概要・あらすじ
スペイン南岸の町に住むマリアは、日本から使節団としてやってきた伊達小次郎と知り合い、双子の兄である伊達忠宗の謀略で殺されかけた瀕死の小次郎の看病をすることになる。兄の裏切りと父親である伊達政宗の関与を確かめたい小次郎は、マリアを人質にとって船を日本に向かわせるが、航海の途中で海賊に襲われてしまう。
混乱のなか、シージャック犯としてルイス船長に捉えられる小次郎だったが、彼の父親、伊達政宗はルイスの昔の恩人であったことが判明する。晴れて日本に渡航できることになった小次郎は、無理に連れ出したことをマリアに謝罪するが、2人はこの時、お互いに魅かれ合っていたことを知るのだった。
登場人物・キャラクター
マリア
スペイン南岸の町に住む若い女性。おてんばだが、人の痛みに寄り添える優しい女性。日本から来た使節団の伊達小次郎と出会い、瀕死の小次郎を看病するうちに心を奪われていく。当初は日本に帰国するために自分を人質とし、船を乗っ取った小次郎を恨んでいたが、小次郎から伊達家の複雑な事情を聞き心を痛める。船上で自分の想いを打ち明け、小次郎も同じ想いだと知ったマリアは、彼と共に日本に行く決意をする。
伊達 小次郎 (だて こじろう)
奥州の王、伊達政宗の息子。日本の使節団としてスペインに来た際、兄である伊達忠宗の謀略のもと、支倉常長に切りつけられる。偶然自分を見つけたマリアに看病され命を取り留めるが、日本に帰るため、マリアを人質にして船を乗っ取ってしまう。「小次郎」という名は父親が殺した実の弟の名であることから、その名を自分に付けた父親に対しても疑いの気持ちを拭えないでいる。
アントニオ
マリアの幼なじみで近所に住む若い男性。マリアが好きで結婚すると決めている。貴族を毛嫌いし、昔よく遊んだ貴族の家柄であるフアナに対してもよそよそしい態度を取る。伊達小次郎に魅かれていくマリアに気づいて嫉妬もするが、瀕死の小次郎のために薬を取り寄せマリアに手渡すなど、器の大きいところを度々見せる。
マルティン
マリアの幼い弟。フアナの屋敷で迷子になり、使節団として接待を受け滞在していた伊達小次郎に保護される。小次郎に折り鶴を折ってもらったことをきっかけに、小次郎を「魔法使い」だと信じ込む。貴族に興味深々で、フアナの屋敷へ出かけるマリアについていこうといつも必死になっている。
フアナ
貴族の娘で、マリアの友達。マリアとアントニオとは自分の屋敷の隠し出口がある場所で出会い、遊び仲間となった幼なじみ。マリアが読み書きができるようになったのはフアナのおかげであり、マリアが伊達小次郎と知り合うきっかけとなった日本からの使節団をもてなす仕事も、フアナからの紹介であった。
伊達 忠宗 (だて ただむね)
伊達政宗の息子で、伊達小次郎の双子の兄。元服し「虎菊丸」から伊達家跡取りとして「忠宗」という名になった。小次郎が伊達家次期藩主を狙っていると思い込み、家臣の支倉常長に小次郎を消せと命じる。朝顔に想いを寄せている。
ルイス
大型船の船長。マリアを人質にとった伊達小次郎をシージャックの刑で処刑しようとするが、小次郎の父親が伊達政宗だと知り、小次郎を金品と引き換えに日本に送り届けることにする。政宗は10年以上前に日本で疱瘡という病気にかかったルイスを助け、片目を失っても案ずるなと励ましてくれた恩人だった。
支倉 常長 (はせくら つねなが)
伊達小次郎の兄、伊達忠宗の家来で使節団長。スペイン滞在中に小次郎を呼び出し、「今宵が最後の月になる」と小次郎を斬り、崖から突き落とした。のちにこの行動が、小次郎が次期城主の立場を狙っていると思い込んでいた忠宗の命令であったことが発覚する。
マリアの父
スペイン南岸の町でぶどう畑を営む男性。マリアの母親はマリアが幼い頃に病死したため、男手ひとつでマリアを育てた。マリアが連れてきた瀕死の伊達小次郎を家に置くことを許し、日本に帰れるようアントニオと相談するなど、無骨だが優しい性格。
智之進 (とものしん)
夕顔の息子で伊達小次郎の乳兄弟。小次郎を慕っている。日本に帰国した小次郎に「オレはもう伊達の若君ではない」と言われ複雑な想いを隠せない。「私を殺しなさい」と体を張って小次郎を守ろうとした夕顔をかばい、「死ぬなら私が」と身を楯にする男らしい少年。
夕顔 (ゆうがお)
伊達小次郎の乳母で、智之進と朝顔の母親。日本に帰ってきた小次郎が婚約者として紹介したマリアに、気を利かせてドレスを着せ美しく装わせた。伊達忠宗が小次郎を狙っていることを知り、2人とも同じように育てたのに政宗様に申し訳が立たないと嘆き、「私を殺しなさい」と体を張る強い女性。
朝顔 (あさがお)
夕顔の娘で智之進の妹。帰国した伊達小次郎に会いに伊達忠宗の城を訪れる。ドレスを着たマリアを本当の「聖母マリア」と思い込み感激する。忠宗の謀略を知り、小次郎たちを父親の片倉に会わせる。
片倉 (かたくら)
朝顔の父親。伊達家の城の内部を誰よりも知っている。ルイスとは古い知り合い。伊達忠宗が伊達小次郎を狙っていることを朝顔やルイスから聞き、忠宗に抗議に行く。忠実な家臣であり、すべては城主の伊達政宗に委ねるという意向を示す。
伊達 政宗
伊達小次郎と伊達忠宗の父親、奥州の王といわれている伊達家の城主。10年以上前、水夫として日本に来ていたルイスが疱瘡という病気で臥せっていたのを救い、自分も同じ病気で片目を失ったが、立派に生きていけるということを示した。実の弟である「小次郎」を殺した過去があるため、伊達政宗が名付けた「小次郎」という名前は、小次郎自身を悩ます原因にもなっている。