切ない片思いから始まる三角関係
本作は、年上へのピュアで切ない片思いや三角関係をテーマに、大人同士の複雑な恋愛模様が日常コメディと共に描かれる。「執着する片思い青年×惚れっぽい自然体女×食えないバツイチ男」というユニークな三角関係を中心に、主人公の龍平の視点から物語が展開される。10年以上も隣人の環に思いを寄せている龍平の目を通して、それぞれの過去や心情が丁寧に掘り下げられていく。さらに、環の弟、文太に恋心を抱く環の親友、山之内毬奈の片思いなど、個性豊かな登場人物たちが織りなす人間関係も見どころの一つとなっている。
ライバルの登場で、あきらめかけた恋が再熱
蕎麦屋の息子、龍平は、となりに住む10歳年上の幼なじみ、環に長年片思いをしている。龍平は10代の頃に環に告白したことがあるが、彼女からは弟のようにしか思われず、年の差もあってなかなか相手にされなかった。2度目の告白も思いは届かず、すっかりあきらめモードに入っていたが、環と年の近い謎めいた男性、保の出現によって状況は一変する。もともと惚れっぽい性格の環が、すぐに保に惹かれていく様子を目の当たりにした龍平は、危機感を抱く。消えかけていた恋の炎が再び燃え上がった龍平は、3度目のアプローチを決意するのだった。
波乱の三角関係
龍平から3度目の告白とキスをされた環は、とっさに返事を保留したものの、二人の関係はぎくしゃくしてしまう。一方、保がバツイチであることを知りながらも、環の彼に対する思いはますます募っていく。一途な龍平の熱烈なアプローチに次第に彼を意識し始める環だが、大人の色気の中に純粋さを秘めた保の魅力にも抗えない。そんな中、保の元妻、美宇が帰国し、彼女から逃れるように保が環の家に居候することになり、じれったい三角関係に大きな波乱が巻き起こる。
登場人物・キャラクター
阿川 龍平 (あがわ りゅうへい)
環の隣人で、実家の蕎麦屋で働く男性。年齢は25歳。愛称は「龍くん」。幼い頃から家族のように育った環に、長年片思いを抱いているが、彼女からはまったく異性として見られていない。環が結婚して落ち着く気配がないことを理由にあきらめきれず、執着とあきらめのあいだで揺れ動きながら悶々とした日々を過ごしている。そんな思いを断ち切ろうと決意した矢先、謎めいた男性、保が現れたことで焦りを感じ、再び彼女への猛アタックを始める。「ポンちゃん」という犬を飼っている。
武蔵原 環 (むさしばら たまき)
龍平の隣人で、自宅でバレエ教室を営む女性。年齢は35歳。スラリとした長い首が特徴で、スタイルも抜群。バレエ講師としての自信に満ち、驚くほど柔軟な身体を持つ。惚れっぽい性格で、ミステリアスな男性に弱い一面がある。10歳年下の龍平から告白されたことがあるが、赤ん坊の頃から彼の世話をしてきたため、「かわいい弟」としてしか見られず、その思いをやんわりと断った。両親はすでに亡くなっており、一つ下の弟、文太がいる。弟を通じて謎めいた男性、保と出会い、彼がバツイチであることを知りながらも、その魅力に惹かれていく。
衣笠 保 (きぬがさ たもつ)
紳士服店に勤務するテーラーの男性。丸い眼鏡をかけている。年齢は34歳。落ち着いた色気と天然な性格を併せ持つ「人たらし」として知られている。環の弟、文太と同僚であり、文太にスーツを届けるために武蔵原家を訪れた際に環と出会う。趣味は、好みの女性に似合う服を作ること。環の抜群なスタイルに触発され、理想の服を着せたいという思いから交流を深めるうちに、惹かれ合っていく。実はバツイチで、織物作家の元妻、美宇との過去を抱えている。保の家には、彼女の機織り機がそのまま残されている。
書誌情報
ムサシノ輪舞曲 5巻 祥伝社〈FCswing〉
第1巻
(2021-09-08発行、978-4396768386)
第2巻
(2022-08-08発行、978-4396768645)
第3巻
(2023-11-08発行、978-4396750336)
第4巻
(2024-09-06発行、978-4396750558)
第5巻
(2025-07-08発行、978-4396750756)







