Glass64「最初の客」。ほか、4エピソード収録)

第10巻 たゆたえども沈まず

東京本社に戻って来た宇崎からCM制作を任された山下次郎だが、起用された歌手・城島ルミと揉めてしまう。宇崎から「バー・イーデンホール」に呼び出された山下は、佐々倉溜が世界一のバーテンダーたる所以は、努力を惜しまないからだと言い聞かされる。宇崎が店を出てしばらくすると、偶然ルミが来店し、二人のあいだに気まずい空気が流れる。山下とルミの音楽の趣味を知る溜が、ジャニス・ジョプリンの曲を流し、彼女のファンである二人は次第に心を通わせる。翌日、山下は宇崎に自分が納得する仕事をするために、CMのプランの変更を申し出る。(Glass75~76「たゆたえども沈まず」。ほか、6エピソード収録)

第11巻 それぞれの転機

中国赴任が決まったサラリーマンの木村哲平は、「バー・イーデンホール」で自分はタイミングやチャンスを逃してばかりいる人間だと弱音を吐く。そんな哲平に佐々倉溜は、二つの国の人が出会うという意味を込めて、楊貴妃というカクテルを出す。こうして溜は哲平を元気づける事に成功するも、自分は入院中の来島泰三のためになにもできない無力さを感じていた。(Glass87「それぞれの転機」。ほか、5エピソード収録)

第12巻 クロスロード

ホテル・カーディナルのメインラウンジ・バーのチーフ西沢弘之と、良好な関係を築いていた川上京子だったが、ここ最近、西沢はホテルのスタンダードなサービスについて、再び京子に口うるさく注意するようになる。そんな中、西沢は苛立ちを募らせていた京子を、「バー・イーデンホール」に誘う。そこで西沢は京子に、メインレストランに異動になったと告げ、ホテルのバーは扉のないクロスロード(交差点)であり、どんな仕事でも10年間は自分の中に扉を作らないようにしていると、静かに語るのだった。(Glass95「クロスロード」。ほか、4エピソード収録)

第13巻 失敗の優しさ

人気歌手・城島ルミと広告会社社員・山下次郎がお忍びで「バー・イーデンホール」を訪れた。しかし、新人バーテンダー和久井翼の発した不注意な一言で、山下とルミの関係が、山下の上司・宇崎、さらにライバル社の会長・嶋岡に露呈してしまう。ルミの担当を外され落ち込む山下は、佐々倉溜から店に呼び出される。そこで彼を待っていた鶴岡から、ブルームーンというカクテルを振る舞われる。そして山下は鶴岡から、宇崎と溜が部下の失敗をカバーすべく、陰で尽力していた事を聞かされる。(Glass99~100「失敗の優しさ」。ほか、5エピソード収録)

第14巻 献杯

師匠である加瀬五朗の四十九日の法要で、佐々倉溜北方に、初めて弟子を持った悩みを打ち明ける。数日後、加瀬を真似て和久井翼に氷を入れないハイボールを作らせた溜は、黙って席を立ち、翼を「バー東山」と「バー・K」に連れて行く。一流のバーテンダーによる加瀬への献杯を見せ、その技術とサービスの深さを教えるのが溜の目的だった。(Glass108~109「献杯」。ほか、4エピソード収録)

第15巻 過去

毎朝新聞のデスク武井徹は、相馬幸司の新党立ち上げについての情報を得ようと「バー・イーデンホール」を訪れるが、佐々倉溜に軽くいなされてしまう。しかし武井は、溜の父親が永田町の妖怪と呼ばれた政治家・佐々倉源一だと突き止め、再び「バー・イーデンホール」に来店。そして溜に、君の手は権力の汚濁によって生まれた時から汚れていると言い放つ。そんな武井に対して溜は、フレンチ95というカクテルを出す。そんな中、渦中の相馬が来店して、酔った勢いで新党決起をほのめかす。スクープに色めきだつ武井だったが、彼を諫めたのは溜だった。相馬は自分を裏切った鬼頭和馬を罠にハメるため、情報操作を目論んでいたのだ。だが、マスコミに蔓延する真実より目先のスクープという風潮の中、武井は本社から左遷を命じられる事になる。(Glass112「秘密」、Glass113「過去」、Glass114「嘘」、Glass115「記憶」。ほか、2エピソード収録)

第16巻 竹鶴・リタの物語

北海道を旅する佐々倉溜は、汽車で知り合った久米ハナとその孫・久米雅夫と共に、ニッカウヰスキー余市蒸溜所を訪れる。この蒸溜所に詳しいハナは、竹鶴政孝と竹鶴リタの恋愛話を交えて蒸溜所を案内する。夫も息子も道楽者であるがゆえに、人知れず苦労して来たハナは、異国の地で強く生き抜いたリタを敬愛しており、結婚が決まった雅夫にウイスキー作りを恋愛に喩えてアドバイスを送る。三人は小高い丘にあるリタと竹鶴の墓前で乾杯し、「バー・YAZAKI」に向かうと、そこには意外な人物達が彼らを待っていた。(Glass125~127「竹鶴・リタの物語」。ほか、6エピソード収録)

第17巻 明日への扉

ホテル・カーディナル内のレストランのシェフを務める山之内が、弟子の岸田を連れて「バー・イーデンホール」を訪れた。岸田はパリの一流店からシェフに指名されたものの、自分に自信がなく、中々その申し出を受け入れる事ができない。お手上げ状態となった山之内は、岸田を溜に託しバーを出て行ってしまう。そこで、溜は自分のような者でも山之内を超えるものを作れると、岸田にブラッディ・ブルというカクテルを差し出す。(Glass128「明日への扉」。ほか、6エピソード収録)

第18巻 バーの宝物

和久井翼は立ち飲み屋の小倉から、バーは古い物、新しい物、借りた物、青い物、その四つを備えると幸運になると教えられた。後日、佐々倉溜と翼は、バーの情報を誰よりも熟知しているという老舗酒卸問屋「柳」を訪ねる。偏屈な柳は溜のカクテルの美味さにうなり、店舗を探す事を約束して、古いボトルを溜に譲る。柳から「椿製氷」を紹介してもらった溜は、椿に見事な氷さばきを見せ、新しいアイスピックを譲られる。だが、椿は「バー皆瀬」で貴重なボトルを割った疑いをかけられたため、店を閉めるというのだ。そこで溜は、椿の疑いを晴らすべく、「バー皆瀬」に客として赴く。(Glass136「バーの宝物-開店準備-」、Glass137「バーの宝物-柳と椿一-」、Glass138「バーの宝物-氷解-」。ほか、6エピソード収録)

第19巻 旅立ち

「バー・イーデンホール R&T」のオープンの日、佐々倉溜はひょんな事から、人気漫画家・山科クラをバイクに乗せ、東京案内をする事になる。19歳のクラは創作の重圧と周囲への不信感から家を逃げ出して来たのだった。そんなクラに溜は、世界中を敵にまわしても、君の味方になるのが自分の仕事だと、彼女をバーに招待する。その後、クラは「バー・イーデンホール R&T」に来店するが、彼女のスクープを狙うカメラマンの桑田に飲酒する場面を激写される。(Glass147「旅立ち」。ほか、4エピソード収録)

第20巻 善い人

片桐有香は5歳の時に鉄道事故で親兄弟を亡くしていた。彼女は仕事で世話になった現場監督と、「バー・イーデンホール R&T」を訪れ、子供の頃にバーでカクテルを飲んだ記憶を語る。バーに来ていたほかの客達により、そこは東京ステーションホテルのバーだと判明。そこでは幼い有香を巡って、親戚の誰が彼女を預かるかという話し合いが行われていたという。そんな辛く孤独な有香にカクテルを出したバーテンダーの気持ちを想像した佐々倉溜は、彼女にシャーリー・テンプルというカクテルを差し出す。そのカクテルを口にした瞬間、有香の記憶の扉が開き、20年前に自分の我儘のせいで両親達が鉄道事故を起こした電車に乗った事を思い出す。(Glass157~158「善い人」。ほか、5エピソード収録)

第21巻 サヨナラの教え

首相の椅子がやっと見えて来た相馬幸司だったが、倒れた母親が故郷の島で死にたいと懇願している事で、その心は揺れていた。しかし、佐々倉溜との会話の中で、本心は既に決まっていた。相馬は直筆の「勧酒」という五言絶句を溜に贈り、最後の一杯を注文。溜は相馬へのはなむけに、アイアンマンというカクテルを差し出す。一方、白石賢は師匠の葛原隆一から突き放された態度を取られ、思い悩んでいた。ダイヤモンドスターホテルの取締役でもある葛原は、ホテル・カーディナルとの合併にあたり、賢の退職を3か月延ばす代わりに自身もホテルを辞めると役員会で発言していたのだ。溜は賢にその事情を説明し、ウイスキーが雑酒と蔑まれた時代を戦って来た葛原にふさわしいと、オールドボトルのVAT69を差し出す。(Glass164~166「サヨナラの教え」。ほか、3エピソード収録)

メディアミックス

TVドラマ

本作『バーテンダー』のTVドラマ版が、2011年2月からテレビ朝日系列「金曜ナイトドラマ」枠で放映された。全8話。脚本は高橋ナツコ、演出は片山修、ゼネラルプロデューサーは横地郁英が担当している。佐々倉溜を相葉雅紀、来島美和を貫地谷しほりが演じている。

