概要・あらすじ
人間誰もが石英に命令を与える“魔力”と呼ばれる力を持つ世界。人々は石英を動力源とした人型巨大兵器魔動巨兵(ゴォレム)を使い、互いに戦争をしている。クルゾン大陸中央部に位置する国、クリシュナ王国に住む青年ライガット・アローは、100万人に1人しかいないとされている、魔力を一切持たない人間魔力無者である。
ある日彼は、かつての友であり現クリシュナ王国の国王であるホズルに王都へと招かれる。ホズルとその妻シギュン・エルステル、2人の親友との再会を喜ぶライガット。しかし、クリシュナ王国が隣国のアテネス連邦に侵略されつつあること、そしてそれを指揮しているのが、もう一人の親友ゼスであることを知りショックを受ける。
直後、ゼス率いるアテネス連邦軍の攻撃を受け、ホズルは窮地に陥る。だが、ライガットは他の者がぴくりとも動かすことのできなかった古代の魔動巨兵、デルフィングを操縦することで、撃退に成功。彼は、クリシュナ王国軍の魔動戦士となり、仲間を守るため、クリシュナ王国の危機に立ち向かっていく。
登場人物・キャラクター
ライガット・アロー
金髪碧眼の短髪の青年。25歳。およそ100万人に1人とされる、魔力を一切持たない人間・魔力無者(アン・ソーサラー)である。同じく魔力無者である弟のレガッツ・アローと二人で暮らしていたが、かつて学び舎を共にした親友、クリシュナ国王ホズルと王妃シギュン・エルステルとの再会をきっかけに、アテネス連邦との戦争に巻き込まれていく。 正義感が強く、争いを好まない性格であるため、もう一人の親友であるゼスが敵国で指揮を執っていると聞かされた時は戸惑いを隠せなかった。仲間を守るため、クリシュナ王国軍に魔動戦士として加わるようになるが、多くの仲間の死を目の当たりにし、戦争の悲惨さを突きつけられ、思い悩む。 他の魔動戦士が一切動かすことのできなかった謎の古代魔動巨兵、デルフィングを操作することのできる唯一の人物。デルフィングの持つ機動力と常軌を逸した靭帯馬力を有効に用いた近接戦闘を得意とする。
シギュン・エルステル
本作のヒロイン。ロングヘアの金髪で碧眼の女性。25歳。クリシュナ9世ことホズルの妻。王妃であるとともに天才魔動技術士であり、クリシュナ王国の魔動巨兵技術は彼女の功績によるものが大きい。士官学校時代は三日三晩飲まず食わずで研究室に篭っていたことからマッド・サイエンティストと呼ばれ、親友のライガット・アローたちとともに問題児扱いされていた。 その頃よりライガットに好意を抱いていたようだが、ライガットの中途退学により思いを告げられないまま疎遠になってしまっていた。滅多に笑顔を見せない無愛想でクールな女性であるが、ライガットとの再会の際はその顔を緩ませ、周囲を驚かせた。 夫であるホズルとの仲はあまり良好とは言えない様子。アテネス連邦のクレオ・サーブラフが捕虜となった際は、敵であるはずの彼女を自室へと招き入れ、優しく接した。
ホズル
26歳。褐色の肌の青年。クリシュナ王国の現国王でありシギュン・エルステルの夫。ライガット・アローとは士官学校時代の親友同士である。王としての自覚に乏しく、ライガットに対してもごくごく対等な者同士として気さくに接する。士官学校時代も同じで、わざと授業を不真面目に受けることで王位を継がなくても済むよう抵抗していた。 フランクな性格だが、王位に即位してからの職務には真面目に取り組んでおり、臣下からの信頼は厚い。思慮深く、洞察力に優れているが、王としての運命に抗うことのできない自分の人生を思い、諦めたような表情をすることがよくある。妻であるシギュンとの仲はあまり良好とは言えない様子。 ライガットを王都ビノンテンへと召喚し、国王としてどのように行動すべきかを彼に問うた。
ゼス
黒髪短髪の美男子。25歳。ライガット・アロー達と同じくアッサム国立士官学校に通っていたかつての友。妻と娘を持つ。アテネス連邦軍の総司令官ロキス書記長の弟で、士官学校時代も彼に取り入ろうとするものが多かった。現在はアテネス連邦軍のワルキウレス部隊の隊長を務めており、独断先行が多いものの優秀な戦果を上げている。 冷静沈着で、物腰もクールだが、仲間を思いやる気持ちは強く、部下からの信頼も厚い。デルフィングに乗るライガットと再会した際は、敵国の魔動戦士として戦う彼の姿に戸惑う。魔動戦士としての素養は相当なもので、士官学校時代の模擬戦では、教官4人がかりでもゼス1人に敵わなかった。 過去の出来事から、兄に対して何かしらの負い目を感じているようであり、人一倍戦争が苦手な彼がアテネス連邦軍人となったのもそれが原因である。
