ヤマノススメ

ヤマノススメ

人付き合いが苦手な女子高校生の雪村あおいが、幼なじみの倉上ひなたとの再会をきっかけに、さまざまな山の登山に挑むことで前向きになり、心身共に成長していく姿を描いた青春登山漫画。「月刊コミック アース☆スター」第6号(2011年9月号)から第45号(2014年12月号)、「メガミマガジン」では2014年8月号から2015年2月号にかけて掲載されたのち、「デジタル版 コミックアース☆スター」に掲載の作品。各話の終わりには、実際に登場する山に関する情報や、登山の豆知識などが作者の実体験をもとに描かれた「ヤマにススムためのコラム」をはじめとするさまざまなコラムが掲載されており、アウトドアの面白さや基本的なノウハウも解説されている。

正式名称
ヤマノススメ
ふりがな
やまのすすめ
作者
ジャンル
登山・キャンプ
レーベル
アース・スター コミックス(アース・スターエンターテイメント)
巻数
既刊25巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

雪村あおいは、まだ小さかった頃に登山を経験し、初めて見た美しい朝日に感動する。いっしょに登った幼なじみと、大きくなったらもう一度ここに来ようと約束を交わす。月日は流れ、あの時の幼なじみとはいつの間にか疎遠となり、あおいはあの約束のこともすっかり忘れていた。高校生となったあおいは、放課後の教室でクラスメイトの倉上ひなたから声をかけられる。ひなたはあおいのことを知っているらしく、一方的に再会を喜ぶ。すると、困惑するあおいにおかまいなしに、ひなたはあおいを強引に登山へと誘おうとする。ひなたは、あおいが幼い頃にいっしょに登山をしたあの幼なじみだったが、あおいは幼い頃に交わした約束どころか、ひなたのこともよく覚えていなかった。さらにあおいは、小学生の頃にジャングルジムから落ちて以来、高所恐怖症になっており、強引なひなたの誘いをなんとかやり過ごそうと、やんわりと断り続ける。そんなあおいを尻目に、いっしょに登山計画を立てようと、ひなたはあおいを自宅に連れていこうとするが、その途中、あおいはようやくひなたのことを思い出す。そして、「コイツとかかわるとロクなことがない」という感覚だけが漠然と蘇(よみがえ)るものの、自分の気持ちを言葉にするのが苦手なあおいは、ひなたに言われるがまま、家まで付き合うことになる。そんな中、いつまでも乗ってこないあおいの様子に気づいたひなたは、無理して付き合ってくれたことにお礼を言い、あおいに会えた喜びのあまり、強引すぎた自分の行動を謝罪。実はひなたは、あおいが自分のことを覚えていなかったことにも気づいていた。そしてひなたは、二人で交わした約束は幼い頃のもので、今はきっとほかにやりたいことができたのだろうと、あおいを思いやる優しさを見せる。するとその瞬間、あおいはひなたと山頂で見た美しい朝日と、二人で交わした約束を思い出す。そして、それまで頑(かたく)なに拒絶し続けていた登山の誘いを、あまり高い山でなければという条件付きで承諾するのだった。だがそれによって、再びひなたが強引に話を進めようとしたため、あおいは承諾したことを一瞬で後悔する。

第2巻

高所恐怖症で人見知りの雪村あおいは、高校で再会した幼なじみの倉上ひなたにサポートされながら登山を始め、少しずつ上達していた。前回二人で挑戦した高尾山で、遠くにそびえ立つ富士山を目にしたあおいは、それ以来、富士山に興味を持ち始める。そんなあおいの様子に気づいたひなたは、あおいのために富士山の見える山への登山を思い立ち、登山を通して知り合った友人の青羽ここな斎藤かえでを呼んで、あおいには内緒で登山計画を始める。三人で富士山がよく見える山を調べ、次の行き先を三ツ峠山に決める。当日、どこに行くかもわからないまま現地に到着したあおいは、四人で登山道へと向かう途中、キレイな富士山が見えることに気づき、ひなたが自分のためにサプライズで富士山を見せてくれようとしているのではないかと思い始める。そこであおいは、富士山が見えることには気づかないふりをしながらも、はやる気持ちを抑えきれずペースを上げていく。だが、登山道に入ってからは暗くて足場も悪く急な坂道が続き、あおいは一人遅れ始める。足の痛みや荷物の重たさに登山の楽しさを忘れ、帰りたいという気持ちに苛(さいな)まれた時、あおいの様子に気づいたかえでが、ひなたとここなを先に行かせ、いったん休むことを提案する。かえでは、みんなのペースを乱して迷惑をかけたと落ち込むあおいを笑顔で元気づけ、同じペースで無理せず休むなど、登山において大切なことをアドバイスする。その後、登山用のストックを借りて再び歩き始めたあおいは、ふと視界が開けた場所で富士山の姿を目にする。

第3巻

最近、登山の楽しさがわかり始めた雪村あおいは、倉上ひなた青羽ここな斎藤かえでと共に、次の目的地を日本一の山、富士山と決め、ご来光を目的に山頂を目指すことを決める。だが、これを実現させるためには、夜の登山に大反対するあおい母の説得が必要だった。富士山への登山経験があるあおい父が、妻に登山の話をするあおいに成長を感じたと話したことや、あおいが安全に対する具体策を伝えることで、母親からの承諾を得ることに成功する。日本一の山に挑むには、ヘッドライトや冬並みの寒さをしのぐための防寒着、水分や行動食などそれなりの準備も必要となる。富士登山用の準備が着々と進められていく中、あおいはふと勢いで決めてしまった富士登山への不安を感じ始める。しかし、これまでは口に出せなかった自分の気持ちを、ひなたには素直に吐露し、かえでには電話で打ち明け、あおいは前向きな気持ちで富士登山当日を迎えることになる。高速バスで富士山へと向かった一行は、夕方には到着。すでに周囲が真っ暗な状況で、不安を抱えたまま登山を開始する。人の手の及ばない自然の暗闇と静けさに恐怖すら感じる中で、あおいは仲間がいることに感謝しつつ、自分のペースで歩を進める。しかし、あおいの体調は徐々に悪くなり、激しい頭痛に襲われる。高山病でペースが乱れるものの、八合目の山小屋に無事到着する。ここで休憩を取るも、あおいの体調は好転せず、悪化の一途を辿る。その様子を見たかえでは、ひなたとここなを頂上へと向かわせ、自分はあおいと共に下山することを決断する。

