マイリトルタウン

マイリトルタウン

高度成長期に建設され、最近建て替えが決まったニュータウン。そんな団地を舞台とし、住人たちに訪れる人生の転機を優しく描いたハートフルな物語。「ビッグコミック」2002年第16号から2004年第2号にかけて不定期に掲載された。

正式名称
マイリトルタウン
ふりがな
まいりとるたうん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

週末に出向いた自宅の周辺で、従兄弟の男性・上杉真司にばったり出会ったのぞみ。二十数年前の夏休みだけ両親が預かっていた真司は、今や立派な青年に成長し、建築家として未来ヶ丘団地一帯の再開発を進めるプロジェクトの一員となっていた。のぞみは真司と団地で過ごした一夏の楽しい思い出と、真司にいつも優しく接していた母親のことを思い出すのだった。

登場人物・キャラクター

上杉 真司 (うえすぎ しんじ)

建築家の男性。年齢は34歳。未来ヶ丘団地一帯の再開発を進めているプロジェクトのチーフ・アシスタントを務めている。団地の建て替えの了承を得るために、各棟を回って住民を尋ねていた。物腰は柔らかく、誰からも信頼される実直な青年。3歳の頃に両親が通り魔によって殺害されており、父方の祖父母に引き取られて育った。小学生の夏休みに、親戚ののぞみの家に預けられた時は、のぞみの人形を壊したり、インチキな賭けをして拓也の消しゴム人形を奪い取るなど、わがまま放題な振る舞いをしていた。 そのせいで、のぞみから「絶対将来ヤクザになる!!」と断言されてしまう。とある出来事をきっかけにのぞみたちと仲直りし、家族のような楽しい夏休みを過ごす。のぞみの家族からは「シンちゃん」と呼ばれていた。

井原 (いはら)

腕のいい料理人の男性。6年前に子供のまほが出来たのをきっかけに、都心のオフィス街にあった小さな食堂を引き払い、未来ヶ丘団地に引っ越して来た。子煩悩な父親で、休みの日には必ずまほを連れて、近くの山や川で遊びつくしている。まほに井原自身と同じ子供時代を味わってほしいと考えており、団地の建て替えには大反対している。

のぞみ

未来ヶ丘団地で生まれ育った女性。上杉真司の従姉妹。小学生の夏休みに家で預かった真司の傍若無人な振る舞いに、ほとほと手を焼いていた。借り物の人形を壊された時に思わず「シンジなんか死んじゃえーっ!!」と叫んでしまい、父親にぶたれた苦い過去を持つ。二十数年後、実家に帰った際に真司と久々の再会を果たし、その成長振りに驚いていた。

のぞみの母

のぞみの母親。未来ヶ丘団地に住んでいた女性で、故人。二十数年前、小学生だった上杉真司を夏休みの期間だけ預かっていた。面差しが真司の母親によく似ていたため、真司からはとても慕われていた。真司を引き取ることを考えていたが、狭い団地住まいを理由に親族から猛反対されたため、やむなく諦めていた。

拓也

のぞみの弟。未来ヶ丘団地で生まれ育った男性。小学生の夏休みに家で預かった真司を、母親が可愛がるのを見てやきもちを焼き、母親に赤ん坊のようにくっついていた。成人後は関西で就職して暮らしている。

未来ヶ丘団地に住んでいる老人。出張自転車修理業を営んでいる男性。まほから「どこでも自転車屋さん」と呼ばれている。今は自転車を修理に持ち込む人間がめっきり減ったため、ほぼ開店休業状態となっている。時代への適応力があるタイプで、団地の建て替えにも賛成していた。

まほ

井原の娘。未来ヶ丘団地に住んでいる少女。井原が40歳を過ぎてから出来た子供だったので、両親からとても可愛がられている。休みの日には、井原と一緒に野山で存分に遊んでいた。

風ノ谷 渡

未来ヶ丘団地に住んでいる売れない漫画家の男性。風ノ谷渡はペンネームで、本名は「ハヤト」。もともとは将来を嘱望された優秀な建築家だった。バリバリのキャリアウーマンである先輩の礼子を伴侶にし、順風満帆の人生を送っていたが、結婚6年目で離婚。夢であった漫画家になるために会社も退職する。団地を別の人間から又借りしており、立場的には不法入居者の状態。 上杉真司から転居を迫られた際には、「引っ越したいが金がない」と堂々と言い切っていた。

児島 (こじま)

上杉真司の有能な上司の女性。未来ヶ丘団地一帯の再開発を進めているプロジェクトのチーフを務めている。風ノ谷渡の別れた妻でもある。渡を愛していたが、私生活でも先輩のような命令口調のアドバイスをし続けたことが原因となり、結婚6年目で離婚。団地からの転居を拒否していた不法入居者が、かつての夫と知って驚愕する。

中華料理店の息子。年齢は30歳。大学を出た後に一流銀行に入社し、海外に赴任して日本に帰って来た。素直で心優しい性格をしており、両親と、両親の料理を食べた人が見せる笑顔が大好き。日本一の手作りギョーザの店を出すために会社を辞め、ギョーザ作りに精を出すことになる。

純の父

純の父親。未来ヶ丘団地に住んでいる中華料理店の店主。商売で苦労を重ねたため、純にだけは同じ苦労させたくないと思っており、彼を大学まで行かせていた。自慢の息子だった純が、ギョーザの店を出すために銀行を辞めたことに、ショックを受けてしまう。

純の母

純の母親。中華料理店の従業員。純の父親と同様、手塩にかけて育てた純が、相談もせずに銀行を辞めたことに落胆する。その理由が、人々の笑顔を見たいことであることを知り、彼の決断を支援することになる。

