概要・あらすじ
大手企業の会長の座を退き、悠々自適の生活を送るある男に、不審なセールスマンがミニチュアを作ることのできるカメラを売ろうとする。当初はそのカメラに興味を示さなかったが、娘に無趣味であると指摘されたことをきっかけにジオラマ作りに没頭。そんな折、資料集めのために普通のカメラで建物を撮影していたところ、偶然に不幸な身の上の女性を知る。
登場人物・キャラクター
主人公 (しゅじんこう)
作中に名前は登場せず、家政婦に「だんなさま」と呼ばれている。大手企業の会長の座を退き、今は悠々自適の生活を送る初老の男性。電話一本で知人の社長に頼んだ物を届けてもらえるなど、非常に社会的地位は高い。謎のセールスマンからミニチュア製造カメラを譲り受け、試しにカメラを使ったことからジオラマ作りに没頭。 街の再現に熱中するが、その過程でミニチュアになった家屋の中から遺書を発見する。
ヨドバ
未来から現代にやってきたカメラの販売員。本作中に名前は登場しないが、『タイムカメラ』で初登場以来、しばしば藤子・F・不二雄のSF短編に登場。生きるためにやむを得ず、現代の科学技術では実現不可能な機能を持つカメラを破格の条件で売って糊口をしのいでいる。本作では、社会的地位のある男にミニチュア製造カメラをセールス。 最初は1億円をふっかけるが相手にされず、1万円にまで値切って食い下がったところ、施し同然に10万円を得る。
未亡人 (みぼうじん)
作中に名前は登場しない。交通事故で夫と息子を亡くし、悲しみにくれた日々を送る。そしてついに自殺を決意するが、主人公がミニチュア製造カメラで作った家の中から遺書を発見したため、一命をとりとめる。
その他キーワード
ミニチュア製造カメラ (みにちゅあせいぞうかめら)
未来世界のカメラで、被写体から実物そっくりのミニチュアを作ることができる。ただし、ミニチュアにできるのは建造物や車輌など無機物に限られ、生物はミニチュア化されない。また、地面や森林などは自動的にトリミングされる。ミニチュアは内部まで成功に再現され、家の中にあるテレビは実際に受信した映像を見ることができるほか、配管さえすれば水道やガスすら使用が可能。