あらすじ
第1巻
高校1年生になったばかりの真神たかしは、部活レクリエーションで「ロック研究会」という部活動の存在を知る。そこは不二美アキラという地味で目立たない雰囲気の男子が一人で活動している部活だったが、アキラの演奏に強く惹かれたたかしは、入会を決意。アキラはかつてバンド活動に失敗した経験から、今後は一人で活動するつもりでいたが、たかしの執拗な勧誘に折れて彼とバンドを組む事を了承するのだった。それから3日後、二人は部員の獲得を目指し、昼休みの中庭でゲリラライブを敢行する。そこで急遽ボーカルに抜擢されたたかしは初めての歌唱に挑むが、人前で歌う事の難しさを痛感。結局あまりうまく歌えず、悔しい気持ちのままライブを終える事となる。そんな二人のもとに、一人の入部希望者がやって来る。
第2巻
1年生ドラマーの高座ひろきが加わった事で「ロック研究会」の会員は三人になった。さらにひろきの幼なじみでベーシストの暁リョウマもまた、ロック研究会に関心を持っている様子を見せる。しかしリョウマは、過去の経験から音楽好きである事を周囲に隠しており、素直になれずにいた。そんなリョウマに関心を持った不二美アキラは、わざとリョウマを挑発して、その本音を引き出す。そして同時に、真神たかしやひろきと共に、リョウマを自分がいつも使っている音楽スタジオへ招待するのだった。そしてスタジオでアキラに誘われ、仕方なく演奏に応じたリョウマは、バンドの楽しさを思い出す。こうして自分の気持ちに素直になる事を決めたリョウマもまた、ロック研究会へ入会するのだった。ついに四人が集まってバンドを結成したたかし達は、10代限定の音楽イベント「未確認フェスティバル」へエントリー。そして、一次審査である楽曲審査の結果を待つあいだ、積極的にライブハウスに出演して経験を積むようになる。そんな中、迎えた四人での初ライブの日、たかしは会場で出会ったバンド「wooof!(ヴォーフ)」の見事な演奏に打ちのめされる。
登場人物・キャラクター
真神 たかし (まがみ たかし)
人一八(いいは)県立陸前高校1年B組に在籍する男子。ロック研究会に所属し、ロックバンド「春の感傷」のボーカル兼ギターを務める。前髪を目の上で切った金色のウルフカットヘアにしている。明るく素直な性格で、何事もそつなくこなす器用なタイプ。思った事を正直に言うが嫌味がなく、コミュニケーション能力は高い。ただし飽き症で、これまでどんな趣味も部活もろくに続けられた事がなく、弟の真神大臣には呆れられていた。 高校1年生になってすぐのある日、上級生達が各部活動について紹介するイベント「部活レクリエーション」で、ロック研究会と、その唯一の会員である不二美アキラの存在を知る。また、この時にアキラが演奏したNUMBER GIRLの「透明少女」に強く惹かれ、それまで関心のなかったロックに強い興味を示すようになる。 そして、これがきっかけでロック研究会に入会し、バンド活動に消極的だったアキラを説得した事で、ミュージシャンとしての道を歩み始める。もともと歌は比較的得意で、カラオケで歌えば褒められるほどの技術はあった。しかし、バンド活動を始めた事で人前で歌う事の難しさを知り、さらにほかのメンバーに比べて自分の演奏技術が低い事に悩みつつも、必死に練習を続けていく。
不二美 アキラ (ふじみ あきら)
人一八(いいは)県立陸前高校2年A組に在籍する男子。真神たかしの友人。ロック研究会に所属し、ロックバンド「春の感傷」のギターを務める。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、紫色のぼさぼさの短髪。色白で、両目の下に大きなクマがある。また眼鏡をかけており、クラスメイト達からは「メガネさん」と呼ばれている。一見目立たず暗い雰囲気で、さらに皮肉屋で自虐的な性格。 そのため、非常に近寄りがたい印象があり、校内に友人はいない。しかし、実は素晴らしい音楽の才能を持ち、音楽の趣味を共有できる仲間を強く求めている。かつて所属していたバンド「invain(インヴェイン)」は高く評価されていたが、解散後は一人で活動していた。だが、高校2年生になってすぐのある日「部活レクリエーション」で演奏した事をきっかけにたかしに出会い、彼に強く説得された事で、再びバンド活動を始めるようになる。 たかしに出会うまでは、ミュージシャンとして高く評価されたいと願いつつ、自分の作る音楽は万人には理解されがたいと考えており、耳の肥えた音楽ファンにだけ伝わればいい、と自分を誤魔化していた。しかし、たかしの言葉により前向きになり、人気バンドになる事を目指して活動するようになっていく。 好きなバンドはNUMBER GIRL、eastern youth、the pillows。
