ブッダ

ブッダ

紀元前6世紀、ネパールの小族シャカ族の王子として生まれたシッタルダが、人が苦しみつつ生きる意味を問い続け、悟りを開いてブッダとなり人々を導きつづけた生涯を、大胆な創作を織り込みつつ描く渾身の歴史宗教伝記漫画。

正式名称
ブッダ
ふりがな
ぶっだ
作者
ジャンル
自伝・伝記
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
巻数
既刊7巻
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概要・あらすじ

紀元前6世紀、ネパールの小族シャカ族の王子として生まれたシッタルダは、世界の王になると予言されながら、ひ弱で寝てばかりいる少年であった。死とは何かという疑問を抱き、飢えや戦いで死んでいく人たちを救うにはどうすべきか悩んだ彼は、バラモンの行者に、「出家して悟りを開き世界のすべての人を救え」と言われ、城を出て出家をする決心をする。

名高い行者に教えを乞うが満足できず、体を苦しめるだけの苦行にも疑問を抱く。ピッパラの樹の下でついに悟りを開き、ブラフマンから「ブッダ(めざめたもの)」という名と額に聖なる印をうけ、死ぬまで人々にどう生きるかを教え続けるという使命を与えられる。

登場人物・キャラクター

シッタルダ

世界の王となると予言されたシャカ族の王子。死とは何かという疑問を抱き、飢えや戦いで死んでいく人たちを救うにはどうすべきか悩み、バラモンの行者(実はブラフマン)から、「出家して悟りを開き世界のすべての人を救え」と言われ、城を出て出家をする決心をする。サモン(身分にかかわらず出家した者をさす)のデーパとともにマガタ王国へ行きビンビサーラ王から「ブッダ(めざめたもの)」という名をもらう。 名高い行者に教えを乞うが満足できず、さらに ウルベーラの苦行林に入っても、体を苦しめるだけの苦行に疑問を抱く。死にかけた村の娘スジャータを助けようと、心を娘の体の中に入り込ませ魂をつなぎ止めようとして、そこに飛び交う生命のかけらたちを見、かつて行者の姿で現れたブラフマンと出会い、宇宙という大きな生命のもとから無数の生命のかけらが生まれこの世界のあらゆるものに生命を吹き込んでいるのだと教えられる。 のち、ピッパラの樹の下でシッタルダが悟りを開くと、ブラフマンから、改めて「ブッダ(めざめたもの)」という名を与えられ、額に聖なる印をうける。 紀元前483年、沙羅双樹の花が咲くとともにブッダは、人に教えを説き続けた生涯を終える。歴史上の実在の人物、ガウタマ・シッダールタがモデル。

タッタ

スードラよりも低い身分のバリアの少年。動物に乗り移ることができる。コーサラ国のブダイ将軍に家を焼かれ家族を殺され、さらに兄弟分であるチャプラを殺されて、コーサラ国に復讐を誓う。シャカ族にコーサラ国を討たせようと考え、出家したシッタルダに城へ戻るように説得するが、やがて、シッタルダの修行の大事さに気づいていく。 ブッダの弟子となるが、コーサラ国への憎しみはシャカ族の不満分子のそそのかしによって再燃し、ついにコーサラ国へ戦いを仕掛けて戦死する。

ミゲーラ

娘ながら盗賊のボス。シッタルダを襲って、逆に命を救われる。シッタルダとお互いにひかれあうが、スットーダナ王は二人の仲を許さず、二度とシッタルダを見ることがないようにミゲーラの目を潰してしまう。その後、タッタと夫婦の盗賊となるが、シッタルダが10年でシャカ族の城に戻るという約束と引き替えに盗みも人殺しもやめると誓う。 マガタ王国の剣士となったタッタとの間に三つ子をもうける。

スットーダナ

シャカ族の王でシッタルダの父。生まれつき体が弱く寝てばかりいるシッタルダを元気づけようと毎日のように饗宴をひらく。シッタルダが城を出た後、コーサラ国に攻め込まれ囚われの身となる。歴史上の実在の人物、シュッドーダナがモデル。

マーヤ

シャカ族の対岸に国を持つコーリア族出身の王妃。6本の牙を持つ白い象が自分の体に入る夢を見たのち懐妊する。シッタルダを産み落としたのち死ぬ。歴史上の実在の人物、マーヤーがモデル。

チャプラ

スードラの少年。石投げを得意とする。タッタと兄弟分となる。ワニに襲われたブダイ将軍を救いその息子となり、やがて弓の名手として知られるようになるが、奴隷身分であることが発覚し、母親とともに死刑となってしまう。

