概要・あらすじ
ヒマラヤ山麓に位置するアスコーレ村に少女レナと住む、国籍・年齢・名前が謎の男は、ただKと呼ばれる。未登攀ルートで救出不可能な遭難事故が起きたとき、高度山案内人やポーターたちは口々に「Kならあるいは」と言う。山岳民族グジュツ族の術を身に付け、大いなる山を神として畏れ敬いつつも一体化し、ごく僅かな自然の兆しを感じ取って登攀に結びつける、そんな世界最強のクライマーが、ヒマラヤの巨人峰(ジャイアンツ)に倒れた男たちの命の火を救いに登る物語。
登場人物・キャラクター
K (けい)
ヒマラヤ山麓に位置するアスコーレ村に、地元の少女レナと住む、国籍・年齢・名前が謎の男。すさまじく急激な天候の変化や、人を拒む氷壁や岩壁の構造、そしてごく僅かな自然の兆しを感じ取って、不可能と言われるヒマラヤの巨人峰のルートを登攀し、救出不可能と思われていた遭難者を救う。山に戦いを挑むことを決意すると、髭をそって身を清める習慣がある。 山岳民族グジュツ族の術を身に付け、治療が難しいとされる凍傷も山中で癒やす。
レナ
ヒマラヤ山麓に位置するアスコーレ村で、Kと暮らす地元民の少女。Kから、彼が遭難救助活動に挑む前に、「もし俺が帰ってこなかったら、スカルドのドナティ爺さんのところへ行け」と言われる。
ナワン・ドール
第1話に登場。世界の三大北壁を登り、天才クライマーと呼ばれていた。父親は石油王ヤマニ・ドール。K2の北壁に挑んで滑落し、地元民が神の住む場所として恐れるアッラー・フェイスの岩棚に引っかかって動けなくなり、救助を待つことになる。
A (えい)
第2話に登場。夜中にKを誘拐してヘリで移動し、乗組員を全員射殺してから、プモ・リに登るようKをウージー機関銃で脅迫した。KにはAとだけ名乗っている。「神の渡り道があるから、その名の通り人間は渡れない」と答えるKを許さず、何度もトラブルに巻き込まれながらも、二人で「神の渡り道」まで登攀していった。
レド・パオレ
第3話に登場。3年間、スイスで本格的な山岳救助隊の訓練を受けたシェルパーの青年。父のドド・パオレが、シェルパー頭としてイギリス隊のサポートに付いていたが、エベレスト南西壁で滑落。ドドはバットレスという逆層の赤茶けた絶壁の亀裂部に引っかかった。ドドの救助のためにKが呼ばれたが、彼はバットレスを双眼鏡で見るなり、無言で帰ってしまう。 3ヵ月後、レドはKの家に赴き、臆病風に吹かれたとKをあざ笑い「オレはバットレスを登って父の遺体を降ろす」と宣言する。
片平有也 (かたひらゆうや)
第4話に登場。ヒマラヤのマカルーに挑む日本の登山隊の一員。30歳で、今売り出し中のアルピニスト。姉から、五年前K2の北壁で遭難した婚約者、一ノ瀬高志との思い出の品をヒマラヤに捨ててきてほしいと頼まれていた。マカルーの西壁直登ルートを登頂中、多発した雪崩のために遭難する。
ジェシー・リプスン
第5話に登場。父は、千のビルを所有するといわれるアメリカのビル王、E・H・リプスン。ヒマラヤのカイラス北壁に挑んで、遭難する。カイラスはヒンズー教の神、シヴァの王座がある山とされ、敬虔なヒンズー教徒であるシェルパー族は、決して登ろうとしなかった。このため、貧しいシェルパーのチゴールだけが金のために挑むが、北壁の難易度の高さに失敗。 Kは、わずかな可能性を見出し、カイラスに挑もうとする。
チゴール
第5話に登場。若く貧しいシェルパー族の青年。好きな娘が、有力者の第七夫人となることに耐え切れず、金のためにカイラス北壁に挑む。が、氷壁の厳しさに挫折してしまい、金を取り上げられる。絶望しているところに、Kが現れる。
集団・組織
グジュツ族 (ぐじゅつぞく)
『K』に登場する集団。山岳部族、と作品中で言われている。Kは彼らと一時期生活をともにしたことがあり、大鹿の太腿を用いて凍傷を治療する技、冷えきった体をカレールーを飲むことで活性化させる技、大声を出さずに煙と臭いでによって遭難者を発見する技など、様々な知恵を吸収したと述べている。これ以外にも、大自然と一体化し、些細な動静や兆しに注意を払いつつ登攀していく方法など、Kが彼らとの生活で学んだものは多かったと思われる。
場所
K2 (けいつう)
パキスタンと中国のウイグル自治区の国境にある、カラコルム山脈に属する山。K2はKarakorum No.2の略であり、標高は8611mで世界第2位の高さ。カラコルム山脈の最高峰。「世界一登ることが困難な山」、「非情の山」と言われる。作品中に、アッラー・フェイスという登頂困難箇所が登場する。
プモ・リ
中国チベット自治区とチベットの境界にあるヒマラヤ山脈の山。標高7161m。プモ・リは、シェルパ語で「娘の山」を意味する。『K』の作品中では、「神の渡り道」と呼ばれる絶壁があり、人間を寄せ付けない構造になっている。乱気流がひどく、ヘリコプターでは近づけない。
エベレスト南西壁バットレス (なんせいへき)
エベレストの標高は8848 mで世界最高峰の山、ヒマラヤ山脈にある。チベット名ではチョモランマ、ネパール名ではサガルマータ。バットレスとは、山を支えるように頂上に向かってせり上がっている垂直に近い岩壁をいう。『K』の作品中では、「南西壁にある、逆層のため雪もつかない赤茶けた絶壁」と描写される。
マカルー
標高は8463 mで、ヒマラヤ山脈にある世界第5位の巨峰。「世界でも屈指の登りづらい山」と言われている。『K』の作品中では、「マカルーの西壁は、別名雪崩の壁とも言う」とKが述べている。
カイラス
標高6656m。信仰の山で、登頂許可は下りず、よって未踏峰である。サンスクリット名はカイラーサ。ジャイナ教・チベット仏教・ヒンドゥー教・ボン教で聖地とされる。『K』の作品中では、「カイラスはヒンズー教の神シヴァの王座がある山とされ、ヒンズー教徒にとって登ることが許されない山であった」と言及されている。