登場人物・キャラクター

佐々倉 溜 (ささくら りゅう)

パリから日本に帰国したバーテンダーの男性で、初登場時は26歳。ヨーロッパの有名なカクテルコンテストで優勝している。その味は繊細さと驚きに満ち、「神のグラス」と呼ばれている。永田町の妖怪と恐れられた政治家・佐々倉源一の次男。一流大学に合格したものの、大学には入学せずに渡仏。ラッツホテルのチーフバーテンダーまで登り詰めたが、自分のせいで一人の客を死なせてしまうという苦い体験から、日本に帰国。渡仏前に「バー・風」でバーテンダー見習いとして働いていた。帰国後、銀座の「バー・ラパン」「バー東山」「バー・イーデンホール」を経て、ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」に移る。そこで初めて見習いの和久井翼に仕事を教える事になり、「バー・イーデンホール」が閉店した際、翼に背中を押されて独立を決め、「バー・イーデンホール R&T」をオープンさせる。客にとって、これ以上の、そしてこれ以外の一杯はないという一杯を目指し、つねに客と寄り添う姿勢を崩さない。プライベートでは、洗練されたバーテンダーとしての雰囲気は微塵も感じさせず、子供のように無邪気。

来島 美和 (くるしま みわ)

ホテル・カーディナルの料飲部に勤めている若い女性。「神のグラス」と呼ばれる佐々倉溜と偶然出会い、バーテンダーの存在を軽視する神嶋部長の考えを改めさせるべく、溜にカクテルを作ってもらう。それからは溜の働く店を頻繁に訪れ、仕事上の悩みを相談するようになる。いつも一言多い気の強い性格ながら、次第に溜に恋心を抱くようになる。実は、ホテル・カーディナルを運営する来島興業の会長・来島泰三の孫娘で、幼い頃に両親を亡くしており、祖父に育てられた。来島美和自身はふつうのOL生活を強く望んでおり、その事情は人事部長しか知らない。仕事には人一倍真剣に取り組む頑張り屋さん。

来島 泰三 (くるしま たいぞう)

日本屈指のホテルグループ来島興業の会長、およびホテル・カーディナルの代表取締役を務める高齢男性で、来島美和の祖父。もともとは横須賀の割烹旅館の四代目で、その手腕で旅館をどんどん拡大させた。だが西洋嫌いのため、これからはアーバンホテルの時代だと指摘した息子と、仲違いしてしまう。その後、息子夫婦が事故死して孫の美和を引き取って育てたという経緯があり、息子の夢だった世界規模のホテルを建てるべく、ホテル・カーディナルのオープンに尽力する。今は亡き、「バー・ラパン」のマスターとは古い友人で、彼が作る酒以外は飲まないと店で偏屈な態度を取り続けていた。だが、佐々倉溜がマスターの真意を汲み取り、かつてのカクテルの味を再現したため、なんとしてでもホテル・カーディナルに溜を引き抜こうと決意する。

神嶋 (かみしま)

ホテル・カーディナルの飲料部部長で来島美和の上司。ホテルのバーにとってはバーテンダーなど添え物に過ぎないと考えおり、「バーテンには何の期待もしていない」などとと公言していた。しかし、溜が作った水割りの美味さに感銘を受けたことで、その認識を改める。

葛原 隆一 (くずはら りゅういち)

ホテル・ダイヤモンド・スターの取締役にしてBar・Kのオーナーバーテンダーを務める人物。日本でも有数の腕を持つバーテンダーで、業界内では「ミスター・パーフェクト」の異名で知られている。常に完璧な味を出すことを身上としており、溜の腕を認めつつも、その姿勢や未熟さを度々指摘する。

東山 稔 (ひがしやま みのる)

溜がヘルプとして一時的に務めることになった銀座のバー、「Bar東山」のオーナーバーテンダー。「サービスの東山」とも呼ばれ、銀座界隈では非常に評判が高い。その客に対する姿勢や深い洞察力で、溜に数多くの示唆を与えた。

北方 (きたかた)

歌舞伎町のバー「North Wind」のバーテンダーを務める男性。「バー・風」では佐々倉溜の先輩として、バーでの一通りの仕事と、バーは魂の病院であるということを溜に教えた人物。やさぐれた態度を取る偽悪者だが、慈悲の心が深く、ふてくされながらシェーカーを振っていた溜の成長を内心嬉しく思っている。「バー・風」を独立しようとした矢先、加瀬五朗が倒れた事により、本格的なバーをあきらめ、以降は家族のいない加瀬の面倒を見続けて来たという経緯がある。

加瀬 五朗 (かせ ごろう)

「バー・風」のオーナー・バーテンダーを務めていた高齢の男性で、佐々倉溜の師匠にあたる。バーにふさわしくない客などおらず、ふさわしくないサービスがあるだけで、常連でも初めてのお客様でもつねにそれが最初で最後の一杯だと思って作るよう、佐々倉溜や北方に教えた人物。かつては知らぬ者がいないほどの名バーテンダーで、口癖は「人はバーテンダーという職業に就くんじゃない、バーテンダーという生き方を選ぶんだ」。帰国した溜が必死で探していたものの、行方知れずとなっており、北方との再会により、長期の入院中である事が判明する。一時退院をした際には、北方が自分の店で「バー・風」を復活させ、多くの客に最後のカクテルを作り、その10日後に息を引き取った。

川上 京子 (かわかみ きょうこ)

銀座6丁目の「バー南」でバーテンダー見習いをしている若い女性。バーテンダーを続ける自信がなくなった時、佐々倉溜から投げかけられた言葉を発奮材料として、再びやる気を取り戻す。師匠の南浩一からは、いい意味で弟子の中では一番言う事を聞かないじゃじゃ馬と評されている。のちに、カクテルコンクールでの実力を買われ、ホテル・カーディナルのメインラウンジバーで働く事になる。当初折り合いが悪かったチーフ・バーテンダーの西沢弘之とも、彼独特の優しさに救われた結果、良好な関係を築く。感情の起伏が激しく負けず嫌いで大酒飲みだが、恋愛には奥手で幼なじみの平田賢一を10年間思い続けている。また、「バーHell's arms」のバーテンダー・金城ユリとは、よきライバルの関係。

南 浩一 (みなみ こういち)

銀座6丁目にあるBar南のオーナーバーテンダー。笑顔を絶やさない温和な人物で、日本でもトップクラスのバーテンダーとして知られている。葛原隆一の後輩であり、川上京子の師匠でもある。

真木 裕輔 (まき ゆうすけ)

Bar南と同じビルの地下にあるバー・イーデンホールのオーナー。東山稔の紹介で、溜をイーデンホール店長として迎え入れる。バーやバーテンダーに対する理解は薄いようで、溜が来るまでのイーデンホールにはグラスが一種類しか置かれていなかった。

上原 (うえはら)

六本木の「バーHell's arms」のオーナーバーテンダーを務める中年の男性。沖縄出身のため、同郷という理由で金城ユリを雇い、バーテンダーとして指導している。オヤジギャグを好む陽気な人物だが、バーテンダーとしては凄腕で、絶品のマティーニを作る。まだ見習いだった佐々倉溜がその噂を聞きつけ、北方に連れられて店にやって来たのが、溜と知り合ったきっかけ。37歳まではエリート銀行員だったが、一人息子がグレて16歳で失踪した事で妻とも離婚した。息子が本当に家族と思っていた暴走族の名前を店名としている。

金城 ユリ (きんじょう ゆり)

六本木のバー、Hell's Armsに勤める女性バーテンダー。修業を始めてからまだ3年だが、空手の経験者で、並の男なら簡単にあしらえる腕前の持ち主。バーテンダーとしてはまだ未熟だが、勘所はつかんでいるらしく、接客の腕も悪くない。ほぼ同じキャリアの川上京子とは、出会った途端にライバル的な関係となった。

小倉 (おぐら)

佐々倉溜が通っている立ち飲み屋のマスターで、溜には「オヤジさん」と呼ばれている。日本一サービスの悪い飲み屋と溜に軽口を叩かれるほど、接客はいささか乱暴気味。溜とは気心が知れた仲で、彼のよき理解者でもある。ちなみに京都大学哲学科卒のインテリで、鋭い洞察力がある。溜は和久井翼が背中を押さなければ独立しなかったと踏んでおり、溜のその高すぎる志は、凡人には理解できないもの悲しさを抱えていると理解している。店はかちどき橋の近くにあり、溜や翼とそのバーテンダーの仲間達が頻繁に訪れている。

杉山 ヒロ (すぎやま ひろ)

作詞家の男性で、過去にヒットメーカーだった。病気の妻を抱えており、7年振りに現場に復帰するも、人気歌手・城戸研二とトラブルとなり、仕事をフイにしそうになる。「バー・イーデンホール R&T」を訪れた際、佐々倉溜からホランド・プライドというオランダのジンを使ったカクテルを出され、その古めかしい味に現在の自分の姿を指摘されたような気分になる。

諏訪 早苗 (すわ さなえ)