ナラダッタ

師のアシタの予言により神となる人を探す。タッタがヘビに卵をもらう代わりに自分をヘビに差し出したのを見て、アシタから聞いた、聖者に我が身を差し出したウサギの話を理解する。「大自然の中では人もけものの同じ仲間。仲間同士助け合うのが生き物の定めである」と。過ちを犯し、師のアシタから、けもの同然に野をさまよう罰を受け、以後50年を獣のように四つん這いで過ごし、最後には、許しを得て安らかに死を迎える。

ブダイ

コーサラ国の将軍。カピラバストウのシャカ族を屈服させるために攻め込む。ワニに襲われた時にチャプラに救われ、彼を息子とする。

バンダカ

コーリア族の弓の名手。チャプラに戦いを挑み瀕死の重傷を負わせる。ヤショダラの婿えらびの腕くらべに参加するが破れ、シッタルダに恨みを抱くようになる。シッタルダが城を出た後、シャカ族の王となるが、コーサラ国との戦いで命を落とす。シャカ族の娘を妻とし、ダイバダッタという胤を残す。

ブラフマン

シッタルダの前にしばしばバラモンの行者として現れ、彼を導く。神の化身であり、悟りを開いたシッタルダに「ブッダ(めざめたもの)」という名と額に聖なる印を授け、死ぬまで人々にどう生きるかを教え続けるという使命を与える。

ヤショダラ

スットーダナ王の姪で王がシッタルダの妻に選んだ娘。シッタルダの間にラーフラという子どもをもうける。歴史上の実在の人物、ヤショーダラーがモデル。

パサーナディ

コーサラ国の王。品位にかけるといわれることを気にして、由緒正しいシャカ族の娘を妻に差し出せと要求。シャカ族は スードラの侍女をシャカ族の娘と偽って差し出し、この二人の間にビドーダバという子が生まれる。後にシャカ族の嘘がわかると、カピラバストウを攻め落としスッドーダナ王以下、シャカ族を虜囚とし、逃亡したシャカ族も執拗に追って殺害する。

デーパ

サモン(身分にかかわらず出家した者をさす)で、ナラダッタの弟子。ミゲーラに苦行を強要され、自らの片目を焼いてみせる。苦行によって心が清められるとして、苦行を無駄だとするシッタルダを非難する。コーサラ国の兵に矢で射られるが、ブッダとなったシッタルダに命を救われる。

5人の行者 (ごにんのぎょうじゃ)

コーンダンニヤ、バッデイヤ、ワッパ、マハーナーマ、ジャーヌッソーニの5人。マガタ王国 ウルベーラの苦行林で修行をするバラモン。シッタルダに術と問答で挑み、その力を認めて苦行林でともに修行することを進める。

アッサジ

マガタ王国の苦行林へ向かうシッタルダとデーパが立ち寄った家で坊主にしてくれと押しつけられた子ども。高熱で死にかけた際、「お前はあと10年生きて、最後は獣に引き裂かれて死ぬ」という声を聞く。やがて、未来を予知する力を持つようになり、マガタ王国の王ビンビサーラが息子にころされて死ぬと予言する。 10年後、飢えたオオカミの家族に自分の体を捧げ、予言の通りに死ぬ。

ダイバダッタ

バンダカの子ども。オオカミに育てられ、その後、獣として暮らすナラダッタと出会い、人間の世界へ戻される。大人になると、タッタを見いだし剣士としてマガタ王国へ売り込み、ともに王に仕えることになる。その思想は弱肉強食こそこの世の真理とするもので、シッタルダと真っ向から対立する。 しかし、毒のために声を失ったミゲーラを、その心の中に入ることで再び話せるように治療したシッタルダをみて、本物の聖者だと確信する。1000人を超えるようになったブッダの弟子を組織化し、さらにアジャセ王にとりいって教団を乗っ取ろうと画策する。竹林精舎に戻ってきたブッダを殺そうと、毒を塗った爪で襲おうとしてあやまって爪をはがし、その毒によって死んでしまう。 歴史上の実在の人物、デーヴァダッタがモデル。

ビンビサーラ

マガタ王国の王。予知能力を持つアッサジから、20年後に自分の息子に殺されて死ぬと予言され死の恐怖におびえる。シッタルダと出会い、彼に「ブッダ(めざめたもの)」という名を与え、死の恐怖から逃れる方法をブッダに見つけてほしいと願う。息子のアジャセを塔に幽閉し、さらに彼と恋仲となった奴隷娘を死刑にしたことから、息子に恨まれることになり、ダイバダッタの毒薬に体を蝕まれ王位をアジャセに奪われたあげく、かつて、息子を幽閉した塔の虜となる。