第4巻

雪村あおい富士山の登頂失敗で、すっかり落ち込んでいたが、再び登山への意欲を取り戻す。そこであおいは、霧ヶ峰で少し気楽な登山を楽しんだあと、ふと幼い頃に倉上ひなたと登った山がどこだったのかを知りたくなった。ひなたの父親、倉上健一の話から、あの山が谷川岳だったことを知ったあおいは、次なる目的地を谷川岳に決め、あの約束の朝日を見に行くことを決断。斎藤かえでに相談しながら、山小屋で一晩を明かす初めての小屋泊に向け、準備を進めていく。一方のひなたは、谷川岳の登山に向けて張り切るあおいの様子に、寂しさをにじませていた。幼い頃に交わした約束がとうとう叶ってしまうことに、不安すら感じていたのだ。約束が叶ってしまうと、これまで登山を通じてみんなと築いてきた関係に終止符が打たれてしまうのではないかという漠然とした不安が、ひなたの心に小さな影を落とす。とうとう迎えた谷川岳登山の当日、高所恐怖症のあおいは、心配だったロープウェーやリフトも、ひなたの応援のおかげでなんとかクリアー。ゆっくりと自分のペースを保ちながら、山小屋に向けて順調に歩を進めていく。そんな中、あおいは自分と同じペースで、一人登り続ける同世代の女の子、黒崎ほのかと出会う。意を決して話しかけると、ほのかは写真を撮るために登山に来たと言葉少なに話す。人付き合いが苦手なのか、二人の会話ははずまなかったが、お互いの登山の目的についての話がきっかけとなり、親しくなっていく。その後、ひなたやかえで、青羽ここなも加わっていっしょに記念撮影をした一行は、山小屋で食事を共にして待望の夜明けを迎える。

第5巻

雪村あおいは、倉上ひなたとの思い出の山、谷川岳を制覇する。その際に親しくなった黒崎ほのかに会うために、高崎に行くことになった。伊香保温泉でいっしょに温泉を楽しんだあおいは、ほのかが今度、長野の山に星を見に行く話を聞いて興味を持ち、同行させてもらうことにする。ひなたと青羽ここなにも声をかけ、いっしょに行くことになるが、今回は初めてのテント泊ということで、新たに必要な道具が増える。早めに準備を進めようとするあおいだったが、テントやシュラフはかなり高価で、簡単に買いそろえられるものではないことを知る。あおいと相談のうえ、テントは倉上健一から、シュラフは斎藤かえでから借りることで、人数分の道具をそろえることができたが、言い出しっぺであるはずの自分が、結局人に頼ってばかりなことに、あおいはすっかり自信を失ってしまう。あおいは、ひなたに今回も率先して協力してくれたことへのお礼を伝えると、あおいの様子を気にしていたひなたは、自立への第一歩としてアルバイトをすることを勧め、あおいはその一歩を踏み出す決意をする。あおい母から雪村家の隣人が営むケーキ店でアルバイトを募集していることを聞いたあおいは、すぐに連絡を取る。そして、ドキドキしながら面接に向かうと、いきなり今から手伝って欲しいと言われ、あおいは覚悟する間もなく店頭に立つことになってしまう。あおいはギャルっぽい大学生の先輩、小野塚ひかりに怯(おび)えながらも、彼女から指示を受け、なんとか仕事をこなしていく。

第6巻

夏休みも終わりに近づいたある日、雪村あおいは初めてのアルバイト代を手にし、登山用品専門店を訪れた。あおいは、これまでは欲しくてもあきらめていたものが買える状況に興奮して、さまざまな商品を手に取るが、一度冷静になって考え、お世話になった人たちにお礼することを決める。アルバイトの相談に乗ってくれたあおい母や父親、そして日頃よく相談に乗ってくれる倉上ひなたへの感謝のプレゼントを購入。オシャレなプラボトルを手にしたあおいは、ひなたの家へと向かう。率直にお礼を言うには照れがあり、素っ気なくなってしまったが、あおいは日頃の感謝の言葉と共にプレゼントを渡す。するとひなたは、満面の笑みでお礼を言ったかと思うと、あおいに富士山のぬいぐるみを手渡す。これは以前、富士山に登山に行った際に、あおいが欲しがっていたもので、ひなたが下山した時にあおいのためにと購入しておいたお土産だった。しかし、登頂できなかったことで気落ちしていたあおいに渡すことができず、タイミングを失ったままになってしまっていたのである。ひなたの気遣いを知ったあおいは、当時の感覚を思い出し、再び富士登山への意欲を静かに再燃させるのだった。そんな中、2学期が始まり、クラスメイトとの慣れない人間関係に及び腰だったあおいも、登山の経験を活かして、なんとか状況は好転していく。するとこれを機に、あおいが登山をしていると聞きつけたクラスメイトの男子から、登山部への勧誘を受ける。登山部に興味を持ったあおいは、体験入部に参加してみるため、恐る恐る登山部の部室を訪れる。

第7巻

雪村あおいは、前回リタイアした富士山へのリベンジを決意したものの、まだ9月にもかかわらず、富士山はすでにオフシーズンとなっており、来年の夏まで再挑戦が叶わないことを知る。次のシーズンが来るまでのあいだ、知識や体力を身につけようと心に決めたあおいは、斎藤かえでからの提案で、本格的な登山靴を見るためにアウトドア用品の専門店へと向かう。登山靴はどれも高価で、あおいは簡単には購入を決められなかった。しかし店員からのアドバイスと、かえでからの後押しを受けてアルバイト代をすべてつぎ込み、勇気を出して新しい登山靴を手に入れる。その後、二人で天覧山へと向かったあおいは、靴選びに付き合ってくれたお礼に、かえでにお昼をごちそうすることになる。早速、あおいは買ったばかりの登山靴を履いて慣らし登山を始め、登山靴の性能を体感する。滑りにくさや安定感を確認しつつ、水たまりも気にせず歩けることに感動し、改めて登山靴の購入を勧めてくれたかえでに感謝する。そして自作のホットサンドを振る舞いながら、次の目標である体力づくりへの構想を練る。そんな中、あおい母から市街地近くにあって気軽に行ける、飯能アルプス縦走の話を聞いたあおいは、体力づくりの一環として、初めて一人での登山を決行する。すべてを自分一人で決めなければならないという状況に、冒険しているような気分となり、初めのうちはテンションも上がるが、荷物の重さと早すぎたペースが仇となり、疲労が徐々に蓄積していく。休憩中、一人登山の大変さに打ちひしがれていたあおいは、そこで突然、青羽ここなに声をかけられる。

