レディー・ヴィクトリアン

レディー・ヴィクトリアン

ガヴァネスを目指してロンドンへ出てきたブルーベル・リリー・エヴァローズ(ベル)。「銀のレディー」と呼ばれるレディー・エセル・コンスタンシアや、ベルの大好きな雑誌を作っている雑誌編集者のノエル・スコットとの出会いをはじめ、ロンドンでの刺激的な日常を舞台に繰り広げられる、ベルのヴィクトリア朝ラブロマンス。

正式名称
レディー・ヴィクトリアン
ふりがな
れでぃー ゔぃくとりあん
作者
ジャンル
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

立派なレディーになるため、ウィンチ村からガヴァネスを目指してロンドンにやってきたブルーベル・リリー・エヴァローズ(ベル)。しかし、ロンドンに到着してすぐ、実家から送ってもらったトランクに死体が入っているという知らせを受ける。まったく身に覚えのないベルだったが、警察には取り合ってもらえない。そんな時に助けてくれたのは、美しい銀のレディー、レディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)と雑誌編集者のノエル・スコットであった。

レディー・エセルの協力とノエルのレディーズ・マガジンに載ったことから、ベルの無実が証明され、無事監獄から出ることができたのであった。

登場人物・キャラクター

ブルーベル・リリー・エヴァローズ (ぶるーべるりりーえゔぁろーず)

ウィンチ村から、ガヴァネスになるためにロンドンへとやって来た少女。はじめはお屋敷で雇ってもらえず、下っ端のガヴァネスとしてなんとか頑張っていたが、ノエル・スコットやレディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)との出会いによって、環境が一変する。クローブ男爵夫人のもとでポーリーという少女のガヴァネスとして勉強を教えながら、時折ノエルと会ったり、レディー・エセルからレディーになるための教育を受けている。

レディー・エセル・コンスタンシア (れでぃーえせるこんすたんしあ)

表向きはレスターベリー侯爵家の令嬢だが、実は男性で本名は「アージェント・グレイ」という。幼い頃に救貧院からレスターベリー侯爵のもとへ連れてこられて、病弱だったエセルの代わりとなるように育てられた。それ以来、美しく気高い女性として、他の女性たちの憧れの的となっている。しかし、自分に媚を売るような女性は嫌い。

アージェント・グレイ (あーじぇんとぐれい)

レディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)の男性としての本来の姿で、小説家。下町訛り(コックニー)が取れず、口調は少々乱暴ではあるが、優しいところはレディー・エセルと変わらない。アージェント・グレイでいる間は、子供っぽい一面を見せることもある。

ノエル・スコット (のえるすこっと)

出版社「スコット出版」の社長を務める金髪碧眼の男性。何度もブルーベル・リリー・エヴァローズにプロポーズしているが、その都度断られている。雑誌編集者としての腕は超一流。レディー・エセル・コンスタンシアの正体が「アージェント・グレイ」だと知る数少ない人物。誠実な性格だがあまり本心を見せない。

銀盗人 (しるばーしーふ)

レディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)を気に入って「私の銀のレディー」と称し、何度もさらおうと試みている怪盗の男性。ウォーリック城でも、レスターベリー城でもレディー・エセルのことを連れ去ろうとしたが、毎回ブルーベル・リリー・エヴァローズに阻まれている。

クローブ男爵夫人 (くろーぶだんしゃくふじん)

ポーリーの母親で、ブルーベル・リリー・エヴァローズ(ベル)の雇い主。ポーリーのガヴァネスが何度も辞めていることを気にかけていて、ポーリーが懐いているベルに対してとても友好的。普段は、ポーリーをケントに住んでいるマダム・セーラのもとに預けている。

ポーリー

クローブ男爵夫人の娘で、マダム・セーラの孫娘。ブルーベル・リリー・エヴァローズの教え子で、利発な少女。レディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)に憧れており、レディー・エセルに会うとつい見とれてしまう癖がある。

レスターベリー侯爵 (れすたーべりーこうしゃく)

レディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)とマーティン卿の父親。侯爵夫人のことをとても愛しており、救貧院にいたアージェント・グレイを引き取ってきてばあやに預け、レディー・エセルとして育て上げた人物。レディー・エセルを愛しており、アージェント・グレイとして作家活動をしていることも知っている。

マーティン卿 (まーてぃんきょう)