銀座のバー「テネシーワルツ」のバーテンダーを務める中年の女性。銀座のゴッド・マザーと呼ばれている。声が大きく、歯に衣着せぬ物言いをする。マリからは父親を奪い、母親を追い出したと憎しみを抱かれている。実はマリの父親と結婚するも、彼は女遊びがひどく、母親が置いて行ったマリを育てたというのが真相。

岸田 (きしだ)

山之内の弟子で、彼のレストランで副料理長を務める男性。パリの一流店のオーナーからシェフに指名されるが、自分に自信が持てず、山之内の名前に泥を塗るだけだと、尻込みしている。山之内に連れられてホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」を訪れ、ブラッディ・ブルというコンソメが入ったカクテルを勧められて、岸田なら山之内を超える料理も作れると元気づけられる。

久瀬 健一 (くぜ けんいち)

投資コンサルタントをしている男性。久瀬孝史の弟で、両親は既に亡くなっている。婚約者の山根久美を孝史に紹介するため、ホテル・カーディナル内の「バー・イーデンホール」を訪れる。父親が船乗りだったため、幼い頃の夢はヨットで世界一周する事だったが、いつしか兄と比べられる事を嫌い、金がいらないという兄に対抗して、命懸けで金儲けに励むようになった。 

(やなぎ)

銀座一の老舗酒卸問屋を営む高齢の男性で、飲食店で「銀座の柳」を知らなければモグリと言われているほどの人物。頑固な変わり者として有名で、佐々倉溜に自分が感動できる一杯をオーダーした。バーの一番のお宝はいつも冷静な目で客と店を見ている事だと、溜のカクテルを称賛。古いボトルをプレゼントし、店舗候補の店探しを約束する。氷屋の椿とは海軍時代の戦友でもある。

近藤 (こんどう)

近藤工務店を営む中年男性。倉田の店の内装工事を担当し、真木祐輔とは古い付き合いがある。昔気質の職人で仕事が非常に丁寧。本物を見る目は確かで、人の力を素直に借りられるのは自信がなければできない事だとの持論を有する。本来和室や茶室を得意としており、佐々倉溜が準備する新しい店に入れるカウンター板を和久井翼といっしょに選びに行く事になる。真木には棟梁と呼ばれている。

沙代の夫 (さよのおっと)

山口沙代の夫。学生時代に趣味で作っていたパソコンソフトが話題を呼び、現在は仕事に追われて多忙を極めている。実は沙代の両親から、何不自由なく大切に育てた娘が学歴もない貧乏人に騙されたと、暴言を吐かれた事がある。その悔しさから寝る間も惜しんで仕事に没頭して来た経緯がある。

三谷 淳一 (みたに じゅんいち)

ホテル・ダイヤモンドスターの後継者の男性。数年前に銀行を通じてホテル・カーディナルを乗っ取ろうとした事があるものの、コンシェルジュとしての優秀さを買われて、来島泰三により、ホテル・カーディナルにスカウトされる。葛原隆一を慕っており、なにか相談事があると「バー・K」を訪れている。葛原からは、観察力が優れており、どんな時でもサービスマンとしての目配りを忘れないので、バーテンダーになってもトップクラスになれると高く評価されている。泰三が倒れた際に、外資に狙われるのを避けるためにも、ホテル・カーディナルをダイヤモンド・スターグループ傘下にするのがベストだと理解しているものの、それは泰三への裏切り行為ではないかと人知れず悩む事になる。

慶子 (けいこ)

北方と懇意にしているホステスで、口元にホクロがある。北方と共に「バー東山」を訪れる。16歳で子供を産み、19歳でヤクザに売り飛ばされ、25歳で自殺未遂をした壮絶な過去がある。気のいい女性で、北方が加瀬五朗の見舞いに行っている時は、店の留守番を引き受けている。気取った店が苦手で、ふだんは焼酎とビールしか飲まない。

久瀬 孝史 (くぜ たかし)

ヨット乗りの男性で、久瀬健一の兄。父親は船乗りだったが、両親は既に亡くなっている。長めのヘアスタイルで、顎ヒゲを生やしている。工事現場のアルバイトで船の修理代を稼いでいる。ヨットマンの聖地である南米最南端のホーン岬で、その荒波を乗り越えた者「ケープ・ホナー」という、英雄の中の英雄という称号を与えられた。仕事に追われて疲れ切っている弟を案じている。

鬼頭 和馬 (きとう かずま)

相馬幸司の秘書を務める男性で、現在は民政党の衆議院議員。相馬が収監されているあいだに出馬し、相馬の地盤を奪った人物。のちに民政党を離れ、相馬と共に新党を旗揚げすると会見するも、相馬の罠にハマったとは気づかずにいた。

斉木 浩一 (さいき こういち)

諏訪ミュージックで音楽プロデューサーを務める中年男性。人気歌手・城戸研二に頼み込み、彼の曲の作詞を長年の仕事仲間だった杉山ヒロに依頼するが、城戸と杉山が揉めてしまう。病気の妻を持つ杉山にまとまった金をつくってやりたいとの温情があり、事情を知った城島ルミがその曲を歌う事になる。

白石 賢 (しらいし けん)

葛原隆一の「バー・K」で見習いバーテンダーを務める男性。コックや板前より早く自分の店が持てるという理由でバーテンダーになった経緯がある。和久井翼とはライバル関係にあり、当初挑戦的な態度を取っていたが、翼があこがれていた沢木奈々が姉であると明らかになった事もあり、次第に友達として友情を深めていく。父親・白石は工場を経営していたが、経営が行き詰まり、3歳の時に会社の若い女性と逃げ出し、姉と白石賢自身は親戚に預けられ、グレていたという過去がある。現在は、父親には憎しみと愛情が混ざり合った自分でもよくわからない感情を抱いており、北海道旅行で父親と再会する。

皆瀬

スコッチ専門店「皆瀬」のオーナーを務める男性。百貨店の仕入れを20年以上担当している酒のコレクター。ちゃんとした酒は基本的になにも混ぜないという主義で、カクテルの存在を認めていない。椿が希少価値のスコッチを割ったとして、彼を出入りを禁止した。しかし客として訪れた佐々倉溜により、自らの浅はかさを自覚する事になる。

沢木 奈々 (さわき なな)

ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」の常連客である女性。和久井翼が好意を抱くようになる。白石賢の姉だが、親戚の養女になり名字が沢木となった。父親・白石に捨てられたあとは親戚宅に預けられ、中学を卒業後にホステスになったという経緯がある。

栗田 寛一 (くりた かんいち)

黒沢純一郎の担当編集者の男性。新人編集者で、「バー・イーデンホール」で推理作家大賞受賞を逃したという連絡を受けた黒沢を気遣い、人が去ったバーへ舞い戻って来る。佐々倉溜が出したオー・ヘンリというカクテルにちなんで、作家である彼のペンネームの由来を話して黒沢を励ます。ちなみに、祖父も父親も国語教師であり、「金色夜叉」から寛一と名付けられた。

倉田 (くらた)

「バー東山」でチーフ・バーテンダーを務める男性で、佐々倉溜の先輩。クールな性格の持ち主。バーテンダーながら、倉田自身はほとんど酒を飲まない。高校の同級生に結婚を申し込むも、バーテンダーに理解のない義父に反対される。のちに独立し、「バー倉田」を開店してオーナー・バーテンダーとなる。

武井 徹 (たけい とおる)

毎朝新聞政治部のデスクを務める男性。眉毛が太く、吊り上がっている。自ら現場取材に赴く事をモットーとしており、古いタイプのブンヤと呼ばれている。正義感から政治家の不正が許せず、相馬幸司を逮捕にまで追い込んだ。相馬の新党立ち上げの情報を得るため、ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」を訪れるが、佐々倉溜の過去を知り、敵対心を抱くようになる。しかし溜のおかげで、相馬の罠にハマらずに済んだ事で溜と和解して店の常連客になる。そんな矢先、マスコミの真実より目先のスクープという風潮から左遷される。

峰岸 (みねぎし)

峰岸産業の代表取締役を務める男性。「バー東山」の上客で、可奈子を伴い訪れた際には、店に入って30分足らずで10万円の会計を支払った。そのため、佐々倉溜からは金持ちのボンボンだと思われていた。実はバブルの頃に父親のあとを継いだが会社は倒産。現在は地道に借金を返済している。誇り高い銀座の男だと、東山稔から敬意を払われている。

黒木の息子達 (くろきのむすこたち)

来島泰三の盟友である、今は亡き黒木の息子の二人。黒木は焼け野原の横須賀で、バラックのような旅館から泰三と事業をスタートさせた大番頭だった。黒木の三回忌を前に、遺品であるカミュのブランデーを巡り兄弟喧嘩となり、泰三からホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」に呼び出される。

伊庭

「バー・イーデンホール」が入っているビルの前で、おでん屋の屋台を経営している高齢の男性。競争相手の偵察として「バー・イーデンホール」を訪れる。ジントニックしか飲まない頑固親父で、「バー・イーデンホール」を商売敵として見ているところがあり、どんなバーテンダーが来ても、自分のおでん屋に客を取られて看板を下ろしていると思っている。

片桐 有紀 (かたぎり ゆき)