バルド・ジ・アラン・アルヴァトロス
クリシュナ王国の将軍。トゥル・バー・コールウェイ・リムレックと肩を並べるクリシュナ二大将軍の1人。ジルグ・ジ・レド・レ・アルヴァトロスの父。オールバックで常にサングラスをかけている男性。56歳。王都へと向かう途中で死にかけていたライガット・アローを迎え入れた。 ライガットに対して特別目をかけており、何かと話す機会も多い。優秀だが思考の読めないジルグに対して、父親としてどう接するべきか考えあぐねている。アテネス連邦にライガットとジルクが囚われた際、将軍の座を辞退し、二人の救出へと向かう。
トゥル・バー・コールウェイ・リムレック
ドラウプニル重騎士団を率いるクリシュナ王国の将軍。バルド・ジ・アラン・アルヴァトロスと肩を並べるクリシュナ二大将軍の1人。口ひげが特徴の白髪の男性。54歳。妻が孤児院を運営しており、そこの子供であるナルヴィ・ストライズやナイル・ストライズとは関係が深い。
ナルヴィ・ストライズ
黒髪のポニーテールで褐色の肌の女性。クリシュナ王国の軍人で、ドラウプニル重騎士団の特別戦術顧問を勤める。軍人らしく男勝りな性格をしているが、容姿はシギュン・エルステルと並んでクリシュナの二輪の花と称されるほど可憐である。兄のナイル・ストライズと共に、トゥル・バー・コールウェイ・リムレックの妻が運営する孤児院の出身であり、トゥル将軍とは親子同然の関係である。 王国中央兵軍養成学校に在学中、上級戦術士官模擬試験をトップで通るほどの優秀な軍人。
ジルグ・ジ・レド・レ・アルヴァトロス
赤髪のロングヘアで眼鏡をかけた青年。クリシュナ王国の魔動戦士で、将軍バルド・ジ・アラン・アルヴァトロスの息子。王国中央特別兵軍養成学校の出身で、在学時代にはすべての分野において突出した成績を納めていた。数々の伝説的記録を残した魔動巨兵使いの天才児で、多くの人から有望視されていた。 しかし、ある日の戦闘訓練中、理由もなく仲間を殺したため、投獄された。アテネス連邦との戦闘を控え、重要戦力として釈放され隊へと加わる。
レガッツ・アロー
ライガット・アローの弟。兄と同様魔力無者で、一回り年下。兄に対しては反抗的である。ライガットが王都に招かれている間、村で一人で暮らしていたが、アテネス連邦の制圧によって村が襲撃を受ける。間一髪のところで駆けつけたライガットに助けられ、九死に一生を得た後、王都で保護される。
ロキス
ゼスの兄。アテネス連邦軍の総司令官であり書記長を務めている、目付きの鋭い男性。石英資源枯渇問題の解消のため、反応系石英資源の豊富なクリシュナ王国の侵略を目論む。過去のとある出来事が原因で、実の弟であるゼスとの間には深い溝がある。クリシュナ王国に使者を向かわせ、ホズルに対し王族全員の処刑という降伏条件を突きつけた。 イリオス連邦兵軍学校時代はボルキュス・デュッセンルドルフと同期で、首席で卒業するほどの優秀な人物だった。
エレクト・ヴェーミンガム
アテネス連邦の魔動戦士。眼鏡をかけたスキンヘッドの男性。真面目で思いやりのある性格。ワルキウレス部隊の副官であり、ゼスには厚い信頼を寄せている。元軍医のため医療知識が豊富で、ライガット・アローとの戦闘でゼスが負傷した際も、彼の応急処置のお陰でゼスは足の切断を免れている。 何かとドジを踏むクレオ・サーブラフには小言が絶えないが、それも彼女を心配してのことである。
クレオ・サーブラフ
アテネス連邦の魔動戦士。黒髪のロングヘアで整った顔立ちをした少女。12歳。没落軍閥のサーブラフ家の出。おっとりした性格で、普段からしてドジを踏むことが多いため、仲間たちからは度々心配されており、軍人に向いてないとまで思われている。しかし、他の魔動戦士が慣らしに手こずった新機体エルテーミスの操縦にわずか一日で適応したため、魔動戦士としての適性はあるようである。 また、魔動巨兵の長時間稼働が得意。クリシュナ王国との戦闘で捕虜となるが、シギュンのはからいで同じ部屋で過ごすことになる。