第8巻

富士山登山へのリベンジに燃える雪村あおいは、体力アップのためにトレーニングを重ねていた。そんな中、あおいは千住院小春から、富士山のふもとでトレイルランを行うのはどうかと勧められる。そして小春は、森の中を走り続けて森林限界より上に出た時の解放感、左に富士山、右に駿河湾という大パノラマをバックに走ることの気持ちよさを興奮気味に語り、トレラン用の靴やザックを貸してあげるからと、強引に押し付けて行ってしまう。あおいは青羽ここなにも声をかけ、倉上ひなた斎藤かえでの四人で富士山のふもとへと向かう。雄大な景色に胸を膨らませるあおいだったが、登山口に着いてみると辺り一帯霧が立ち込めていた。埼玉は晴れていたのにとがっかりしながら、やる気半分で装備を整え、走り始めた一行は、苔むした神秘的な原生林を進んでいく。さらに霧が濃くなってきたため、休憩を取るために一旦腰を落ち着けたあおいは、濃霧で景色が見えないことに気落ちしていると、ここなから目を閉じることを勧められる。目を閉じたあおいは耳を澄ませ、水や土など自然の匂いを感じ取り、不思議と森からの癒しを得ていることに気づく。その後、あおいたちは下双子山の山頂に到達するものの、霧のせいで展望はゼロ。しかし下山時、傾斜のきつい坂道に全員がなぜかテンションが上がり、ゲラゲラと大笑いしながら下り坂を走り下りる。霧に振り回されながらも、山にはさまざまな表情があることを知ったあおいは、改めて晴れた日にリベンジすることを誓うのだった。

第9巻

秋から冬へと季節が移り変わっていく中、雪村あおいは突然出張先のあおい父から家族旅行に誘われ、三連休に滋賀へと向かうことになる。初日は父親と二人で賤ヶ岳に行き、父親の旅の目的である城跡に付き合ったあおいは翌日、斎藤かえでが近くの伊吹山に登る予定であることを知り、自分たちも行かないかと恐る恐る父親に打診してみると、意外にも父親は了承。あおい母を説得したうえで、四人で伊吹山へ登ることが決まる。しかし、ふと考えてみると、今回のパーティはそれぞれ登山経験にばらつきがあることに気づいたあおいは、登山部の部長を務める千住院小春に電話をかけて相談する。日頃から登山部で団体での登山を経験している小春は、初心者と同行する登山のペースや並び順、心構えなどについての具体的なアドバイスをし、あおいに楽しんでおいでとエールを送る。翌日、かえでと合流した一行は、登山を開始。かえでを先頭に父親と母親が並び、最後尾にあおいが付く形で歩き始める。しかし、あまりにもゆっくりなペースに、登山に慣れているあおいにはじれったいペースとなり、途中から先頭を入れ替わってあおいが指揮を取ることにした。だが、あおいは意気込むあまりペースが速くなり、雪村家のことを忘れて黙々と先に進んでしまう。後ろがついて来ていないことに気づいた時にはすでに時遅く、雪村家の人々は疲労困憊となっていた。慌てて休憩を取ることを提案するも、自分の行動に落ち込んでしまったあおいは、再びかえでに先頭を譲る。そして、かえでのアドバイスに従って気張らず寄り添う姿勢でサポートを続け、念願の頂上へとたどり着く。

第10巻

ある日、雪村あおいは、アルバイト先の先輩、小野塚ひかりから電話で呼び出された。そしてひかりは、正月太りを理由にダイエットのため、天覧山への登山にあおいを誘う。だが、ひかりは普段着にヒールの高いブーツを履いていた。あおいは、いつになく強引な様子のひかりに困惑しながら、いざという時に履き替えられるように別の靴を持って天覧山へと向かう。天覧山に登るのは小学生以来だとはしゃぐひかりと共に、おしゃべりしながら頂上に到着すると、ひかりがおもむろに取り出したのは、缶チューハイだった。それを一気に飲み干すと、ひかりは少し酔っ払いながら、あおいに絡み始める。ベンチに座るあおいの膝を枕に、横たわったひかりは頭をなでて欲しいとあおいに甘えたかと思うと、実は意中の人にふられてしまったことをカミングアウトする。そして自分としてはイケると思っていたが、努力が足りなかったと愚痴をこぼし始める。明るく破天荒に見えて、意外と傷つきやすいひかりは、口先では強がっているように見せていても、あおいになぐさめて欲しかったのだ。あおいはそんなひかりに、きっともっといい人が見つかると励ますが、その後は一転してひかりにわざと冷たく当たり、元気を取り戻させようとする。

第11巻

終業式を終えたあと、クラスのみんなが揃って顔を合わせられるのもこれが最後ということで、みおはみんなで記念写真を撮ろうと提案する。そして、せっかくなら景色のいいところで撮ろうと、天覧山に行くことを決める。参加人数はクラスの大半を占め、結構な大所帯となる。この大人数をまとめるにはリーダーが必要ということになり、登山経験豊富な雪村あおいに声がかかる。かなり登山に慣れたとはいえ、人付き合いが苦手なあおいは、突然降って湧いた大役に緊張し、大きな声でみんなを引率しようとするが、空回りしてなかなかうまくいかない。どんどんテンションが下がっていくあおいの様子を見て、倉上ひなたはリラックスするようにアドバイスを送り、あおいをアシストする。そんな中、クラスメイトの提案であおいのバイト先の洋菓子店に立ち寄ることになり、あおいたち一行をアルバイト中の小野塚ひかりが出迎える。天覧山に記念写真を撮りにいくことを知ったひかりは、店の売り物である箱入りのお菓子をプレゼントする。渋るオーナーを今後の売り上げにつながるはずと説得し、進級祝いにもらえることになる。そんな大人な対応を見せるひかりは、一瞬でクラスメイトの女子たちに人気となる。あおいは、そんなテンションの高い女子たちに圧倒されつつ天覧山へと向かう。それぞれが好き勝手に行動するため、なかなか先に進めない状況にため息をついていると、そんなあおいの様子を察したみおから心強い言葉をもらい、あおいは到着した頂上で、一行を仕切りつつ写真撮影を行なう。みんなの真ん中に呼ばれたあおいは、自然な笑顔で写真撮影に臨み、これまでで一番クラスに馴染むことができたことを実感する。そして新クラスでは、人付き合いをもっとがんばろうと心に誓うのだった。