建設会社に勤務する若い女性。設計部から現場管理に異動した3日目に、現場監督にどなり散らされ、仕事を辞める決心をする。大分の山奥の高校を卒業し、東京生活6年目になる。東京での最後の思い出にと「バー・イーデンホール R&T」を訪れた。明るく立ち直りが早い性格で、のちに現場監督を連れて再び来店する。5歳で親兄弟を鉄道事故で亡くしており、その当時、記憶の底に子供ながらバーでカクテルを飲んだ思い出がある。

菊田 (きくた)

岡山で工芸グラスを作っている職人の若い男性。寝食を忘れ50日かけて作った金赤グラスを、師匠に「芸術家気取り」と言われ、ライバルのグラスが工芸品展に出品された事に納得できないでいる。なにもかも自分に学歴がないから侮られていると思い込んでおり、東京のバーに行けばなにかわかるかもしれないと、「バー・イーデンホール R&T」を訪れた。

飯嶋 修平 (いいじま しゅうへい)

劇団員の若い男性。東京の最後の思い出として「バー・ラパン」を訪れた。3年間芝居を続け、芽が出なかったら故郷に帰る約束を両親と交わしており、その愚痴をバーカウンターで話すも、なけなしの現金を落としてしまう。しかし、代金は都合のいい時でいいという佐々倉溜から、簡単に見えるものほど難しいというカクテル「レッド・アイ」を振る舞われ、心機一転、やり直す事を決意する。また、自分の甘さをこっぴどく叱責した来島美和に、ほのかな恋心を抱いている。のちに、歌手志望の城島ルミとシナリオライター志望の山本を連れて、移転間近の「バー・イーデンホール」を訪れる。

村木 (むらき)

ホテル・カーディナル内で、村木理容室を営む高齢の男性。「バー・イーデンホール」を訪れ、森下優一にサービス業は見える物だけを売るのが仕事じゃないと説教する。バーテンダーと同じく、観察眼に優れている。中世の時代、理容師は外科医も兼ねていたと、過去に融資した男に襲われて心身共に傷ついた森下の手当てをする。

山下 次郎 (やました じろう)

広告会社帝都広告に勤める会社員で、宇崎の部下。当初、宇崎を嫌っていたが、宇崎に連れられ「バー・イーデンホール」を訪れた際、佐々倉溜が勧めた苦いフェルネット・ブランカ・ソーダというカクテルにより、宇崎をいい上司だと認めるようになる。のちに、宇崎から地方CMの制作担当を任され、その際起用する事になった城島ルミと恋に落ちる。

緒田 (おだ)

病院の勤務医を務める男性。「バー東山」を気に入り連日訪れ、3日目には妙子という恋人を伴ってやって来た。しかし、佐々倉溜に詐欺師だと見破られ、5種類のパスティス(言葉の意味は模倣する)というリキュールでテイスティング勝負を挑んだ。だが、客の面子を潰さず反省を促した溜のサービスにプロの凄さを実感し、以降も店を訪れるようになる。

教授 (きょうじゅ)

心理学の教授を務める男性で、丸メガネをかけ、鼻が赤らんでいる。教え子・金子祐介が書いた論文の革新性を理解していた人物で、本当の天才だと評価しつつも、一方では嫉妬心をかきたてられていた。一周忌に祐介の実家を訪れた際、彼の姉から祐介が保管していた万年筆を贈られる。複雑な感情が入り混じり、その万年筆を壊そうとして落としてしまった時に、佐々倉溜と出会う。

城島 ルミ (じょうしま るみ)

デビュー半年で初アルバムがベストテン入りした人気歌手の若い女性。俳優志望の劇団員・飯嶋修平のアルバイト仲間だった。自分が出演するCMのプロデューサーとなった山下次郎とトラブルとなり、ホテル・カーディナル内の「バー・イーデンホール」で気まずい再会を果たす。しかし、佐々倉溜の計らいでお互いジャニス・ジョプリンのファンだと判明し、のちに恋に発展する。

内田 (うちだ)

住宅街に位置する「バー内田」でオーナー・バーテンダーを務める男性。勉強のため、和久井翼と白石賢が図らずもいっしょに訪れる事となった。一見、近所のスナックのような店だが、絶品のウォッカトニックを出す事で有名。実は葛原隆一の元弟子で、3年かけて住宅街の客に合う味を考え抜いたという努力家でもある。

簑島 健二 (みのしま けんじ)

人気俳優の男性。癖の強い性格で、「バー南」を訪れた際には他店と味の比較をしたり、ほかの客の注文に文句を言うなど、傍若無人な態度を取っている。ひょんな事から川上京子と「バー・イーデンホール」を訪れる事になり、マールというブランデーでカクテルを注文。マールはフランス語でカスという意味で、昭和の名俳優だった父親に比べて自分はカスだという呪縛から逃れられないでいる。

退職を控えた会社員 (たいしょくをひかえたかいしゃいん)

7日後に退職を控えた会社員の男性で、頭頂部がハゲている。40年前、いっしょに行くはずだった山で友人が亡くなり、その事を急な会議のせいで約束をキャンセルした自分の責任だと思い込んでいる。「バー・イーデンホール R&T」で自分のつまらない人生は、彼を裏切る事で手に入ったのかもしれないと後悔の念を募らせる。

山之内 (やまのうち)

パリで最も予約の取れない人気店のオーナーシェフを務める男性。デザイナーのデミトリス・リオンの20年来の友人で、腕はいいが変わり者として知られている。ホテル・カーディナルからの引き抜きを受けているが、食材すべてをパリと同じ物を空輸しろとの条件をつけ、困った来島美和とリオンが「バー東山」にいた佐々倉溜に泣きつく。フランス人以上のゴーリスト(アメリカの大国主義に反発するあまり、なんでもフランスが世界一だと思っているフランス人)で、そうなってしまったきっかけは、日本人という先入観に苦しめられて来た過去によるもの。のちに、ホテル・カーディナル内の「バー・イーデンホール」に弟子である副料理長の岸田と共に訪れた。

高峯 角雲 (たかみね かくうん)

鎌倉の名増で、平成の良寛と呼ばれている高齢の男性。葛原隆一が老師と呼び、葛原に禅の基本といわれている「一滴水」の教えを授けた人物。葛原の「バー・K」に立ち寄ったあと、ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」を訪れ、佐々倉溜に水の力を感じる一杯をオーダーした。

和久井 翼 (わくい つばさ)

ホテル・カーディナルの新入社員で、料飲部「バー・イーデンホール」に配属が決まった男性。父親・和久井と翼の母とともに実家で暮らしている。入社の際、上層部から生え抜きの幹部候補生としての自覚を持てと言われていた。当初は、バーは狭量で閉鎖的な世界だと不機嫌になっていたが、佐々倉溜のバーテンダーとしての奥深さを次第に感じ取り、真摯に仕事に取り組むようになる。一人っ子で甘えん坊だが、面倒見がよく明るい性格の持ち主。まだ未熟ながらもバーテンダーとしての素質は備えていると、溜や目の肥えた常連客には目をかけられている。母親の病気をきっかけに、父親が早期退職して両親が沖縄に移住する事になり、一人暮らしを余儀なくされる。溜が独立する際には、溜について行く事を決め、自分の店を持つ事にためらいがあった溜の心を動かして、「バー・イーデンホール R&T」開業の陰の立役者となった。

北の薔薇 (きたのばら)

「バー・イーデンホール」で見習いバーテンダーをしている和久井翼のブログにコメントを残す謎の人物。当初、翼は店の常連客となった若い女性・沢木奈々だと思い込んでいたが、のちに彼女と同時期に客として来るようになった意外な人物である事が判明する。

君島 瑠美 (きみしま るみ)

小児科の医師を務める女性。「バー・イーデンホール」で葉巻をくゆらせていた際に、客の早瀬とトラブルになるも、佐々倉溜の計らいで早瀬との仲を深める。しかし地方勤務になる前に、早瀬からデートの約束をすっぽかされる。2年後に地方から戻り、ホテル・カーディナルのラウンジ・バーで早瀬と再会する。実は早瀬に好意を寄せており、長期のアメリカ出張を聞かされたのち、心労と過労で倒れてしまう。

横山 恵 (よこやま めぐみ)

33歳という若さで城南大学准教授に就任した女性で、評論家としても活躍している。若くて美人なため、保守派の高齢男性ウケがよく、相馬幸司率いる民政党から政界出馬の噂がある。父親は貿易商でパリで客死し、自分を連れ再婚した母親も最近亡くなった。父親が熱心なクリスチャンだった事で、人前ではミルクしか飲まない。「バー・イーデンホール R&T」で関係者に政界進出をほのめかした翌日、選挙に出るなという内容の脅迫状が届く。

珪子 (けいこ)

五島法律事務所の弁護士を務める女性。雨宿りがてら、「バー・イーデンホール」を訪れ、佐々倉溜とトラブルとなる。外見はハードボイルド風だが、中身は乙女チックな性格の持ち主。溜の出したブルショットという暖かいカクテルに癒され、口は悪いが優しい弁護士ブルショットが活躍する同名小説が存在する事を知り、「バー・イーデンホール」の常連になる。のちに来島美和と親友になり、来島泰三が亡くなった際には、公私共に美和を支えた。

木村 哲平 (きむら てっぺい)