リィ・シウルアン・シェーロン
アテネス連邦の魔動戦士。18歳。ショートカットに白いカチューシャを付けた女性。面倒見のいい性格で、兵軍学校時代には、落ちこぼれのクレオ・サーブラフを度々授業へと連れて行った。そのためクレオとの仲は良いが、何かと危なっかしい彼女が戦場に出ることを心配している。ライガット・アローが乗るデルフィングとの二度目の対戦では、ライガットに敗れ大破するものの、隙を見てクリシュナ王国軍人のダンを殺害し、その後捕虜となることを嫌って自害した。
ボルキュス・デュッセンルドルフ
アテネス連邦軍の将軍。右眼に眼帯をつけた隻眼の男性。45歳。いくつもの華々しい武勲を持つ戦争の天才で、多くの部下から信頼を寄せられているが、残虐で非道な手段を平気で用いる冷徹な人物でもある。また、戦闘狂の節があり、ライガット・アローとの一騎打ちのために、部下にその場での静止を命じたこともある。 一人娘のレダには甘い。イリオス連邦兵軍学校時代はロキスと同期で、次席で卒業した。
イオ・カルダバール
アテネス連邦の魔動戦士。右頬と左目の傷跡が特徴の男性。ボルキュス・デュッセンルドルフ将軍直属の軍人。階級は大佐。優しく誠実な性格であるため、ボルキュスが度々行う残虐な行為に戸惑うことも多い。ボルキュスの娘レダと互いに好意を寄せあっている。
ニーナケラ・ドルネイ
アテネス連邦の魔動戦士。25歳。年齢に見合わない可愛らしい少女のような容姿をしているが、その性格は凶暴で邪悪。同隊の男性陣が恐れるほどの実力を持った魔動戦士で、他の者では使いこなせないような重魔動巨兵を使っていくつもの戦果を上げている。ただ、イオ・カルダバール大佐には全幅の信頼を寄せており、彼の前では明るく子供のような振る舞いを見せる。
バデス・セロフ・ウリヤノフスク
アテネス連邦の魔動戦士。ボルキュス・デュッセンルドルフ将軍直属の部下であり主席将軍補佐官。スキンヘッドで強ばった顔つきの体格のいい男性。戦闘狂であり、ジルグ・ジ・レド・レ・アルヴァトロスとの一騎打ちの際は、血わき肉踊る戦いに心の底から喜びながら、戦闘を楽しんでいた。 一進一退の攻防を繰り返すもジルグには一歩及ばず、死亡する。
教帝(第162代) (きょうてい)
宗教国家オーランドの女帝。9歳という幼い年齢ではあるが、その口ぶりや振る舞いは大人のそれを思わせる。また、裏で手を引いたり、国家情勢も把握していたりと、為政者として相応しい面を見せたかと思えば、私情で重要な戦略を変更するなど、どこか捉えどころのない性格をしている。
アルベル
額に傷跡のある精悍な顔つきの男性。長い黒髪を後ろで結んでいる。宗教国家オーランドの最高神祇員を務める。高齢者が多い最高神祇員の中では一際若いにも関わらず、最も的確で現実的な政治分析をする、優秀な頭脳の持ち主。最高神祇員達が交わす議論を“謀略ごっこ”っと一蹴し、オーランドに訪れるであろう危機を淡々と物怖じせずに述べた。
デルフィング
『ブレイク ブレイド』に登場するロボット。ライガット・アローが搭乗する魔動巨兵。全長8.9メートル。頭部に付いた折れた角のような刃が特徴。石英採掘場から発掘された謎の古代巨兵で、魔力を動力源としていない作中唯一の機体。ライガット・アローの操縦にのみ反応し、他の魔動戦士には扱うことができない。 また、駆動時間には限界があり、限界を迎えると24時間の待機時間が必要になる。内部は通常の魔動巨兵とは異なり、現代のコンピュータのようなモニタが搭載されており、操縦もペダルやハンドルといったアナログデバイスによって行う。堅牢性に乏しいものの、他の魔動巨兵とは比べ物にならないほどの靭帯馬力を有する。
エルテーミス
『ブレイク ブレイド』に登場するロボット。アテネス連邦が開発した新型の魔動巨兵。全長9.9メートル。軽量型のため通常の機体に比べて驚くほどの跳躍力があるが、操縦に難があり、製造された10台のうちの4台が訓練中の着地ミスで大破、死亡者が続出した。そのため実践投入は見送られていたが、ゼスが再設計したことにより安定性が向上し、現在はワルキウレス部隊にて使用されている。 高位魔動戦士にしか使えない跳躍補正装置が付いている。
魔力無者 (あん・そーさらー)
