あらすじ
第1巻
身に覚えのない殺人の罪で逮捕された女性詐欺師のツキミ・フッカーは、「悪魔の卵」と呼ばれる刑務所に送り込まれた。ツキミが巨大権力組織「オクトーバー社」の秘密を知ってしまったことから、罠にはめられたことを知った捜査官のルーン・バロットとウフコックは、ツキミを証人として保護するために「生命保全プログラム」に基づいて悪魔の卵に潜入する。ルーンはさっそく武装したロボットから攻撃を受けそうになったツキミをかばい、ロボットを銃で破壊する。この時、足にケガをしたツキミは医療室で女医の治療を受けるが、この女医こそがツキミを暗殺しようとしている殺し屋「蠍(スコーピオン)」だった。ルーンはどうにか女医を撃退し、その足でツキミを連れて脱獄を図る。しかし、悪魔の卵は亜空間の迷宮としての牙を剝き、ルーンたちの脱出を阻む。
第2巻
ルーン・バロットとツキミ・フッカーの脱獄騒ぎによって刑務所「悪魔の卵」は混乱し、それに乗じて女囚たちの暴動が起きていた。ルーンは、この暴動を指揮する女囚たちの顔役、ダッチェスと交渉し、大勢の女囚たちを指揮下に収め、彼女たちからもたらされた情報をもとに亜空間の迷宮を破ることに成功する。しかし、脱出口の直前で女医が待ち構えていた。ルーンは、左腕に強化された義手を取り付けた女医に苦戦を強いられるが、戦いの中で女医が一人で蠍(スコーピオン)の能力をすべて使いこなしているわけではないことに気づいたルーンは、「蠍」と呼ばれる殺し屋の正体が二人組であることを知る。そんな中、自身の監視役でもある女医を陥れる機会をうかがっていたもう一人の蠍であるネルは、女医に不意打ちを食らわせて頭部に弾丸を叩き込み、彼女に代わってルーンの前に立ちはだかる。
登場人物・キャラクター
ツキミ・フッカー
詐欺師の少女。殺人の濡れ衣を着せられ、懲役150年の罪で刑務所「悪魔の卵」に投獄された。他人の行動や仕草を高度に模倣する天才的な技能の持ち主で、その能力を用いて詐欺を働いていた。のちにルーン・バロットの射撃を模倣し、精密な狙撃を行うこともできるようになる。もともと「ツキミ・フッカー」と「ヨーコ・フッカー」という二人組の双子の姉妹の一人だが、ツキミとヨーコが入れ替わっている時にツキミが死亡してしまったため、本来はヨーコであった彼女が今もツキミの名を名乗り続けている。
ルーン・バロット
「事件屋イースターズ・オフィス」に所属している捜査官の少女。ツキミ・フッカーを救出するために、刑務所「悪魔の卵」に派遣された。禁じられた科学技術によって改造された人間で、周囲の空間を高度に知覚する「拡張感覚」と、あらゆる電子機器をあやつる「電子攪拌」の能力を持つ。また、超人的な射撃技能を有するガンファイターでもある。電子攪拌の能力の使い手はルーン・バロットのほかにも存在するが、全身に人工皮膚を移植しているルーンのそれはまさに最強の名に恥じぬ威力を誇る。ウフコックを相棒にしている。
ウフコック
「事件屋イースターズ・オフィス」に所属しているネズミの捜査官。ルーン・バロットの相棒。禁じられた科学技術によって作り出された存在で、身体の大きさはネズミそのものだが、人間と同じような服を着ており、人語を用いることもできる。「変身」と呼ばれる能力によって亜空間から道具を取り出したり、無生物に変身できるほか、人間の思考や感情を匂いによって嗅ぎ取ることもできる。
ドクター・イースター
ルーン・バロットとウフコックが所属する「事件屋イースターズ・オフィス」の所長を務める男性科学者。政治的な駆け引きや、コンピューターの操作を得意としている。刑務所「悪魔の卵」への潜入には参加せず、バックアップを担当する。
ダッチェス
刑務所「悪魔の卵」の女囚たちを束ねる顔役の女性。冷酷無比な性格ながら、仲間思いの優しい一面も持っている。本名は「ダリア・ドラゴ」というが、現在は故人である大陸系マフィアのボスの妻だったことに由来する「未亡人」という意味の「ダッチェス」のあだ名で呼ばれている。
女医
正規の矯正医官として、刑務所「悪魔の卵」に3年前から勤務している女性医師。その素性は二人組の殺し屋「蠍(スコーピオン)」の一人で、同時にもう一人の蠍であるネルの監視役でもある。蠍に参加する前から腕利きの殺し屋を生業にしていた。左腕は義手で、「変身」の能力を持っている。
ネル
「悪魔の卵」の女囚たちのあいだで「便利屋」と呼ばれている少女。女囚を装っているが実際には囚人ではなく、禁じられた科学技術による改造を受けて超人となった人間で、刑務所に改装される以前から悪魔の卵で暮らしていた。二人組の殺し屋「蠍(スコーピオン)」の一人であり、その主たる存在。
場所
悪魔の卵 (でもんずえっぐ)
民間経営の刑務所。正式名称は「マルドゥック新埋立地刑務所」。クリーンで進歩的な新時代の刑務所とされている。オクトーバー社に買収されて刑務所に転用される以前は、禁じられた科学技術を研究していた軍の研究所で、「スコーピオン計画」によって超人・ネルが生み出された場所でもある。
その他キーワード
電子攪拌 (すなーく)
あらゆる電子機器を操作することを可能とする能力。特殊な人工皮膚を移植することによって実現するが、成功例は少なく、特に全身への人工皮膚移植に成功したのはルーン・バロットの一例のみ。ネルも右腕と舌にルーンと同じ人工皮膚を移植されており、電子攪拌を用いることができる。ルーンの能力の射程は20メートル程度。
拡張感覚 (きゃすたー)
人工皮膚で電子的に知覚を拡張し、視覚と触覚の中間のような感覚に落とし込む能力。ルーン・バロットのみが使うことができる。常時半径20メートルほどの範囲を知覚することができ、壁に伝わる振動を感知して壁越しに内部の様子を探知することも可能。
変身 (たーん)
ウフコックの持つ能力。「反転変身」とも呼ばれている。亜空間に物を収納し、かつ自由自在に取り出したり、無機物に変身したりすることができる。女医も同名の能力を持っているが、無機物への変身はできない点などいくつかの違いがある。
動作検出装置 (もーしょんせんさー)
刑務所「悪魔の卵」に導入されているセキュリティシステムの一つ。「歩容認証」と呼ばれる電子錠の一種で、人間の持つ固有の歩行パターンを記憶し、それをキーとして用いる。その性質上、ルーン・バロットの電子攪拌やウフコックの変身でも破ることができない。
クレジット
- 原作