中国赴任が決まったサラリーマンの男性で、役職は係長。ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」で、自分は何事にもタイミングが悪く、少しずつチャンスを逃していると佐々倉溜相手に愚痴をこぼす。溜から人と人が出会うという意味をこめた楊貴妃というカクテルを出され、元気づけられる。

名取 (なとり)

社長を務める高齢の男性で、口髭を生やし髪を後ろで一つに束ねている。15歳の頃、真木祐輔と薪炭屋の丁稚をしていたが、二人で逃げ出し、50年ぶりに「バー・イーデンホール」で再会した。非常に貧しかったため、真木に対しては同族嫌悪の意識が強かったものの、お互い相手を案じながら、名取自身の事業を成功させた。1年前に息子を亡くしている。

白石 (しらいし)

北海道の小樽の運河沿いで、ピエロのパフォーマンスをしている中年の男性。白石賢と沢木奈々の父親。工場を経営していたが、賢が3歳の時に工場の若い女性と逃げた過去がある。当時から金もないのに高額なスーパーニッカを飲むなど、見栄っ張りな一面を持つ。ある時、運河沿いで賢からホットウイズキー・トゥデイというカクテルを差入れされる。

久米 雅夫 (くめ まさお)

札幌で旅館を経営する男性で、ジュディ・キャロンの婚約者。どことなく頼りなさげな雰囲気を漂わせている。祖母・久米ハナとの旅の途中、佐々倉溜と知り合ってニッカウヰスキー余市蒸溜所をいっしょに訪れる事になる。

山口 (やまぐち)

テレビ局に勤務する男性。新婚の妻が流産してしまった事で家でも禁煙する事となり、タバコを吸うため「バーHell's arms」の常連となる。パーフェクトな夫を自称しており、家でタバコを吸えない事に内心苛立っている。ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」で、佐々倉溜から完璧な人は周りにも同じ事を求めていると諭され、人の痛みは人によってしか癒せないという意味を込めた、ヘア・オブ・ザ・ドッグというカクテルを差し出される。

角田 (すみた)

司法修習生の男性で、珪子の後輩。酒の飲み方を教えると珪子にホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」に連れて来られる。珪子が世話になった自分の父親の話をされると急に取り付く島もないほど不機嫌になる。しかし和久井翼が出したボッチ・ボールというカクテルで、余裕をなくしていた自分に気づく。

翼の母 (つばさのはは)

和久井の妻で、和久井翼の母親。明るく天然気味な性格をしている。炊飯器の水をいつも適当に入れるので、米はいつもベチャベチャかカチカチになってしまう。ある時、精密検査でひっかかり、胃に問題があると言われてしまう。

矢崎 (やざき)

北海道にある「バー・Yazaki」のオーナー・バーテンダーを務める高齢男性。切り絵が趣味で、今まで何万人という客の顔の切り絵を切っている。そのため、客の魂の悲しみが手品のように浮かび、渡仏前に訪れた佐々倉溜の魂が悲鳴を上げていた事を知る人物。バーテンダーとは沈みそうな艦の船長で、どんなに辛くとも最後まで艦から逃げてはいけないが、客には生き延びるよう声をかけなければいけないという持論を有する。

大食らいの男性 (おおぐらいのだんせい)

ホテル・カーディナルでUG客(好ましくない客)として目をつけられた男性。終始不機嫌な表情で、高級料理を次々オーダーしたため、マークされる。女性にお泊りをすっぽかされてイライラしていたが、「バー・イーデンホール」でワインオヤジと打ち解けた事もあり、ワインオヤジの無銭飲食代の支払いを申し出た。

木島 弘 (きしま ひろし)

六本木の「バーRED DRAGON」のフレア・バーテンダーを務める男性で、赤津慎二の高校時代からの友人。店の客であるキャバ嬢から金を借り、それを慎二に咎められ、2号店の事で頭がいっぱいの慎二と折り合いが悪くなる。慎二と出場したラスベガスのカクテルコンテストでは2位の成績を収めた。

柴田 (しばた)

西田機械に勤務する会社員の男性で、上司の田島に連れられ「バー東山」を訪れる。年齢は30歳。気の弱い性格で、転勤の辞令も断れず、田島から説教され続ける。書類を忘れて再度来店し、佐々倉溜からヘミングウェイ・ダイキリを差し出され、それにまつわるエピソードで励まされる。

大下 達也 (おおした たつや)

おでん屋を経営する伊庭の娘・真弓と結婚した学者の男性。裕福な家庭に育ち、家族はみんな酒が飲めない。義父となった伊庭と親交を深めようと、ホテル・カーディナルのラウンジ・バーを訪れる。たまたまラウンジ・バーを手伝っていた佐々倉溜から、ジャンジャービアとエールで作ったシャンディー・ガフを勧められ、伊庭と親子酒を楽しむ事となる。

マリア・メンドーサ

世界的に有名な女性歌手で、「南米の聖母」と呼ばれている。オープンしたばかりのホテル・カーディナルにゲストとして宿泊した。以前、パリでの追悼コンサートがあった日、ホテルのバーでバーテンダーをしていた佐々倉溜と出会っており、「バー・イーデンホール」で再会。歩く事も辛いほど肝臓を病んでいるが、ラムを飲むのをやめられない。祖国は軍事クーデターで弾圧され、投獄された民衆はマリア・メンドーサの歌を歌って抵抗を続け、夫と生まれたばかりの赤ん坊は連れ去られた。その後、自身はパリに亡命するも、罪悪感から意識がなくなるまでラムを飲まなければ眠れなくなったという経緯がある。

伊丹 彰男 (いたみ あきお)

広告会社・帝都広告の部長を務める、社内では渋いと評判の男性。バーで2、3杯飲み30分ほどで次のバーに移動するバー・ホッパーで、毎晩飲み歩くという生活を30年続けている。「バー・ラパン」の亡くなったマスターとも顔なじみで、銀座のバーの事情通。ちなみに銀座には約600人のバー・ホッパーがいるとされる。

和久井 (わくい)

港を作ったり修理したりする湾岸土木の監督を務める中年男性。翼の母の夫で、和久井翼の父親。20年ほど単身赴任しており、昔は仕事で海にも潜っていた。ある時、ひょっこりとホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」を訪れる。だが様子がどことなくおかしく、伊庭のおでん屋を訪れた際、翼の母が精密検査で胃に問題があると翼に打ち明ける。

彩花 (あやか)

クラブ「CADDY」のママを務める女性。10年ほど前、高齢男性と結婚して夫が亡くなった事で億の財産を相続したという噂があり、別名「銀座の女狐」。佐々倉溜が借りようとした店舗のビルのオーナーでもある。実は財産目当てで結婚したどころか、ずっと愛する夫の世話をして自分の力で資産を作った気丈夫な人物だと判明する。

山口 沙代 (やまぐち さよ)

来島美和の親友の女性。美和とは幼稚園の頃からの友達で、実家はお金持ち。結婚一周年のお祝いに、美和がカクテルをプレゼントするために、佐々倉溜を連れて訪問した。実は多忙な沙代の夫に愛想を尽かし、半年前から結婚指輪を外している。

京子の母 (きょうこのはは)

川上京子の母親。夫が亡くなった事で女手一つで京子と、京子の兄を育てた女性。いつも笑顔で苦しい時ほど笑顔を絶やさなかった。京子がホテル・バーテンダーズ・コンペティションを控えた最中に乳がんで急逝する。

森下 優一

極東銀行の部長を務める男性。ホテル・カーディナルの運営状況を監査する事になる。このホテルに存在理由がないのは、「バー・イーデンホール」と村木理容室だと断定する。実は5年前、父親が営む下町の工場の融資の引き上げをした苦い経験があり、売り上げを考えず仕事をしている人間が許せないという信条がある。しかし過去に融資した男に襲われた際、上司につき放した態度を取られ、心身共に憔悴してしまう。

先生 (せんせい)

熱血教師だった男性。昔の教え子で、教師となった木村と共に「バー・イーデンホール」を訪れる。しかし木村が先に帰ったあと、自分自身も含め教師は子供には偉そうに説教するが、ロクデナシだと悪態をついた。実はどの学校でも同僚とぶつかり退職して、会社員が務まらなかったという経緯がある。佐々倉溜からロバート・バーンズというカクテルを出され、それにまつわるエピソードを聞き、もう一度教師だった頃の魂を取り戻す。

荻野 (おぎの)

外資系投資顧問会社の日本支社長を務める男性。「ホテル・カーディナル」で開かれた同窓会の幹事を務めた。倉持と同窓生で、衆議院議員・鬼頭和馬の後輩にあたる。ノルマに急き立てられおり、同窓会に集まった友達に投資話しを持ち掛けようとしている。また、高校の頃に倉持と藤木の父親とでタバコを吸い、藤木の父親にだけ責任を負わせたという苦い過去がある。

デミトリス・リオン

有名デザイナーのフランス人男性。世界中の一流ホテルのデザインを手掛けている。年齢は50歳で、25歳も年下の奥さんと結婚したばかり。世界的なワインコレクターでもある。ホテル・カーディナルのデザインの仕事で日本を訪れていたが、急に帰国すると言い出した。困った来島美和達が、佐々倉溜にデミトリス・リオンを引き留めてほしいと助けを求めた。