花村 ノリ子

大手健康食品会社の経理担当をしている女性。年齢は36歳。中学2年生の時に父親を事故で亡くし、未来ヶ丘団地で母親と2人で暮らしてきた。自分を短大まで行かせてくれた母親に感謝している。地方に転勤となった彼氏とは、母親を1人にはできないという理由で別れている。結婚相談所にも通っているが、結果は芳しくない。

ノリ子の母

花村ノリ子の母親。父親を亡くして以来、給食センターで働き、女手ひとつでノリ子を立派に育て上げた。優しく気が弱いため、何かと貧乏くじを引かされることが多い。自分といると、ノリ子が必要以上に頑張ってしまうことを気に病んでおり、故郷に戻って一人暮らしをすることを決意する。

真壁 浩

仕立て職人だった男性。未来ヶ丘団地に住んでいる。妻を亡くし、息子たちも家を出たため、一人暮らしをしている。ここ最近で軽い痴呆症状が出始めており、過去と現在がごっちゃになっている。家を離れた3人の子供を愛しているが、兄弟の中でも気が弱く、要領も悪かった真壁拓実の行く末を特に心配していた。

真壁 拓実

真壁家の次男。小さい頃から要領が悪く、気も弱かったため、母親からはダメな子呼ばわりされていた。クラスでも下っ端扱いされ、いじめられていた。真壁浩から教えてもらったミシンの裁縫に夢中になり、高校卒業後に家を出て服飾関係の道に進む。実家には顔を見せなくなったが、年に1回の年賀状だけは送ってきていた。

真壁 剛士

真壁家の長男。小さい頃からスポーツ万能で成績優秀だったため、母親自慢の息子だった。東大を卒業して一流商社に入社後、取引先のオーナー社長の娘と結婚し、ほとんど入り婿のような状態となる。そのため母親から親不孝者扱いされ、母親が亡くなった今でも、実家とはほぼ絶遠している。真壁浩の引き取りを拒否したが、妻に隠れて浩に送金をしていた。

真壁 妙子

真壁家の長女。小さい頃からおしゃまで、近所でも評判の美少女だった。家を出た後に結婚し、今は社宅暮らしをしている。団地の建て替えをきっかけに、真壁浩に対し医療設備の整った老人ホームに入ることを勧めていた。

大久保 幸子

雑貨ショップの雇われ店長をしている女性。未来ヶ丘団地に住んでいる。年齢は32歳。大恋愛の末に彼氏に振られ、その親友だった大久保二郎と結婚した。資金を貯めて、自分の店を持つことを夢にしている。家にいる時間帯が合わないうえに、会話も少ない二郎との生活に疑問を感じ始めていた。その矢先、団地の建て替え話が持ち上がり、建て替え期間中は、それぞれ別の家に住むことを二郎に提案される。

大久保 二郎

大久保幸子の夫。未来ヶ丘団地に住んでいる公務員。年齢は34歳。特撮ヒーローのフィギュアを作ることを趣味にしている、もの静かな人物。幸子からは「ジロさん」と呼ばれている。夜遅くまで仕事に励む幸子をいたわり、家事の半分を担当していた。団地の建て替え中は、別々に過ごすことを幸子に提案する。

林 ミキ

未来ヶ丘団地に住んでいる女子高生。派手な格好をした今時の女子で、男をとっかえひっかえしている遊び人。幼なじみの高田慎三とは、幼稚園の頃に結婚を誓い合った仲。林ミキの16歳の誕生日に「チュー」をするという約束を交わしていた。だが、2人が成長するにつれて、疎遠になってしまう。

高田 慎三

未来ヶ丘団地に住んでいる男子高校生。ピアノを大の得意としている優等生で、芸大を目指している。同じ団地に住む林ミキとは仲のいい幼なじみだったが、いつしか疎遠になってしまった。団地の建て替えの話が持ち上がった際、ミキに何も言わずに引っ越してしまう。ミキからは「シンゾー」と呼ばれていた。

笹木

アルバイトで食いつないでいる男性。未来ヶ丘団地に住んでいる。もともとはサラリーマンだった。ロシア赴任中に出会った経済学者の講義に感銘を受け、彼の著書を翻訳するために退職した。8年の歳月をかけて翻訳本の出版にこぎつけるが、世間的には何一つ話題にならず、その間に妻との離婚も経験。とことんツイていない自分の人生を振り返っていた。

野中

サラリーマンの男性。かつての笹木の上司。次期社長との呼び声も高いやり手で、自分の派閥に入らない笹木をロシアに赴任させたり、彼の企画をつぶすなど、さまざまな嫌がらせをしていた。10年後、就職斡旋所で笹木と再会する。

戸波

東都大学院で経済学を専攻している女性。笹木の翻訳した経済学の著書を参考にして修士論文を書き、無事修士になることができた。本に書いてあった笹木の住所を見て、お礼をするために彼のもとを尋ねる。

成田 敦子

未来ヶ丘団地に住んでいるエステティシャンの女性。年齢は53歳。早くに両親を亡くし、17歳年下の妹の母親代わりとなって、一心不乱に働いてきた。まだ独身。カリスマ・エステティシャンとして、雑誌に取り上げられることもあるほどの腕前の持ち主だが、3年前に現場を離れ、今は研修部長として働いている。

冴えない風貌をした五十男。釣り具屋の店員。成田敦子と付き合っていたが、恋愛関係というよりは腐れ縁の仲。団地の建て替えを機に結婚を切り出した敦子に対し、いま付き合っている若い女性と結婚するから無理と断っていた。

場所

未来ヶ丘団地

高度成長期に建設された古びた団地群。間取りが手狭なうえに老朽化が進んでいたため、取り壊して新しい団地が作られることが決まった。近くに貝塚山という山があり、それなりに自然も豊富。

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