概要・あらすじ
1888年9月1日の夕方、イギリス・レスター郊外。エドガー・ポーツネルとアラン・トワイライトは、雨の中、レスター駅へと馬車を走らせていた。すると道悪のせいで馬車が大きく傾き、アランが振り落とされ、川に転落してしまう。アランを救い出すことに成功するエドガーだったが、馬は逃げてしまった。びしょ濡れになりながら歩く二人は、木々の向こうに見える灯りを頼りに、ある館にたどり着いた。そこは、画家のアーサー・トマス・クエントン卿の館であった。一晩の宿を頼むエドガーを見て、アーサーは驚いた。それは、エドガーの顔が、アーサーの家にある肖像画「ランプトン少年(レッドボーイ)」の模写に似ていたからだった。「ランプトン少年」の模写は、アーサーの曾祖母であるグレース夫人が、知り合いの画家に描かせたものだった。オリジナルの「ランプトン少年」のモデルは、ジョン・ジョージ・ランプトン卿の息子で、1831年に13歳で亡くなっている。グレース夫人の息子も、やはり1831年に13歳で亡くなっていたため、夫人は、息子の顔に似せて「ランプトン少年」を模写させたのだという。翌日には出発するつもりのエドガーだったが、アランの体調が回復せず、結局アーサーの館に逗留(とうりゅう)することになった。アーサーは、エドガーたちを家に泊める代わりに、エドガーに絵のモデルになってほしいと頼む。グレース夫人が「ランプトン少年」に自分の息子を重ねたように、アーサーは、自分の「ランプトン」を描いてみたいという。アーサーにとっての「ランプトン」とは、幼少時を共に過ごし、14歳で亡くなった、庭師の息子のドミニクだった。
登場人物・キャラクター
エドガー・ポーツネル
ポーの一族の一人で、バンパネラ。巻毛と青い目が特徴の少年。大老(キング・ポー)の血を受け継ぐ貴重な存在だが、一族とは距離を置いている。イギリス・レスター郊外で、駅へ向かう途中、川に転落したアラン・トワイライトを連れて、画家であるアーサー・トマス・クエントン卿の館を訪れる。アーサーの館に逗留(とうりゅう)させてもらう代わりに、彼の絵のモデルになる。
アラン・トワイライト
エドガー・ポーツネルの手によってバンパネラになった少年。ストレートの金髪が特徴。エドガーと二人で旅をしている。イギリス・レスター郊外で、駅へ向かう途中、川に転落してしまう。エドガーに助けられ、アーサー・トマス・クエントン卿の館を訪れるが、体調を崩し、ずっと眠り続ける。
アーサー・トマス・クエントン卿 (あーさー とます くえんとんきょう)
イギリス・レスター郊外の館に住む画家。齢30過ぎの男性。長髪と口ひげが特徴。5歳の時、馬車に轢(ひ)かれて死にかけ、左耳を失う。また、左頰にも傷を負い、それらを隠すために髪を長く伸ばしている。馬車を失い、宿を求めて館を訪れたエドガー・ポーツネルと出会い、幼なじみであるドミニクを思い出す。自分の曾祖母が、息子の顔に似せて「ランプトン少年」の絵を模写させたように、アーサー・トマス・クエントン卿も自分の「ランプトン」を描くために、エドガーにモデルになってほしいと頼む。
ドミニク
アーサー・トマス・クエントン卿の家に雇われていた庭師の息子。14歳で他界。青い瞳と巻毛が特徴で吃音障害があった。アーサーとは幼なじみで、幼い頃は一日中、いっしょに過ごしていた。
その他キーワード
ランプトン少年 (らんぷとんしょうねん)
18世紀の画家トーマス・ローレンスにより、1825年に描かれた実在の肖像画。通称「レッドボーイ」。ジョン・ジョージ・ランプトンの依頼で、彼の息子であるチャールズ・ウィリアム・ランプトンをモデルに描かれた。チャールズは、1831年に13歳の若さで亡くなっている。
関連
「ポーの一族」シリーズ (ぽーのいちぞくしりーず)
永遠の時を生きる吸血鬼の一族となった少年と、彼が巡り合う人間たちの運命を描いた物語。 関連ページ:「ポーの一族」シリーズ