レスターベリー侯爵が持つ2番目の爵位、伯爵位を名乗るレスターベリー家の長男。きさくな性格でブルーベル・リリー・エヴァローズにも優しい。レディー・エセル・コンスタンシアが実は男性だということは知っていたが、アージェント・グレイとして作家活動をしていることまでは知らなかった。

マダム・セーラ (まだむせーら)

クローブ男爵夫人の母親で、ポーリーの祖母。温和で優しい女性で、娘時代には「社交界の真珠」と呼ばれていたほど。プロポーズの男性の列が、門の外まで続いていたという伝説を持つ。レディー・エセル・コンスタンシアが憧れている女性でもある。

バレンタイン

本物のエセルのいとこにあたり、15歳の時にレディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)と結婚の約束をした男性。レディー・エセルととてもよく似ていて、天使のような顔立ちをしている。思い込みが激しく、レディー・エセルとノエル・スコットが付き合ってると芝居をした時も、すぐにそうだと信じてしまう。

ばあや

現在レディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)のお付きをしている老婆。昔はフローレンス・ナイチンゲールと共に戦場を巡り歩いた看護婦で、その頃に見初めた兵士の男性と結婚した。夫が早くに亡くなったため、レスターベリー侯爵に雇われ、レディー・エセルを一人前のレディーになるように育て上げた人物でもある。

エセル

本物のレディー・エセル・コンスタンシア(レディー・エセル)になるはずだった少女。病弱で10歳になる前に病死した。天使のように可愛らしく、マーティン卿にもとても可愛がられていた。彼女が亡くなったことにより侯爵夫人は心を病んでしまい、これ以上病状が悪化しないようにと、アージェント・グレイによる「レディー・エセル」が作り上げられた。

侯爵夫人 (こうしゃくふじん)

レスターベリー侯爵の夫人。娘であるエセルを亡くしてしまったために、心を病んでしまったか弱い女性。現在はレディー・エセル・コンスタンシアのことを本当の娘だと思い込んでおり、2人の関係はまさに母親と娘そのもの。レスターベリー侯爵とは相思相愛。

シメオン・ムーア (しめおんむーあ)

ノエル・スコットの幼なじみで、情報コレクターの男性。あらゆる情報を集めているが、特定の相手に情報を売りつけることはない。ノエルには比較的優しく、彼とはギブアンドテイクな関係を築いている。必要があれば女装をし、「シモーヌ・ムーア」の名を名乗る。

エヴァローズ牧師 (えゔぁろーずぼくし)

ブルーベル・リリー・エヴァローズの父親。普段はウィンチ村の牧師をしていたが、仕事でロンドンに出るたびに救貧院に寄って、自分で作った童話を語り聞かせていた。既に亡くなっている。

カレン・グリーン (かれんぐりーん)

ジェームス・ブラッドリーとの恋に苦しみ、テムズ川に身を投げようとした女性。ブルーベル・リリー・エヴァローズとは、ガヴァネスの協会で職を探していたときに面識があった。はかなげで美しく、しかし芯のしっかりとした人物。

ジェームス・ブラッドリー (じぇーむすぶらっどりー)

カレン・グリーンの恋の相手の男性。いいところの貴族の長男で、婚約者はもちろん貴族だが、遊び心でカレンに手を付けた。その後カレンに本気になってしまったものの、ジェームス・ブラッドリーのためを思ったカレンからきっぱりと別れを切り出されてしまう。

アリシア・ブラッドリー (ありしあぶらっどりー)

ジェームス・ブラッドリーの妹で、カレン・グリーンがガヴァネスとして勉強を教えていた少女。凛としてい大人びていて、兄であるジェームスにも自分から意見するほど。カレンとジェームスが結婚すればいいと思い、行動していた。

トミー

出版社「スコット出版」の下働きをしている少年。よく働く少年で、ノエル・スコットや他の「スコット出版」のメンバーにも好意的に受け止められている。まだ小さいということもあり、クリスマスの時には特にねぎらわれた。

ミセス・バートン (みせすばーとん)

レディーズ・マガジンに料理やインテリアなどの若い女性に人気のある記事を書いている、ふくよかな女性。彼女の記事が載っているのと載っていないのとでは、売り上げにも大きな差が出るほど。ノエル・スコットのことを未だに子供扱いしている節がある。

アン・アニス・シェリー (あんあにすしぇりー)