第12巻

春を迎え、雪村あおいは新しいクラスでの学校生活を始めていた。倉上ひなたとは離れ離れになってしまったが、同じクラスになったかすみのおかげで、あおいの新生活は順調な滑り出しを見せる。そんな中、黒崎ほのかといっしょに登った妙義山で体力の衰えを感じたあおいは、冬のあいだに山に登れなかったことで体がなまってしまったことに危機感を覚える。どこか体力づくりができる場所はないかと相談を受けた千住院小春は、インターハイの予選で毎年行っている、長くてキツイ山、雲取山を勧める。この山は、2日間で合計20キロも歩かなければならず、累計標高差2000メートルもあり、重い荷物を担いで10時間以上も歩き通しという難関の山だった。歩けど歩けど目的地にたどり着けず、腰も肩もボロボロになると脅されるが、体力づくりには持って来いだと、あおいはひなたと青羽ここなと三人で雲取山に挑戦することを決める。手始めに荷物の準備を始めた三人は、ざっくりながら15キロもの重さになることに衝撃を受け、荷物の軽量化を図ろうとする。ガイドブックは必要なページをコピーし、財布はチャック付きのポリ袋にするなど、削れるところは削って徐々に重量を減らし、11キロにまで減量することに成功する。それでも2日間背負って歩くことに不安を感じたあおいは、その荷物を背負い、近くの山、武甲山で訓練しようと考える。武甲山に行くためには車が必要だったため、あおい母に同行をお願いすることにする。翌日、親子で登ることになったあおいは、母親のザックも背負って登山に挑む。

第13巻

雪村あおいは、富士山へのリベンジを目標に掲げつつ、トレーニングを兼ねたアウトドアを楽しんでいた。倉上ひなた青羽ここなと二人で千葉の鋸山に出かけたり、受験生の斎藤かえでは、千住院小春笹原ゆうかと息抜きの川遊びにクライミングを楽しんでいた。あおいは、小春とアウトドア用の腕時計を見に行ったり、黒崎ほのかと浅間山へ登山に行ったりと、それぞれが忙しいながらも充実した日々を送っていた。そんな中、あおいはひなたと二人で箱根の駒ヶ岳に向かうが、入山禁止で登山を断念することになる。前回ほのかと行った浅間山で、火山の面白さを体感したあおいは、箱根のリベンジを誓ってひなた、ここなと三人で乙女峠から箱根湯本までを縦走するスピードハイクに挑戦することを決める。日暮れまでに到着するためのタイムリミットは8時間。準備万端整えた三人は、予定通り乙女峠を出発する。しかし、あおいは時間を気にし過ぎるあまり、二人を置いてあっという間に先に進んでしまう。挙句の果てにはペースを上げ過ぎて、早々にばててしまう。ペースを上げ過ぎているとひなたから注意され、目的に振り回されたら本末転倒という言葉を聞いて、あおいは基本に立ち返ることの大切さを思い知らされる。ここなのアドバイスも功を奏し、いつものペースを取り戻したあおいは、順調に歩を進め、一つ目の目的地、金時山の山頂にはペースタイムより10分早く到着する。そして、余裕をもって楽しむことの重要性を知り、スピードハイクの真の意味を体感することになる。その後も順調に進んだ三人は、無事最終目的地である箱根湯本に到着。三人は温泉に浸かりながら、今日一日を振り返り、自分たちの成長を実感する。

第14巻

ある日、青羽ここな斎藤かえでから受験のお守りをもらった話をしたことに端を発し、次の週末に雪村あおい倉上ひなたと三人で合格祈願のために、山頂に社がある大山に行くことを決める。そして迎えた登山当日の朝、目を覚ましたあおいは体のだるさを覚える。歩くことは十分可能ながら、途中で断念してみんなに迷惑をかけるかもしれないと、あおいは思い悩む。出かけるかどうか悩みに悩んだ末に、あおいは大事を取って休むことにする。そんなあおいからの連絡を受けたひなたとここなは、二人で大山に向かう。ひなたは商店街で名物のコマを撮ってあおいに送信し、ケーブルカーを降りたあとには立派な参道を撮って送信。あおいとのやりとりを楽しんでいたが、ひなたはふと療養しているあおいには写真を送らない方がいいのではないかと思い至り、自分たちは純粋に登山を楽しもうと気持ちを切り替える。山頂に辿り着いた二人は、結局合格祈願ではなくあおいの体調回復を願って下山。そのままの足であおいの家に見舞いに訪れる。あれから体調が悪化したものの、ゆっくり休んだおかげで回復したあおいは、二人の突然の訪問に驚く。そして、いつの間にか夜になっていることで、自分の体が思っていたよりも弱っていたことを知り、自分の選択が間違っていなかったことに胸をなでおろす。そんなあおいを見てひなたは、冷静な判断ができるようになったと、茶化しながらも褒めるのだった。

