あらすじ
第1巻
京都に住むネイリストの高森杏寿は、5歳の娘・高森七香と岐阜に単身赴任中の夫・高森純平の三人で、平凡ながらも幸せな生活を送っていた。そんなある日、杏寿は自宅のネイルサロンを訪れた女性客・坂口麗華に、「このまま女じゃなくなっていくなんてもったいない」と、強引に出会い系サイトに登録されてしまう。サイトを通じて自分を女として求めてくれる男性がたくさんいる事に驚きと興味を覚える杏寿だったが、夫を裏切る事はできないと深入りはせずにいた。だがある時、杏寿のもとに、純平と同じ会社に勤める女性の夫から、純平が自分の妻と浮気をしていたという連絡が入る。もともと二人は出会い系サイトで知り合ったが、お互い深入りする前に一度連絡を絶っていた。だが、どうしても純平をあきらめられない女性・井筒里奈が、彼を追って同じ会社に派遣社員として入社して来たのだという。そんな里奈の思いに気持ちを動かされた純平は、里奈の誘いに乗り、彼女の自宅で関係を持っていたところを夫・井筒渡に見つかってしまう。純平はその代償として、会社を辞めて岐阜から出ていくように渡に言い渡されるのだった。
第2巻
高森純平の浮気を知った高森杏寿は離婚を考えるものの、娘を巻き込んでしまう事を恐れ、どうするべきか決断できずにいた。そんな時、杏寿のネイルサロンを坂口麗華が再び訪れ、杏寿を装って、出会い系サイトにメッセージを送ってきた「ノブ」というユーザーと勝手にやり取りをしてしまう。その後、ネイルのイベントで偶然「ノブ」こと黒井と出会ってしまった杏寿は、軽口を叩きながらもまじめな姿勢を見せる黒井に次第に心を許していく。一方、純平は職場に「親の介護に専念する」と噓をついて退職を願い出し、井筒里奈にも別れを告げ、京都の家に帰れず公園の駐車場で夜を過ごしていた。里奈は純平にお互いの相手と別れていっしょになりたいと迫るが、純平はそれを断り、許してもらえるまで杏寿に謝り続ける事を決意する。
第3巻
高森純平は、人望の厚さや仕事の熱心さが高く評価されており、会社の計らいで退職を免れ、京都事業所に異動する事となった。会社を辞めずに済んだ事には安堵するものの、噓をついた事や、会社に迷惑をかけた事に、純平は心を痛めるのだった。一方、高森杏寿は親友の安達ハナから、反省の色を見せる純平を許してはどうかとアドバイスを受ける。ハナは、過去に自分の夫が浮気した際に責め続けた結果、謝り続ける事に疲れた夫に離婚を切り出された経験があった。それを聞いた杏寿は、悩みながらも純平とやり直す事を決意する。一方、井筒渡との生活に見切りをつけ、離婚に向けて行動を開始した井筒里奈は、義姉・坂口麗華を客を装って杏寿の自宅に潜入させ、杏寿の動向を監視していた。そんな中、純平とやり直す事を決めた杏寿は、事態を円満におさめるため渡と直接会って話し合いをするが、謝罪と称する里奈からの電話を受け、そこで「自分は純平に本当に愛されていた」と告げられる。軽い気持ちの浮気ではなかった事にショックを受けた杏寿は、改めて純平に電話をかけ、夫婦関係の終わりを告げてしまう。
第4巻
出会い系で知り合った黒井から誘いのメールを受けた高森杏寿は、子供を実家に預け黒井と会ってしまう。そこで杏寿は雰囲気に流され二人でホテルに向かうが、服を脱いでベッドに入った瞬間、杏寿はやはり高森純平を裏切る事はできないと、ホテルを飛び出してしまう。杏寿が家に戻ると、純平は職場のある岐阜から車を飛ばして杏寿のもとに駆けつけていた。自分を強く抱きしめる純平を見て「この人の言葉を信じてみよう」と杏寿は再び決意を新たにする。一方、黒井は、坂口麗華に杏寿の不倫の証拠となる写真を渡すよう迫られていた。もともと彼は坂口の差し金で、杏寿に浮気をさせるべく近づいたのだった。その頃、杏寿の親友の安達ハナは、「黒井」と名乗っていた人物が、実際はまったくの別人であった事を知る。その話を聞いた杏寿は、ハナと共に黒井の素性を調べる事にする。そして後日、純平と杏寿は四人で話し合いをするために、井筒渡の家を訪れる。初めて里奈と対面した杏寿は里奈の可憐さに驚きながらも、気丈に話し合いに臨む。
第5巻
四人での話し合いは平行線のまま進まず、高森杏寿はこの話し合いに意味はないと思い始めていた。そんな中、井筒里奈は、高森純平に杏寿が浮気していたという証拠を見せる。それは、黒井が坂口麗華に渡した、杏寿がホテルで服を脱いでいる写真だった。これを見た純平はショックを受け、一人になって考えたいと岐阜の寮に戻るが、そこに井筒渡のもとから家出して来た里奈が訪れる。里奈は純平に再度「夫と離婚して純平といっしょになりたい」と告げるものの、純平からは、杏寿との関係にかかわらず、里奈と付き合う事はないとハッキリ拒絶される。だが、それすらも里奈の計算のうちであり、彼女は意図的に純平の部屋から出て来るところを会社の同僚に目撃させる事が目的だったのである。こうして二人の関係は、社内で噂になってしまう。
