あらすじ
第1巻
芳文出版から発刊されている月刊漫画雑誌「コミック一番星」で連載を持つフタバトワコは、熱意を込めて執筆していた作品にもかかわらず無情にも打ち切りになってしまう。担当編集者の野口からも突き離すような発言をされ、トワコは落胆する。しかし、そこに以前からトワコの発想力をおもしろいと感じていた秋元が現われ、担当編集者に立候補する。最初は地味なオタク男が担当編集者になった事で落胆するトワコであったが、秋元のさり気ない仕草に胸をときめかす事になる。(episode.01)
トワコは秋元に次の連載は野球を扱った作品にしたいと打ち明けたところ、高校時代の知り合いが野球部の顧問をしているからと斎藤を紹介される。斎藤から秋元の高校時代のエピソードを聞き、トワコはさらに秋元に対して異性としての興味を抱くようになる。(episode.02)
「コミック一番星」編集部では連載作品が急遽休載になり、穴埋めの作品を探していた。秋元はここぞとばかりにトワコのネームを推し、読み切り作品の掲載が決まる。しかし、締切日まで5日しかなく、友人でアシスタントのなーちゃんを呼んでも間に合う感じではなく、秋元も助けに入る。途中、なーちゃんが用事のために抜ける事になったが、トワコは秋元と二人で朝まで必死で原稿を仕上げる。無事に原稿が仕上がったあと、トワコはこれまでにない達成感と秋元と一晩過ごした高揚感を覚えるのだった。(episode.03)
今は新しい連載を持つ事に全力で取り組まなくてはいけないと感じているトワコであったが、やはり秋元の事が気になって仕方がない。打ち合わせのために「コミック一番星」編集部を訪れたトワコは偶然にも秋元に冴木という彼女がいる事を知ってしまい、ショックを受ける。(episode.04)
新しいネームがなかなかできないトワコに対し、秋元は「コミック一番星」の人気作家である鳶谷コゴローのもとにアシスタントにいってみないかと提案する。トワコは勉強になるという事で快諾するが、コゴローは自分に厳しく他人にも厳しい完璧主義者であった。厳しい事を言われへこむトワコであったが、コゴローの漫画への取り組み方を見て、自分もプライドを持って仕事に取り組まなくてはと、気合いを入れるのであった。(episode.05、episode.06)
トワコはコゴローのアシスタントを終えたあと、心機一転の新作が秋元からの評価も上々であった。さらに前回「コミック一番星」に掲載された読み切り作品も読者アンケートで3位を獲得して、いい兆しを感じつつあった。浮れ気分のトワコであったが、秋元の彼女・冴木とニアミスしそうになり、一気にモヤモヤとした気持ちを抱える事となる。その気持ちをなーちゃんに打ち明けたところ、秋元が好きなのかと問われて動揺してしまう。さらに秋元には、雑誌に掲載された台詞の誤植を「脇役だったからよかった」と、自分の努力を軽んじるような発言をされ、ショックを受ける。台詞一つにも魂を込めているトワコは、自分で自分の気持ちが分からなくなってしまう。(episode.07、episode.08)
芳文出版では記念パーティーが開催される事となり、トワコも招待されていた。秋元に自分の努力を軽んじられたと感じているトワコは、参加するつもりはなかったが、コゴローの強引な誘いもあり、しぶしぶ会場へと向かう。そこでコゴローは秋元に対し、トワコが不信感を抱いている事を伝えてしまう。それに対し秋元は、トワコに「自分の失言だった」と謝罪したあと、トワコの担当編集者は自分しかいないと熱く語りかけるのだった。その真摯な姿にトワコは完全に恋に落ちてしまう。(episode.09)
第2巻
秋元への恋心を募らせるフタバトワコだったが、漫画家仲間で担当編集者との交際経験がある丸山たまこからはやんわりと苦言を呈される。時を同じくして、秋元は彼女の冴木に「今度はすっぽかさないでね」と念を押され、ディナーデートの約束を交わしていた。トワコと秋元は予定通りファミレスで原稿の打ち合わせをしたあとに向かった買い物の途中、秋元はトワコの原稿を紛失してしまう。必死の捜索の末どうにか原稿は見つかるが、この騒ぎのせいで、冴木はまたもデートをすっぽかされてしまうのであった。(episode.11~episode.13)