第15巻

丹沢山での登山の疲れが残ったままの雪村あおい倉上ひなたは、次の目的地を蓼科山に定める。黒崎ほのかも加わって、三人は暴風の中、なんとか登頂に成功する。天候には恵まれなかったものの、雲の切れ間から一瞬見えたのは、八ヶ岳の峰々の雄大な姿だった。この登山を経てまた一回り成長したあおいたちは、次は絶対に八ヶ岳から蓼科山を見ようとを心に誓い、夏休みを迎える。すでに山開きをしている富士山へのリベンジをいつにするか、思い悩むあおいだったが、千住院小春からの後押しもあって、タイミングが整い次第すぐに挑戦することを決める。その後、あおいはひなたと青羽ここな斎藤かえでと共に富士登山に向けて具体的な計画を立て始める。前回、弾丸登山を企てて撃沈したあおいは、無理のない行程にしようと考え、前回利用した吉田口を避けて須走ルートを利用し、山小屋に泊まって翌日登頂する2日間の日程を提案。そして帰りはここなが興味を示した宝永山に寄り、御殿場ルートで下山することを決める。いつもは具体的な登山計画に参加することはあまりないここなだったが、計画も大切な共同作業であり、全員で参加して計画することの大切さを知る。そして四人は、富士登山リベンジに向けて、大きな一歩を踏み出す。

第16巻

雪村あおい倉上ひなた青羽ここな斎藤かえで黒崎ほのかの五人は、入念な計画を立てて、ついに富士山登頂へ挑む日を迎える。前回の失敗を糧に、今度こそはとリベンジに燃えるあおいだったが、御殿場駅に到着してみると、空にはどんよりと雲が立ち込め、富士山も見えない曇天となっていた。ご来光が見えないかもしれないという状況に、気落ちしてしまったあおいに、みんなから励ましの声がかかる。だが、あおいの心配をよそに、スタート地点の五合目に到着してみると、そこはもう雲の上ですっきりと晴れた青空が広がっていた。高地順応のため、1時間ほどそこに滞在した一行は、いよいよ登山をスタートさせる。道中、高山病に関する不安ばかり口にするあおいだったが、以前よりも知識も経験も増えたことが自信となり、次第に本来の調子を取り戻していく。そして一行は、難なく六合目の小屋に到着。空腹と戦いながら新七合目を経由し、本七合目の見晴館でのお昼休憩を経て、八合目を通過して本日の宿泊地となる本八合目の胸突江戸屋に到着する。その後、みんなで晩ご飯を食べたあと、寝袋に入ったあおいは再び頭痛が起きていることに気づく。また高山病かと心配するものの、問題が起きたら早めに行動すべしという教訓を得ていたあおいは、すぐにかえでに報告し、翌朝の体調次第で判断することを決める。

第17巻

雪村あおい倉上ひなた青羽ここな斎藤かえで黒崎ほのかの五人は、全員揃って富士山登頂に成功する。念願のご来光を拝んで感無量の中、みんなは下山を始める。途中、宝永山に寄った一行は、ものすごい強風にさらされて、山頂では立っているのもやっとの状態だった。それでも富士山の一番新しい火口である宝永山火口を見たあおいは、活火山である富士山が、今もなお生きていることを再認識する。その後、下山ルートの分岐点まで戻った一行は、予定どおり御殿場ルートでの下山を始める。そこからは延々と砂地を下る砂走りが続く。柔らかくてクッションのような砂地は、足への負担が少なく、楽にスピードが出るために一行はハイテンションになっていく。そんな中、標高はだいぶ低くなり気温は上昇し、さらに太陽が昇り切ると、強い日差しが容赦なく照りつけて来る。暑さに耐えつつ歩き続けたあおいは、1時間が経過しても、まったく景色が変わらないことに気づく。あまりに開けた広大な土地で、時間感覚も距離感もおかしくなっていたあおいは、まるで砂漠での遭難を疑似体験したかのような気分になる。その後、ようやく地面が平坦になり、ゴールが間近にせまったところで、一行は登山口近くにある茶屋の看板を見つける。そこには、大きく「かき氷」の文字が書いてあった。山小屋の策略にまんまとハマったあおいは複雑な気持ちになりながらも、暑さの中で欲していた念願のかき氷をみんなで頰張る。そして、ふと振り返ると、そこに雄大な富士山の姿が目に入り、あおいはようやく富士山を登頂できたことを実感する。

第18巻

雪村あおいは、富士山登頂に成功したことで燃え尽き症候群となり、すっかり次の目標を見失っていた。やる気がまったく起きずに悶々とする中、アルバイト先の先輩、小野塚ひかりに気分転換が必要だと勧められたあおいは、あおい母からの提案で、あおい父と出かけることにした。ただでさえ鬱陶しい父親とのやりとりに加え、暑い中でオープンカーに乗せられ、最初からげんなり気味のあおいだったが、向かった先の日光で、名物の湯葉丼を食べ、登山とは違う観光旅行を満喫。その後、天空の足湯ではソフトクリームを片手にのんびりと足湯に浸かって、高地の空気を楽しんでいたあおいは、背後にそびえたつ日光白根山が目に入る。ここまで簡単に来られたことに物足りなさを感じ、頂上まで登ってしまいたいという気持ちが湧き上がる。そして、山に登りたい気持ちに駆られている自分を再確認して、いい気分転換ができたことを実感する。季節は夏真っ盛り。この暑さの中で登山にも行きづらいともらしたあおいは、ひなたからの提案で二人で大岳鍾乳洞に行くことになる。そして採石場や鍾乳洞、山中の滝を楽しみ、寒さを感じるほどの涼を味わう。後日、みおかすみゆりも加わって、東京タワーを階段で登ることにチャレンジしたり、ひなたと二人で千葉のマッターホルンと呼ばれる伊予ヶ岳に登って抹茶の野点を楽しんだりと、あおいはアルバイトにも精を出しながら、友達のおかげでアクティブな夏休みを過ごす。

第19巻

夏の暑い日、青羽ここなが図書館に涼みに行くと、偶然斎藤かえでと遭遇。新しいトレランシューズを購入したかえでは、履き慣らしのためにどこかに行こうと、ロングトレイルのガイド本を読み漁っていたのだ。かえでが目を付けたのは、青森の八戸市をスタート地点とするロングトレイルルート「みちのく潮風トレイル」。そのスタート地点が蕪島であることを知ったここなは、突然自分もいっしょに行きたいと言い出す。蕪島は、ウミネコの繁殖地として有名な場所で、ここなは一度行ってみたいと思っていたが、中学生が一人で行くには、夜行バスはハードルが高すぎ、あきらめていた場所だった。その事情を聞いたかえではいっしょに行くことを承諾し、二人は当日新宿から夜行バスに乗って青森へと向かう。道中、ここなは受験を目前に控え、自分もかえでのように自分らしい何かを見つけたいと考えていた。本八戸に到着した二人は、陸奥湊駅の食堂で早めの昼食を済ませたのち、鮫駅へと移動。そして、ここなの念願だった蕪島に到着する。二人はウミネコが飛び交う、そのすさまじい数に圧倒されながら、約12キロのロングトレイルをスタートさせる。ダート道や草原、木道、砂浜とバリエーションに富んだ道を歩き、数々の絶景ルートを進んで行く。

