概要・あらすじ
家業が骨董店でカメラマン志望の竹子は、好意を寄せられる青年実業家の倉金と、仕事仲間でフリーカメラマンの宇達の間で気持ちが揺れていた。そんな折、ヨドバという不思議なセールスマンに、被写体の価値を金額で提示する「値ぶみカメラ」の説明を受ける。試しに骨董店に持ち込まれた赤絵の皿を写したところ、写真はそれが贋作であることを示していた。
その後、倉金にプロポーズを受けた竹子は、「値ぶみカメラ」で倉金を撮影。すると莫大な額の生涯賃金が提示される。そこに宇達が現れ、竹子はどちらを受け入れるか、選択を迫られる。
登場人物・キャラクター
竹子
カメラマン志望で、主に野鳥を撮影している。母には「男か女か分からない」と言われる行動的なファッションをしているが、なぜか家業の骨董店の常連客である青年実業家の倉金と、仕事仲間の宇達のふたりから好意を受けている。なお、出版社から野鳥の写真集が出るという話が持ち上がっているが、「値ぶみカメラ」には竹子のカメラから生み出される収入は0円という評価が示されてしまう。
ヨドバ
未来から現代にやってきたカメラの販売員。作中に名前は登場しないが、『タイムカメラ』で初登場以来、しばしば藤子・F・不二雄のSF短編に登場する人物で、相手のニーズに合わせた不思議なカメラを販売しようとする。本作では、骨董店を営む竹子の父に、被写体の評価額を提示する「値ぶみカメラ」を売りに現れる。
倉金
竹子の親が営む骨董店「古色堂」の常連客で、身なりの良い青年実業家。竹子に熱烈な好意を寄せ、竹子の母の評判も上々。目利きにも優れ、店に持ち込まれた赤絵の皿が贋作であることを即座に見抜いた。「値ぶみカメラ」によれば、身につけている物一式が129万9207円、生涯収入に至っては32億6772万541円という高い評価額を算出している。
宇達
竹子の仕事仲間のフリーカメラマンで、竹子にはひそかに想いを寄せている。「値ぶみカメラ」の評価額は、特に将来の産価においては倉金とは比較にならないほど低い。しかしヨドバが説明しそびれていた「撮影者による主観的な価値」では、表示しきれないほどの評価となる。
竹子の父
『値ぶみカメラ』の登場人物で、主人公の父親。作中に名前は登場しない。婿養子となり、妻の父から継いだ骨董店「古色堂」を営む。しかし目利きの才に恵まれず、しばしば売れそうもない物や贋作をつかまされている。竹子がカメラマンを目指すことに理解を示し、自らの失敗を引き合いに、結婚相手は自分の気持ちを大事にすることを勧める。
竹子の母
『値ぶみカメラ』の登場人物で、主人公の母親。作中に名前は登場しない。竹子が家の手伝いもせずにカメラマンを目指していることに苦言を呈し、自らの失敗を引き合いに、結婚相手は収入で選ぶことを勧める。
その他キーワード
値ぶみカメラ
撮影した被写体の価値を「本価」「市価」「産価」「自価」という4種類の評価軸で示す機能がある。「本価」は構成する物質の材料費。「市価」は販売価格を、「産価」はその被写体が将来もたらす利益を示し、「自価」は撮影した本人にとっての主観的な価値が示される。