ヤタラ

父が研究した薬を飲んで、巨大な体となる スードラ。身分による差別を憎み、自分と同じスードラの血をうけたルリ王子の家来となるが、ルリ王子が自分の母親を奴隷として扱い、さらには伝染病の奴隷たちとともに焼き殺そうとしたことに憤慨する。シッタルダに、「不幸なのは自分だけではない、すべてのことには意味があり役目がある」と諭され、流れる川のように自然に生きよと教えられる。 領土をかけて、マガタ王国の剣士となったタッタと戦い、ダイバダッダの陰謀で毒矢に倒れるが、その後マガタ王国の人となる。

ルリ王子

額にはめこまれたルリ玉からルリ王子と呼ばれる。自分の母親がスードラの身分であることを知り屈折する。父のパサーナディにスードラの妻を与えたシャカ族を憎み、奴隷として虐げるが、カピラバストウにブッダとしてもどったシッタルダの話を聞くうちに、自分の復讐そのものが自分を苦しめていたことを悟り、シャカ族を解放する。

アジャセ

マガタ王国の王ビンビサーラの息子。父王が41歳になるとき、息子である自分に殺される運命であるという予言を憎み、父の悩みをブッダのせいだとして、ブッダを矢で射る。ブッダは命を取り留めるがアジャセはその罪により、塔に幽閉される。やがて、食事を運ぶ女奴隷のユーデリカと恋に落ちるが、二人で逃げだそうと話していたことが王に伝わり、ユーデリカは死刑にされてしまう。 父を恨んだアジャセはダイバダッタと共謀して王に少しずつ毒薬を盛り、ついに錯乱させて王位を奪い、自らが幽閉されていた塔へ王を閉じ込める。しかし、ダイバダッタが死ぬと、アジャセの額は巨大な腫瘍のために晴れ上がり生死をさまよう。 ブッダは、毎日12時間、3年にわたって腫れた患部に指を当て人のぬくもりを伝え続け、病が治癒していき、ついにその顔が神々しい微笑を浮かべるのを見る。そのほほえみは、神は人の心にこそ宿るのだ、という悟りをブッダに与える。

アナンダ

ダイバダッタと同じ母から生まれた子ども。生まれて八日目に悪魔の洗礼を受ける。シャカ族を憎むコーサラ国に母を殺され、すさんだ心の悪人となる。悪魔の加護により致命傷でも死なず、切られた指はまた生えてくるという。火を操る仙人ウルヴェーラ・カッサパ の計略にかかり、死に瀕したところをブッダに救われ、とりついていた悪魔も追い払われ、アナンダはリータ とともにブッダの弟子となる。 生涯ブッダのそばに付き従う。歴史上の実在の人物で、釈迦十大弟子のアーナンダがモデル。

アヒンサー

盗賊。アナンダを仲間にして大仕事をしようとする。もとクシャトリアで、罪もない人々を殺し小指を100本集めるという催眠術をバラモンにかけられ、99本の小指をあつめて人々からアングリマーラ(指の首飾り)と恐れられる。100本目として襲った女が自分の母だと気づき催眠術がとける。以来、僧侶を憎み、バラモンだけを狙う盗賊となる。 この世で一番偉い坊主を殺すことを目的とし、ブッダを捕らえ殺そうとするが、ブッダに、人殺しとしてのアヒンサー は一度死んであらたな人間として生きろと言われ、圧倒されたアヒンサー は逃げ出す。後、再びブッダを殺そうとして、ブッダの弟子となったアナンダと格闘して深い穴に落ち、閉じ込められたまま穴の外のブッダと会話をして最後は安らかに死を迎える。

サーリプッタ

ブッダが送り出したアナンダと出会い、ブッダの弟子となり、モッガラーナとともにブッダから後継者とされるが、事故により死んでしまう。歴史上の実在の人物で、釈迦十大弟子のシャーリプトラがモデル。

モッガラーナ

ブッダが送り出したアナンダと出会い、ブッダの弟子となる。人の心を読み、その一生を未来まで見通すことができる。サーリプッタとともにブッダから後継者とされるが、急病によって死んでしまう。最後に、ブッダの残りの寿命があと10年と4ヶ月であることを報せる手紙を残す。 歴史上の実在の人物で、釈迦十大弟子のマハーマゥドガリヤーヤナがモデル。