高座 ひろき (たかざ ひろき)
人一八(いいは)県立陸前高校1年C組に在籍する男子。真神たかしの友人。ロック研究会に所属し、ロックバンド「春の感傷」のドラムを務める。前髪を右目側だけ完全に目が隠れるほど伸ばし、後ろの髪を肩につくほどまで伸ばした外はねウルフカットヘアにしている。両耳にピアスを付け、指にはマニュキュアをして制服を着崩した、派手なヴィジュアル系ロックバンドのファッションを好む。 そのため周囲からは遠巻きにされ、先生からも目をつけられているが、実際はまじめで、礼儀正しい性格で物腰柔らかく、成績も非常にいい。また、誰に対しても敬語で接する。幼い頃は物静かな性格が災いしていじめられっ子だったが、暁リョウマとは幼稚園の頃からの幼なじみであったため、当時から仲がよく、「ひろ」と呼ばれていた。 そして小学生の頃、リョウマから借りたCDがきっかけで、ロックに目覚めた。リョウマとはその後もずっと仲がよかったが、タイプが違うため、校内では距離を置き、会話しないようにしていた。しかし高校1年生になった4月のある日、ロック研究会の存在を知り、音楽と距離を置き始めたリョウマをロック研究会に引き入れた。 最も好きなバンドはcali≠gari。
暁 リョウマ (あかつき りょうま)
人一八(いいは)県立陸前高校1年C組に在籍する男子。真神たかしの友人。ロック研究会に所属し、ロックバンド「春の感傷」のベースを務める。前髪を眉上で短く切った赤茶色の短髪。背が高くがっしりとした体型で、まつげが長い。周囲の目を気にしすぎるあまり、なかなか素直になれないところがあるが、本質的にはまじめで熱い性格の持ち主。 高座ひろきからは「りょーちゃん」と呼ばれている。子供の頃からロックが大好きで、小学生の頃、当時好きだった女子にお気に入りのバンドを勧める。しかし彼女には受け入れられず、それどころか、嫌がらせのために聞かせたと思われてしまう。これがきっかけで、自分と周囲では音楽の好みがかけ離れている事を自覚し始め、中学生になってバンド活動を始めてからも、なかなか自分の趣味を理解されない事に悩むようになる。 そのため高校では完全にバンド活動をあきらめ、周囲に馴染む事を優先しようとしていた。しかし、ひろきがロック研究会に入会し、同時に暁リョウマも誘われた事で考えを改め、もう一度音楽活動を始める事にする。最も好きなバンドはゆらゆら帝国。 実家は肴商店街でお惣菜屋を営んでいる。
日向 レオ (ひゅうが れお)
ロックバンド「wooof!(ヴォーフ)」のボーカル・ギターを務める10代の男性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたウルフカットヘアにしている。三白眼で目つきが悪く、両耳に大量のピアスを付け、八重歯がある。自分に絶対の自信を持つナルシストで「wooof!」こそが最強のバンドであると考えている。そこで、まずは「未確認フェス」で優勝し、自分達の名を全国に知らしめようと考えていた。 そんな5月のある日「未確認フェス」の一次審査結果待ち中に、ライブハウス「高田クァンタ」で開催されるライブイベント「ニューウェーブライブイン高田クァンタ」に出演。そこで真神たかしらの「春の感傷」と出会う。当初はあまりにもメンバーに統一感のない「春の感傷」を見て、その場のノリで結成した平凡なバンドだろうと高をくくっていた。 しかし、たかし以外は高い技術力を持つ将来有望なミュージシャンである事にすぐさま気づき、たかしが三人の足を引っ張っている現状を疑問視。そしてたかしに対し、自分がバンドにいる意義を早いうちに見出せないようであれば、「春の感傷」の未来は暗いと断言する。
真神 大臣 (まがみ ひろおみ)
