あらすじ
空と風の庭
豊川姫乃は父親の脱サラを機に東京から岐阜県多治見市に引っ越し、父親の喫茶店開業と自分の高校入学という二つの転機を同時に迎えていた。母親とは幼い頃に死別しており、父親と共にがんばって新生活を迎えようと張り切る姫乃は、実家の喫茶店の宣伝を学校でしようと考える。そして姫乃は、喫茶店のマグカップを自分が通うこととなる織部学園に持っていくが、クラスメイトの久々梨三華はすぐにそのマグカップが高名な陶芸家、土岐川姫菜の作品だと見抜き、姫乃を陶芸部に勧誘するのだった。実は姫菜は姫乃の母親で、姫乃は三華から死んだ母親の知らない一面を知る。そして姫乃は母親がこの陶芸部出身だったことを知り、陶芸の道に興味を覚えるのだった。陶芸部に入部した姫乃は、少しずつ陶芸にのめり込んでいく。しかし、自分には天才と呼ばれた母親ほど秘めたる才能もなく、腕の上達も実感できずにいた。そんな中、姫乃は母親の遺した大作「風と空の庭」を見て、改めて陶芸の道の奥深さを実感。母親の足跡をたどり、彼女が作品に込めた鮮烈な情熱を感じ取った姫乃は、前を向き、改めて陶芸の道をつき進んでいくのだった。
モデルになった町
本作『やくならマグカップも こみからいず!』は、岐阜県多治見市を舞台としている。多治見市の伝統工芸品である美濃焼をテーマにしており、陶芸を通して少女たちの青春物語を描いている。また本作では多治見市の街並みや、美濃焼以外の名産品にも触れている。
関連作品
フリーコミック版
本作『やくならマグカップも こみからいず!』はテレビアニメ版『やくならマグカップも』をベースにしたコミカライズ作品だが、もともとは岐阜県多治見市の地域振興を目指した元気な多治見株式会社が発行していたフリーコミック版『やくならマグカップも』を原作としている。フリーコミック版も本作と同じく作画は梶原おさむが担当している。フリーコミック版は現在、株式会社プラネットが引き継ぎ、『やくならマグカップも』公式サイトで配信されている。
テレビアニメ版
2021年4月から6月にかけて、本作『やくならマグカップも こみからいず!』の原作であるテレビアニメ版『やくならマグカップも』が放送された。製作は日本アニメーションが担当している。テレビアニメ版は、前半15分がアニメ本編で、残り15分は実写パート『やくならマグカップも-やくもの放課後-』を放送するという混合編成番組という形態で放送された。キャストは、豊川姫乃を田中美海、久々梨三華を芹澤優、成瀬直子を若井友希、青木十子を本泉莉奈が演じ、実写パートもメインキャストの四人が、舞台となった多治見市の魅力を伝えたり、作陶にチャレンジしたりするという内容となっている。また多治見市の観光協会と協力し、テレビアニメ版の公式サイトにはアニメの舞台を実際に見て回れる「まち歩きMAP」が掲載された。2021年10月から12月にかけては、テレビアニメ版第2期となる『やくならマグカップも 二番窯』が放送された。こちらもアニメパート15分、実写パート15分の混合編成番組となっている。テレビアニメ版は「第1回京都アニものづくりアワード」地方創生部門において銀賞を受賞している。
登場人物・キャラクター
豊川 姫乃 (とよかわ ひめの)
織部学園に通う高校1年生の女子。誕生日は8月28日で、血液型はA型。ピンクの髪をロブカットに整えた少女で、小さい頃に母親と死別したため、のんびり屋ながらしっかりした性格をしている。父親の豊川刻四郎と共に岐阜県多治見市に引っ越して来て、実家が営む喫茶店を手伝いながら、織部学園で高校生活を始める。そしてふとした偶然から陶芸部とかかわることとなり、死んだ母親の土岐川姫菜が天才的な陶芸家だったことを知り、陶芸の道に興味を持つようになる。穏やかな性格をしているが、時おり突飛な行動を取ることがある。絵が苦手で、豊川姫乃の描いた「鮭」の絵は、「くじら」や「アザラシ」に見えて周囲を混乱させた。陶芸でも模様を入れるのに苦労している。