久米 忠 (くめ ただし)

久米雅夫の祖父。雅夫が仕事で東京に行けなくなり、彼女であるジュディ・キャロンが明治神宮を案内する事になった。ジュディをいい娘だと認めているものの、孫の嫁が外人という事実を受け入れられないでいる。だが、ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」を訪れ、佐々倉溜から、人と人とのあいだに壁はないという意味のチェリー・ブロッサムというカクテルを出され、考えを改める。愛車はオープンカーで高齢者マークの横に、英語で「死ぬまで18歳」と記されている。

笠原 静雄 (かさはら しずお)

脚本家を務める中年男性で、サングラスをかけている。1年前に妻を亡くし、仕事に空しさを感じており、映画のクランクイン当日にもかかわらず、脚本を仕上げていない状況の中、「バー・イーデンホール」を訪れる。単なる知識であるウンチクを嫌い、その中にある物語を愛している。

内田 (うちだ)

葛原隆一に破門を言い渡されたバーテンダーの男性。葛原に破門された人間は、銀座のバーでは働けないと言われるが、「バー・ラパン」に仕事を求めて訪れた。佐々倉溜の後押しもあり、雇われる事が決まった矢先に客として訪れた葛原に指名されカクテルを作る羽目になる。

早瀬 (はやせ)

三竹商事の部長代理を務める男性。次期役員を噂される超エリートだが、海外出張中に妻を亡くした過去がある。「バー・ラパン」で、8年前にパリのラッツホテルでバーテンダーをしていた佐々倉溜と会話した内容を聞かされ、当時同僚だった吉田がパリで孤独だった自分を懸命に励ましてくれた事を思い出す。「バー・イーデンホール」で出会った医師・君島瑠美と葉巻を巡ってトラブルになるが、溜の計らいによって彼女と仲を深めていく。しかし、彼女が地方の病院勤務になる直前のデートを、急な仕事のためにキャンセルしてしまう。その後、社長の座を約束されたともいえる北米支社長のポストを打診されるも、その申し出を断って瑠美と復縁。ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」が閉店するその日に、瑠美と子供を連れて訪れる。

水谷 芳信 (みずたに よしのぶ)

映画の専門学校に通う男子学生。自分が3歳の時に母親と離婚した父親・三枝芳雄から手紙を受け取り、ホテル・カーディナル内の「バー・イーデンホール」を訪れる。父親となにを話したらいいのか、眠れないほど思い悩むなど繊細な一面がある。無愛想に装っていたのはその裏返しで、父親が残していったビデオの影響で映画が好きになった経緯がある。

桑田 (くわた)

カメラマンの男性。張り込み専門で、雑誌社内で山科クラが失踪したとのスクープを嗅ぎつけ、クラを単独で追いかけている。クラが「バー・イーデンホール R&T」に入り飲酒した瞬間を激写する。

杉山 (すぎやま)

佐々倉溜の先輩の男性で、「バー・ラパン」のバーテンダーを務めている。自信家で自惚れが強く、「六本木のシンデレラ」と呼ばれるキャバ嬢の亜希子を狙っており、もう少しで落とせると勘違いしている。

神河 慎一 (かみかわ しんいち)

音楽大学の教師を務める音楽評論家の男性。「ウイスキー全書」「洋酒紀行」の著者でもあり、洋酒に造詣が深い。実家は財閥系の資産家。酒を飲むと弾けないのがバイオリンで、酒がないと弾けないのがフィドルだと、見習い時代の佐々倉溜に教えた人物で、溜がパリに行くきっかけを作った恩人でもある。教え子の里中絵美を10年前にアイルランドに留学させた。一時期はファッション雑誌などでスタイリッシュで知的な男性だと人気があったが、親友の保証人になって全財産を失い、両親の死後は心を病み千葉で療養している。

嶋岡 (しまおか)

嶋岡広告社の社長を務める高齢の男性で、すでに勇退が決まっている。「バー東山」で、50年前に父親の会社を継ぐため、泣く泣く別れた舞台女優・柚木美枝子の訃報を知り、その悲しみから、マルガリータというカクテルにちなんだエピソードを披露した佐々倉溜に大人げなく説教をした。のちに会長となり、ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」に足を運ぶようになる。ちなみに、嶋岡広告社は宇崎が勤める帝都広告とライバル関係にある。

三枝 芳雄 (さえぐさ よしお)

息子が20歳になるまで養育費を払っていた男性。息子の水谷芳信が3歳の時に前妻と離婚。最後の養育費を払い終わった際、息子に手紙を出し、ホテル・カーディナル内の「バー・イーデンホール」で待つ旨を伝える。息子とどう接していいかわからずにいたが、佐々倉溜の作ったアぺロールスプリッツをきっかけに自分の思いを息子に伝える。

金子 祐介 (かねこ ゆうすけ)

35歳で夭折した心理学者の男性。教授の教え子で、20年に一人出るかという逸材だったが、難解すぎる論文は海外ではまったく評価されなかった。20年前に父親を鉄道事故で亡くしたせいで、教授を父親のように慕っており、彼のマネをして同じ万年筆を使おうと大事に保管していた。

山科 クラ (やましな くら)

超人気漫画家で、田舎臭さの残る19歳の女性。15歳で週刊誌にデビューし、週の2日でネームを考え4日で絵を仕上げ、次の日に寝るという生活を5年続けている。両親は大金に舞い上がり親権を争って離婚し、山科クラ自身はアイディアが出ない苦しみを抱え、大量の睡眠薬をカバンに入れている。家を飛び出し、偶然出会った佐々倉溜と東京観光を楽しむ。

倉持 (くらもち)

埼玉県にある中小企業の専務を務める中年の男性。同窓会を兼ねた出張で、「ホテル・カーディナル」に宿泊した。毎日同じ時間に出勤し、同じ時間に退社するという判を押したような規則正しい生活をしている。「バー・イーデンホール」で、退屈そうにしていたところ、佐々倉溜の粋なサービスにより、「おいしい酒はその日をいい日にする」という意味を理解する。また、高校の頃に荻野と藤木の父親とでタバコを吸い、藤木の父親にだけ責任を負わしたという苦い過去がある。

マリ

ジャズピアニストの若い女性。ニューヨークでは小さなライブハウスでソロ演奏も経験したが、今はラウンジでピアノ弾きをしている。小学生の頃からサックスを吹いていた父親にジャズピアノを習っていた。銀座のバー「テネシーワルツ」のバーテンダー諏訪早苗が父親を奪い、自分の母親を追い出したと思い込んでおり、早苗に憎しみを抱いている。

雅夫の父 (まさおのちち)

北海道にある「バー・Yazaki」の常連の男性。浮気がバレてやっと口説いた若い女性に逃げられた。北海道を訪れた佐々倉溜と同席し、いっしょに飲もうとだだをこねた遊び人。のちに「バー・Yazaki」で、久米ハナと久米忠の息子で、久米雅夫の父親である事が判明する。

結花 (ゆか)

合コン30連敗中の若い女性。元気一杯の明るい性格で、つねに擦り傷をつくっているドジな一面がある。デート前日に予行演習として「バー東山」を訪れた。相手の男性にいい女と思われるように客のみんなに協力を仰ぎ、佐々倉溜をはじめ店をあげて、デートを見守る事になる。

藤木 (ふじき)

教師を目指している男性。48歳で亡くなった父親が私立名門高校に通っていた頃、倉持と荻野とでタバコを吸い、火事を起こした。その責任を父親が一人で負い、退校処分になったという話を聞き、ホテル・カーディナルで開かれた同窓会で、二人を襲おうと計画した。「バー・イーデンホール」で佐々倉溜からグラスアロマというカクテルを出され、父親も二人を許していたのだと納得する。

神嶋 淳 (かみしま じゅん)

和久井翼をOB訪問に訪れた大学生で、神嶋部長の息子。目は大きく黒目が小さい。調子に乗りやすい性格で、無邪気に失礼な事を言ってしまう。翼に連れられ「バー東山」を訪れ、東山稔から大人への第一歩とは言葉にならない言葉を探す事かもしれないとの教えを受ける。

赤津 慎二 (あかつ しんじ)

六本木の「バーRED DRAGON」のオーナー・バーテンダーを務める男性で、曲芸的なパフォーマンスをするフレア・バーテンダー。ラスベガスのカクテルコンテストで優勝し、アメリカでは「フレアのシンジ」として有名。ビジネスマンとしてもやり手で、2年で2軒目のバーを出す予定。オーセンティック・バーをバカにしており、暗闇坂の新築ビル路面店を巡って佐々倉溜とカクテルで勝負する事になる。父親はアメリカ人で、幼い頃から髪と眼の色で外人といじめられ、高校時代は荒れていた。そんな時、いっしょにいてくれた木島弘に2号店を任そうと考えている。

同窓会で再会した三人 (どうそうかいでさいかいしたさんにん)

集英高校同窓会で再会した男女三人組で、幼なじみでもある。部長を殴ってクビになった編集者の麻美、働いていたロンドンのデザイン事務所で大御所デザイナーを怒鳴って仕事を干されている久米、パリの売れっ子CMカメラマンながら芸術院会員のカメラマンに暴言を吐いて行き詰っている忍田の三人。みんなある程度のキャリアを積んでいるが、現在は三人とも挫折している。同窓会のあと、「バー東山」を訪れ、佐々倉溜が出した昔ながらのモスコミュールのおかげで、三人で助け合う事を約束する。