ジェータ

ルリ王子の息子。ブッダの教えに感激した長者のスダッタから、僧園にするために土地を売ってほしいと頼まれ、その土地を金貨で敷き詰めたら売ってもよいと答える。スダッタが自分の家も財産もすべてを金貨に変え、土地に敷き詰めていくのを見、また、一文無しになったことで不安から解放されてゆくのを見て心を動かされ、二人で祇園精舎と呼ばれる大僧院を作りあげる。 歴史上の実在の人物、ジェータ太子がモデル。

カッサパ兄弟

それぞれ、多くの弟子を持つバラモン。ウルヴェーラ・カッサパ 、ナディー・カッサパ、ガヤー・カッサパの3兄弟。まずウルヴェーラ・カッサパ が、さらに象頭山(ぞうずせん)での説法により、残りの二人もブッダに帰依する。これにより、ブッダの弟子は1000人を超えるようになる。 三迦葉と呼ばれた、歴史上の実在の人物、ウルヴェーラ・カッサパ、ナディー・カッサパ、ガヤー・カッサパがモデル。

スジャータ

ウルベーラの村の娘。シッタルダに恋をするがコブラにかまれて瀕死となる。シッタルダの心はスジャータの体の中に入り、その魂をつなぎ止めようとして、そこに飛び交う生命のかけらたちを見、かつてバラモンの行者としてシッタルダを導いたブラフマンと出会う。

アシタ

バラモンの聖者。師のゴシャラから聞いた自分の身を焼いて聖者に差し出したウサギの話を弟子に伝える。世界の王となる者を探すという使命をナラダッタに与える。

ラーフラ

シッタルダとヤショダラの間に生まれた息子。 カスピバラトウがコーサラ国に攻め落とされると、シャカ族の王子として特に厳しい扱いを受ける。ラーフラは「障壁」の意で、自分が城を出る障壁となるという意味で、シッタルダに命名される。歴史上の実在の人物で、釈迦十大弟子のラーフラがモデル。

ヴィサーカー

バンダワの町の長者の娘。スカンダという武士のフィアンセがいるにも関わらず、シッタルダを誘惑し、スカンダは、ヴィサーカーに愛されていないことを知り自殺する。ヴィサーカーは幻覚を見せる薬におぼれてしまうが、ブッダによって薬の魔力から立ち直る。

パンパス

不死身と言われる悪党アナンダを仕留めてみせると豪語する刑事。手塚治虫のレギュラーキャラクターヒゲオヤジが演じる。訓練した山犬に襲わせたり、石弓で狙ったり、底なし沼に沈めたりと様々な手を繰り出すが、すべて悪魔によって邪魔される。

鹿野苑 (みがだーや)

悟りを開いたブッダが教えを説いた場所。最初にその話を聞いたのは鹿たちだった。

竹林精舎

マガタ王国のビンビサーラ王がブッダに捧げた土地。マガタ王国の都ラージャガハの北にありもとはカランダハ竹林園とよばれた平原。「カランダハ」はリスのことで、昔、王の命をリスが救ったことがあることから、ここにリスが放し飼いにされたことによる。

その他キーワード

バラモン

『ブッダ』に登場する社会階級。インドの階級社会で最高位の権力者層。祭りや占いで一切を決める。次第に見栄や贅沢の中に堕落していき、人々はバラモンに代わって、幸せと心の安らぎを与えてくれる教えを求めるようになる。バラモンの下にはクシャトリア(武士)、バイシャ(平民)、 スードラ(奴隷)という階級があり、さらにその下にバリアという最下層の民がおり、人間以下の存在とされた。 シッタルダはクシャトリア、タッタはバリア出身である。

苦行

『ブッダ』に登場する修行。苦行(タバス)とは「熱」という意味もあり、もとは炎熱の下に身をさらすことであった。やがて、ほかにも体を苦しめる方法ができ、体を苦しめればそれだけ欲をすてて心が清らかになると考えられた。ブッダは、苦行によって死ぬのは、遊びほうけた後にのたれ死ぬこととなんら変わりがないと苦行を否定する。

書誌情報

ブッダ 7巻 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

第1巻

(2011-02-10発行、 978-4063738087)

第2巻

(2011-02-10発行、 978-4063738094)

第3巻

(2011-03-11発行、 978-4063738100)

第4巻

(2011-03-11発行、 978-4063738117)

第5巻

(2011-04-19発行、 978-4063738124)

第6巻

(2011-04-19発行、 978-4063738131)

第7巻

(2011-05-13発行、 978-4063738148)

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