久々梨 三華 (くくり みか)
織部学園に通う高校1年生の女子。誕生日は3月4日で、血液型はO型。金髪ポニーテールの髪型で、大きな丸眼鏡をかけている。青木十子を尊敬しており、中学時代から織部学園の陶芸部に顔を出していた。そのため、入学後はすぐに陶芸部に所属している。明るく人懐っこい性格で、陶芸初心者ながら陶芸部の活動に人一倍熱意を燃やしている。好奇心旺盛で発想が柔軟なため、型に縛られない自由な作品を作る。小さくてかわいい小動物が大好きなため、それらをモチーフにした作品を作ることが多い。持ち前のバイタリティで場を盛り上げるムードメーカー的な存在ながら、一方で落ち着きがなく、後先考えない行動を十子にたしなめられることもある。非常に友達思いで、同じく陶芸初心者の豊川姫乃のことも何かと気に掛けている。
成瀬 直子 (なるせ なおこ)
織部学園に通う高校1年生の女子。誕生日は10月5日で、血液型はB型。茶髪ショートヘアの少女で、漫画やゲームが大好き。豊川姫乃の家のお向かいに住んでおり、姫乃とはご近所付き合いからすぐになかよくなった。姫乃の父親である豊川刻四郎の淹(い)れるコーヒーの大ファン。陶芸部には入部しなかったが、姫乃のことが気になるため、陶芸部に入り浸っている。自称「豊川姫乃研究会」に所属している。
青木 十子 (あおき とおこ)
織部学園に通う高校2年生の女子。誕生日は5月14日で、血液型はAB型。黒髪をストレートロングに伸ばし、ヘアバンドで前髪をかきあげたヘアスタイルにしている。祖父が有名な陶芸家であるため、幼い頃から陶芸家になることを目指して作陶している。陶芸に関しては確かな腕を持ち、織部学園陶芸部の部長を務める。まじめな性格ながら、作品作りに関しては若干ストイック過ぎるきらいがあり、自分の殻を打ち破れずにいる。そのため、幼なじみの久々梨三華に関してはその無鉄砲な言動に苦言を呈することがあるが、自分にはないその自由な発想を認めてもおり、確かな友情を感じている。
豊川 刻四郎 (とよかわ ときしろう)
豊川姫乃の父親。年齢は39歳。誕生日は9月1日で、血液型はO型。眼鏡をかけた中年男性で、丁寧な物腰をしている。最近まで娘と共に東京で暮らしていたが、一念発起して脱サラ。故郷である岐阜県多治見市の地に戻り、喫茶店「ときしろう」を開店する。コーヒー好きで、ときしろうもコーヒーがおいしいと評判。
土岐川 姫菜 (ときがわ ひめな)
豊川姫乃の母親で、故人。誕生日は10月4日で、血液型はAB型。「土岐川」は旧姓で、結婚してからは「豊川姫菜」と姓を変えている。岐阜県多治見市出身で、かつて織部学園の陶芸部に所属していた。当時は若き天才陶芸家として注目されていたが、夭逝(ようせい)したため陶芸家としての活動期間は短い。天才的なセンスと技術で生み出した姫菜の陶芸品は現代でも非常に評価が高く、また死んだことが知れ渡っていないため、一部の人間からは突如姿を消した「幻の陶芸家」と呼ばれている。姫菜の遺した食器類は喫茶店「ときしろう」で多く使われている。天才として名前が独り歩きしているが、若い頃は人を驚かせるのが好きで、まともに使えない変なものも結構作っていた。
土岐川 幸恵 (ときがわ さちえ)
豊川姫乃の祖母。誕生日は11月8日で、血液型はA型。大らかな性格のしっかり者で、喫茶店「ときしろう」のマスターとして豊川刻四郎と共に喫茶店を切り盛りしている。
小泉 真美 (こいずみ まみ)
織部学園で教師を務める女性。年齢は28歳。誕生日は12月12日で、血液型はB型。陶芸部の顧問を務めているが、陶芸に関しては素人。明るくさばさばした性格で、生徒たちにも分け隔てなく接するため人気が高い。喫茶店「ときしろう」の常連で、ときしろうが居酒屋として夜間営業を始めた際にはお客様第1号となった。