コラボレーション

石井スポーツ「新規描き下ろしオリジナルイラストグッズ」

株式会社石井スポーツとコラボして、『ヤマノススメ』オリジナルイラストを使用した山で使えるグッズを展開した。2014年9月にはメスティンが3種類、10月にはNatural Spiritのチタニウム製ダブルウォールカップと2種類のナルゲンボトルが、11月には登山用吸汗速乾&消臭機能TシャツとNaturalSpiritのステンレスシェラカップと3種類のナルゲンボトルが、12月には多機能ヘッドギア・Buffが発売された。2018年2月には、VARGOのチタンボトル、VARGOのチタニウムパラボトル、SHELTのロフトマンポーチが発売された。

富士急行「富士急行線で行くゆるふわ旅のススメ」

2014年8月8日から12月28日まで、富士急行株式会社が運営する富士急行線と『ヤマノススメ』がコラボして、「富士急行線で行くゆるふわ旅のススメ」キャンペーンを開催した。富士急行線の主要駅ではタイアップポスターが掲出され、フォトスポットとしてキャラクターパネルが設置された。8月8日から10月5日までの期間は、富士急行線大月駅から河口湖駅の区間で、コラボ車両「ヤマノススメ号」が運航された。列車は専用ヘッドマークを付けて運行され、車内ではポスタージャックや、雪村あおい役の井口裕香、倉上ひなた役の阿澄佳奈による車内アナウンスが流されるなどの演出も行われた。記念切符をはじめとしたオリジナル限定グッズも販売。キャラクターが訪れたスポットをまとめた「スポット探訪マップ」も制作された。

国際興業バス「ヤマノススメラッピングバス」

『ヤマノススメ』の登場人物や、飯能市の風景などを国際興業バスに描いたラッピングバスが、飯能駅~名栗・湯の沢間を中心に、飯能市や日高市内で路線バスとして運行された。また、飯能市内で開催される行事や、『ヤマノススメ』関連イベントなどでも使用された。一般の貸し切りバスとしても利用された。「見て楽しい、乗って楽しいバス」と銘打ち、車体外側だけでなく、乗車口の整理券発券機や降車ボタン、天井、シート、つり革など車内の随所にもイラストが施された。また車体外側のイラストは2種類用意され、各車両によりイラストの配置が異なっている。

西武鉄道池袋線「ヤマノススメトレイン」

2018年6月25日より西武鉄道池袋線で「ヤマノススメトレイン」が運行され、車内すべてのポスターが『ヤマノススメ』一色となった。また、車内デジタルサイネージ「Smileビジョン」では、TVアニメの「ヤマノススメ」第1期全12話が一挙公開された。

近江鉄道「八幡山ロープウェイ」

2015年、近江鉄道の八幡山ロープウェイで、『ヤマノススメ』とのコラボレーション企画が実施され、6月28日まで『ヤマノススメ』仕様にラッピングしたロープウェー搬器が運行された。展望館では作品パネル展を開催し、4月25日から11月29日にかけて、八幡山をバックとした描き下ろしイラストを使用した記念乗車券や、コラボグッズが販売された。

埼玉県飯能市「飯能アニメツーリズム実行委員会」

物語の主な舞台とされる埼玉県飯能市は、2013年度から市のイメージアップ戦略の一つとしてアニメを活用した地域振興を始めた。同年2月に設立された飯能アニメツーリズム実行委員会を中心に、飯能市の賑わい創出と交流人口の増加に資することを目的に、飯能地域ゆかりのアニメや漫画作品を活用した事業を推進。割岩橋のライトアップに『ヤマノススメ』のキャラクター投影を行ったり、第16回飯能新緑ツーデーマーチにて「ヤマノススメウオーク」を実施。ほかにも舞台探訪マップ「ここなの飯能大冒険マップ」の配布、聖地巡礼ツアーやスタンプラリーの実施、市のイベント会場でブースを設けたり、ラッピングバスの運行なども行った。

メディアミックス

TVアニメ

2013年1月から3月にかけて、本作『ヤマノススメ』のTVアニメ版『ヤマノススメ』が、5分の短編アニメとして、TOKYO MX、サンテレビ、AT-Xなどで放送された。2014年7月から12月にかけては、第2期『ヤマノススメ セカンドシーズン』が1話15分に拡大され放送。さらに、2018年7月から9月にかけて、第3期『ヤマノススメ サードシーズン』が、第2期と同様に1話15分で放送された。キャストは、雪村あおいを井口裕香、倉上ひなたを阿澄佳奈、斎藤かえでを日笠陽子、青羽ここなを小倉唯が演じている。

登場人物・キャラクター

雪村 あおい (ゆきむら あおい)

高校1年生で、ミディアムショートで前髪の左側に髪飾りを付けている。人見知りが激しく、他人の気持ちに合わせて行動することが苦手な性格の持ち主。小学生のときにジャングルジムから落ちて以来高所恐怖症でもある。幼馴染のひなたとの子供の頃の約束をきっかけに、登山を始めるようになる。登山に関してはまったくの素人で、ネットや知人からの情報を元に手探り状態で登山に挑むこともしばしば。 富士山登頂中に高山病にかかり引き返し、みんなに迷惑をかけたという自責の念から、もう登山を止めようかと思うほど精神的に落ち込むが、ひなたをはじめ周りの人々の助けを元に再び登山を始める。

倉上 ひなた (くらうえ ひなた)

高校1年生で、ツーサイドアップの髪型。あおいの幼馴染。明るく積極的な性格で社交性も非常に高い。一見大雑把に見えるがあおいの気持ちを汲み取ろうとする繊細な面も併せ持っている。中学であおいとは疎遠になるが、高校で再会。半ば強引にあおいを登山に誘う。父親もアウトドア系の趣味をもっており、道具を借りたり助言をしてもらう時もしばしばある。