真神たかしの弟。陸前第一中学校に通っている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした短髪。クールで落ち着いた雰囲気で、さらに絵とスポーツが得意な事から、女子から人気がある。将来はイラストレーター兼映像作家になりたいと考えており、毎日熱心に絵を学び、映像研究ソフトを用いてニコニコ動画などで活動していた。そのため、自分とは真逆の飽き症なたかしの事を理解できず毛嫌いしていたが、5月のある日、たかしが高校入学後真剣に音楽活動をしており、この度楽曲のプロモーション動画を手伝ってくれる人間を探している事を知る。 そこでたかしの事を少し見直し、まずは現在のお互いの事を知るため、以前よりも歩み寄るようになる。
舘坂 みずき (たてさか みずき)
人一八(いいは)県立陸前高校に勤める若い女性教師。ロック研究会の顧問も務めている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、腰の高さまで伸ばしたストレートロングヘアにしている。明るく親しみやすい性格の持ち主。ロック研究会の顧問ではあるが、陸前高校では会員が四名未満の部活動は同好会としても認められないため、たとえば校内での活動はできない事を理解している。 しかし、唯一の会員である不二美アキラが言う事を聞かないため、仕方なく黙認していた。真神たかしがロック研究会に入会し、アキラ一人だけのものではなくなったのを機に、二人に陸前高校の拘束を改めて説明し、部員をあと二人獲得する事で、正式に同好会に昇格させるよう勧める。アキラには手を焼いているが、彼が所属していたロックバンド「invain(インヴェイン)」の解散後にたった一人で活動していたアキラが、再び人と音楽活動を始めた事を内心喜んでいる。
青木 サトル (あおき さとる)
音楽スタジオ「青斬(あおきり)スタジオ」で働く男性。不二美アキラの知人で、スキンヘッドに筋肉質のがっしりとした体型。さらにサングラスをかけて、頭の左側と両腕には入れ墨を入れ、眉、耳、口、鎖骨には大量のピアスを付けており、強面の風貌をしている。しかし明るく気さくな性格で、常連客であるアキラとは「さっちゃん」と呼ばれるほど仲がいい。
フジタ
真神たかしが、フリーマーケットアプリ「カユウマ」を通じて出会った若い女性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、腰まで伸ばしたロングヘアを耳の下の位置で二つに結んだお下げヘア。明るくノリのいい性格。「こども用」という、フジタとボイスロイドで構成された、実質フジタ一人の音楽ユニットで活動している。この「こども用」は、フジタがギターを弾いて演奏しながら、フジタとボイスロイドが掛け合い形式でポエトリーリーディングをするという独自の演奏方式で楽曲を作っており、極めて前衛的な音楽性を持つ。 そのため、自分の音楽は万人には受け入れられがたいと考え、ある春「こども用」としての活動をやめる決意をする。そこで、演奏に使っていたギターを、譲る際に自分の演奏を聞きに来る事を条件に「カユウマ」で売る事にする。 これがきっかけでたかし達「春の感傷」の四人と知り合い、たかしにギターを譲った。その後はかねてから誘われていたバンド「LATZ NEW ORDER(ラッツニューオーダー)」に加入した。不二美アキラの事は、彼がロックバンド「invain(インヴェイン)」に所属していた時代から一方的に知っていた。
橋本
人一八(いいは)県立陸前高校1年B組に在籍する男子。真神たかしの友人。前髪を目が隠れないように七三分けにした短髪。あだ名は「はっしー」。あまり音楽には関心がなく、入学直後の「部活レクリエーション」で不二美アキラの演奏を聞いても、なんだか不気味で気持ち悪いと捉えていた。しかし、たかしがその演奏に感激し、ロック研究会に入ったうえ、非常に熱心に活動しているのを間近で見るうちに考えを改める。 そのため、5月に開催された「ニューウェーブライブイン高田クァンタ」には、客として参加した。
相田 美央
人一八(いいは)県立陸前高校1年B組に在籍する女子。真神たかしのクラスメイト。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、胸の高さまで伸ばしたストレートロングヘアで、胸が大きい。明るくノリのいい性格で、クラスの中心人物となっている。高校入学後、たかしとは接点がなかったが、5月に行われたクラス会でたかしの歌唱力の高さを知る。