ルシフェルの右手

ルシフェルの右手

芹沢直樹が長期連載となった『猿ロック』完結から約4か月後にスタートした作品。横浜の皆戸野医院を舞台に、かつてアフリカの某国で兵士を殺害した過去を抱え、医師失格の烙印として右手に堕天使「ルシフェルの刺青」を刻んだ勝海由宇が、再び医療の道に携わる姿を描いたドクターサスペンスドラマ。講談社「モーニング」2010年13号から2011年44号まで連載。

正式名称
ルシフェルの右手
ふりがな
るしふぇるのみぎて
作者
ジャンル
医者・看護師
 
戦争
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
全6巻完結
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戦場のトラウマと再起

外科医の勝海は、救護活動のためにアフリカに滞在中、ゲリラと政府軍の戦闘に巻き込まれ、仲間を守るためにやむを得ず銃を手にし、兵士の命を奪ってしまう。失意のまま帰国した勝海は、自らを「医者でありながら人を殺した最低の人間」と自戒し、横浜で荒れた生活を送っていた。そんなある日、勝海はチンピラの船木との喧嘩が原因で重傷を負い、倒れてしまう。意識が薄れる中、死を覚悟した勝海だったが、気がつくと皆戸野医院の病室で皆戸野の治療を受けていた。その後、皆戸野医院に運び込まれた船木を勝海が救命したことで和解し、その手際を見た皆戸野から自分の病院で働かないかと誘われる。しかしその直後、皆戸野が被殻出血で倒れ、彼が勝海の幼い頃に母親の命を救ってくれた恩人であることを思い出す。勝海は皆戸野に恩を返すため、彼が復帰するまで皆戸野医院を支えることを決意する。

皆戸野医院に集う人々の群像劇

勝海が勤務する皆戸野医院は、貧困のために保険証を持たない人々や、裏社会に身を置かざるを得ない患者など、困難な状況にある人々を分け隔てなく受け入れている。船木の恋人であるジョアン、元競輪選手の磯貝、家庭問題を抱える少女、向井渚とその母親の典子など、さまざまな背景を持つ患者たちを救ってきた。当初は小規模な医院だったが、かつて勝海とその恋人を救ってくれた皆戸野への恩返しを願う元チンピラの船木、強気で情に厚いエリート医師の七海翔子、そして、過去に大切な人々を目の前で失い、自身の無力さに苦悩してきた麻酔科医の沖田龍生など、勝海や皆戸野に引けを取らない個性豊かな面々が次第に集まるようになった。その中で事務員として働く佐倉江利子は、自身を救ってくれた皆戸野に強い恩義を感じている一方で、記憶喪失でありながら卓越した医療技術を持つなど、多くの謎を秘めている。

皆戸野医院を脅かす悪の組織

かつて船木が働いていた外国人パブを裏であやつっていたアジア系マフィア「ハイドラ」は、専用の船を用いて違法な輸送や取引を繰り返していた。その影響力は日本、中国、アフリカなど広範囲に及び、船木の恋人のジョアンを人質に取り、対立する講談組の幹部を殺害するよう船木に強要していた。さらに、船木の友人であるムウとセーン姉弟の命を狙い、その治療の成否を賭博の対象にするなど、非道な行為を重ねていた。やがて、ハイドラの魔の手は皆戸野医院にも及び、勝海や佐倉は彼らの陰謀に翻弄されることとなる。

登場人物・キャラクター

勝海 由宇 (かつみ ゆう)

皆戸野医院に勤務する外科医の男性。長髪に黒縁眼鏡をかけている。厳格な性格で自己管理を徹底し、筋が通っていれば自分に危害を加えようとする者でさえも救命する。また、必要に応じて仲間の協力を求めたり、ハッタリを使って危機を乗り越えたりと、柔軟な思考も持ち合わせている。天才的な医術の腕前を誇り、その技術と人命救助への強い情熱で多くの患者を救ってきた。かつては、政治、宗教、人種を問わず救援活動を行う医師団に所属し、アフリカで医療活動に従事していた。そんな中、ゲリラに拉致され救護を強要されるも、民間人とゲリラ双方の命を平等に救うことで信頼を得ていく。過酷な環境下で人を救うことに生きがいを感じるようになるが、新大統領の強硬政策により内戦が勃発。仲間を守るためにやむを得ず銃を取り、兵士を殺害してしまう。この出来事を戒めとするため、右手に堕天使「ルシフェル」の刺青を入れ、「ドクター・ルシフェル」と呼ばれるようになった。

皆戸野 (みなとの)

皆戸野医院の院長を務める男性。卓越した医術と公平な姿勢で、多くの人々に慕われている。その人柄と技術が高く評価され、資産家の婿養子となり、京浜医科大学の有力者へと上り詰めた。しかし、勝海の母親に対して独断で脳死体からの肝臓移植手術を行ったことが周囲の反感を買い、病院内で異端者扱いを受けることになる。それでも、皆戸野自身は勝海の母親を救えたことを誇りに思っており、のちに妻と離婚し、京浜医科大学を去って皆戸野医院を開業する。開業後は、これまで以上に経済的に困窮している人々を積極的に支援し、その一環として記憶喪失で倒れていた女性に「佐倉江利子」という名前を与え、事務員として雇用した。勝海や佐倉から信頼され慕われており、皆戸野自身が被殻出血で倒れた際には、皆戸野医院の業務を彼らに託している。

書誌情報

ルシフェルの右手 全6巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2010-08-23発行、978-4063729375)

第2巻

(2010-11-22発行、978-4063729603)

第3巻

(2011-02-23発行、978-4063729795)

第4巻

(2011-06-23発行、978-4063870107)

第5巻

(2011-09-23発行、978-4063870411)

第6巻

(2011-10-21発行、978-4063870497)

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