『ブレイク ブレイド』に登場する用語。100万人に1人という確率で現れる、石英を動かす魔力を一切持たない人間のこと。ライガット・アローやその弟、レガッツ・アローがこれにあたる。本作の世界では魔力を使って生活することが当たり前であるため、魔力無者は不便な生活を余儀なくされている。作中では、古代人は魔力を一切持たない人種だったのではないかと推測されている。
魔動巨兵 (ごぅれむ)
『ブレイク ブレイド』に登場する巨大人型機動兵器(ロボット)。柔軟系石英を使用した石英靭帯と、無反応系石英を使用したフレーム・装甲によって構成される。魔動戦士と呼ばれるパイロットが操縦する。ライガット・アローが搭乗するデルフィングを除いたほぼすべての機体が、反応系石英を通した魔力を動力源としている。 操縦席が胸部にあるため、胸部への攻撃に弱い。石英製の巨大な剣や盾、弾丸の代わりに圧縮空気を発射する巨大なプレスガンを用いて戦闘を行う。
集団・組織
クリシュナ王国 (くりしゅなおうこく)
『ブレイク ブレイド』に登場する国。本作の主な舞台。クルゾン大陸の中央に位置する王国。現国王はクリシュナ9世ことホズル。首都はビノテンである。反応系石英の採掘量はクルゾン大陸一を誇る。また、大オアシスに守られ水産業にも恵まれる。それらの資源を渇望するアテネス連邦によって、平和が脅かされている。
アテネス連邦 (あてねすれんぽう)
『ブレイク ブレイド』に登場する国。クルゾン大陸の西方に位置する大国。様々な国を併合して成り立っている軍事国家であり、度々独立を求める内紛が勃発している。反応系石英が枯渇し始めており、資源確保のため、豊富な反応系石英を持つクリシュナ王国への侵略が計画されている。ここ10年の間に、80年前の独立大戦で独立した国への敵意を扇動するプロパガンダが行われており、クリシュナ民を蛮族とみなす国民が増えている。
オーランド
『ブレイク ブレイド』に登場する国。クルゾン大陸の東方に位置する宗教国家。クルゾン大陸をアテネス連邦と東西に二分する大国である。アテネス連邦とは敵対関係にある。長年戦争を経験していないため上層部の腐敗が進んでおり、アテネス連邦からの見立てでは、例え戦争したところで相手にもならないとされている。
アッサム王国 (あっさむおうこく)
『ブレイク ブレイド』に登場する国。クリシュナ王国の西側に隣接している。80年前の独立大戦でアテネス帝国から独立した。現在はアテネス連邦に併合されている。かつてライガット・アロー達が通ったアッサム国立士官学校を擁していたが、アテネス連邦への併合に伴い廃校となった。首都はティブガル。
場所
クルゾン大陸 (くるぞんたいりく)
『ブレイク ブレイド』に登場する、本作の舞台となる大陸。石油や石炭といった化石燃料が取れないため、魔力を使って石英を操ることでエネルギーを得ている。この大陸の住人は、ごく一部の魔力無者を除いたほぼすべての人が、生まれつき魔力を有している。
その他キーワード
石英 (せきえい)
『ブレイク ブレイド』に登場する物質。現実における石英とは大きく異なる物質で、魔力で命令することによって動かすことのできる反応系石英と、動かすことのできない無反応系石英とに分けられる。動力源や熱源、または通信手段に用いるなど用途は幅広く、日常生活はもちろんのこと、軍事分野においても欠かせない資源となっている。 鉱石ではあるが、柔軟性を持つものも存在し、加工することで人工的な靭帯を作り出すことができる。アテネス連邦では反応系石英が枯渇し始めており、資源確保のため、豊富な反応系石英を持つクリシュナ王国への侵略が計画されている。
魔動戦士 (まどうせんし)
『ブレイク ブレイド』に登場する用語。巨大人型機動兵器・魔動巨兵に搭乗するパイロット。操縦席にあるデバイスに手を触れ、魔力を流しこむことで魔動巨兵を動かす。敵の攻撃によって、顔かたちが分からなくなるような非業の死を遂げることが多いため、遺族に遺体を見せてはいけないという規則がある。優秀な魔動戦士は高位魔動戦士と呼ばれる。
アニメ
書誌情報
ブレイクブレイド 全20巻 フレックスコミックス〈メテオCOMICS〉
第19巻
(2022-10-12発行、 978-4866752457)
第20巻
(2022-10-12発行、 978-4866752464)