打ち合わせのために芳文出版を訪れたトワコは、偶然にも冴木と顔を合わせる。冴木は会社を辞めるため、取引先である芳文出版に挨拶に来ていたのだった。そこで野口から秋元が冴木にふられた事を聞かされる。そのあと、屋上にたたずむ秋元から冴木がとても好きだったと告げられたトワコは、複雑な気持ちになるのであった。(episode.14)
好きだった冴木にふられた秋元は、仕事を淡々とこなしていた。しかし、月刊漫画雑誌「コミック一番星」で長期連載中ながら最近スランプ気味の作家からは、自分はダメだから代わりにお前が描けなどと言われ、散々な扱いを受ける。秋元は冴木との交際を犠牲にして何を得たのかと悲しく思うが、一方でトワコの前向きさに救われるのであった。(episode.15)
本当はアプローチをしたいトワコであったが、まだ秋元の気持ちが冴木にあるだろう事と、今は漫画に集中すべきだという気持ちから何もできずにいた。そんな中、秋元が担当編集者として受け持っていた新人の読み切り作品に対する読者のアンケート結果がよく、連載が決定してしまう。それはトワコが本格的に「コミック一番星」から外される事を意味していた。さらに秋元は連載中の作者に専念するため、トワコの担当編集者から外れる事となる。動揺したトワコは思わず秋元に「好きです」と告白をしてしまう。(episode.16~episode.17)
勢いで告白をしたトワコであったが、秋元はトワコに対してあくまで担当編集者として接する態度を崩さなかった。その態度にトワコは自身が失恋した事を思い知らされるのであった。失意のどん底にいたトワコのもとに、鳶谷コゴローの知り合いで芳文出版のライバルである講文館の漫画雑誌「月刊ラッシー」の編集者・大野から連絡が入る。そして大野は、絵柄とペンネームを変え、原作者つきの漫画家として再デビューしないかとトワコを誘うのだった。それは秋元とのつながりはもちろんの事、トワコのこれまでのキャリアも個性もすべて失う事を意味していた。悩んだトワコであったが、漫画家であり続けたいという気持ちから、大野の提案を受け入れる。そして数年後、トワコはかつてとはまったく別の絵柄とペンネームで、それなりの人気を獲得していた。そしてたまたま参加した出版社のパーティで、フリーランスの編集者となった秋元と再会するのであった。(episode.18~final episode)
登場人物・キャラクター
フタバ トワコ
漫画家の女性。鳶谷コゴローからは「フタバっち」と呼ばれている。発想力はあるものの、評価してくれる読者としてくれない読者の差が激しい作風で知られている。芳文出版から発刊されている月刊漫画雑誌「コミック一番星」に連載を持っていたが、不人気のため打ち切りとなってしまう。彼氏はいなく、恋愛は長い事ご無沙汰。今は再び連載を持つために新しい担当編集者の秋元と共に努力しなくてはならないと感じつつも、彼に対して恋心を抱いてしまう。 チョコレートが大好物で、担当編集に差し入れをもらうと大喜びする。
秋元 (あきもと)
芳文出版から発刊されている月刊漫画雑誌「コミック一番星」の男性編集者で、フタバトワコを担当している。鳶谷コゴローからは「もっちぃ」と呼ばれている。トワコの発想を前々からおもしろいと感じており、彼女の連載が打ち切りになった事を機に、当時トワコの担当だった野口に直談判して、担当の座を譲ってもらった。 細身で見た目は地味なオタク系で、いつも変なTシャツを愛用しているものの、実は整った顔立ちをしている。つねに優しい口調ではあるが、言いたい事ははっきりと意見するタイプで、頭の回転も早く、時にはその場を切りぬけるために大胆な噓をつく事もある。そのため、当初はトワコにもただの気弱なオタクだと見られていたが、次第に頼れる人物と見直されていく。 ちなみに、トワコから異性として好意を寄せられている事には気づいていない。芳文出版に出入りしている印刷会社「ペリカン印刷」の営業を担当している、大学時代の先輩でもある冴木と交際をしているが、最近は多忙のためデートをすっぽかしてばかりいる。
野口 (のぐち)
