諦めた夢をやりなおす青春ストーリー
元モデルの男子高校生・宇田川アイアは、本当の自分を出して傷つくことを恐れ、メイクアップアーティストの夢を諦めていた。クラスメートの炭崎純もまた、母から教わったウォーキングを続けていたが、そばかすだらけの容姿と高すぎる身長にコンプレックスを抱き、モデルの夢を諦めた少女。そんな二人が、学園祭で開催されるファッションショーでコンビを組むことになった。アイアは「ひまわり」をコンセプトに、彼女の長身とそばかすを生かして、その魅力を最大限に引き出す。結果、学園祭のランウェイは大成功。二人はそれぞれメイクとモデルの道へ進む決意をする。本作の魅力は、自分に正直になり、諦めていた夢をやりなおすアイアと純の姿である。また、二人に限らず「なりたい自分になれない」といった悩みやコンプレックスを抱いている人たちに寄り添い、応援する漫画でもある。
取材から生まれたメイク描写のリアリティ
本作の主な題材は、メイクアップアーティストという職業。書店コミック担当者のチームが運営するサイト「コミタン!」の「園山ゆきの先生インタビュー」によると、月刊美容誌「VOCE」の撮影現場を取材した際、ヘアメイクに聞いた、プロとして活躍し続けるために必要なことが印象に残ったという。その内容は、作中の講師がアイアにプロの心得を語るシーンなどに生かされているようだ。また作画の面では、一番時間をかけているのが下描きであり、特にメイク中の手のデッサンに時間をかけていることを明かしている。プロの現場への取材と、高い画力、丁寧な作業が、本作のメイク描写のリアリティに繫がっている。
熱い登場人物たちによる青春群像劇
アイアの夢は「人を祝福するメイクをすること」。それは、モデルがその人らしく顔を上げて生きていけるメイクをすることである。モデルとの対話を通じて相手を理解し、彼女らに寄り添い、時には一緒に戦うのだ。アイアがアシスタントを務める代々木ギンガは、佐賀出身のメイクアップアーティスト。地方と東京の格差が気に入らず、いずれトップになり、自分がいる場所を最先端にするという夢を持つ。アイアの通うメイク学校の同級生・大崎ジョーは、非日常の奇抜なメイクを好む天才肌。周囲の理解を得るため、王道のメイクをしていたが、アイアの楽しげで自由なメイクに触発され、本来の自分をさらけ出す。ほかにもさまざまなタイプのユニークなキャラクターが登場し、しのぎを削る。本作は彼らの熱い情熱と戦いを描いた群像劇でもある。
登場人物・キャラクター
宇田川 アイア (うだがわ あいあ)
高校1年生の男子。セミロングの金髪が特徴のイケメンで、身長172センチメートル。祖父と二人暮らし。中学時代はモデルの仕事をしていた。メイクアップアーティストになる夢を抱いていたが、周囲に求められていないことを実感し、夢を隠していた。ある日、学園祭のアーティストコンテストで、長身でそばかすのクラスメート・炭崎純のメイクを担当し、彼女の魅力を引き出すことに成功。それをきっかけに、メイクアップアーティストを目指して、メイクスクール「MIRROR」に通う。
炭崎 純 (すみさき じゅん)
高校1年生の女子。宇田川アイアのクラスメート。ロングヘアーとそばかすが特徴で、身長178.5センチメートル。母と二人暮らし。モデルに憧れ、母にウォーキングを習うが、アイアと同じく周囲の期待からはみ出さないように生きてきた。学園祭のアーティストコンテストにモデルとして出場。アイアのメイクにより、「ひまわり」のような彼女の魅力が引き出されて優勝。以後、モデルへの道を歩むことを決意する。
書誌情報
ブレス 3巻 講談社〈マガジンエッジKC〉
第1巻
(2022-08-17発行、 978-4065286494)
第2巻
(2022-10-17発行、 978-4065294178)
第3巻
(2023-05-17発行、 978-4065317198)
ブレス 5巻 講談社〈シリウスKC〉
第4巻
(2023-12-07発行、 978-4065339220)
第5巻
(2024-07-09発行、 978-4065360682)