里中 絵美 (さとなか えみ)

バイオリニストの女性で、神河慎一の弟子。孤独を知り、向き合うのがバイオリンしかないという辛い状態の中でしかバイオリニストの成長はないと、神河が14歳の時にアイルランドに留学させた。10年ぶりに帰国し、神河と再会を約束していた場所に現れた佐々倉溜に不信感を抱く事になる。

黒沢 純一郎

ミステリー大賞を受賞した新人作家の男性。大賞受賞後の第1作目をホテル・カーディナルで執筆している。「バー・イーデンホール」で佐々倉溜に壁にぶち当たっている事を見抜かれ、その壁を自分の力で打ち砕くよう、スレッジハンマーというカクテルを差し出される。のちに、著作「モロトフのカクテル」が推理作家大賞候補にノミネートされ、この作品には溜の功績が大きいと、編集者達と共に「バー・イーデンホール」で発表を待つ事になる。

熊代 達也 (くまだい たつや)

戦場カメラマンとして有名だった高齢の男性。信州の山で撮った写真を出版社に売り込んでほしいと、弟子の山根和夫を訪ねた。ホテル・カーディナル内の「バー・イーデンホール」で、自分の昔の写真集の前書きを覚えていた佐々倉溜の言葉で、初心を取り戻した。しかしその後、戦場で行方不明になる。

西沢 弘之 (にしざわ)

ホテル・カーディナルのメイン・ダイニングバーで、チーフ・バーテンダーを務める男性。バーマンである前に、ホテルマンであるという強い誇りを持っている。あえてホテル内に街場のバー「バー・イーデンホール」をオープンさせた来島泰三の意向は理解するものの、あくまでもホテルとしての格を重んじるという態度を崩さない。川上京子に対してもスタンダードを重んじるよう厳しく指導するも、京子の失恋を察知した際には、習慣に体を委ねる事で、心の辛さを乗り越えなければならないと諭す優しさを持つ。泰三が倒れてからは、ホテル・カーディナルの経営方針が変わり、メインレストランへの移動を打診される。

亜希子 (あきこ)

女子大に通う学生でキャバ嬢。午前12時には帰宅するため、アフターには付き合わない事から「六本木のシンデレラ」と呼ばれている。実は子持ちのシングルマザーで、会計士の資格を取るべく睡眠時間4時間というハードスケジュールをこなしている。当初はバーテンダーの事を、酔わせて口説こうとする客の片棒を担ぐクズだと考えていた。のちに「バー・イーデンホール R&T」の近くの餃子屋で佐々倉溜と再会した際には、公認会計士になっていた。

平田 賢一 (ひらた けんいち)

川上京子と幼なじみの男性。京子からは「賢一兄ちゃん」と呼ばれていた。東京出張でホテル・カーディナル内のメインラウンジ・バーを訪れる。京子から思いを寄せられている事にはまったく気づいておらず、後日、自分の婚約者を伴って京子の働くバーに現れる。

樋口 由香利 (ひぐち ゆかり)

ホテル・カーディナルの料飲部に所属する女性社員で、来島美和の後輩。ホテルマンとしての自覚があまりなく、グラスの種類やカクテルの名前も覚えていないほどのお気楽な性格。美和に連れられ「バー・ラパン」を訪れた際、佐々倉溜の指の動きに魅せられ、恋をしてしまう。のちに、内心では望んでいない結婚を決めるも、溜からアレキサンダーというカクテルにまつわるエピソードを聞かされ、結婚を思い留まる。

柳下 (やなぎした)

ホテル・カーディナルに勤める男性社員。役職は主任で先日、子供が生まれたばかり。実は有名画家・坂田弘紀の息子で、35年前に自分と母親を捨てた坂田を人間のクズだと思っている。奇しくも、坂田の絵をホテルで展示する事になり、坂田と共に「バー・イーデンホール」を訪れる。

吉田 (よしだ)

中小企業・吉田機械の社長を務める男性。もともとは三竹商事で早瀬とは机を並べていた仲。「バー・ラパン」で、現在は自分のクライアントである早瀬にコストダウンの撤回を求めて懸命に頭を下げるも、けんもほろろにあしらわれる。

佐久間 (さくま)

写真家・山根和夫のアシスタントを務める男性。熊代達也を過去の名声にすがって弟子にたかるクズだと考えており、山根の留守にスタジオを訪ねて来た熊代に、戦場に戻れと悪態をついた。

志穂 (しほ)

結婚3年目の主婦。夫の弘がホステスと食事に行ったと知り、その腹いせに音楽大学の同窓会で当時あこがれていたピアニスト・田久保を勢いでデートに誘った。待ち合わせで「バー・イーデンホール R&T」を訪れるも、田久保のしょぼくれた姿を見た事を佐々倉溜に打ち明ける。少し人生に疲れたらバーで誰かを待つふりをすればいいという溜の言葉で、現実に戻る元気を取り戻す。

久米 ハナ (くめ はな)

久米雅夫の祖母。孫との旅の途中、佐々倉溜と知り合い、ニッカウヰスキー余市蒸溜所をいっしょに訪れる事になる。道産子の魂である北海道の競馬「ばんえい」を愛している。竹鶴正孝と竹鶴リタの出会いから恋になぞらえ、蒸留所を案内する。孫には資産家のため苦労などないものと見られているが、夫も息子も道楽者である事から、人知れず苦労をしている。ジャンパーの背中には「死ぬには若ずぎる、生きるには飲み過ぎた」との英語が記されている。のちに、夫が久米忠だと判明する。

相馬 幸司 (そうま こうじ)

民政党に所属する政治家の高齢男性。逮捕前に、永田町の妖怪といわれた政治家の佐々倉に会うために、佐々倉溜のいる「バー・ラパン」を訪れる。後援会地盤が強いため、幼い頃から政治家になる以外の選択肢はなかったが、童話作家になりたいという夢を持っていた。そのため、粗野な男を演じているが実は繊細な性格をしている。佐々倉溜のカクテルで魂を救われ、復活に向けての意欲を持ち直す。のちに議員として復活し、あと一歩で首相の椅子が見えて来たという矢先、年老いた母親に故郷の島で死にたいと懇願され、揺れる心を抱えて「バー・イーデンホール R&T」を訪れる。

ワインオヤジ

ホテル・カーディナルでUG客(好ましくない客)として目をつけられた中年の男性。服装と持ち物が、オーダーした高級ワインにあまりにも不釣り合いであったため、マークされる。外出しようとした際、来島美和から声をかけられ、「バー・イーデンホール」を訪れる事になる。バーのスツールから立ち上がった際、倒れて脳震盪を起こし、看護婦・宮内エミに助けられる。それをきっかけに、事業で行き詰り、無銭宿泊し逃走しようとしていたスキッパーだと素直に告白し、みんなの前で再出発を誓う。

山根 和夫 (やまね かずお)

著名な写真家の男性で、ホテル・カーディナルで写真展を開催している。師匠は熊代達也。過去の名声にすがって自分に言い寄って来る熊代を、快くもてなしながらも内心軽んじていた事を、自分のアシスタントである佐久間に指摘される。

宮内 エミ (みやうち えみ)

看護師を務める若い女性。三谷淳一の知り合いで、なぜかホテル・カーディナルで来島美和と共にUG客の調査に乗り出し、「バー・イーデンホール」まで興味本位で乗り込んできた。実はUG客リストに名前が載っているクレイマー。看護師として感情を抑制している事に耐えられなくなり、クレイマーとして文句を言う事で辛うじて自分を保っている事実が判明する。

タウザー8世 (たうざーはっせい)

スコットランドからやって来た、曲がり角の先に幸運を運ぶという猫。昔、ウイスキーの蒸留所には鼠などから大麦を守るため猫が飼われ、「ウイスキー・キャット」と呼ばれていた。中でもグレンタレット蒸留所で買われていたタウザー8世の先祖タウザーは世界一鼠を捕獲したとして有名で、ギネスブックにも名前が載っている。祐子の手をひっかき、木村祐一とよりを戻すタイミングを作った。

坂田 弘紀 (さかた ひろき)

世界的に有名な画家の男性で、スペインでは勲章をもらい「バロン」と呼ばれている。絵を売った金で孤児院や病院を建てており、「放浪する聖者」との異名を持つ。一方で画壇の異端児と見なされており、偶然知り合った佐々倉溜の店に押しかけ、バレンシアというカクテルを飲ませてくれと頼み込む。実は35年前、自分を評価してくれない日本の画壇に見切りをつけ、妻子を捨てて、スペインに渡った経緯がある。ホテル・カーディナルの社員・柳下は、その時に捨てた息子。

木内 祐一 (きうち ゆういち)

割烹「祐二」を経営している料理人の男性で、店は「バー・イーデンホール R&T」の上階にある。当初、幼なじみの祐子と結婚して店を開く予定で、「祐一と祐子は二人で一人前だ」と先生に怒られていたのが店名の由来。開店準備中に、祐子をバイクに乗せて事故を起こし、一生歩けなくなった祐子から結婚を拒否されてしまう。