芳文出版から発刊されている月刊漫画雑誌「コミック一番星」の男性編集者で、フタバトワコの元担当。トワコの発想をおもしろいと評価しつつも、読者の評価につながらない事から、連載作品の打ち切りを決めた。トワコに対しては見限るような発言をし、しばらくは「コミック一番星」で連載を持たせるつもりもなかった。しかし、秋元から「自分にトワコを譲ってください」と言われ、担当編集者を離れる事となった。 漫画編集者としてしっかりとした信念の持ち主で、何かと厳しい事を口にするのも、すべては作者の成長と読者のためを思っての事である。
冴木 (さえき)
芳文出版に出入りしている印刷会社「ペリカン印刷」で営業を担当する女性。秋元の彼女でもある。スリムで黒髪の清楚な人物だが、仕事が多忙な秋元にデートをたびたびすっぽかされており、秋元の仕事に理解を示しつつも、やはりさびしさを感じている。秋元の大学時代の先輩でもある。
なーちゃん
漫画家志望の女性でフタバトワコの友人。トワコの修羅場ではアシスタントとしても働いている。アルバイトとアシスタント業を両立しながら漫画家の夢を追いかけている熱い人物。トワコの恋を応援し、時には的確なアドバイスもする。
鳶谷 コゴロー (とびたに こごろー)
漫画家の女性。名前と作風から男性だと勘違いされる事が多く、フタバトワコも直接会うまでは渋いダンディな男性をイメージしていた。芳文出版から発刊されている月刊漫画雑誌「コミック一番星」で人気の作品「帰ってきた名探偵シリーズ」を連載している。他人に厳しいが、自分にはさらに輪をかけて厳しい完璧主義者。感情的でややエキセントリックな部分も持ち合わせている。 トワコがアシスタントとして勉強をしに行った際も、トワコの仕事への取り組み方が気に入らず、ケーキを買いに行かせるなど漫画以外の雑務を任せた。しかし、トワコの発想力についてはおもしろいと評価しており、実は彼女の過去作品を密かに所持している。担当編集者は秋元が務めており、彼の事を「もっちぃ」と呼びかわいがっている。 秋元の前では女を全開にして媚びる姿を見せるが、あくまでかわいがっているだけであり、恋心によるものではない。
トモ
漫画家志望の美青年。現在は鳶谷コゴローのもとでアシスタントとして働いている。実力はあるものの、中田には及ばず、仕事面ではあまり評価されていない。だがコゴローから人として高い信頼を得ており、彼女の完璧主義でエキセントリックな言動にも冷静についていく。フタバトワコによれば、コゴローに対して尊敬と異性としての好意の両方を抱いていると見られている。
中田 (なかた)
漫画家志望の典型的なオタク青年。現在は鳶谷コゴローのもとでアシスタントとして働いている。かなりの実力者であり、さらにコゴローの大ファンである事からかわいがられている。その事について何かと自分をうらやましがるトモに対しては、「イケメンなのに嫌味か」と毒を吐いている。
戸田 (とだ)
芳文出版で働く男性編集者。元は月刊漫画雑誌「コミック一番星」の編集者として鳶谷コゴローの担当編集者をしていたものの、コゴローのネタを発表前にほかの漫画家にリークした事により左遷された。そのためコゴローとは不仲であり、彼女の現在の担当編集者である秋元に対してもいい印象を抱いていない。
丸山 たまこ (まるやま たまこ)
フタバトワコの友人で漫画家のぽっちゃりとした女性。少女漫画誌で連載を持っている。最初は正統派少女漫画を執筆していたものの、現在は担当編集者にのせられて過激な性描写に傾倒している。結果、有害少女漫画としてPTAに攻撃されているが、自身はエロいのも好きだからいいかと開き直っている。担当編集者と交際した過去があるが、漫画への熱意が失われたうえに一般的な恋人関係を維持できなかったため、破局している。
大野 (おおの)
講文館から出版されている漫画雑誌「月刊ラッシー」の男性編集者。鳶谷コゴローの仕事場に出入りしており、フタバトワコと知り合った。トワコの作品を知っており、「月刊ラッシー」で描いてみないかと声をかけた。
斎藤 (さいとう)
秋元の高校時代からの友人である男性。現在は母校で教師になり、野球部の顧問として指導している。フタバトワコが野球を題材にした漫画を描きたいと提案したところ、秋元が取材協力者として紹介した相手である。高校時代に秋元の機転により停学を免れた過去があり、彼の頭の回転の速さには一目置いている。
場所
芳文出版 (ほうぶんしゅっぱん)
秋元、野口らが所属する出版社。さまざまなジャンルの雑誌や本を発行しており、秋元らは漫画雑誌「コミック一番星」の編集者として働いている。