概要・あらすじ
日辻青色は、売れないバンドマンである。「いつか誰かに見つけてもらえる」と思いながら音楽を続けてきた日辻だが、来月にはもう27歳になる。たくさんの後輩を見送ってきたし、多くの仲間がバンドを辞めた。日辻は焦りと諦めを覚え始めていた。そんな彼のもう一つの顔は「画家」であった。音楽と違って、絵は定期的に仕事になっていたのだ。ある日、公開しているホームページに、小さなギャラリーから連絡があった。来月個展を開く作家が急病で、代わりを探しているという。ギャラリーのオーナーは、カフェで見かけた日辻の絵に惚(ほ)れ込んでいた。交渉が成立した後、日辻は同居している夜木に、ギャラリーの様子を事細かく報告する。実は日辻の絵は自分で描いたものではなかった。幼なじみで、家から一歩も出ることができない夜木がゴーストペインターを務めていたのだ。翌月、完成した絵をギャラリーに収めると、オーナーはその絵をこれまでで一番だと絶賛した。日辻はその絵の写真を撮り、SNSにアップ。すると、あるアイドルがその絵をブログで褒めたことで、またたく間にバズった。ネットでは「ピカソの生まれ変わり」などと絶賛され、テレビなどメディアの取材が殺到。日辻は「天才画家」として超有名人になり、同時にミュージシャンとしても注目されはじめるのだった。
登場人物・キャラクター
日辻 青色 (ひつじ あおいろ)
27歳の青年。いつか誰かに見つけてもらえると思いながらバンドを続けるが、売れないまま27歳を迎ようとしている。幼なじみで画家の夜木と同居。ひきこもりの夜木に代わり、彼のふりをして人と合う仕事を引き受けており、その分家賃を無料にしてもらっている。バンドマンとしての活動を諦めかけていたところ、日辻名義で発表されている絵画が注目を集め、時の人となる。
夜木 (やぎ)
日辻青色の幼なじみで同級生の男性。金髪のロングヘアーが特徴の天才画家。天真爛漫で言動が少し子供じみている。ひきこもりで家から一歩も出ることができないため、同居する日辻に、人と合う仕事を任せている。絵画は日辻名義であるため、彼のゴーストペインターという立場だが、名声などには一切興味がない様子である。