斎藤 かえで (さいとう かえで)

あおいと同じ学校の2年生。ロングストレートの髪型にメガネを着用する女子。登山洋品店でシェラフ選びであおいに助言を求めたことがきっかけで知り合いになる。以前から登山が趣味で、あおいたちに自分の体験や知識を教えてくれるよき先輩。山のこと以外にはあまり興味がなくファッションに無頓着、料理が苦手。 クラスメイトからは「スタイルよくて頭もいいけど山登っている変な人」と捉えられている。理解してくれる人が少なかったため単独登山が中心だったがあおいたちと交流する中で、登山に関する考えや人との係わり合い方が徐々に変化してゆくこととなる。

青羽 ここな (あおば ここな)

ウェーブのかかったロングヘアに左前髪を三つ網状に結っている。中学二年生の女子。モモンガを見るために高尾山に来ていたところ、あおいたちと出会う。かわいい動物が好きで登山の目的が動物鑑賞であることも。両親が仕事で不在がちのためか、家事全般が得意でしっかりした意見を言うときもある。メインメンバーの中では一番かわいい服装を着ることが多く、あおいの第一印象も「森の中で森ガール」だった。

笹原 ゆうか (ささはら ゆうか)

ミディアムショートで左右の前髪にヘアピンをつけた髪型の女子。高校2年生でかえでの同級生。一人で山に登りがちなかえでに対して小言が多いが、それだけ友人として真摯に心配している。登山に対しては興味がなかったが、かえでの好きなものということで徐々に興味がわいてくる。登山用の服を買いに出かけたときに、かえでから紹介されあおいと出合った。 以後はあおいたちと時々登山する仲になる。

千住院 小春 (せんじゅいん こはる)

ショートカットで背の低い女子。かえでと同じ高校2年生。あおいたちの高校の登山部部長で、かえでやあおいを何度か登山部に勧誘している。登山のインターハイを目指しており、日頃から体力作りに余念がない。登山スタイルの違いからあおいに入部を断られているが、特に気にせずトレイルランニングや冬山登山に同行したり、部室の備品を貸したりと交流を深めている。 ここなと初対面の時に、背伸びして張り合ったところから、背の低さを気にしているようだ。

黒崎 ほのか (くろさき ほのか)

高崎に住む中学3年生の女子。谷川岳で風景写真を撮っていたところ、雪村あおいと出会った。ショートヘアのためにボーイッシュで快活そうに見えるが、どちらかといえば他人とのかかわりがあまりうまくなく、友達もあまりいない。口下手で、自分の気持ちを人に伝えるのが苦手ながら、写真撮影に関することになると口数が増える。谷川岳の山小屋では、あおいと同行していた倉上ひなた、青羽ここな、斎藤かえでと食事を共にしたのち、風景写真に対する思いに共感したあおいからの申し出を受け、連絡先を交換した。その後も連絡を取り合い、あおいに地元を案内したり、いっしょに伊香保温泉に遊びに行ったりと交流を続けている。夏休みには、予定していた登山にあおいやひなた、ここなも同行することになり、それ以降いっしょに登山することが増え、さらに親しくなっていく。もともと写真撮影が趣味で、風景をメインに撮影を行っていたが、ここなのかわいらしさに心を奪われ、ここなの写真を撮りたいと思うようになる。それ以来、あおいといっしょに予定を立てる際には、ここなも誘いたいと思うようになるが、口下手で恥ずかしがり屋のため、なかなか言い出すことができずにいる。ほのかの兄とは非常に仲がよく、登山に出かける際には車を出してもらうこともある。高校入学後は写真部に入部した。カメラを通して理解し合える友達ができ、写真撮影のための登山に、より積極的になっていく。

小野塚 ひかり (おのづか ひかり)

セミロングのウェーブをワンサイドアップにした女子大学2年生。あおいのバイト先である洋菓子店の先輩店員。社交的で明るく、すぐ恋愛話に持っていこうとする、今時の大学生。初めてのバイトを体験するあおいに対し、少々強引ながらも的確なアドバイスで指示するなど、仕事ぶりは優秀。ダイエットと称して強引にあおいを登山に誘ったときもあったが、彼氏に振られたゆえの行動であり、逆にあおいに励まされるような一面も持つ。

あおい母 (あおいはは)

あおいの母親。出張で不在がちな父親の分まであおいの面倒を見ている。登山を始めたことで変化する娘の心境を、時に厳しくも優しく見守っている。内気だったあおいが、知らない間に成長してゆくことに対し嬉しい反面、寂しさも感じている。作品中で氏名は明記されていない。

あおい父 (あおいちち)

あおいの父親。基本登山好きで、出張先からあおいと妻を登山に呼び出したことも。クッカー一体型ストーブを購入するなど、アウトドア好き。登山目的は山そのものより城跡、遺跡巡りにあり、その点では娘の共感を得られていないようだ。ただし火気厳禁を知らずに山でストーブを使おうとするなど、詰めが甘いところもある。 漫画内では氏名は明記されていない。

倉上 健一 (くらうえ けんいち)

倉上ひなたの父親であり、登山やアウトドアの経験者としてひなたやあおいに道具や山について助言する。幼い頃は家族ぐるみで交流していたこともあり、あおいとも物語初期から親しい。

ひなたの母 (ひなたのはは)

倉上ひなたの母親。明るくてマイペースな性格で、気遣いがうまいところがひなたとよく似ている。つねに会社にこもりきりで、忙しい毎日を送っているが、最近は新人が使えないことで余計な負担が増え、疲れ切っている。そんな中、一日羽を伸ばすと決め、夫の倉上健一に旅行の計画を立てるように依頼。そして遊びに来ていた雪村あおいも誘い、家族旅行と称して登山も含めた鎌倉旅行に行くことを決める。基本的に人を強引に自分のペースに巻き込むタイプだが、気遣いと感謝は忘れない。

ここなの母 (ここなのはは)