彰男の娘 (あきおのむすめ)

伊丹彰男の娘。母親が体を壊したにもかかわらず飲み歩く父親を探し、「バー・ラパン」を訪れた。祖父が臨終の時もバーで酒を飲んでいた父親を許せずにいる。

宇崎 (うざき)

広告会社帝都広告の制作本部の次長を務める中年男性。ちゃらんぽらんな性格のように見えるが、同期の出世頭で大きな賞を幾度も受賞している。昼間から会議と称して麻雀を打つような古いタイプの広告マン。実質左遷となる人事異動を命じられ、送別会で部下の山下次郎を連れて伊丹彰男から紹介された「バー・イーデンホール」を訪れる。のちに、東京本社に復帰した。「たゆたえども沈まず」が信条で、そのための努力を怠らない佐々倉溜を、世界一のバーテンダーだと断言する。

沖田 正起 (おきた)

数値流体力学を研究している男性。変わり者と知られており、素粒子の研究でノーベル賞を受賞したアメリカの物理学者ドナルド・グレーザーがビールの泡を見て新理論を思いついた事を受けて、飲む酒はビールと決めている。しかし「バー・ラパン」で、佐々倉溜がビールとシャンパンで作ったブラック・ベルベットというカクテルを飲み、酒の魂(スピリッツ)は科学を超えるのかと驚愕する。巨乳美人が大好きで、風俗店のチラシをいつも持ち歩いている。欧米で客員教授を務めたのちに帰国した際、ホテル・カーディナル内の「バー・イーデンホール」を訪れる。

ジュディ・キャロン

来島美和の友人の外国人女性。日本の大学に留学中に久米雅夫と知り合って交際し、雅夫が北海道で就職したため、遠距離恋愛を3年続けている。だが日本人の雅夫に慣れる事はできても、完全に越える事ができない心の壁があるように感じている。雅夫が急な仕事のため、彼の祖父・久米忠を明治神宮に案内する事になる。

佐藤 (さとう)

秩父の山奥で農業をしている高齢の男性で、立ち飲み屋の小倉の先輩にあたる。鋭い感性の持ち主で、田舎に住んでいるわりにはバーに慣れている。実は、30年前に起きた現職大臣を巻き込む大型疑獄事件の当事者であり、佐藤自身は秘書として逮捕され、もう一人の秘書は飛び降り自殺した。以降、同僚を死なせた責任に苦しみ、家族を捨て聖書と鍬を抱えて山に入ったという経緯がある。横山恵は30年前に別れた娘であり、「バー・イーデンホール R&T」で恵の政界入りを知る。

祐子 (ゆうこ)

木村祐一の幼なじみで、祐一と結婚して割烹「祐二」の女将になる予定だった女性。祐一のバイクの後ろに乗っていた時に事故に遭い、一生歩けない身体になってしまう。同情で結婚してほしくないと、祐一との結婚を断わっていた。幸運を運ぶ猫タウザー8世に手をひっかかれた事により、祐一の本当の気持ちを知る事になる。

椿 (つばき)

椿製氷を営む高齢の男性。頭頂部がハゲており、丸い眼鏡をかけた怪力老人。佐々倉溜が自身の店の堅い氷をアイスピックで見事に丸くしたのに驚き、新しいアイスピックを譲渡する。だが、皆瀬にボトルを割った疑いをかけられたため、店を閉めるしかないと落胆している。老舗酒卸問屋を営む柳とは海軍時代の戦友でもある。

可奈子 (かなこ)

銀座の高級クラブ「エポワール」のNo.1ホステス。銀座で17歳から歳を偽って15年間勤めている。シャンパンを飲む際に、首の皺が目立つ細いフルートグラスを出した佐々倉溜の青さを指摘した。仕事のあとに客とのアフターがなければ、カラオケボックスでストレスを発散している。

場所

バー・イーデンホール

「バー東山」の東山稔から、佐々倉溜が次の職場として紹介されたバーで、銀座6丁目のビルの地下1階にある。オーナーは真木祐輔が務めており、カウンターの一番奥にある席だけは真木のためにいつも空けておく事が店を任せる条件だった。面接時に、グラスの種類をケチる真木とひと悶着あったものの、自分に説教した溜を気に入った真木は、溜の意見を全面的に受け入れた。真木が悪友でもある盟友・名取と「バー・イーデンホール」で再会し、ホテル・カーディナルから引き抜きを受けている溜を考慮して、閉店を決める。そして溜の強い希望で、その名を引き継ぎ、ホテル・カーディナル内に新装オープンを果たす。ちなみにホテル・カーディナルには、西沢弘之がチーフバーテンダーを務めるメインダイニング・バーと、その奥にスタンドタイプの「バー・イーデンホール」の二つのタイプのバーが存在している。

バー・ラパン

銀座にあるこぢんまりしたバーで、日本に帰国した佐々倉溜が最初にバーテンダーとして働いた店。来島泰三は先代のマスターが横浜で修業していた頃からの客。先代マスターの妻から店を預かっている斉藤がチーフ・バーテンダー、杉山がバーテンダーを務めている。

バー東山 (ばーひがしやま)

銀座の高級バーで、客層は豪華にして華やか。チーフが入院したため、佐々倉溜がヘルプで一時的に働く事になった。銀座では「サービスの東山」と呼ばれる一流バーテンダー東山稔がオーナーを務めている。バーは地下1階にあるが、店より広い庭がある。溜が「バー・イーデンホール」に移ったあと、倉田がチーフを務めた。

バー・イーデンホール R&T

ホテル・カーディナルの「バー・イーデンホール」の閉店後、佐々倉溜が独立して開いた狸穴町の暗闇坂にあるバー。クラブ「CADDY」のママ彩花の所有するビルの1階にある。真木祐輔から「バー・イーデンホール」の名を引き継ぐ事を了承してもらい、店名には溜のRと、ホテル・カーディナルを辞め、自分について来た和久井翼のTでR&Tとした。総客席11席で、酒のストック約250本。溜が見習いとして修業を始めたバー・風があった思い出深い場所でもある。

バー・風 (ばーかぜ)

狸穴町の暗闇坂にあったバーで、佐々倉溜が初めてバーテンダー見習いとして働いた店。昭和30年代に加瀬五朗が父親から引き継いだ店で、2階が住居で1階がカウンター7席のバーという構成。365日一日も休まず、朝まで営業しており、客には同業者も多かった。加瀬が倒れ、閉店を余儀なくされた。加瀬が一時退院した際、北方の店を借りて一日だけ「バー・風」が復活された。和久井翼がインターネットに書き込みしたため、多くの客が訪れた。加瀬の体調を考慮し、一人一杯のみで代金は無料というサービスが行われた。

バー南 (ばーみなみ)

銀座6丁目の老舗バーで、オーナー・バーテンダーは南浩一が務めている。川上京子が見習い修行をしていた店。「バー・イーデンホール」と同じビル内の8階にある。

ホテル・カーディナル

2007年に汐留にオープンした来島興業の大型ホテル。来島泰三が今は亡き息子の夢を叶えるために尽力した。地下3階、地上42階で地上15階まではオフィス・店舗の複合型ビル。設計・デザインはデミトリス・リオンが担当し、4つの直営レストラン、二つのバー、ジムやエステを備えている。そのバーの一つが、佐々倉溜の「バー・イーデンホール」。メインラウンジ・バーのチーフ・バーテンダーは西沢弘之が務めており、川上京子がバーテンダーとして働く事になった。

バーHell's arms (ばーへるずあーむ)

六本木にあるバーで、マスターは上原が務めている。同じ沖縄出身の金城ユリをバーテンダーとして雇っている。上原とは渡仏前から知り合いだった佐々倉溜が、カクテルコンクール出場を前に、「マティーニに顔がない」と言われた川上京子を伴い訪れる。店名の「Hell's arms(地獄の武器)」は、上原の失踪した息子が入っていた暴走族の名前から付けられた。

その他キーワード

神のグラス (かみのぐらす)

孤独に傷つき、行き場のない魂を救う最後の一杯。バーテンダー佐々倉溜がつねに目指す領域であり、それを飲む者にとってこれ以上の、そしてこれ以外の一杯はないというべき至福の酒。また溜の作るカクテルは、賞賛の意味を込めて神のグラスと呼ばれ、溜自身の異名として用いられる事もある。

アニメ

バーテンダー

銀座にあるバー「イーデンホール」を1人で切り盛りする主人公の佐々倉溜は、お客様に最高のカクテルと癒しを提供するバーテンダー。彼の店にやって来たお客様は、佐々倉溜の手による「神のグラス」に魅了され、そし... 関連ページ:バーテンダー

書誌情報

バーテンダー =Bartender 全4巻 集英社〈集英社文庫〉 完結

第1巻 出会い編 1

(2014年9月発行、 978-4086195119)

第2巻 出会い編 2

(2014年9月発行、 978-4086195126)

第3巻 出会い編 3

(2014年10月発行、 978-4086195133)

第4巻 出会い編 4

(2014年10月発行、 978-4086195140)

バーテンダー6stp 既刊1巻 〈ヤングジャンプコミックス〉 連載中

第1巻

(2017年3月17日発行、 978-4088906010)

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