概要・あらすじ
美しく華やかな侯爵令嬢グレース・キング。没落した生家を捨て、裕福なロウランド伯爵家で愛人生活を送っていた彼女が不可解な死を遂げた。それを機に、グレースの息子であるライナス・キングとロレンス・キングは父方のロウランド家へと引き取られ、正妻のアンナ・ロウランドが産んだ4人の息子と共に暮らすこととなる。
母の死に疑惑を抱くライナスは、その真相を暴こうと母の痕跡を辿っていく。
登場人物・キャラクター
ライナス・キング (らいなすきんぐ)
11歳の少年。グレース・キングが産んだ一番目の息子でアーサー・ロウランドの第五子にあたるが、父親には似ておらず、兄弟の中で唯一の赤毛である。キング侯爵家の嫡子として育てられたため誇り高く、愛人としての生き方を選んだ母親を恥じている。そのため、大人びて屈折した性格で周りを寄せつけない。常に短銃を携帯しており、ロウランド家に迎えられた日には贈られた馬をその場で撃ち殺すなど凶暴な面を持っていたが、兄弟たちや周りの人間との関わりの中で変化していく。
レイチェル・ブレナン (れいちぇるぶれなん)
グレゴリー・ロウランド、アイザック・ロウランド、ロレンス・キングを教えるためにロウランド家に雇われた女家庭教師(ガヴァネス)。スラリとした長身と流れるような黒髪を持つ、眼鏡をかけた美女である。牧師の父親と元教師の母親の間に生まれ、倫理観は厳格。家族は他に病弱な弟がいる。フランス語、ドイツ語に加え、ラテン語をも流暢に操り、天文学から高等数学まで多岐にわたり高い学力を有する。 性格はお人好しで真面目。裁縫は得意だが、料理と絵は壊滅的に下手である。
ロレンス・キング (ろれんすきんぐ)
グレース・キングが産んだ二番目の息子で、アーサー・ロウランドの第七子にあたる。8歳の少年。ライナス・キングを慕っていて、いつも後を付いてまわっている。年齢の割に幼く、人懐っこいため腹違いの兄弟たちにもすぐに馴染む。ロウランド家に引き取られてから日ごとに肥満化しており、走る際の効果音は「デブデブデブ」である。
グレース・キング (ぐれーすきんぐ)
派手やかで美しく奔放な侯爵令嬢で、才能溢れる詩人。社交界の華と呼ばれ、周りには常に人が集まる存在だった。ロウランド伯爵家で女家庭教師(ガヴァネス)兼愛人として優雅な生活を送っていたが、突如謎の死を迎える。死因は屋上からの転落死。
アーサー・ロウランド (あーさーろうらんど)
ロウランド伯爵家の当主で医師。優しく穏やかで気さくな性格で、使用人や領民からも慕われている。12人兄弟だったが、不慮の事故で姉のモルゴース以外の家族をすべて失い、以来大家族に憧れている。正妻のアンナ・ロウランドとの間に4人、妾のグレース・キング、マーガレット・スタンリーとの間にそれぞれ2人ずつ息子をもうけている。
アンナ・ロウランド (あんなろうらんど)
アーサー・ロウランドの正妻。彼に一目惚れされたため、経済難にあえいでいた生家のリッケンバッカー侯爵家より半ば売られる形でロウランド家に嫁ぐ。気難しく、病弱で引きこもりがちなので、女主人としての役割を放棄している。夫にも子供にも愛情を示したことはないが、次男のウィリアム・ロウランドだけは側に置いている。グレース・キングは初めてできた友人であり、彼女のことは自分の代理として申し分ないと認めていた。
アルバート・ロウランド (あるばーとろうらんど)
アンナ・ロウランドが産んだロウランド家の嫡子、19歳。頭が切れ、面倒見が良く快活な性格。大学在学中のため休暇時にしか帰省しないが、兄弟全員から慕われており、父親からも信頼を置かれている。女性からモテるが、使用人の何人かに手を付けているなど女癖は悪い。
ウィリアム・ロウランド (うぃりあむろうらんど)
アンナ・ロウランドが産んだロウランド家の次男、16歳。沈着冷静で子供の頃からもの静かな性格だったせいか、彼だけは母親の側にいることを許されている。眼鏡をかけており、兄弟の中で父親に一番容姿が似ている。
グレゴリー・ロウランド (ぐれごりーろうらんど)
アンナ・ロウランドが産んだロウランド家の三男、13歳。勤勉で思慮深く、努力家である。生真面目な性格なだけに、優秀なアルバート・ロウランドやウィリアム・ロウランド、ライナス・キングにコンプレックスを抱いている。兄弟の中で唯一、髪色が淡い。
アイザック・ロウランド (あいざっくろうらんど)
アンナ・ロウランドが産んだロウランド家の四男、12歳。わんぱくで勉強が苦手。貴族の息子でありながら料理が好きで、その腕を褒めてくれたグレース・キングにとても懐いていた。カードゲームとチェスを得意としている。
モルゴース
アーサー・ロウランドの姉。他家へ嫁いだが子供はなく、夫にも先立たれている。そのためロウランドの家に未だ固執し、家中のことに度々口を挟もうとする。
マーガレット・スタンリー (まーがれっとすたんりー)
アーサー・ロウランドの妾で女医。ヴィンセント・スタンリーとディック・スタンリーの母親。そもそもはアーサーの助手としてロウランド家にやってきたが、自ら望んで妾となった。子供は平民として育てたいという希望からロウランドの屋敷には入らず、領内の小さな家で開業しながら暮らしている。グレース・キングとはお互いに憎まれ口を叩きあいながらも、信頼し合う仲だった。 また、アンナ・ロウランドのことを尊敬しており、自分を妾として認めてくれたことに恩義を感じている。家事は苦手で、家の中は大概ちらかっており、ジンジャープディング以外の料理はことごとく不味い。
ヴィンセント・スタンリー (ゔぃんせんとすたんりー)
マーガレット・スタンリーが産んだ一番目の息子でアーサー・ロウランドの第六子にあたる。9歳の少年。背が高く、すでにウィリアム・ロウランドよりも大きい。優しい性格で、母親に代わり家事をこなしている。村の学校へ通っており、友達が多く女子にも人気がある。
ディック・スタンリー (でぃっくすたんりー)
マーガレット・スタンリーが産んだ二番目の息子でアーサー・ロウランドの第八子にあたる。6歳の少年。内気で人見知り。猫が好きで「ことら」という子猫をとりわけ可愛がっている。
ミス・ピック (みすぴっく)
グレース・キング以前の女家庭教師(ガヴァネス)で、アーサー・ロウランドの父親の代からロウランド家の子供たちの教育を任されていた。元は侯爵令嬢。厳しく旧時代的な教育観の持ち主で、生徒に罰を与えるために鞭を使うことも是としている。高齢で糖尿病を患っているため療養中。
ローズ・ロザリンド (ろーずろざりんど)
以前、ロウランド家で働いていたメイド。ハチミツ色の輝くような金髪を持った明るい女性。アーサー・ロウランドにとっては初めての友人であり、妹のような存在。アルバート・ロウランドにとっては初恋の相手である。屋敷内の使用人の中で、彼女だけが方言でしゃべる。
ジャック・クリストフ・ベインズ (じゃっくくりすとふべいんず)
数多くいたグレース・キングの取り巻きの一人。赤毛の詩人である。グレースは死の2週間ほど前、新しく出す本について彼に相談の手紙を送っていた。