出版社「スコット出版」に絵を持ち込んだ、挿絵画家を目指す女性。ミセス・バートンを通じてノエル・スコットと出会い、彼から挿絵を頼まれるようになる。付き合いを続けるうちに彼に興味を抱き、だんだんと好意を寄せるようになっていく。しかし、アージェント・グレイの天使のような容姿に惚れこみ、彼をモデルにしたいと熱心にアージェントの元に通ってしまうようになる。 それがきっかけで、本格的に絵の修業がしたいとミセス・バートンに言い出す。

ジョン・フォスター (じょんふぉすたー)

画家の男性。ノエル・スコットとは幼なじみで、ノエルの父親とも親交が深かった。田園の子供たちを描き続けている画家で、とても人気がある。ブルーベル・リリー・エヴァローズの兄、ウィル・エヴァローズも彼の画集を持っている。

マシュー・エヴァローズ (ましゅーえゔぁろーず)

ブルーベル・リリー・エヴァローズ(ベル)の弟。病弱で日々のほとんどを寝込んでいるが、ベルの前では明るく元気に振る舞おうとしている。本と絵が好きで、ベルがノエル・スコットと共にウィンチ村に帰ってきた時には、ノエルに絵を習っていた。

ウィル・エヴァローズ (うぃるえゔぁろーず)

ブルーベル・リリー・エヴァローズの兄。エヴァローズ神父の後を継いで、折り目正しいウィンチ村の神父を務めている。軽い男性だと思っていたノエル・スコットに対し、当初は厳しい態度を取っていたが、彼の人柄を知るにつれて徐々に軟化する。

ミスター・ゲイブルズ (みすたーげいぶるず)

ノエル・スコットの義理の父親。元々リネットの婚約者だったが、リネットがノエルの父親と駆け落ち結婚してしまったため、婚約は一度破棄された。ノエルの父親が死亡した後にロンドンでリネットと再会し、結婚する。

リネット

ノエル・スコットの実の母親。いるだけで周囲を明るくするほどの楽天家で美人。12歳のノエルをロンドンに残し、ミスター・ゲイブルズと共にアメリカに旅立った。ノエルと半分血を分けた息子がいたが、10歳になる前に亡くしている。

集団・組織

スコット出版 (すこっとしゅっぱん)

ノエル・スコットが発行者を務める出版社。出版社として立ち上げたのはノエルだが、元々はノエルの祖父が経営していた版画工房であった。現在も、祖父の代から働いていてくれている優秀な人材が多い。

場所

ロンドン

イギリスの首都。ブルーベル・リリー・エヴァローズがずっと憧れ、ノエル・スコットが働いている場所でもある。普段はレディー・エセル・コンスタンシアもロンドンに近いお屋敷に住んでいる。ハイドパークという楽しい公園がある反面、イーストエンドという治安の悪い場所もある。

ハイドパーク

ロンドンにある、乗馬もできる広い公園。働いている人がランチを取るのに使ったり、上流階級の貴族たちが乗馬で競い合ったりする光景が見られる。ブルーベル・リリー・エヴァローズとレディー・エセル・コンスタンシアが初めて会った場所。

ウィンチ村 (うぃんちむら)

ブルーベル・リリー・エヴァローズ(ベル)の出身地。エヴァローズ牧師の家がある場所で、ベルの家族が住む家がある。人より羊の方が多い、のどかな場所。ベルがここで暮らしていた頃は、2ペンスを握りしめては貸本屋に駆け込んで、本を読む毎日を送っていた。

チェルトナム

イギリス国内でも、ウィンチ村からロンドン方向に行ったところにある場所のことを指す。画家のジョン・フォスター氏が住んでいるため、ノエル・スコットはこの地に縁深い。

イーストエンド

ロンドンの、アージェント・グレイが幼少期まで育った場所で、救貧院がある。浮浪者や酔っ払いが多く存在し、鬱屈した雰囲気が漂う治安の良くないエリア。レディー・エセル・コンスタンシアはよくここにある救貧院で奉仕活動をしている。

フリート街 (ふりーとがい)

ロンドンの、新聞社や雑誌社が軒を連ねる界隈のこと。普段ノエル・スコットはここにある出版社「スコット出版」で働いている。レディーズ・マガジンの雑誌に載せる小説を渡すために、アージェント・グレイもよく訪れる場所。

レスターベリー邸 (れすたーべりーてい)

レディー・エセル・コンスタンシアが住んでいるお屋敷で、ロンドンの近くにある。レスターベリー侯爵やマーティン卿もここに住んでいるが、レスターベリー侯爵は忙しいため、あまり屋敷にはいない。