登場人物・キャラクター
高森 杏寿 (たかもり あず)
京都に住む主婦で、年齢は30歳。夫の高森純平と娘の高森七香の三人で暮らしている。プロのネイリストで、自宅マンションの一室をサロンとして使っており、仕事と育児に忙しい毎日を送っている。優しい夫と可愛い娘との平和な生活に満足しながらも、夫から女性として見られなくなっていく事に寂しさも感じている。夫の純平とは、10年前会社勤めをしていた時に、毎日ランチに通っていた喫茶店で知り合った。 純平の事が気になっていた高森杏寿は、声をかけたいと思いつつもなかなかできずにいた。ある日、杏寿の上司がうっかり、いつも喫茶店にいる純平を杏寿が気にかけている事を大声で話してしまい、純平が知る事となる。一方、純平も杏寿が前から気になっていた事もあり、これがきっかけで、二人はのちに付き合うようになった。
高森 純平 (たかもり じゅんぺい)
高森杏寿の夫で、年齢は32歳。建築会社「熊野組」に勤務し、トンネル工事の現場監督・主任を務めている。現在は京都の自宅を離れて岐阜に単身赴任しているが、毎週末は家族と過ごすため、京都の自宅に帰るという生活を送っている。結婚生活に満足しながらも、出会い系サイトで知り合った井筒里奈に久しぶりのときめきを覚え、深い関係になってしまう。 上の立場でありながら誰とも平等に明るく接するため、職場での信頼は厚い。高森純平自身も10年以上勤めている現在の仕事に満足している。
高森 七香 (たかもり ななか)
高森杏寿と高森純平の一人娘で、年齢は5歳。父親の純平の事が大好きで、毎週末に彼が帰って来るのを心待ちにしている。ブロッコリーが苦手。
井筒 里奈 (いづつ りな)
井筒渡の妻であり、二児の母親。出会い系サイトで高森純平と知り合い、メールのやりとりをするうちに本気で純平を愛するようになった。夫の渡からはDVに近い暴言や暴力を受けており、離婚して純平といっしょになりたいと本気で望んでいる。純平との関係が夫にバレてからは一度距離を置いたものの、純平の事を忘れられず、派遣社員として純平の会社に勤め始めた。 純平と結婚するため、義姉の坂口麗華に彼の妻である高森杏寿の弱みを握るよう依頼している。明るい性格で可憐な容姿をしているため、会社の男性からの人気は高いが、女性にはその本性はたやすく見抜かれ、武田には「無邪気なフリして魔性」と評されている。
井筒 渡 (いづつ わたる)
井筒里奈の夫で、公認会計士。プライドが高く陰湿な性格で、相手の非をネチネチと突き、傲慢で高圧的な態度を取る。妻の里奈の事は愛しているものの、彼女が心から自分を好きになってくれない事に苛立ち、暴言を吐いたり暴力を振るってしまう。
安達 ハナ (あだち はな)
高森杏寿の親友で、ネイリスト仲間の女性。年齢は32歳。2年前に夫の浮気が原因で離婚し、現在はシングルマザーとして三人の子供を育てている。過去の経験から、高森純平の浮気に関する杏寿の相談に乗り、アドバイスを送っている。のちに本物の「黒井」に偶然会い、黒井が名をかたる偽者である事にいち早く気づき、杏寿に警告した。
坂口 麗華 (さかぐち れいか)
高森杏寿のネイルサロンの女性客。けばけばしい厚化粧で、いかつく気の強そうな性格をしている。最初に客として来た時、杏寿に出会い系サイトを勧めて強引にサイトに登録し、杏寿が黒井と出会うきっかけを作った。一般客を装っているが、実は井筒里奈の義姉で、里奈から金を借りている。そのため里奈に協力し、高森杏寿が高森純平と別れるよう工作している。
黒井 (くろい)
高森杏寿が出会い系サイトで知り合った男性で、ネイルサロンを8店舗経営するオーナーを自称している。出会い系サイトでは、「ノブ」と名乗っていた。一見軽そうに見えるが、仕事や男女関係においては誠実で情熱的な考え方の持ち主。杏寿とは当初出会い系サイト内でメッセージのやり取りするだけの関係だったが、ネイルのイベントで直接杏寿に会ってからは、積極的にアプローチを仕掛ける。 その正体は経営者ではなくバーテンダーで、知り合いの坂口麗華に依頼され、杏寿の結婚生活を破綻させる目的で近づいた。だが、次第に杏寿に心から惹かれていき、坂口に協力する事にためらいと罪悪感を感じ始める。
武田 (たけだ)
建築会社「熊野組」に長年勤めている女性社員。高森純平が単身赴任している岐阜県の事業所に勤めており、井筒里奈が派遣社員として入社して来るまでは唯一の女性社員だった。純平と井筒里奈の関係を怪しんでいる。
クレジット
- 原作