青羽ここなの母親。会社勤めをしており、夜遅くに帰宅する忙しい毎日を送っている。少々あわてん坊なところがあり、頼りない印象を与える。夫も忙しいために、ここなを一人で過ごさせることが多く、寂しい思いをさせていることを気にしている。ここなの誕生日には会社を早く退社するが、それでも時間は夜10時を過ぎていたため、ケーキ屋で誕生日ケーキを買うことができず、コンビニエンスストアで購入したケーキでお祝いすることになった。プレゼントは以前からハイキングシューズを購入し、クローゼットに隠していたが、誕生日当日にここなに見つかってしまう。その後、ちゃんとしたケーキで誕生日を祝ってあげたいと、会社帰りに洋菓子店に飛び込む。希望のショートケーキは売り切れだったが、登山が好きな娘のためにと説明したところ、アルバイト中の雪村あおいと小野塚ひかりから、山の名前が由来となっているモンブランを勧められる。そしてここなに、モンブランと山のつながりについて得意げに解説した。

ほのかの兄 (ほのかのあに)

黒崎ほのかの兄。長髪で前髪をヘアバンドで上げ、ヤンキー然とした男性。見た目のどおりのチャラ男でかなりのお調子者だが、意外にも料理が得意など家庭的なところもある。ほのかのことが大好きで、ついついいじってしまう。酒と車が大好きで、走行距離5万キロで70万円台ながら、いい状態で買った中古車が自慢。愛車のことになると非常に饒舌になる。ほのかが登山に行く時には車を出してあげることもある。付き合っているはるかから、山の上は紫外線が強いことについて相談を受けたことに端を発し、富士山に行くほのかに日よけ付きのサンキャップをプレゼントする。

はるか

ほのかの兄と付き合っている女性。チャラいほのかの兄とはかけ離れた印象の清楚なタイプ。黒崎ほのかと雪村あおい、倉上ひなたが蓼科山に行く際にほのかの兄の車に同乗し、「恋人の聖地」と呼ばれる場所を訪れる。それまではあまり山に行ったことがなく、山で見た景色に感動するものの、蓼科で強い紫外線にさらされて首筋を日焼けし、山の紫外線は強いという教訓を得た。そのため、ほのかが富士山に行くと聞いた際には、ほのかの肌を心配してほのかの兄に相談。彼がほのかに日よけ付きのサンキャップをプレゼントするきっかけを作った。

みお

高校1年生の女子。雪村あおいのクラスメイト。かすみとゆりと仲がよく、校外でもよく行動を共にしている。ポニーテールの髪型で、明るい性格の持ち主。入学したばかりの時、クラスメイトを誘って食事会を開催した。あおいにも誘いの声をかけてみたものの、法事と食事の買い出しを理由に断られてしまう。あおいのテンパった様子に若干引いてしまい、それ以降、しばらくかかわりを持つことはなかった。しかし夏休みが明けた2学期、日に焼けて、以前と雰囲気が変わったあおいに再び声をかけた。今度は話にも乗ってくれたため、あおいを放課後の遊びに誘って以来、あおいや倉上ひなたと親しくなっていく。細かいことはあまり気にしないタイプで、友達付き合いがうまい。

かすみ

高校1年生の女子。雪村あおいのクラスメイト。みおとゆりと特に仲がよく、校外でもよく行動を共にしている。実はあおいと同じ中学校出身で、同じクラスだったこともある。あおいに対しては、いつも一人で付き合いが悪く、声をかけても変な断り方をすると、ネガティブなイメージを持っていた。高校入学直後はそのイメージのままだったが、2学期を過ぎた頃から変化を実感する。その後、みおやゆりと共に、あおいと倉上ひなたを誘ってカラオケに行って以来、かかわりを持つようになる。その後、お正月にはあおいの案内で高尾山に初詣に行った。思ったことはなんでもずけずけと言葉にしてしまうが、悪気はまったくなく、素直な性格をしている。あおいから、元クラスメイトだったことも認識されていなかったと知るが、高尾山であらためてよろしくと友達宣言した。2年生に進級し、仲間内では唯一あおいと同じクラスになる。人付き合いが苦手なあおいをフォローしつつ、より親しくなっていく。建築物に興味があり、その構造にも詳しい。

ゆり

高校1年生の女子。雪村あおいのクラスメイト。みおとかすみと特に仲がよく、校外でもよく行動を共にしている。2学期を過ぎた頃から、あおいや倉上ひなたにも声をかけるようになり、かかわりを持つようになる。その後、お正月にはあおいの案内で、高尾山に初詣に行った。その際、なんでも思ったことを口にしてしまうかすみの様子を見て、あおいに彼女は口は悪いが悪い子ではないからとフォローするなど、友達思いの優しい性格をしている。

場所

飯能市 (はんのうし)

『ヤマノススメ』に登場する街。あおいが住み、通学する高校があると設定されている。埼玉県に実在する市である。最初に登る天覧山をはじめ飯能の近場の山が舞台になることも多い。市内の風景や建物がエピソードに登場することもしばしばある。

富士山 (ふじさん)

『ヤマノススメ』であおいが登山した山のひとつ。誰もが知る静岡県と山梨県に跨る日本一高い山であり、世界文化遺産に登録されている。作中ではあおいが高山病によって中途下山を強いられた(単行本10巻中)唯一の山であり、あおいにとって非常に印象深い場所となっている。

その他キーワード

西武鉄道 (せいぶてつどう)

『ヤマノススメ』に登場する鉄道機関。埼玉県所沢市に本社を置く鉄道事業者で、飯能駅から池袋駅を結ぶ西武池袋線と、吾野駅から正丸駅を結ぶ西武秩父線がたびたび作中に登場する。あおいたちが目指す山に移動するときに主に使用している。ただし、作中では交通機関描写は詳細ではなく、紹介程度に終わっていることが多い。

アニメ

ヤマノススメ

インドア派な女子高校生雪村あおいは、入学した高校で再会した幼なじみ倉上ひなたに登山に誘われる。倉上ひなたに、幼いころ2人で一緒に見た山頂の朝日をもう一度見ようと言われるが、高所恐怖症ということもあり、... 関連ページ:ヤマノススメ

書誌情報

ヤマノススメ 25巻 アース・スターエンターテイメント〈アース・スター コミックス〉

第22巻

(2022-09-12発行、 978-4803016895)

第23巻

(2023-04-12発行、 978-4803017717)

第24巻

(2023-12-13発行、 978-4803018776)

第25巻

(2024-09-12発行、 978-4803020069)

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