ウォーリック城 (うぉーりっくじょう)

レディー・エセル・コンスタンシアが招かれたパーティーの会場。ブルーベル・リリー・エヴァローズ(レディー・エセル)もレディー・エセルの話し相手(コンパニオン)として同行した。銀盗人が現れるということで、レディー・エセルは小説のネタになると興奮ながら、この城のパーティーに参加していた。

救貧院 (きゅうひんいん)

アージェント・グレイが生まれ育った場所で、レスターベリー侯爵に引き取られるまで、ここで暮らしていた。酔っ払いが監視を務めていたりして、環境は劣悪。そんななか、エヴァローズ牧師が訪れては聞かせてくれる童話は、アージェントの心のよりどころとなっていた。

レスターベリー城 (れすたーべりーじょう)

レスターベリー侯爵の持つカントリーハウスのこと。貴族が持つ領地内の屋敷のなかで、レスターベリー侯爵が所有している城。古くはハーグリーブス家が所有していた城のため、レスターベリー侯爵の関係者で内部構造について詳しく知るものはいない。

ケント

ブルーベル・リリー・エヴァローズが、ポーリーやマダム・セーラと共に暮らしているお屋敷がある場所。空気の良いちょっとした田舎で、ポーリーはここに来てから夢遊病に悩まされることなく、健康に暮らすことができるようになった。

カフェ・ロイヤル (かふぇろいやる)

皇太子も訪れるという一流のサロン。ブルーベル・リリー・エヴァローズ(ベル)も憧れているが、気後れして最初は入りたがらなかった。しかし、ベルの好きな小説家や画家が多数訪れていることを知り、レディー・エセル・コンスタンシアとマーティン卿と一緒に入ることになる。

その他キーワード

レディーズ・マガジン (れでぃーずまがじん)

出版社「スコット出版」の女性向けの雑誌。特にアージェント・グレイが書いている小説のおかげで飛ぶように売れており、ブルーベル・リリー・エヴァローズもそのファンの一人。発行者はノエル・スコット。

エヴァローズ牧師の童話集 (えゔぁろーずぼくしのどうわしゅう)

ブルーベル・リリー・エヴァローズ(ベル)の父親であるエヴァローズ牧師が、幼き頃のアージェント・グレイに語って聞かせた童話をまとめた童話集。企画の立案者はアージェント。エヴァローズ牧師の語り口調を一番よく知っているベルと、エヴァローズ牧師の話をよく覚えていたアージェントの協力により完成した。

クリスマス・プディング (くりすますぷでぃんぐ)

クリスマスに作られる定番お菓子。りんご、レーズン、ドライチェリーの砂糖漬け、シナモン、ナツメグ、アーモンド、バター、砂糖、ラム酒に小麦粉を混ぜ、プディング型に入れる。ふきんに包んでお鍋で蒸し、3週間寝かせておいて、クリスマスの日に温めなおして食べる。

ガヴァネス

女家庭教師のこと。この時代では唯一女性が就ける職業だった。ガヴァネスは屋敷に住み込みで働いているため、子供に教えることだけでなく、雑用を押し付けられることも非常に多い。労働環境は基本的に劣悪。子供に基礎的なフランス語や音楽などの勉強を教えることが、ガヴァネスの役割。

ガヴァネス・ローラ (がゔぁねすろーら)

普段は子供に勉強を教えているガヴァネスと、魅力的な雇い主とのラブロマンスを描いた、レディーズ・マガジンの看板小説。アージェント・グレイが執筆し、ノエル・スコットが編集を担当している。若い女性に大人気の作品で、この作品のおかげでレディーズ・マガジンは飛ぶように売れている。

アドベント・シーズン (あどべんとしーずん)

クリスマスまでの日曜ごとに、常緑樹のリースにキャンドルを1本ずつ立てていく行事。初めは1本ずつ赤のキャンドルを立て火を灯す。クリスマス直前の日曜日には、ピンクのキャンドルを立て、火を灯す。そして、クリスマス当日には真っ白なキャンドルを立て、火を灯すというのがルール。

彫版師 (ちょうばんし)

画家の絵をツゲの木に写し取って印刷用の木版を彫り上げるという手法を用い、絵を転写する手法を使う技師のこと。作中の時代では、写真技術で原画の線を木のブロックに転写できるようになっていたが、昔はこの手法が主流だった。

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